対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。
入れ歯を入れると吐き気がする、えずいてしまうという悩みは珍しくありません。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)でも「せっかく作ったのに気持ち悪くて使えない」というご相談をいただきます。これは我慢や慣れの問題だけではなく、装置の形と嘔吐反射(おうとはんしゃ:喉の奥が刺激されて吐き気が起こる体の反応)の位置関係が関わっています。このページでは、なぜ起こるのか、装置側で減らせること、ご自身でできる慣らし方を順に整理します。

先に結論
- 吐き気の多くは、装置の後ろ縁が敏感な場所に届いていることが原因
- 「慣れてください」だけで終わらせず、まず装置側を調整する
- 上あごを覆う面積や厚み、後ろ縁の位置は変更できる余地がある
- 鼻でゆっくり呼吸する、装着時間を少しずつ延ばすなどの慣らし方が有効
- 体調・緊張・鼻づまりでも反射は強くなる。条件を整えてから練習する
- 設計を変えても改善しない場合は、別の作り方に切り替える選択肢がある
| 刺激される場所 | 起こりやすい状況 | 主な対応 |
|---|---|---|
| 上あごの後ろ寄り | 装置の後ろ縁が長い、厚みがある | 縁の位置と厚みを調整する |
| 舌の付け根に近い部分 | 下の装置の内側の縁が高い | 舌側の縁を削って逃がす |
| 喉の奥全体 | 唾液が増えて後ろへ流れる | 装着時間を刻んで慣らす |
| 粘膜全体の違和感 | 床が厚く舌の動く空間が狭い | 床を薄くする、材料を変える |
| 特定できない | 緊張・鼻づまり・体調不良 | 条件を整えてから再評価する |
なぜ入れ歯で吐き気が起こるのか
喉の奥や上あごの後ろ、舌の付け根には、異物が触れると吐き出そうとする反射が備わっています。誤って飲み込むことを防ぐ、体を守るしくみです。 この反射が起こる範囲には個人差があります。もともと歯ブラシで奥歯を磨くだけでえずく方もいれば、型取りの材料が入っても平気な方もいます。同じ形の装置でも、反応がまったく違うのはこのためです。 上の総入れ歯は、上あごを広く覆う設計になります。この床(しょう:粘膜に接する土台の部分)が吸い付くことで装置が安定するため、面積そのものは必要なものです。ただし後ろ縁の位置が数ミリ違うだけで、反射が起きるかどうかが変わります。 下の装置では、舌の付け根に近い内側の縁が問題になります。舌が動くたびに縁が触れ、飲み込むときに強く当たると吐き気につながります。 もう一つ、唾液の増加も関係します。装置を入れた直後は唾液が増える方が多く、これが喉の奥へ流れることで反射が起こりやすくなります。多くは数日から二週間で落ち着きます。装置側で減らせること
「慣れるしかない」と言われて終わってしまうことがありますが、その前に確認できることがいくつもあります。 まず、後ろ縁の位置です。上の装置では、可動する粘膜との境目を越えて長すぎると反射が強く出ます。逆に短くしすぎると吸い付きが失われて外れやすくなるため、境目を確かめながら数ミリ単位で決めます。ここは経験と確認作業の積み重ねで詰めていく部分です。 次に、縁の厚みと形です。同じ長さでも、縁が丸く滑らかに仕上がっていれば刺激は減ります。角が立っていると、舌が触れるたびに違和感が出ます。 三つ目に、床の厚みです。樹脂の床は一定の厚みが必要ですが、金属を使うと大幅に薄くできます。舌が動く空間が広がり、温度も伝わりやすくなるため、吐き気だけでなく食事の感覚も変わります。金属を使った設計は金属床義歯とは|レジン床との違い・費用・向いている人にまとめました。 四つ目に、部分入れ歯であれば、そもそも上あごを覆う面積を減らせる場合があります。残っている歯の本数と位置によりますが、後ろ側を大きく開けた設計や、バネを使わない設計が選べることがあります。アタッチメント義歯・コーヌスクローネとは|バネのない自費の部分入れ歯とノンクラスプデンチャーとは|バネの見えない部分入れ歯の利点と欠点もご参照ください。 五つ目に、噛み合わせの高さです。人工の歯が高すぎると口が閉じきらず、常に舌が押し出される感じになります。これが不快感として現れることがあります。
自分でできる慣らし方
