高齢者の入れ歯の費用|後期高齢者医療・介護保険はどこまで使えるか

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年9月8日監修:村井亮介(歯科医師・DDS, MSD/日本補綴歯科学会 会員)

高齢の親の入れ歯にいくらかかるのか、公的な制度はどこまで使えるのか。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)でも、ご家族から相談を受けることの多いテーマです。後期高齢者医療制度では窓口負担が1割または2割になり、介護保険は装置の作製そのものには使えません。制度ごとにできることが違うため、このページでは費用と制度の関係を、家族が動きやすい形に整理します。

高齢の方とご家族が歯科医院の受付にいる場面のイラスト

先に押さえておきたい点

  • 75歳以上は後期高齢者医療制度の対象。窓口負担は原則1割、所得により2割または3割
  • 保険の入れ歯の装置代は、1割負担なら数千円の帯に収まることが多い
  • 介護保険は入れ歯の作製には使えない。訪問診療の医療費とは別の制度
  • 通院が難しい場合、訪問での歯科診療を医療保険で受けられる
  • 高額療養費は保険診療が対象。自費の装置は対象外
  • 装置より先に、口の中の状態を整える処置が必要になることが多い
入れ歯の費用の基本は保険の入れ歯はいくらかかる?1〜3割負担別の窓口負担と通院回数の目安にまとめています。ここでは高齢の方に関わる制度の部分に絞ります。 制度ごとに使える範囲を整理します。
制度入れ歯への適用使える範囲
後期高齢者医療制度使える保険の装置・調整・修理。窓口負担は原則1割
高額療養費条件つきで使える保険診療の自己負担が上限を超えた場合。自費は対象外
介護保険装置には使えない訪問での口腔ケア指導などが一部関わる
訪問歯科診療医療保険で受けられる通院が困難な場合。入れ歯の作製・調整も対象
医療費控除使える保険・自費を問わず支払った額を申告できる
※2026年9月時点の一般的な考え方です。負担割合や上限額は制度改定で変わります。

後期高齢者医療制度での負担

75歳になると、それまでの健康保険から後期高齢者医療制度に移ります。65歳以上で一定の障害がある方も、申請により対象になります。 窓口で支払う割合は、原則1割です。一定以上の所得がある方は2割、現役並みの所得がある方は3割となります。 保険で入れ歯を作る場合、装置代の目安は、1割負担であれば部分入れ歯で約1,700〜5,000円、総入れ歯の片顎で約3,500〜5,000円ほどです。上下とも作る場合はその二つ分になります。 ここに初診料、検査、レントゲン、完成前後の調整が加わります。それでも、想像されているより負担は小さいことがほとんどです。 「入れ歯は高いから」と受診をためらっておられるご家族には、まずこの点をお伝えしています。保険で作る限り、装置の費用が生活を圧迫することは多くありません。

介護保険は入れ歯には使えません

ここが最も混同されやすい点です。 介護保険は、介護サービスに使う制度です。入れ歯を作る、調整する、修理するといった治療行為は、医療保険(後期高齢者医療制度を含む)の対象になります。 したがって、要介護認定を受けていても、入れ歯の作製に介護保険の給付が使われることはありません。 一方で、介護保険のサービスの中で、口腔ケアに関わる指導が行われることはあります。施設での食事の支援や、口の清潔を保つ介助といった部分です。装置そのものの費用とは別の話とお考えください。 なお、介護保険サービスの利用料の一部は、条件によって医療費控除の対象になります。歯科の費用とあわせて申告できる場合があるため、確認する価値があります。
保険証と負担割合の証を並べた図

