初めての入れ歯|慣れるまでの期間と快適に使うコツ

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年7月4日監修:村井亮介(DDS, MSD(米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)/日本補綴歯科学会 会員)

初めて入れ歯を入れた日、「口の中に大きな異物がある」「話しづらい」「本当にこれで食事ができるのだろうか」と不安になるのは、ごく自然なことです。中には「入れ歯になってしまった」というショックや、人に知られたくないという気持ちを抱える方も少なくありません。

まずお伝えしたいのは、最初の違和感は誰にでも起こる通過点であり、多くの方は数週間から1〜2か月ほどで日常生活に支障がない程度まで慣れていくということです。そして、慣れるまでの期間は「我慢する期間」ではなく、調整と練習で短くできる期間です。
初めての入れ歯のイメージイラスト
このページでは、名古屋・愛知で初めて入れ歯を使い始めた方、これから使う予定の方に向けて、慣れるまでの一般的な経過、発音・食事・違和感それぞれの対処のコツ、そして気持ちの面との付き合い方を、学会の指針や臨床現場の考え方をもとに解説します。経過には個人差があり、痛みが続く場合は自己判断で我慢せず歯科での調整が必要です。あくまで目安としてお読みください。入れ歯そのものの種類や費用について知りたい方は 入れ歯(義歯)の種類と費用|保険と自費の違い のページをご覧ください。

先に結論:初めての入れ歯で押さえる三つのポイント

  • 違和感・話しづらさ・食べにくさは最初は「あって当たり前」で、多くは数週間〜1〜2か月で軽くなっていきます
  • 慣れるコツは「外さずに使う時間を少しずつ増やす」「柔らかいものから両側でかむ」「音読などで発音練習をする」ことです
  • 痛み・傷・強い当たりは慣れでは解決しません。我慢や自己流の調整はせず、早めに歯科で調整を受けてください
新しい入れ歯は、作って終わりではなく、装着後に数回の調整を重ねて完成に近づけていくものです。「調整に通うこと」まで含めて入れ歯治療だと考えると、最初のつまずきで落ち込まずにすみます。

早見表:慣れるまでの一般的な経過の目安

時期よくある状態やるとよいこと
装着当日〜1週間強い違和感、唾液が増える、話しづらい、当たって痛い場所が出やすい柔らかい食事から開始。痛い場所はメモして早めに調整を受ける
1〜2週間違和感が少しずつ減る。発音は「サ行・タ行」がまだ苦手なことが多い音読・会話で発音練習。装着時間を延ばしていく
2〜4週間日常の食事がおおむね可能に。細かい当たりの調整が続くことも食材の幅を広げる。気になる点は遠慮なく伝えて微調整
1〜2か月多くの方が日常生活に支障のない程度に慣れる手入れと夜間の取り外しを習慣化。定期チェックへ移行
経過はあくまで一般的な目安です。入れ歯の大きさ(部分入れ歯か総入れ歯か)、あごの骨や粘膜の状態、年齢などによって個人差があり、総入れ歯や初めての大きな入れ歯では数か月かかる方もいます。

なぜ最初は違和感があるのか:脳と口が「学習」する期間

入れ歯に慣れるまでに時間がかかるのは、意志が弱いからでも、入れ歯が失敗だからでもありません。口の中は体の中でも特に敏感な場所で、髪の毛1本入っても気づくほどの感覚を持っています。そこに入れ歯という装置が入るのですから、最初に大きな異物感があるのはむしろ正常な反応です。 人の脳には、繰り返しの経験によって感覚や動きを再調整する力(順応=じゅんのう。刺激に慣れて気にならなくなる働き)があります。舌や頬、唇は、入れ歯がある状態での話し方・飲み込み方・かみ方を少しずつ学習し直し、やがて入れ歯を「自分の口の一部」として扱えるようになっていきます。 このため、違和感が強いからといって外している時間が長いと、学習が進まず、かえって慣れるのが遅くなります。痛みがない範囲で装着時間を確保することが、遠回りに見えて一番の近道です。 唾液が増える、軽い吐き気(嘔吐反射=おうとはんしゃ。喉の奥を刺激されたときにオエッとなる反応)が出る、というのも初期によくある反応で、多くは数日〜数週間で落ち着きます。上あごの奥の形が合っていないことが原因の場合もあるため、長引くときは調整で改善できることがあります。

発音のコツ:サ行・タ行は「練習で取り戻せる」

入れ歯を入れた直後は、サ行・タ行・ラ行など、舌先を使う音が発音しづらくなることがよくあります。舌が入れ歯の厚みに慣れておらず、今までと同じ舌の位置では音が濁ったり、息が漏れたりするためです。 対処の基本は、声に出して練習することです。
  • 新聞や本を1日10〜15分ほど音読する(サ行・タ行の多い文章だとより効果的です)
  • 「さしすせそ」「たちつてと」などをゆっくり、はっきり繰り返す
  • 電話や店頭での短い会話など、実際に話す機会を避けずに増やす
  • 家族との会話を練習の場と考え、聞き取りにくかった音を教えてもらう
発音は多くの場合、2〜4週間ほどの練習で目立たない程度に回復していきます。ただし、「サ行の息漏れがいつまでも治らない」「特定の音で入れ歯が浮く感じがする」場合は、入れ歯の厚みや形が発音の妨げになっていることがあり、調整で改善できる可能性があります。練習してもよくならない音は、我慢せず歯科医師に伝えてください。