装置側を整えたうえで、体の側を少しずつ慣らしていきます。急がないことが結果的にいちばん早くなります。 はじめは、短時間から始めます。5分だけ入れて、外す。これを一日に数回繰り返します。えずく前に外すことが大切です。えずいた記憶が積み重なると、装置を持っただけで反応するようになります。 次に、呼吸です。反射が起こりそうなときは、鼻からゆっくり息を吸って、ゆっくり吐きます。口で速く呼吸すると、喉の奥の空気の流れが刺激になります。鼻がつまっているときは反射が強く出るため、鼻の通りが悪い日は無理をしないでください。 意識をそらすことも有効です。装着したまま、簡単な作業をする、音読する、テレビを見る。喉に注意を向け続けている状態がいちばん反射を招きます。 装着時間は、日ごとに少しずつ延ばします。5分から10分、20分、食事の時間、半日、というように段階を作ります。前日できた時間を下回っても構いません。全体として伸びていれば十分です。 食事は、慣れてきた段階で取り入れます。最初から硬いものを噛もうとすると、装置が動いて刺激が増えます。やわらかいものから始める考え方は入れ歯で食べにくい・話しにくい|原因と改善のステップにまとめています。 歯磨きの際に、奥のほうを少しずつ触れるようにしていく方法もあります。舌の上を後ろへ向かってブラシで軽くなでる練習を、無理のない範囲で毎日続けると、反応する範囲が狭くなっていく方がいます。舌の位置も関係しています
見落とされやすいのが、舌の置き場所です。 歯を失う前の口の中では、舌は上あごに軽く触れた位置に収まっています。歯がなくなった期間が長いと、舌がその空いた空間へ広がり、位置が変わっていきます。 この状態で装置を入れると、舌にとっては「自分の場所を取られた」形になります。舌が装置を押し返そうとし、その動きが違和感や吐き気につながります。 対応としては、舌の力を抜く練習が有効です。装着した状態で、舌先を下の前歯の裏側に軽く触れさせ、そのまま数分過ごします。押し返そうとする力が抜けると、装置が安定し、刺激も減ります。 発音の練習も同じ効果があります。声を出して文章を読むと、舌が新しい形の中で動き方を覚えます。黙って我慢しているより、動かしたほうが早く落ち着きます。吐き気と誤って飲み込む不安は別の問題
「えずくのは、装置を飲み込みそうで怖いからだ」とおっしゃる方がいます。この二つは分けて考えたほうが整理しやすくなります。 嘔吐反射は、喉の奥や上あごの後ろが物理的に触れられて起こる、意識とは無関係な反応です。装置の縁の位置を変えれば減らせます。 一方、飲み込むことへの不安は、装置が外れやすい、動く、といった実感から生まれます。この場合に必要なのは、慣らしではなく、適合の改善です。装置が動かなくなれば、不安そのものが減ります。 なお、小さな部分入れ歯を就寝中に装着していると、外れて口の奥へ移動する可能性は実際にあります。この点も含めた夜の扱いは入れ歯は寝るとき外す?つけたまま寝るリスクと外して寝る場合の保管にまとめました。 飲み込む力そのものが気になる方は、口腔機能低下症の検査とは|7項目で調べる内容と保険の扱いとオーラルフレイルとは|高齢の親の口の衰えチェックと予防もご覧ください。条件を整えることも効果があります
同じ装置でも、日によってえずきやすさは変わります。ここを見落とすと、装置の問題だと誤解してしまいます。 体調が悪い日、睡眠が足りない日は反射が強くなります。風邪や花粉症で鼻がつまっている時期も同様です。 緊張も大きく影響します。「またえずくのではないか」という予期そのものが反射を引き起こすことがあります。歯科医院の椅子の上で強く出て、自宅では平気という方は、この要素が大きいと考えられます。 姿勢も関係します。頭が後ろに倒れていると、唾液が喉の奥へ流れやすくなります。装着の練習は、顎を軽く引いた姿勢で行ってください。 口が乾いている状態も反射を強めます。装置と粘膜のあいだの滑りが悪くなり、擦れる刺激が増えるためです。唾液が少ない方は口が乾く原因とドライマウスの対策|唾液を増やす方法をご覧ください。
上の装置と下の装置で対処が変わります