通院が難しい場合

高齢の方の入れ歯で、実際に問題になるのは費用より通院です。 完成までに4〜6回、その後も調整で通う必要があります。付き添うご家族の負担も小さくありません。 通院が困難な状態であれば、訪問での歯科診療を受けられます。自宅や施設で、入れ歯の作製、調整、修理まで対応できます。医療保険が使われるため、窓口負担の割合は通院した場合と同じです。 対象になるのは、病気や障害によって通院が難しい方です。「付き添いが面倒だから」という理由では対象になりません。判断は歯科医師が行います。 内容と費用は訪問歯科診療とは|通院できない家族が自宅で受けられる治療と費用にまとめました。名古屋市の相談窓口は名古屋市の障害者歯科・訪問歯科の相談窓口|どこに聞けばよいかをご覧ください。

装置より先に必要になること

高齢の方の場合、いきなり入れ歯を作れないことがあります。 残っている歯がぐらついている、歯周病が進んでいる、根だけが残っているといった状態では、まずその処置が必要です。土台が動く状態で型を取っても、合う装置にはなりません。 この前処置の分、費用も回数も増えます。ご家族には、この点を先にお伝えしておくようにしています。「入れ歯だけ作ってもらえばいい」と思っていると、話が違うと感じられてしまうためです。 抜歯が必要になった場合、入れ歯を入れられる時期の目安は抜歯後いつから入れ歯・ブリッジを入れられる?治りを待つ期間の目安をご覧ください。歯がない期間の対応は歯がない期間の見た目はどうする?即時義歯・仮の歯という選択にまとめています。 残った歯を抜いて総入れ歯に移る判断は部分入れ歯から総入れ歯にする時期|残った歯を抜く判断の考え方で扱っています。
自宅で訪問歯科診療を受けている場面の図

高額療養費の考え方

医療費が高額になった場合、自己負担に上限を設ける制度があります。 対象は保険診療です。したがって、保険で作る入れ歯の費用は算入されますが、自費の装置は対象になりません。 もっとも、保険の入れ歯だけで上限に達することは、あまりありません。他の病気での入院や手術と同じ月に重なった場合に、意味を持つ制度と考えてください。 内容は高額療養費制度は歯科治療に使える?対象と申請方法にまとめています。 なお、後期高齢者医療制度にも自己負担限度額が設けられており、外来の上限は比較的低く設定されています。1か月に治療が集中した場合は、確認してみてください。

医療費控除は保険・自費を問いません

1年間に支払った医療費は、保険診療でも自費でも、まとめて申告できます。 生計を一にするご家族の分も合算できます。親の治療費を子が支払っている場合、支払った方が申告する形になります。 高齢の方は他の医療機関にもかかっていることが多く、合算すると金額が大きくなります。病院や薬局の領収書も一緒に集めておいてください。 手続きと必要な書類は自費の入れ歯は医療費控除の対象?申告のしかたと必要な書類歯科の医療費控除の対象と申請方法|計算例まで解説をご覧ください。

自費を検討する場合

高齢の方でも、自費の装置を選ばれることはあります。 上あごを覆う床を薄くしたい、食事の温度を感じたいといった希望は、年齢に関わらずあります(総入れ歯にすると味がわかりにくい?上あごの床と味覚・温度の関係)。薄い床を選べる金属床義歯とは|レジン床との違い・費用・向いている人が代表的な選択肢です。 ただ、判断の前に考えていただきたい点があります。 口の中の状態は、年齢とともに変わります。歯ぐきがやせる、残っている歯を失うといった変化が起きると、装置は合わなくなります。将来、修理や増歯ができる設計かどうかを確認しておくと、後の選択肢が広がります(入れ歯に歯を足せる?増歯・修理で対応できる範囲と保険・自費の違い)。 費用の中身は自費の入れ歯の費用の内訳|何にお金がかかっているのかに整理しました。保険で作ってから判断する進め方は途中で保険の入れ歯から自費に変えられる?切り替えの時期と決まりをご覧ください。

