総入れ歯ができるまでの流れと期間|型取りから完成・調整までの通院回数

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年8月28日監修:村井亮介(歯科医師・DDS, MSD/日本補綴歯科学会 会員)

総入れ歯ができるまでの流れと期間を、工程ごとに整理します。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)でも「何回くらい通うのか」「どのくらいで噛めるようになるのか」というご質問をよくいただきます。総入れ歯は、模型を作って削り出す装置ではなく、口の動きを記録しながら段階的に作り上げていくものです。このページでは、各回で何を行い、なぜその工程が必要なのか、そして完成後の調整までを含めた全体像をお伝えします。

総入れ歯の製作工程を型取りから完成まで順に並べたイラスト

先に結論

  • 完成までの来院は、おおむね5〜6回。期間は1〜2か月が目安
  • 工程を飛ばすと、後で調整しても取り戻せない部分がある
  • 型取りは2回に分けて行う。1回目は概形、2回目が精密
  • 噛み合わせの記録は、完成後の安定を左右する最重要の工程
  • 完成後も数回の調整が前提。ここまでで一つの治療
  • 抜歯を伴う場合は、治癒を待つ期間が加わる
装置の種類と費用の全体像は総入れ歯の種類と費用|よく噛める入れ歯の条件にまとめています。ここでは製作の流れに絞ります。 各回で行うことは、おおよそ次のとおりです。
工程行うことと目的
1回目診査・概形の型取り粘膜と骨の状態を確認し、個人用のトレーを作るための型を採る
2回目精密な型取り個人用トレーで縁の位置まで含めて精密に記録する
3回目噛み合わせの記録上下の位置関係と高さ、正面から見た向きを決める
4回目試適(ろう義歯の確認)人工歯を並べた状態で、見た目・発音・噛み合わせを確認する
5回目完成・装着装置を装着し、明らかな当たりを調整。使い方を説明する
6回目以降調整当たりや噛み合わせを数回に分けて詰めていく
※医院の方針や口の中の状態によって、回数は前後します。

1回目と2回目|なぜ型取りを二度行うのか

総入れ歯は、粘膜の上に乗って、吸い付く力で安定します。この吸い付きは、装置の縁が粘膜の動く境目にぴったり収まったときに生まれます。 一度の型取りでこの精度を出すのは困難です。既製のトレー(型取りの器)は、既製品ゆえに個人の顎の形とずれています。ずれた器で採った型は、材料の厚みが場所によって違い、細部が正確に写りません。 そのため、まず既製のトレーで概形を採り、それをもとに、その方専用のトレーを作ります。二度目の型取りでは、この個人用のトレーを使い、薄い材料で精密に記録します。 このとき、頬や唇、舌を動かしていただきます。これは、機能しているときにどこまで粘膜が動くのかを型に反映させるためです。動かさずに採った型で作ると、静止しているときは合っていても、話したり食べたりすると外れる装置になります。 初回には、診査も行います。顎の骨の形と量、粘膜の厚みと状態、口を開ける量、唾液の量。これらは装置の設計と、どこまで安定を期待できるかの見通しに関わります。抜歯が必要な歯が残っている場合は、この段階で計画を立てます。抜歯後の期間の考え方は抜歯後いつから入れ歯・ブリッジを入れられる?治りを待つ期間の目安をご覧ください。

3回目|噛み合わせを決める工程

ここが、総入れ歯の製作でもっとも重要な工程です。そして、患者さんからは何をしているのか見えにくい工程でもあります。 歯が一本も残っていない口では、上下の顎の位置関係を示す手がかりがありません。歯が残っていれば、噛んでいただければ位置が決まります。総入れ歯では、それがないところから決める必要があります。 使うのは、ろうで作った土手の付いた装置です。これを口に入れ、上下の高さ、前後左右の位置、正面から見たときの傾きを記録します。 高さの決め方には、いくつかの目安があります。安静にしているときの上下の隙間、発音したときの唇の閉じ方、顔の下三分の一の比率など、複数の情報を組み合わせます。 この高さが低すぎると、口元にしわが寄り、噛む力も出ません。高すぎると、口が閉じにくく、常に歯が当たっている感じになり、顎が疲れます。 前後の位置も重要です。ここがずれると、噛んだときに装置が前や後ろへ滑り、安定しません。 この工程で決めた位置が、完成後の噛み心地と見た目の大半を決めます。完成してから「高さが違う」と気づいても、削って下げることはできても上げることはできません。だからこそ時間をかけます。
ろうの土手で上下の高さと位置を記録する工程を示した図

