入れ歯を使わなくなった・しまい込んでいる|また使える条件と作り直しの判断

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年8月28日監修:村井亮介(歯科医師・DDS, MSD/日本補綴歯科学会 会員)

入れ歯を作ったものの使わなくなり、引き出しにしまったままという方は少なくありません。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)でも「痛くて使えず、そのうち面倒になった」というお話をよくうかがいます。使わない期間が長くなるほど、口の中は変化していきます。このページでは、なぜ使えなくなるのか、しまい込んでいるあいだに何が起きるのか、そして今ある装置がまた使えるのか作り直しが必要なのかの見分け方を整理します。

引き出しにしまわれたままの入れ歯とケースのイラスト

先に結論

  • 使わなくなる理由の多くは「痛い」「入らない」「外れる」の三つ
  • いずれも調整の対象で、意志や慣れの問題ではない
  • 使わない期間に、残った歯が動き顎の形も変わる
  • 数か月なら調整で再開できることが多い。年単位では作り直しが現実的
  • 乾燥したまま保管された装置は変形していることがある
  • 装置を使わない状態が続くと、残った歯への負担が増える
装置が合わないときの対処は入れ歯が合わない・痛い|原因と調整・我慢しないための知識にまとめています。ここでは使わなくなった後の話を扱います。 放置した期間によって、現実的な選択肢が変わります。
使わない期間口の中と装置に起きていること現実的な選択肢
数週間ほぼ変化なし。装置の乾燥に注意調整して再開できることが多い
数か月残った歯がわずかに動き始める調整、または内面の作り直し
半年〜1年顎の形が変わり、噛み合わせもずれる内面の作り直しか新製を検討
数年歯の移動と顎の変化が大きい新しく作るのが現実的
期間を問わず残った歯に虫歯や歯周病が進んだ場合歯の治療が先。設計も変わる
※装置の状態と口の中の状態を両方見て判断します。期間だけで決まるものではありません。

使わなくなる理由はだいたい決まっています

ご本人が「合わなかった」とおっしゃる中身を分けると、次のいずれかであることがほとんどです。 一つ目が、痛みです。特定の場所が当たって痛む。多くは調整で解決する内容ですが、痛みが出た時点で通院が途切れると、そのまま使わなくなります。数回の調整が前提の装置であることが、十分に伝わっていなかったケースもあります。 二つ目が、外れる・浮くという不安定さです。特に下の装置に多く、話している最中に動く、食事のたびにずれる、という状態が続くと、外して過ごすほうが楽になります。 三つ目が、吐き気です。上あごを覆う装置で起こりやすく、これは慣れだけの問題ではありません。装置側で減らせる余地があります。入れ歯で吐き気がする・えずく|嘔吐反射が起こる原因と慣らし方をご覧ください。 四つ目が、食べにくさです。期待していたほど噛めず、結局外して食べるようになった、という流れです。入れ歯で食べにくい・話しにくい|原因と改善のステップで扱っています。 五つ目が、手入れの負担です。毎食後に外して洗う手間が続かなくなる。これは、食べ物が入り込みやすい状態になっていることが背景にある場合があります。入れ歯の下に食べ物が入る|挟まる原因と毎日の工夫・受診の目安をご参照ください。 いずれも、我慢や慣れではなく、調整や設計の見直しで対応できる内容です。
入れ歯を使わなくなる主な理由を五つに分類した図

しまい込んでいるあいだに口の中で起きること

ここが、この問題の本質です。時間は口の中を変えていきます。 まず、残った歯が動きます。歯は、周囲から力を受けて位置を保っています。隣の歯を失った場所には空間があり、そちらへ傾いていきます。噛み合う相手を失った歯は、少しずつ伸び出してきます。装置が入っていた場所は、この動きを止める役割も果たしていました。 数か月であればわずかですが、年単位になると、装置が物理的に入らなくなるほど動くことがあります。 次に、顎の骨と歯ぐきが変化します。歯を失った部分の骨は、噛む力が伝わらなくなると減っていきます。装置を使っていれば力が伝わりますが、使わなければその刺激もありません。 三つ目に、残った歯への負担が増えます。装置が受け持っていた力が、すべて残った歯にかかります。少ない本数で全部を負担すると、その歯がぐらつき始めることがあります。歯がぐらつく・揺れる原因と対処|歯周病・外傷・噛み合わせのどれ?をご覧ください。 四つ目に、噛み方の癖が固定されます。装置なしで食べられるものだけを選ぶようになり、片側だけで噛む習慣がつきます。この状態が長く続くと、顎の関節や筋肉に影響が出ることもあります。 五つ目に、食べられるものが狭まります。やわらかいものが中心になり、栄養が偏りやすくなります。口の働きの低下という観点ではオーラルフレイルとは|高齢の親の口の衰えチェックと予防口腔機能低下症の検査とは|7項目で調べる内容と保険の扱いをご参照ください。