同じ吐き気でも、上と下では原因も打ち手も違います。 上の装置では、上あごを覆う床の後ろ縁が主役です。ここは吸い付きを生む大事な部分でもあるため、単純に短くすればよいというものではありません。短くしすぎた装置は落ちてきて、その不安定さが別の不快感を生みます。境目を確かめながら、必要な長さを保ちつつ、厚みと形で刺激を減らしていきます。 床の面積そのものを減らす方法は、残っている歯の状況によります。奥歯が数本残っていれば、後ろ側を大きく開けた設計が成立することがあります。歯がすべてない場合は、面積を減らすと安定が失われるため、代わりに金属で薄く作る方向を検討します。 下の装置では、床が上あごのように広く覆う必要がないため、吐き気の原因は舌側の縁に集中します。ここは舌の動きに合わせて持ち上げられるため、長さと角度の調整で改善することが多い部分です。 ただし下の装置には別の課題があります。もともと安定しにくく、動くこと自体が違和感の原因になります。この点は下の総入れ歯が落ちる・浮く|安定しない原因と対処で詳しく扱っています。どこまで待つか、どこで切り替えるか
見通しがないまま我慢を続けるのは、いちばんつらい進め方です。おおよその区切りを持っておくと判断しやすくなります。 装置側の調整を行ったうえで、二週間から一か月ほど段階的な慣らしを続けてみる。ここで装着時間が少しずつでも伸びているなら、その方向で続ける価値があります。 反対に、一か月経っても5分以上入れられない、装置を見るだけで反応するようになった、という場合は、慣らしを続けても改善しにくい段階です。設計を変える検討に移ります。 判断を先延ばしにして装置をしまい込んでしまうと、その間に残った歯が動き、顎の形も変わります。数か月後に作り直そうとしたときには、条件が悪くなっています。使えない期間を作らないことが、次の選択肢を広く保つことにつながります。装置を使わなくなってしまった場合の考え方は入れ歯を使わなくなった・しまい込んでいる|また使える条件と作り直しの判断をご覧ください。当院でえずきやすい方に行っていること
型取りの段階から配慮が必要だと考えています。えずきやすい方にとって、型取りは最初の関門です。 材料の量を控えめにする、硬めに練って流れにくくする、顎を引いて前かがみの姿勢で行う、鼻で呼吸していただく。こうした工夫を重ねると、多くの方は型取りを終えられます。段階を分けて小さく採る方法を選ぶこともあります。 装置を仮の状態で使っていただき、後ろ縁の位置を確かめてから最終的な形にすることもあります。いきなり完成させるより、どこまでなら受け入れられるかを実際に試すほうが確実だからです。 完成後は、後ろ縁を数ミリ単位で調整します。短くしすぎると外れやすくなるため、吸い付きと反射のあいだで折り合いをつけていきます。この作業には数回の来院が必要になることがあります。調整の進め方は部分入れ歯は作って終わりではない|完成後の調整・定期チェックに通う理由と頻度もあわせてご覧ください。 それでも装着が難しい場合は、別の作り方を検討します。上あごを覆う面積を減らす設計、金属で薄く作る設計、あるいは残った歯を活かして支える設計。選択肢は口の中の状態によって変わります。保険と自費の違いは保険の入れ歯と自費の入れ歯の違い|後悔しない選び方をご参照ください。 初めて装置を使う方は、慣れるまでの全体像を初めての入れ歯|慣れるまでの期間と快適に使うコツで確認しておくと、見通しが立ちやすくなります。装置の基本的な扱いは入れ歯のお手入れ・洗浄方法|NGな洗い方と保管のコツにまとめています。食事中や飲み込むときにえずく場合
装着しているだけなら平気なのに、食事のときだけ吐き気が出るという方がいらっしゃいます。この場合は、原因の見方が少し変わります。 一つは、噛んだときに装置が動いていることです。装置が浮き沈みすると、後ろ縁が喉の奥に近い粘膜を繰り返し刺激します。じっとしているときは触れていなくても、噛むたびに当たる、という状態です。この場合は、噛み合わせと内面の適合を整えることが対処になります。 二つ目は、飲み込む動作そのものです。飲み込むとき、舌の後ろ側と口の底は大きく持ち上がります。下の装置の舌側の縁がこの動きの範囲に入っていると、そのたびに押し上げられ、違和感と反射につながります。 三つ目は、食べ物が装置の下に入り込むことです。異物が粘膜と装置のあいだで動く感覚が、反射の引き金になります。入れ歯の下に食べ物が入る|挟まる原因と毎日の工夫・受診の目安もあわせてご覧ください。 四つ目は、一口の量です。多く入れると舌を大きく動かすことになり、装置も動きます。少量ずつ、奥歯で噛むようにすると、刺激は減ります。 食事のときだけ症状が出る方は、その状況をそのまま伝えてください。「食べているときだけ」という情報があるだけで、確認する場所が絞れます。よくある質問
入れ歯を入れると吐き気がするのはなぜですか