4回目|完成前に必ず確認する試適

人工の歯をろうに並べた状態で、口に入れて確認する工程です。この段階では、まだ最終的な材料に置き換えていません。つまり、やり直しがききます。 確認するのは四つです。 一つ目は、見た目です。歯の大きさ、色、並び方、唇を引いたときにどこまで見えるか。鏡でご自身に見ていただき、ご希望があればこの場で変更します。ご家族に同席いただくこともあります。 二つ目は、発音です。声を出して読んでいただき、サ行やタ行が言いにくくないかを確認します。前歯の位置と厚みが関係します。 三つ目は、噛み合わせです。前回決めた高さと位置が、実際に歯を並べた状態でも適切かを見ます。ここでずれが見つかれば、記録をやり直します。 四つ目は、唇や頬の見え方です。装置の厚みで口元が張りすぎていないか、逆に薄すぎてしぼんで見えないかを確認します。この点は総入れ歯で顔つきは変わる?口元・しわの変化と入れ歯でできることで詳しく扱っています。 この工程を省略すると、完成してから見た目や発音の問題に気づくことになります。完成後の変更は、材料が固まっているため大がかりになります。少し手間でも、必ず確認していただく工程です。

5回目以降|完成と調整の期間

装着の日は、装置をお渡しして終わりではありません。 まず、実際に口に入れて、明らかに当たっている場所を調整します。装置の内面に色のつく材料を塗り、接触点を確かめてから最小限だけ削ります。 次に、噛み合わせを確認します。薄い紙を噛んでいただき、左右均等に当たっているかを見ます。技工作業の過程でわずかなずれが生じるため、この調整は必ず必要です。 そして、外し方と入れ方、洗い方をご説明します。落として割る事故は、この最初の説明で大きく減ります。洗い方は入れ歯のお手入れ・洗浄方法|NGな洗い方と保管のコツにまとめています。 装着後の数週間が、実際には最も重要な期間です。粘膜は装置の力を受けて沈み込み、当たる場所が変わっていきます。痛みが出るのは想定内で、そのたびに調整します。 目安として、装着後1か月のあいだに2〜4回の来院が必要になります。ここで通院が途切れると、合わない装置のまま使い続けることになり、多くの場合そのまま使わなくなります。入れ歯を使わなくなった・しまい込んでいる|また使える条件と作り直しの判断で扱っている状況です。 食事は、やわらかいものから段階的に広げます。慣れるまでの進め方は初めての入れ歯|慣れるまでの期間と快適に使うコツ入れ歯で食べにくい・話しにくい|原因と改善のステップをご覧ください。
装着後1か月の調整スケジュールを示した図

期間が長くなる場合

標準的には1〜2か月ですが、条件によって延びることがあります。 抜歯を伴う場合が代表です。歯を抜いた後の骨と歯ぐきは、数か月かけて形が落ち着きます。落ち着く前に精密な型を採っても、完成する頃には合わなくなります。そのため、治癒を待つか、待つあいだの装置を先に作るかを選びます。仮の装置については歯がない期間の見た目はどうする?即時義歯・仮の歯という選択をご覧ください。 粘膜に炎症がある場合も、先に治します。腫れた状態で型を採ると、治った後に合わなくなるためです。 長く合わない装置を使っていた方では、粘膜が変形していることがあります。この場合、いったん装着時間を減らして粘膜を回復させてから型を採ります。数週間が加わります。 顎の骨が大きくやせている方では、安定を得るための工夫に時間をかけます。型取りをやり直すこともあります。 また、自費で作る場合は、工程が増えることがあります。噛み合わせの記録を専用の装置で行う、試適を複数回行う、といった方法です。その分、期間は長くなります。保険との違いは保険の入れ歯と自費の入れ歯の違い|後悔しない選び方金属床義歯とは|レジン床との違い・費用・向いている人をご参照ください。

当院で工程を進めるときに大切にしていること

私たちが最も時間をかけるのは、噛み合わせを決める回と、試適の回です。 理由は単純で、この二つは後戻りができないからです。装置の内面の当たりは、完成後にいくらでも調整できます。しかし高さや前後の位置、歯の並び方は、完成してからでは大きく変えられません。 そのため、この二回は「まだ変えられる段階」であることをお伝えし、気になる点をその場で言っていただくようにしています。特に見た目については、遠慮される方が多い印象です。歯の大きさや色は、この段階なら自由に変更できます。 もう一つ、装着の日に次回の予約を必ず取っていただいています。痛みが出るかどうかにかかわらず、一度は確認します。粘膜の変化は自覚がないまま進むことがあるためです。 そして、完成までの見通しを最初にお伝えします。何回通うのか、いつ頃噛めるようになるのか。これがわからないまま通院が続くと、途中で気持ちが折れやすくなります。 長期的には、装置は使いながら合わせ続けるものです。顎は変化し続けるため、数年ごとに内面を作り直すことになります。入れ歯の寿命と作り直しのタイミング|リベース・修理の知識部分入れ歯は作って終わりではない|完成後の調整・定期チェックに通う理由と頻度もあわせてご覧ください。