装置そのものも変化しています

口の中だけでなく、しまわれていた装置にも変化が起きています。 いちばん多いのが、乾燥による変形です。入れ歯の樹脂は水分を含んだ状態を前提に作られています。乾いた状態で長く置かれると、わずかに縮んだり反ったりします。数年の乾燥では、口の中に戻したときに明らかに合わないことがあります。 そのため、しまってある装置を見つけたら、水に浸けてから持参してください。少なくとも受診の前日から水中に置いておくと、状態が判断しやすくなります。 次に、汚れの固着です。洗わずにしまわれた装置には、汚れが乾いて固まっています。これは通常の清掃では落ちません。歯科医院で処理します。 三つ目に、バネの変形です。何度も脱着した装置や、無理に押し込んだ装置では、バネが広がっていることがあります。これも見ればわかります。 四つ目に、ひび割れです。乾燥と経年で細かいひびが入っていることがあります。この状態の装置を無理に使うと、割れます。入れ歯が割れた・欠けたときの対処|市販の接着剤がNGな理由と修理の流れもご参照ください。 なお、装置を捨てずに持っていることには意味があります。作られた当時の噛み合わせや形の情報が残っており、新しく作る際の参考になります。使えない装置でも、持参してください。

また使えるかどうかの見分け方

受診すると、次の順で確認していきます。 第一に、装置が口の中に入るかどうかです。物理的に入らなければ、その時点で作り直しの検討になります。残った歯が動いていると、この段階で判断がつきます。 第二に、入った場合の適合です。内面と粘膜のあいだの隙間、装置の安定、噛み合わせの状態を見ます。隙間が中程度までなら、内面に材料を足して作り直す処置で対応できます。装置の外形と人工の歯はそのまま使えます。 第三に、残った歯の状態です。装置を使わない期間に虫歯や歯周病が進んでいると、そちらの治療が先になります。支えにする予定だった歯を失っていれば、設計そのものが変わります。 第四に、噛み合わせの高さです。長く装置なしで過ごした方では、上下の顎が本来より深く閉じた位置で安定していることがあります。この場合、いきなり元の高さに戻すと違和感が強く出るため、段階を踏むことがあります。 第五に、ご本人の希望です。前回うまくいかなかった理由がはっきりしている場合、同じ設計で作り直しても同じ結果になります。バネの位置を変える、覆う面積を変える、材料を変えるなど、方針を見直します。保険の入れ歯と自費の入れ歯の違い|後悔しない選び方金属床義歯とは|レジン床との違い・費用・向いている人もご参照ください。
再開できるか作り直しかを判断する五つの確認項目を並べた図

保険で作り直せるかという問題

費用の面で気になるのがこの点です。 保険で入れ歯を新しく作る場合、前回の製作から一定の期間が経過していることが原則になります。この期間内に作り直す場合は、原則として保険の対象外です。破損など、例外的に認められる場合もあります。 しまい込んでいた期間が長い方では、この期間を過ぎていることが多く、保険で作り直せるケースが多くなります。逆に、作って間もなく使わなくなった方では、期間の制約を受けます。 その場合の選択肢は、今ある装置を調整して使えるようにするか、自費で作るか、期間が来るまで待つかになります。ここは状況によって最適な答えが変わるため、実際に見てご説明します。 なお、内面を作り直す処置や修理は、新製とは別の扱いです。作り直しの期間内でも受けられます。まずはこの処置で使えるようにならないかを検討するのが現実的な順序です。 費用に関する制度は歯科の医療費控除の対象と申請方法|計算例まで解説歯科の保険診療と自費診療の違いをわかりやすく解説にまとめています。