食事のコツ:柔らかいものから、両側で、小さく

初めての入れ歯での食事は、段階を踏むことが大切です。最初から今まで通りに食べようとすると、痛みや挫折感につながりやすくなります。
  • 最初の数日は、おかゆ・煮物・豆腐・卵料理など柔らかいものから始めます
  • 食べ物は小さめに切り、一口の量を少なくします
  • 左右どちらか片側だけでかまず、両側で均等にかむよう意識します(入れ歯が傾いて外れたり痛んだりするのを防ぎます)
  • 前歯で強くかみ切る動作は入れ歯が外れやすいため、犬歯から奥のあたりでかみ切るようにします
  • 慣れてきたら、少しずつ硬さのある食材(根菜、肉など)に広げていきます
熱い飲み物・食べ物には注意が必要です。とくに保険の入れ歯はレジン(歯科用プラスチック)の床(しょう=歯ぐきに乗る土台部分)が熱を伝えにくいため、温度を感じにくく、気づかずに火傷することがあります。最初のうちは一呼吸おいて温度を確かめる習慣をつけると安心です。 また、餅やガム、キャラメルなどの粘着性の強い食品は入れ歯を外れやすくし、ナッツや硬いせんべいなどは強い力が一点にかかって痛みの原因になります。慣れるまでは控えめにし、慣れてからも少しずつ試すのが現実的です。 研究では、入れ歯の方はかむ回数を増やすことで、飲み込める状態まで食べ物を細かくしていると報告されています。「ゆっくり、回数多くかむ」こと自体が、入れ歯での食事の基本技術だと考えてください。

痛みが出たとき:我慢と自己流調整は禁物

初めての入れ歯の解説イラスト
初めての入れ歯で、粘膜に当たって痛い場所(褥瘡性潰瘍=じょくそうせいかいよう。入れ歯の当たりでできる傷)が出るのは珍しくありません。ここで大切な原則が二つあります。 一つ目は、痛みは「慣れ」では解決しないということです。当たりが強い場所は、入れ歯側をわずかに削って調整する必要があり、これは歯科でしかできません。我慢して使い続けると傷が深くなり、かえって装着できない期間が延びてしまいます。 二つ目は、自分で削ったり、市販の接着剤で直したりしないことです。入れ歯は0.1ミリ単位の調整で当たりが変わる精密な装置で、自己流に削るとかみ合わせ全体が崩れ、修復に余計な費用と時間がかかることがあります。 受診の目安としては、次のように考えるとよいでしょう。
  • 粘膜に傷ができた、当たって痛い場所がある:早めに調整の予約を取ります(数日以内が目安です)
  • 受診までの間は、痛い側で硬いものをかまない・食事のとき以外は装着時間を調整するなどで悪化を防ぎます
  • 受診の当日は、可能なら数時間前から入れ歯を装着しておくと、当たっている場所が粘膜に残り、調整の精度が上がります
新しい入れ歯では、装着後に数回の調整が必要になるのが普通です。名古屋市内(中区・栄・名古屋駅周辺)のように通いやすい立地の歯科であれば、調整のための短時間の通院も負担になりにくいため、初めての入れ歯では「通いやすさ」も医院選びの現実的なポイントになります。

気持ちの面との付き合い方:落ち込むのは自然なこと

入れ歯になったことに、喪失感や「老いてしまった」という気持ちを抱く方は少なくありません。見た目や発音の変化から、人と会うのがおっくうになる方もいます。こうした気持ちは弱さではなく、体の一部を失ったことへの自然な反応です。 そのうえで、次のことが気持ちの回復の助けになります。
  • 最初の違和感や話しづらさは一時的なもので、練習と調整で改善していく見通しを持つこと
  • 家族や親しい人に「入れ歯に慣れる練習中」と伝え、会話や食事の場を避けないこと
  • 「今日はここまで食べられた」「この音が言えるようになった」と、できるようになったことに目を向けること
  • 不安や不満を歯科医師・歯科衛生士に率直に伝えること(遠慮して伝えないと、調整の機会を失います)
研究の分野でも、入れ歯などで口の機能を回復することは、栄養状態だけでなく、会話や外出といった社会参加、口腔関連QOL(生活の質)の維持に関わると報告されています。入れ歯に慣れることは、単に「かめるようになる」以上の意味を持つ取り組みです。あせらず、しかし途中でやめずに、調整と練習を続けていきましょう。

