対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。
親知らずを抜かないとどうなるのか。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海の方から、痛みがないまま何年も置いている歯についてご相談をいただきます。結論から言えば、放置しても何も起きない歯と、時間とともに確実に不利になる歯があり、その分かれ目は生え方と清掃のしやすさで決まります。このページでは、抜かずに置いた場合に起こりうる五つの変化を順に説明し、様子を見てよい条件と、受診を決めるべき目安を整理します。
先に結論
- まっすぐ生えて磨けている親知らずは、抜かずに置いてよい
- 斜め・横向きで手前の歯との間に隙間がある歯は、時間とともに不利になりやすい
- 最も多い実害は「自分の歯ではなく、手前の第二大臼歯が虫歯になる」こと
- 痛みがない時期でも、進行は静かに続いていることがある
- 年齢が上がるほど骨が硬くなり、抜歯時の負担と回復にかかる日数は増える傾向
- 判断の材料はレントゲンかCT。見た目だけでは決められない
抜くかどうかの基準そのものは
親知らずは抜くべき?抜かなくてよいケースの基準にまとめています。ここでは「抜かないまま置いたとき、何がどう変わるのか」に絞って説明します。
放置した場合に起こりうる変化を、目安の時間軸とともに並べます。
| 起きること | 内容 | 気づきやすさ |
| 手前の歯の虫歯 | 親知らずとの隙間から進み、手前の歯の根元側が溶ける | 気づきにくい |
| 歯ぐきの炎症 | かぶさった歯ぐきの下で細菌が増え、腫れと痛みを繰り返す | 症状が出る |
| 骨が下がる | 手前の歯の後ろ側の骨が失われ、歯周ポケットが深くなる | 気づきにくい |
| 嚢胞ができる | 埋まったままの歯を包む袋が大きくなることがある | ほぼ無症状 |
| 抜歯の負担増 | 骨が硬くなり、処置時間と腫れが増える傾向 | 抜く段階で判明 |
※すべての親知らずに起こるわけではありません。生え方と清掃状態によって大きく変わります。
「抜かない」には二つの意味がある
同じ「抜かない」でも、内容がまったく違います。
ひとつは、抜く必要がないという判断です。まっすぐ生えて上下がきちんと噛み合い、歯ブラシが届いている歯は、他の奥歯と同じ扱いでよく、あえて抜く理由がありません。
もうひとつは、抜いたほうがよいと分かっているが先送りしている状態です。斜めに傾いて手前の歯に当たっている、歯ぐきが半分かぶっている、といった歯がこれにあたります。この場合は「抜かない」ではなく「まだ抜いていない」であり、時間は不利に働きます。
ご自身の親知らずがどちらなのかは、口を開けて見ただけでは判断できません。埋まっている部分の向きと、手前の歯との接触位置は画像でしか分からないためです。
変化その一:手前の歯が虫歯になる
抜かずに置いたときに最も多く見られるのが、親知らずではなく手前の歯、第二大臼歯の虫歯です。
斜めに生えた親知らずは、手前の歯の後ろ側に食い込むように当たります。この接触部分にはくさび状の狭い隙間ができ、食べかすと細菌がたまります。歯ブラシの毛先は届かず、フロスも親知らずが邪魔をして通せません。
問題は、溶けはじめる場所です。親知らず側ではなく、手前の歯の根元寄りの面から進むことが多く、ここは治療器具を入れにくい位置です。発見が遅れると、神経に達して根の治療が必要になったり、状況によっては手前の歯まで残せなくなったりします。
親知らず1本を守ろうとして、より価値の高い第二大臼歯を失う。これが放置で起きる最も避けたい結末です。虫歯が見つかった場合の考え方は
親知らずが虫歯になった|治して残すか抜くかの判断で扱っています。
変化その二:歯ぐきの炎症を繰り返す
親知らずの上に歯ぐきが部分的にかぶさっていると、その下は袋状の空間になります。細菌が入り込みやすく、自分では洗い流せません。
体調が落ちたときや睡眠不足が続いたときに、この部分が腫れて痛みます。数日から一週間ほどで治まりますが、原因となる構造は残っているため、条件がそろえばまた起こります。
繰り返すうちに間隔が短くなり、腫れる範囲が広がる傾向があります。頬やあごの下まで腫れる段階になると、口が開きにくくなり、飲み込むときにも痛みます。詳しくは
智歯周囲炎を繰り返す|親知らずの炎症がぶり返す理由と抜歯を決める目安をご覧ください。