家族が確認しておくとよいこと

ご家族が付き添う場合、いくつか把握しておくと話が早く進みます。 一つ目は、負担割合です。保険証や負担割合の証で確認できます。1割か2割かで、支払う額が倍近く変わります。 二つ目は、今の装置がいつ作られたかです。保険での作り直しには、完成からおおむね6か月という制限があります(保険の入れ歯は6か月たたないと作り直せない?ルールと例外の考え方)。 三つ目は、家に古い装置が残っていないかです。予備として使える場合があります。使っていない装置がまた使えるかどうかは入れ歯を使わなくなった・しまい込んでいる|また使える条件と作り直しの判断をご覧ください。 四つ目は、毎日の手入れができているかです。ご本人が難しくなっている場合、介助が必要になります(入れ歯のお手入れ・洗浄方法|NGな洗い方と保管のコツ入れ歯のにおいが気になる|原因と落とし方・洗っても取れないときの見極め)。 口の働きが落ちてきているサインはオーラルフレイルとは|高齢の親の口の衰えチェックと予防口腔機能低下症の検査とは|7項目で調べる内容と保険の扱いにまとめています。名古屋市の高齢者向け歯科健診は名古屋市の高齢者向け歯科健診とオーラルフレイル対策|70・75・80歳の無料検診と相談窓口をご覧ください。

本人が受診を嫌がるとき

「本人が行きたがらない」というご相談も少なくありません。 理由を聞いてみると、費用の心配、迷惑をかけたくないという気持ち、そして「もう年だから」という諦めが混じっていることが多くあります。 このとき、「治療しよう」と説得するより、「食べたいものが食べられるようにしよう」と伝えるほうが届きます。目的が具体的であるほど、動機になります。 また、いきなり治療の話にせず、まず健診として一度受診するという形も取りやすくなります。名古屋市には年齢に応じた歯科健診の制度があり、これを口実にすることもできます。 通院そのものが負担であれば、訪問での診療という選択肢を先に伝えてください。「家に来てもらえる」と分かると、受け入れやすくなる方もいらっしゃいます。

付き添う家族の負担を減らす工夫

通院の付き添いが続くと、ご家族の負担も積み重なります。いくつか、実際に効く工夫があります。 一つ目は、来院の間隔を先に伝えておくことです。装置を作る工程は技工所での作業を挟むため、1〜2週間ほど空きます。予定が読めれば、仕事の調整もしやすくなります。 二つ目は、同じ日に家族分もまとめて予約することです。ご自身の定期検診と重ねられれば、通院の回数そのものが減ります。 三つ目は、装置を作る時期を選ぶことです。急ぎでなければ、通いやすい季節や、仕事の落ち着く時期に合わせることもできます。ただし、噛めない期間を長く放置するのは避けてください。 四つ目は、通院が難しくなってきたら早めに訪問診療の相談をすることです。通えなくなってからではなく、負担を感じ始めた段階で選択肢を知っておくと、判断に余裕が生まれます。

施設に入っている場合

介護施設に入所されている方の入れ歯について、ご家族から相談を受けることがあります。 多くの施設では、協力歯科医療機関が定められており、定期的に歯科医師が訪問しています。まずは施設の職員に、歯科の相談ができる体制があるかを確認してください。 そのうえで、家族として伝えておきたいのは、入所前の状況です。どこの医院で作ったか、いつ作ったか、予備の装置があるか。これらが分かると、対応が早くなります。 施設では、入れ歯の紛失が起きることがあります。食事のあとに包んでそのまま捨ててしまう、洗面所に置き忘れるといった経緯です。装置に名前を入れておく方法があり、依頼すれば対応してもらえることがあります。 また、認知症が進むと、装置を入れることを嫌がる場面が出てきます。無理に使わせることが目的ではなく、食べられる形を保つことが目的です。装置を使わずに食べられる形に変えていく判断もあります。 このあたりは、ご本人の状態と、食事の様子を見ながらの判断になります。訪問での診療を受けている場合、歯科医師と施設の職員とで情報を共有してもらってください。