慣れたあとも大切な習慣:手入れ・夜間の取り外し・定期チェック

違和感がなくなってからも、入れ歯を快適に使い続けるための基本習慣は変わりません。
  • 1日1回以上、入れ歯を外して専用の義歯ブラシで磨きます(研磨剤入りの歯磨き粉は傷の原因になるため避けます)
  • 義歯洗浄剤も併用し、就寝時は原則として外して清潔な水などに保管します(装着したまま眠り続けると、義歯性口内炎=ぎしせいこうないえん、カンジダという真菌による粘膜の炎症のリスクが高まると報告されています)
  • 残っている歯がある方は、入れ歯を外した状態で自分の歯も丁寧に磨きます
  • 痛みがなくても定期的に歯科を受診し、かみ合わせや歯ぐきの変化に合わせた調整を受けます
あごの骨は年月とともに少しずつやせていくため、「作ったときは快適だった入れ歯」も必ず合わなくなっていきます。緩み・痛み・外れやすさを感じたら、それは寿命や不具合のサインです。放置せず、リライン(裏側を作り直して合わせ直す処置)や修理、作り替えの相談をしてください。

よくある質問

入れ歯に慣れるまでどれくらいかかりますか

個人差はありますが、多くの方は数週間〜1〜2か月ほどで日常生活に支障のない程度に慣れます。総入れ歯や初めての大きな入れ歯では数か月かかることもあります。装着時間を確保し、調整に通うことで期間は短くなりやすいです。

話しづらいのですが治りますか

サ行・タ行など舌先を使う音は最初に苦手になりやすいですが、音読などの練習で2〜4週間ほどで目立たなくなるのが一般的です。練習しても改善しない音は入れ歯の形が原因のことがあり、調整で良くなる場合があります。

最初は何を食べればよいですか

おかゆ・煮物・豆腐など柔らかいものから始め、小さく切って両側でかむのが基本です。餅やガムなど粘着性の強いもの、非常に硬いものは慣れるまで控えめにしてください。熱いものは温度を感じにくいため火傷に注意が必要です。

痛いときは外して様子を見てもよいですか

傷が深くなる前に外すこと自体は構いませんが、外したまま放置せず早めに調整を受けてください。長期間外していると歯ぐきの状態が変わり、当たりの場所が分かりにくくなります。受診の数時間前から装着しておくと調整の精度が上がります。

入れ歯安定剤は使ってもよいですか

一時的な補助としては市販の安定剤もありますが、緩さを安定剤でごまかし続けると、合わない入れ歯を使い続けることになり歯ぐきを傷めるおそれがあります。緩いと感じたら、まず歯科でリラインや調整を相談するのが基本です。

夜は外して寝ないとだめですか

原則として就寝時は外すことが勧められます。装着したまま眠り続けると、カンジダという真菌が増えて義歯性口内炎が起こりやすくなると報告されています。外した入れ歯は乾燥させず、清潔な水などに入れて保管してください。

どうしても慣れません。作り直すべきですか

まずは調整で改善の余地がないかを確認するのが先です。数か月調整を重ねても合わない場合は、設計や種類(金属床や、支えを増やす方法など)の見直しが選択肢になります。入れ歯の種類ごとの特徴は 入れ歯(義歯)の種類と費用 のページで整理しています。

まとめ

初めての入れ歯の違和感・話しづらさ・食べにくさは、誰にでも起こる通過点であり、多くは数週間〜1〜2か月で軽くなっていきます。慣れを早めるコツは、痛みのない範囲で装着時間を確保すること、柔らかいものから小さく切って両側でかむこと、音読などで発音を練習することです。一方で、痛みや傷は慣れでは解決しないため、我慢や自己流の調整はせず、早めに歯科で調整を受けてください。落ち込む気持ちは自然なものですが、入れ歯は調整と練習で「自分の口の一部」になっていきます。毎日の手入れと夜間の取り外し、定期的なチェックを習慣にして、長く快適に使っていきましょう。名古屋・愛知で入れ歯の種類や費用から検討したい方は、入れ歯(義歯)の種類と費用|保険と自費の違い もあわせてご覧ください。
初めての入れ歯に関するケア・予防のイメージイラスト
関連情報として、入れ歯が合わない・痛い入れ歯で食べにくい・話しにくい入れ歯のお手入れ・洗浄方法で詳しく解説しています。

参考・出典

  • 日本補綴歯科学会「有床義歯補綴診療のガイドライン(2009改訂版)」(Minds 掲載)
  • 日本補綴歯科学会「リラインとリベースの臨床指針 2023」
  • 日本老年歯科医学会(高齢者の義歯使用・口腔機能に関する指針・解説)
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット(歯・口腔の健康、入れ歯の手入れに関する解説)
  • 総義歯・部分床義歯装着後の適応(順応)過程・発音機能に関する臨床研究
  • 義歯装着者の咀嚼能率と咀嚼回数に関する文献レビュー
  • 義歯性口内炎・カンジダと夜間装着に関する臨床研究・レビュー
  • 義歯の清掃法・義歯洗浄剤に関する研究報告
  • 口腔機能の回復と栄養状態・口腔関連QOLに関する系統的レビュー
(注:本文中の期間・経過は一般的な目安であり、個人差があります。痛みや不調が続く場合は歯科医師の診察を受けてください。具体的数値・最新知見は監修者が確認・更新します。)

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

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