当院で「しまってある入れ歯」を拝見するとき

まず、責める話にはしません。使えなくなったのには理由があり、その多くは装置側にあります。 うかがうのは、使わなくなった時期と、そのときに何が困ったかです。痛かったのか、外れたのか、吐き気があったのか。ここがわかると、次に作る装置の設計が変わります。同じ理由で二度失敗しないことが目的です。 次に、今ある装置を口の中に入れてみます。入るかどうか、どこが当たるか、どれくらい浮くか。これで再開の可能性が見えます。 数か月程度であれば、調整と内面の作り直しで再開できる方が多くいらっしゃいます。この場合、新しく作るより短期間で、費用も抑えられます。 年単位で使っていない場合は、正直に作り直しをおすすめすることが多くなります。無理に合わせても、また使わなくなる可能性が高いためです。 そして、再開する場合は、装着時間の計画を一緒に立てます。長く使っていなかった口の中にとって、装置は再び異物です。短時間から段階的に延ばす進め方は、初めて使うときと同じです。初めての入れ歯|慣れるまでの期間と快適に使うコツ部分入れ歯は作って終わりではない|完成後の調整・定期チェックに通う理由と頻度をご覧ください。

ご家族が気づいたときにどう伝えるか

ご本人ではなく、ご家族からのご相談も少なくありません。「親が入れ歯を使わなくなった」「食事のときだけ入れているようだ」といった内容です。 このとき、伝え方には少し配慮が必要です。使わなくなったことを責める形になると、話が止まってしまいます。多くの場合、ご本人も困っているのに、うまく言えずにいるだけです。 うかがっていただきたいのは、「痛いのか」「外れるのか」「気持ち悪いのか」という具体的な内容です。「合わないから」という一言の中身が分かれば、対応の方向が見えます。どれも調整の対象であり、我慢や慣れの問題ではないことを伝えてください。 食事の変化にも目を向けてみてください。やわらかいものばかり選ぶようになった、食べる量が減った、食事の時間が長くなった。こうした変化は、噛めていないことのサインです。体重が落ちてきている場合は、栄養の面でも影響が出始めています。口の働きの低下という観点はオーラルフレイルとは|高齢の親の口の衰えチェックと予防で扱っています。 受診の際は、可能であればご一緒に来ていただけると助かります。ご本人が「大丈夫」とおっしゃっても、ご家族から見た日常の様子が加わると、状況が正確につかめます。 通院が難しい場合は、自宅に出向いて診療する仕組みもあります。装置の調整や内面の作り直しは、この形でも行えます。訪問歯科診療とは|通院できない家族が自宅で受けられる治療と費用をご覧ください。

再開する最初の2週間の進め方

調整を終えて再開する場合、進め方に段階を作ります。長く使っていなかった口にとって、装置は再び異物です。 最初の数日は、家にいる時間に短く入れることから始めます。30分から1時間程度で外して構いません。この段階では、噛むことより「入れている状態に慣れる」ことが目的です。 次の数日で、食事の時間に使ってみます。やわらかいもの、まとまりやすいものから始めてください。硬いものをいきなり噛むと、痛みが出て、そこで再び使わなくなる流れに戻ってしまいます。 一週間ほど経って痛みが出なければ、装着時間を半日程度まで延ばします。この頃には、話すときの違和感も薄れてきます。声を出して読む練習をすると、舌が新しい形の中での動き方を早く覚えます。 二週間目には、日中はほぼ装着している状態を目標にします。夜については、口の中の状態によって外すか入れるかを判断します。考え方は入れ歯は寝るとき外す?つけたまま寝るリスクと外して寝る場合の保管にまとめました。 この期間中に、必ず一度は受診してください。粘膜が装置の力を受けて沈み込み、当たる場所が変わるためです。痛みが出た時点で外して連絡していただければ、その場所を調整できます。ここで通院が途切れることが、前回と同じ結果を招く最大の要因です。 進め方の全体像は初めての入れ歯|慣れるまでの期間と快適に使うコツもあわせてご覧ください。長く空いた後の再開は、初めて使うときと近い過程をたどります。

同じことを繰り返さないために

再開しても、また使わなくなってしまう方がいらっしゃいます。避けるために、二つのことをお願いしています。 一つは、困った時点で連絡していただくことです。痛い、外れる、気持ち悪い。どれも、その場で伝えていただければ対応できます。次の予約まで我慢して、そのあいだに使うのをやめてしまう流れが、いちばん多い失敗です。 もう一つは、前回うまくいかなかった理由をはっきりさせておくことです。同じ設計で作り直せば、同じ結果になります。バネの位置、覆う範囲、噛み合わせの高さのどこを変えるのかを決めてから進めます。合わない入れ歯の原因と調整でどこまで直るかも、見直す点を絞る材料になります。