変化その三:手前の歯の骨が下がる
歯ぐきの炎症が続くと、その影響は骨に及びます。
親知らずと手前の歯の間の骨は、もともと薄い部分です。炎症が長引くと、この骨が失われ、手前の歯の後ろ側に深い歯周ポケットができます。
厄介なのは、この場所の骨が減っても自覚症状がほとんど出ないことです。噛んで痛むわけでも、しみるわけでもありません。定期検診でポケットを測ってはじめて分かることが多く、その時点で回復が難しい深さになっている場合があります。
歯周ポケットの数値の読み方は
歯周病検査の数値の見方|プロービング・動揺度・出血率が示すものにまとめています。
変化その四:嚢胞ができることがある
完全に骨の中に埋まったままの親知らずでは、歯を包んでいた袋が液体をためて大きくなることがあります。含歯性嚢胞(がんしせいのうほう:埋まった歯の周囲にできる袋状の病変)と呼ばれます。
頻度は高くありませんが、無症状のまま進むという性質があるため注意が必要です。大きくなると周囲の骨を押しのけ、あごの骨が薄くなります。他の目的で撮ったレントゲンで偶然見つかることも珍しくありません。
埋まったままの親知らずを「症状がないから」と何年も画像で確認していない場合は、一度撮影しておく価値があります。埋伏歯そのものの扱いは
横向き・埋まっている親知らず(埋伏智歯)の抜歯|難易度と流れで説明しています。
変化その五:抜くときの負担が増す
いずれ抜くことになる歯であれば、先送りは条件を悪くします。
理由は骨の性質です。若い時期の骨は弾力があり、歯を動かす余地があります。年齢が上がると骨は硬く緻密になり、同じ歯を抜くにも骨を削る量が増えます。処置時間が延び、腫れも出やすくなります。
回復にかかる日数も変わります。組織の治りが緩やかになるため、腫れが引くまでの期間、口が開くようになるまでの期間がそれぞれ長くなる傾向があります。
もう一点、根の完成度も関係します。根が完全にできあがる前であれば、下あごの神経との距離に余裕があることが多く、しびれのリスクを見積もりやすくなります。年齢と難易度の関係は
親知らずを抜くなら何歳までがよい?年齢で変わる難易度と回復で詳しく扱っています。
抜かずに様子を見てよい場合
以下の条件がそろっていれば、急いで抜く理由はありません。
まっすぐ生えていて、歯冠がすべて歯ぐきの外に出ていること。上下の親知らずが噛み合っていること。歯ブラシとフロスが届き、実際に清掃できていること。手前の歯との間にくさび状の隙間がないこと。定期検診で経過を追えていること。
この状態であれば、将来ブリッジの支えや移植のもと歯として使える可能性もあります。移植については
親知らずの移植(歯牙移植)とは|条件・成功率・費用をご覧ください。
まっすぐ生えている歯の手入れの方法は
まっすぐ生えた親知らずは抜かなくていい?残せる条件と手入れの仕方にまとめました。
受診を決める目安
次のいずれかに当てはまる場合は、画像を撮って方針を決める段階です。
年に1回以上腫れる。手前の歯との境目に食べものが詰まる。歯ぐきが半分かぶさっている。上下どちらか一方だけが伸びてきている。3年以上レントゲンを撮っていない。妊娠や長期の海外滞在など、しばらく歯科にかかりにくい予定がある。
上下の生え方の違いによる判断は
上の親知らずと下の親知らずの違い|抜歯の難易度・腫れ・痛みが参考になります。また、痛みが自然におさまった場合の考え方は
親知らずの痛みが自然におさまった|放置してよいか受診すべきかの見分け方で扱っています。
名古屋で相談するときに持っておきたい情報
名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海で相談される際は、いつごろから生えているか、腫れた回数と時期、いま服用している薬をまとめておくと話が早く進みます。
過去に他院でレントゲンを撮っている場合は、その時期を伝えてください。同じ歯の何年か前の画像と比べられると、進行しているかどうかの判断がしやすくなります。
抜かない場合にかかる費用の目安は
親知らずを抜かない場合にかかる費用|相談・経過観察・クリーニングの目安に整理しています。抜歯全体の流れを知りたい方は
親知らず抜歯の流れと術後の痛み・腫れの経過もあわせてご覧ください。
「様子を見ましょう」と言われたときの意味
歯科医院で「今は様子を見ましょう」と言われることがあります。この言葉には、二つの異なる意味が含まれています。