上あごの後ろや舌の付け根には、異物が触れると吐き出そうとする反射が備わっているためです。装置の後ろ縁がこの範囲に届いていると反射が起こります。反応する範囲には個人差が大きく、同じ形でも人によって出方が違います。装着直後は唾液が増えることも、吐き気を強める要因になります。慣れれば治りますか
多くの方は、装置側の調整と段階的な慣らしで使えるようになります。ただし「慣れるしかない」と我慢を続けるのはおすすめできません。後ろ縁の位置や厚み、床の面積は変更できる余地があり、まず装置側を確認するのが先です。そのうえで短時間から装着時間を延ばしていきます。見通しが立つと、練習も続けやすくなります。どのくらいの時間から練習すればよいですか
5分程度から始めて、えずく前に外してください。これを一日に数回繰り返し、10分、20分、食事の時間、半日と段階を作ります。えずいた記憶が重なると装置を持っただけで反応するようになるため、成功する範囲を積み上げることが大切です。前日を下回る日があっても構いません。上あごを覆う面積は減らせますか
残っている歯の本数と位置によっては減らせます。部分入れ歯では後ろ側を大きく開けた設計や、バネを使わず歯で支える設計を選べることがあります。総入れ歯では吸い付きに面積が必要ですが、金属を使えば床を薄くでき、舌の動く空間を広げられます。どこまで減らせるかは、模型と口の中を見て判断します。型取りでもえずいてしまいますが、できますか
工夫すればほとんどの方は可能です。材料の量を控えめにする、硬めに練って流れにくくする、顎を引いて前かがみの姿勢をとる、鼻でゆっくり呼吸する、といった方法を組み合わせます。範囲を分けて小さく採ることもあります。事前に苦手だとお伝えいただければ準備できます。時間をかけてよいと分かるだけで、楽になる方もいます。日によって吐き気の強さが違うのはなぜですか
体調、睡眠不足、鼻づまり、緊張によって反射の出方は変わります。鼻がつまっていると口呼吸になり、喉の奥への刺激が増えます。また「またえずくのでは」という予期そのものが反射を招くこともあります。条件のよい日に練習を重ねるほうが、結果的に早く慣れます。うまくいかない日は、無理に続けないでください。姿勢で変わることはありますか
変わります。頭が後ろに倒れていると唾液が喉の奥へ流れやすく、反射が起こりやすくなります。装着の練習は顎を軽く引いた姿勢で行ってください。歯科医院の診療台でも、背もたれを起こすと楽になる方がいます。遠慮なくお伝えください。自宅で練習するときも、椅子に浅く腰かけて背筋を伸ばすと安定します。調整しても改善しない場合はどうなりますか
設計そのものを変える検討に移ります。上あごを覆う面積を減らす、金属で薄く作る、残った歯を利用して支える、といった選択肢があります。どれが可能かは残存歯の本数と位置、顎の骨の状態によって決まります。仮の装置で試してから最終的な形を決めることもあります。今の装置で試せる範囲を確かめてから、次を決めます。まとめ
入れ歯で吐き気がする、えずいてしまうという悩みは、我慢や気持ちの持ちようだけの問題ではありません。上あごの後ろや舌の付け根には異物を排除しようとする反射が備わっており、装置の縁がこの範囲に届いているかどうかで出方が決まります。反応する範囲には大きな個人差があるため、同じ設計でも人によって結果が違います。ですから最初にすべきは、装置側の確認です。後ろ縁の位置は数ミリ単位で調整でき、縁の形を丸く仕上げるだけでも刺激は減ります。床の厚みは金属を使えば薄くでき、舌の動く空間が広がります。部分入れ歯であれば、そもそも上あごを覆う面積を減らせる設計が選べることもあります。そのうえで、体の側を段階的に慣らしていきます。5分から始めて、えずく前に外す。鼻からゆっくり呼吸する。顎を軽く引いた姿勢をとる。意識を喉から離す。この積み重ねで、多くの方が使えるようになります。体調や鼻づまり、緊張によって日ごとに変わるため、条件のよい日に練習を重ねてください。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海で入れ歯が使えずお困りの方は、入れ歯が合わない・痛い|原因と調整・我慢しないための知識もあわせてお読みいただき、装置側で変えられる点から相談してみてください。参考・出典
- 日本補綴歯科学会「有床義歯の診療指針」
- 日本補綴歯科学会「歯の欠損の補綴歯科診療ガイドライン」
- 日本老年歯科医学会「高齢者の口腔機能管理に関する指針」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口の健康」