よくある質問

しまい込んでいた入れ歯はまた使えますか

期間と口の中の変化によります。数週間から数か月であれば、調整や内面の作り直しで再開できることが多くあります。年単位になると、残った歯が動いて装置が物理的に入らないことが増え、作り直しが現実的になります。まずは装置を持参して、入るかどうかを確認するところから始めてください。

使っていないあいだに口の中はどう変わりますか

残った歯が空いた場所へ傾き、噛み合う相手を失った歯は伸び出してきます。歯を失った部分の骨は、噛む力が伝わらないと減っていきます。また装置が受け持っていた力が残った歯にすべてかかるため、少ない本数の歯がぐらつき始めることもあります。噛み方の癖も固定され、片側だけで食べるようになりがちです。

乾いた状態で保管していましたが問題ありますか

樹脂は水分を含んだ状態を前提に作られているため、乾くとわずかに縮んだり反ったりします。長期間の乾燥では、口の中に戻したときに明らかに合わないことがあります。受診の前日から水に浸けておくと、状態が判断しやすくなります。熱いお湯は使わないでください。洗わずにしまわれた装置は、汚れが乾いて固まっていることもあります。

使えない入れ歯でも持って行ったほうがよいですか

必ずお持ちください。入るかどうかを確認できるだけでなく、作られた当時の噛み合わせや形の情報が残っており、新しく作る際の参考になります。また、どこが当たって痛かったのかを装置の上で示していただけると、次の設計に反映できます。使えないと思っている装置ほど、次の設計に生かせる情報が残っています。

保険で作り直せますか

保険で新しく作るには、前回の製作から一定の期間が経過していることが原則です。しまい込んでいた期間が長い方は、この期間を過ぎていることが多くなります。作って間もない場合は制約を受けますが、内面を作り直す処置や修理は新製とは別の扱いで、期間内でも受けられます。まずはこの処置で使えるようにならないかを検討します。

痛くて使えなかったのですが、また同じことになりませんか

前回うまくいかなかった理由をはっきりさせることが大切です。痛みの場所、外れ方、吐き気の有無によって、変えるべき点が違います。バネの位置、覆う面積、床の厚みや材料など、設計を見直したうえで作れば、同じ結果を繰り返す可能性は下げられます。当時の状況は、思い出せる範囲で構いませんのでお聞かせください。

使わないままでも困っていないのですが問題ありますか

見た目や食事に不自由を感じていなくても、残った歯には装置の分の力が上乗せされています。少ない本数で負担し続けると、その歯を失うリスクが上がります。また歯が動いて空間が狭くなるため、後で作ろうとしたときに選べる設計が限られます。一度状態を確認しておくことをおすすめします。

再開するときはすぐに一日中使えますか

段階を踏むほうが確実です。長く使っていなかった口の中にとって、装置は再び異物になります。短時間から始めて、日ごとに装着時間を延ばしていきます。初めて使うときと同じ進め方です。痛みが出たら我慢せず、その都度調整を受けてください。二週間ほどかけて、日中はほぼ装着している状態を目標にします。

まとめ

入れ歯を使わなくなってしまう理由は、痛み、外れる不安定さ、吐き気、食べにくさ、手入れの負担のいずれかであることがほとんどです。どれも意志や慣れの問題ではなく、装置側の調整や設計の見直しで対応できる内容です。ところが痛みが出た時点で通院が途切れると、そのまましまい込むことになります。問題は、使わない期間に口の中が変わっていくことです。残った歯は空いた場所へ傾き、噛み合う相手を失った歯は伸び出してきます。歯を失った部分の骨は、噛む力が伝わらないぶん減っていきます。そして装置が受け持っていた力が、すべて残った歯にかかります。数か月であればわずかな変化ですが、年単位になると装置が物理的に入らなくなることもあります。ですから、判断を先延ばしにするほど選べる選択肢は狭くなります。数か月程度であれば、調整と内面の作り直しで再開できる方が多く、新しく作るより短期間で費用も抑えられます。装置は乾燥で変形するため、受診の前日から水に浸けてお持ちください。使えない装置でも、当時の噛み合わせの情報が残っており、次に作るときの手がかりになります。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海で入れ歯をしまい込んだままの方は、入れ歯が合わないときに歯科で受けられる調整もあわせてご覧いただき、まずは今の状態を確認するところから始めてください。

参考・出典

  • 日本補綴歯科学会「有床義歯の診療指針」
  • 日本補綴歯科学会「歯の欠損の補綴歯科診療ガイドライン」
  • 日本老年歯科医学会「高齢者の口腔機能管理に関する指針」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口の健康」

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

→ 監修者・編集方針について