ひとつは、抜く必要のない歯だという判断です。まっすぐ生えて清掃も届いている歯であれば、他の奥歯と同じように定期検診で見ていくという意味になります。
もうひとつは、抜いたほうがよいが今すぐではない、という判断です。腫れが治まった直後、体調が不安定な時期、まとまった休みが取れない時期などでは、条件が整うまで待つという選択がされます。
この二つは、患者の側からは同じ言葉に聞こえます。ですから「様子を見る」と言われたら、どちらの意味なのかを確認してください。「今後も抜かない予定でよいのですか」と尋ねるだけで、方針がはっきりします。
前者であれば、いつまでも様子を見ていて問題ありません。後者であれば、いつ抜くかを決める話し合いが必要です。ここを曖昧にしたまま数年が過ぎ、その間に手前の歯が進行していたという例は少なくありません。
経過観察を選んだ場合にやっておくこと
抜かずに経過を見ると決めた場合、何もしないという意味ではありません。三つのことを続けてください。
第一に、定期検診の間隔を決めておくことです。症状のない親知らずであれば、三か月から半年ごとが目安になります。その際、親知らずと手前の歯の境目を毎回見てもらってください。「前回と変わりないか」を記録として残してもらうことが重要です。
第二に、清掃の到達を確認することです。歯垢を染める染色液を使って磨いた直後に鏡で見る、あるいは歯科衛生士に磨き残しの位置を指摘してもらうという方法があります。感覚では判断できない部位です。
第三に、画像の記録を残しておくことです。数年に一度でかまいません。以前の画像と比べられれば、進行しているかどうかが判断できます。比較する対象がないと、何かが写っていても以前からなのか新しい変化なのかが分かりません。
なお、経過観察の間に症状が出た場合は、次の検診を待たずに受診してください。とくに腫れた場合は、その回数を記録しておいてください。年に何回腫れているかは、方針を決めるときの重要な材料になります。定期検診で何を見てもらうかは
歯の定期検診では何をする?内容・費用・所要時間を参考にしてください。
抜くと決めた場合に確認しておくこと
放置による不利を避けるために抜くと決めた場合、次の点を確認しておくと計画が立てやすくなります。
まず、どの歯から抜くかです。4本ある場合、症状のある側や、手前の歯に影響が出はじめている側が優先されます。分け方の考え方は
親知らずを抜く順番と回数|4本まとめて・片側ずつの決め方にまとめています。
次に、処置にどのくらいの時間がかかるかです。生え方によって、5分で終わる歯から1時間近くかかる歯まで幅があります。当日の予定を組むうえで確認しておいてください。目安は
親知らず抜歯にかかる時間|難易度別の目安と予約の取り方にあります。
そして、下の親知らずの場合は、根の先端とあごの神経との位置関係です。近い場合はCTでの確認が必要になります。詳しくは
親知らず抜歯と神経麻痺のリスク|下歯槽神経・CT検査の意味をご覧ください。
服用中の薬がある方は、その情報も抜歯の計画に関わります。
抜歯前に伝えるべき薬と持病|抗血栓薬・骨粗しょう症治療薬の注意にまとめました。
同じ「放置」でも人によって結果が違う理由
同じように何年も抜かずにいて、まったく問題の起きない方と、手前の歯を失う方がいます。この差はどこから生まれるのでしょうか。
最も大きいのは、隙間の有無です。親知らずと手前の歯のあいだにくさび状の狭い空間があるかどうかで、汚れのたまり方がまったく変わります。この空間は、歯の傾きが数度違うだけでできたりできなかったりします。
次に、清掃の到達です。同じ生え方でも、その部分に毛先が届いている方と届いていない方では、数年後の状態が変わります。届いているかどうかは感覚では分からないため、染め出しや検診での指摘が必要になります。
三つ目は、確認の頻度です。定期的に見ている方は、変化が小さいうちに気づけます。何年も受診していない場合、気づくのは症状が出てからです。
つまり結果を分けるのは、運ではなく条件です。ご自身がどちらの条件にあるのかは、画像と清掃状態を見れば判断できます。久しぶりの受診をためらっている方は
何年も歯医者に行っていない|久しぶりの受診で何をするか・費用の目安を参考にしてください。
よくある質問
親知らずを抜かないまま放置するとどうなりますか
生え方によって結果が分かれます。まっすぐ生えて磨けている歯なら特に問題は起きません。斜めや横向きで手前の歯との間に隙間がある歯では、手前の第二大臼歯の虫歯、歯ぐきの炎症の繰り返し、その部分の骨の減少が起こりやすくなります。いずれも初期は自覚症状が乏しく、気づいた時点で進んでいることがあります。