お預かりしているあいだ、技工所では何をしているか

通院と通院のあいだには、必ず一週間から二週間ほどの間隔が空きます。この期間、装置は歯科技工士の手元にあります。何をしているのかがわかると、間隔の意味が理解しやすくなります。 一度目の型取りの後は、模型を作り、その上でその方専用のトレーを作ります。顎の形に沿った器を、縁の高さまで考えて作る作業です。 二度目の型取りの後は、精密な模型を作り、記録用のろうの土手を製作します。この土手は、次の来院で高さと位置を決めるための道具です。 噛み合わせを記録した後が、最も手間のかかる工程です。上下の模型を、記録どおりの位置関係で装置に取り付け、人工の歯を一本ずつろうの上に並べていきます。前歯は見た目を、奥歯は噛む効率と装置の安定を考えて位置を決めます。 人工歯を並べた状態を確認していただいた後は、ろうを樹脂に置き換える作業に入ります。加熱と圧力をかけて樹脂を流し込み、冷ましてから模型を壊して取り出し、表面を磨き上げます。この置き換えの過程で、わずかな寸法の変化がどうしても生じます。装着の日に噛み合わせの調整が必要になるのは、このためです。 つまり、通院の間隔は待ち時間ではなく、作業の時間です。急いで詰めると、いずれかの工程が省かれることになります。

来院の間隔はどれくらい空けてよいか

ご都合で間隔が空いてしまうこともあります。工程によって、影響の大きさが違います。 型取りから次の来院までは、多少空いても問題になりません。模型の上で作業が進むため、口の中の状態が数週間で大きく変わることは少ないためです。 一方、噛み合わせを記録してから人工歯を並べた状態を確認するまで、そしてその確認から完成までは、あまり空けないほうが安全です。記録した高さや位置は、その日の顎の状態にもとづいています。長く空くと、記録と現状のずれが生じることがあります。 装着してからの調整は、間隔を空けないことが特に重要です。当たっている場所を放置すると、粘膜に傷ができ、その傷を避けるために噛み方が変わり、別の場所が痛み始めます。痛みが出たときは、予約を待たずにご連絡ください。

作り替えのあいだ、今の入れ歯はどうするか

すでに装置をお使いで、新しく作り替える場合の質問です。 原則として、完成の日までは今の装置を使い続けていただきます。装置なしの期間を作ると、食事が偏るだけでなく、顎の位置が変わってしまうことがあるためです。 ただし、粘膜が変形している場合は例外です。長く合わない装置を使っていると、その形どおりに歯ぐきが盛り上がったり、赤みが続いたりします。この状態で型を採ると、変形した形の装置ができあがります。そのため、いったん装着時間を減らし、粘膜を回復させてから型を採ります。この期間は数日から二週間ほどです。 今の装置を調整して、型取りまでの期間を過ごしやすくすることもあります。使えなくなった装置をお持ちの方は、そのままにせず持参してください。判断の材料は多いほうが確実です。

完成までの費用と支払いのタイミング

期間とあわせて気になるのが、いつ、どれくらいの費用がかかるかという点です。 保険で作る場合、費用は工程ごとに発生します。型取りの回、噛み合わせを記録する回、人工歯を並べた状態を確認する回、そして完成の回に、それぞれ窓口でのお支払いが生じます。総額を最後にまとめて支払う形ではないため、一度あたりの負担は分散されます。装置の種類による違いは保険の入れ歯と自費の入れ歯の違い|後悔しない選び方をご覧ください。 自費で作る場合は、医院ごとに支払いの区切りが決められています。着手時と完成時に分ける形が一般的ですが、事前にご確認ください。 装着後の調整については、保険の範囲で行う場合、一定の期間内は追加の費用がかからない扱いになることがあります。この点も含めて、最初にご説明しています。 なお、同じ一連の治療の中で、保険と自費を組み合わせることはできません。「型取りまで保険で、完成だけ自費に」といった選び方はできず、はじめからどちらかを選ぶ形になります。制度の全体像は歯科の保険診療と自費診療の違いをわかりやすく解説歯科の医療費控除の対象と申請方法|計算例まで解説にまとめました。