痛くないのに抜いたほうがよいと言われるのはなぜですか
痛みは進行の目安になりにくいためです。手前の歯の虫歯も、骨が下がる変化も、初期には痛みを出しません。歯科医院が勧めるのは、画像で「このまま置くと手前の歯に不利が及ぶ」と読み取れる場合です。理由が分かりにくいときは、どこがどう問題なのかを画像を見ながら説明してもらってください。
何年くらい放置すると影響が出ますか
一律の年数はありません。清掃状態と生え方で進み方が変わるためです。隙間に食べものが詰まる状態が続いている場合、数年単位で手前の歯に変化が出ることがあります。逆に、詰まらない生え方であれば長く問題が起きないこともあります。年数ではなく、詰まるかどうかで判断してください。
上の親知らずも放置するとよくないですか
上は下より問題が起きにくい傾向があります。骨が柔らかく、まっすぐ生えることが多いためです。ただし、下の親知らずがなく上だけが伸びてくると、噛み合う相手を失って下がってくることがあります。頬に当たって傷をつくる場合もあるため、伸びてきている自覚があれば確認してください。
放置していた親知らずを今から抜いても間に合いますか
多くの場合は間に合います。手前の歯がまだ健全であれば、抜くことでその歯を守れます。すでに手前の歯に虫歯がある場合は、抜歯と同時に治療の計画を立てます。年齢が上がるほど処置の負担は増えますが、それを理由に抜けなくなるわけではありません。年齢が上がるほど処置の負担は増えますが、それを理由に抜けなくなるわけではありません。まずは画像で現状を確認してください。
抜かずに清掃だけで維持することはできますか
条件によっては可能です。歯ブラシとタフトブラシが届き、定期的にクリーニングを受けられる状態であれば維持できます。ただし歯ぐきが半分かぶさっている歯では、器具が届かない部分が残るため維持は難しくなります。三か月ごとの検診で、その部分の出血と深さを追ってください。
レントゲンはどのくらいの間隔で撮ればよいですか
症状のない親知らずであれば、数年に一度が一つの目安です。埋まったままの歯や、以前に腫れたことがある歯は、担当の歯科医師の判断で間隔が短くなります。撮影の目的は、手前の歯の骨の高さと、袋状の変化がないかを見ることです。前回の撮影時期を控えておくと判断に役立ちます。
抜くかどうか迷っています。決めるきっかけはありますか
生活の予定を基準にすると決めやすくなります。腫れても支障の少ない時期を選べるためです。長期休暇の前、就職や転居の前、妊娠を考えている時期の前が候補になります。仕事の繁忙期や大切な予定の直前は避けてください。迷っている段階で画像だけ撮っておくのも一つの方法です。
まとめ
親知らずを抜かないとどうなるかは、生え方で答えが変わります。まっすぐ生えて上下が噛み合い、歯ブラシとフロスが届いている歯であれば、抜かずに置いて問題ありません。将来ブリッジの支えや移植のもと歯として使える可能性もあります。一方、斜めや横向きに生えて手前の歯との間にくさび状の隙間がある歯では、時間は不利に働きます。起こりうる変化は五つです。第一に、手前の第二大臼歯が根元寄りの面から虫歯になります。これが最も多く、かつ最も避けたい結末です。第二に、かぶさった歯ぐきの下で細菌が増え、腫れと痛みを繰り返します。第三に、炎症が続くことで手前の歯の後ろ側の骨が失われ、深い歯周ポケットができます。第四に、埋まったままの歯では袋状の病変が大きくなることがあります。第五に、年齢が上がると骨が硬くなり、抜くときの処置時間と腫れ、回復にかかる日数が増える傾向があります。第一から第四のうち、症状が出るのは第二だけです。残りは静かに進むため、痛みの有無で判断しないでください。受診を決める目安は、年に1回以上腫れる、境目に食べものが詰まる、歯ぐきが半分かぶさっている、3年以上レントゲンを撮っていない、しばらく歯科にかかりにくい予定がある、のいずれかです。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海の方は、腫れていない落ち着いた時期に画像を撮り、方針だけ決めておくことをお勧めします。基準の詳細は
親知らずは抜くべき?抜かなくてよいケースの基準に、親知らず全体の解説は
親知らずの抜歯|抜くべき基準・流れ・費用を解説にまとめています。
参考・出典