よくある質問

総入れ歯は何回くらい通えばできますか

完成までの来院はおおむね5〜6回で、期間は1〜2か月が目安です。診査と概形の型取り、精密な型取り、噛み合わせの記録、人工歯を並べた状態の確認、完成と装着、という順で進みます。装着後にさらに2〜4回の調整が必要になるため、落ち着くまでを含めると2〜3か月ほどみておくと安心です。

なぜ型取りを二回に分けるのですか

既製のトレーは個人の顎の形とずれており、そのままでは細部が正確に写りません。まず概形を採ってその方専用のトレーを作り、二度目に薄い材料で精密に記録します。このとき頬や唇、舌を動かしていただき、機能しているときの粘膜の動きを型に反映させます。この一手間が、完成後の吸い付きの差になります。

噛み合わせを記録する回では何をしているのですか

歯が一本もない状態から、上下の顎の位置関係を決める工程です。ろうで作った土手の付いた装置を使い、高さ、前後左右の位置、正面から見た傾きを記録します。この位置が完成後の噛み心地と見た目の大半を決めます。完成してからでは大きく変えられないため、時間をかけます。見えにくい工程ですが、ここに時間をかけます。

人工歯を並べた状態で確認する工程は省けますか

省略しないことをおすすめします。この段階ではまだ最終的な材料に置き換えていないため、歯の大きさ、色、並び方、発音、口元の張り具合を確認して変更できます。完成後に見た目や発音の問題に気づくと、修正は大がかりになります。鏡でご自身に見ていただく大切な回です。遠慮せず、気になる点はその場でお伝えください。

完成したらすぐに何でも噛めますか

すぐには難しいのが一般的です。装着直後は粘膜が装置の力を受けて沈み込み、当たる場所が変わっていきます。痛みが出るのは想定内で、そのたびに調整します。食事はやわらかいものから始め、段階的に広げてください。数週間から数か月かけて噛める範囲が広がります。焦らず進めるほうが、結果的に早く落ち着きます。

抜歯が必要な場合は期間が延びますか

延びます。歯を抜いた後の骨と歯ぐきは数か月かけて形が落ち着くため、その前に精密な型を採ると完成する頃には合わなくなります。治癒を待つか、待つあいだ使う仮の装置を先に作るかを選びます。見た目の都合がある場合は、仮の装置での対応を検討します。予定がある場合は、最初にその時期をお伝えください。

装着後の調整には何回通いますか

装着後1か月のあいだに2〜4回が目安です。この期間の調整は、作りが甘いから直すのではなく、はじめから工程の一部として組み込まれています。ここで通院が途切れると合わない装置のまま使うことになり、結果として使わなくなる方が多くなります。痛みが出たときは、次の予約を待たずにご連絡ください。

自費で作ると期間は変わりますか

工程が増えるぶん長くなることがあります。噛み合わせの記録を専用の装置で行う、人工歯を並べた状態の確認を複数回行うといった方法を取る場合です。そのぶん精度を高める狙いがあります。どの工程が加わるかは選ぶ方式によって変わるため、事前にご確認ください。期間と費用の両方を、着手前に確認しておいてください。

まとめ

総入れ歯は、模型から削り出す完成品ではなく、口の動きを記録しながら段階的に組み上げていく装置です。完成までの来院はおおむね5〜6回、期間は1〜2か月が目安になります。型取りを二度行うのは、既製のトレーでは個人の顎の形とずれて細部が写らないためで、まず概形を採ってその方専用のトレーを作り、二度目に精密に記録します。このとき頬や唇、舌を動かしていただくことで、機能しているときの粘膜の動きが型に反映され、話しても外れにくい装置になります。そして最も重要なのが、噛み合わせを決める工程です。歯が一本もない口では上下の位置を示す手がかりがないため、ろうの土手を使って高さ、前後左右の位置、傾きを一から決めます。ここで決めた位置が、完成後の噛み心地と見た目の大半を左右します。人工歯を並べた状態で確認する回も省略できません。この段階ならまだ変更がきくからです。そして装着後の1か月に2〜4回の調整があって、はじめて一つの治療が完了します。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海で総入れ歯をご検討中の方は、総入れ歯の種類と費用|よく噛める入れ歯の条件もあわせてご覧いただき、完成までの見通しを持って始めてください。

参考・出典

  • 日本補綴歯科学会「有床義歯の診療指針」
  • 日本補綴歯科学会「歯の欠損の補綴歯科診療ガイドライン」
  • 日本老年歯科医学会「高齢者の口腔機能管理に関する指針」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口の健康」

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

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