費用を心配して受診を先延ばしにしないでください

最後にお伝えしたいことがあります。 高齢のご家族の受診が遅れる理由として、費用の心配が挙がることがあります。しかし、これまで見てきたとおり、保険の入れ歯の費用は1割負担であれば数千円の帯です。 先延ばしによって失われるもののほうが大きくなります。噛めない期間が続けば、食べられるものが偏り、体重が落ちます。柔らかいものばかりになると、噛む力はさらに落ちます。 食事量の低下は、全身の状態に直結します。口の働きが落ちることが、生活の範囲を狭める入口になるという指摘もあります(オーラルフレイルとは|高齢の親の口の衰えチェックと予防)。 「食べにくそうにしている」「食事に時間がかかるようになった」「むせることが増えた」。こうした変化に気づいたら、費用の心配より先に、一度診てもらってください。 装置が原因であれば、調整で改善することが少なくありません(入れ歯が合わない・痛い|原因と調整・我慢しないための知識)。 名古屋市にお住まいの方の後期高齢者医療の窓口負担の決まり方、資格確認書の使い方、高額療養費の申請先については名古屋市の後期高齢者医療と歯科の窓口負担|1割・2割・3割の決まり方、資格確認書、高額療養費の申請先【名古屋市】で詳しく整理しています。

よくある質問

75歳以上の入れ歯はいくらかかりますか

後期高齢者医療制度の1割負担であれば、保険の装置代の目安は部分入れ歯で約1,700〜5,000円、総入れ歯の片顎で約3,500〜5,000円ほどです。ここに初診料、検査、調整が加わります。所得により2割または3割負担となる方もいます。2026年9月時点の目安としてご覧ください。

介護保険で入れ歯を作れますか

作れません。入れ歯の作製、調整、修理は治療行為にあたり、医療保険(後期高齢者医療制度を含む)の対象です。要介護認定を受けていても、装置の費用に介護保険の給付が使われることはありません。介護保険が関わるのは、施設や在宅での口腔ケアの支援など、治療とは別の部分になります。

通院できない場合はどうすればよいですか

病気や障害で通院が困難な場合、訪問での歯科診療を受けられます。自宅や施設で、入れ歯の作製から調整、修理まで対応できます。医療保険が使われるため、窓口負担の割合は通院した場合と同じです。ただし付き添いが難しいという理由だけでは対象にならず、対象になるかどうかの判断は歯科医師が行います。

高額療養費は入れ歯にも使えますか

保険診療が対象なので、保険で作る入れ歯の費用は算入されます。ただし保険の入れ歯だけで上限に達することはあまりありません。他の入院や手術と同じ月に重なった場合に意味を持つ制度とお考えください。自費の装置は対象外です。後期高齢者医療制度にも外来の自己負担限度額が設けられています。

親の治療費を子が払った場合も控除できますか

できます。生計を一にしていれば、同居していなくても合算して申告できます。実際に支払った方が申告するのが原則です。高齢の方は他の医療機関にもかかっていることが多く、病院や薬局の領収書も集めると金額がまとまります。所得の高い方が申告するほうが軽減額は大きくなります。

すぐに入れ歯を作ってもらえますか

口の中の状態によります。残っている歯がぐらついている、歯周病が進んでいる、根だけが残っているといった場合は、先にその処置が必要です。土台が動く状態で型を取っても合う装置になりません。前処置の分だけ費用と回数が増えることを、あらかじめ見込んでおいてください。

高齢でも自費の入れ歯を選ぶ意味はありますか

床を薄くしたい、食事の温度を感じたいといった希望は年齢に関わらずあります。ただし口の中の状態は年齢とともに変わり、歯ぐきがやせたり残った歯を失ったりすると装置は合わなくなります。将来の修理や増歯ができる設計かどうかを、作る前に確認しておいてください。この一言で数年後の選択肢が変わります。

家族として何を準備すればよいですか

負担割合が分かるもの、今使っている入れ歯、作られた時期が分かる領収書や診察券、家にある古い装置、そしてお薬手帳を用意してください。あわせて、毎日の手入れがご本人でできているかを見ておくと、相談がかみ合います。食事でむせる、話しにくい、食べる量が減ったといった変化も伝えてください。

まとめ

高齢の方の入れ歯の費用は、想像されているほど大きくないことがほとんどです。75歳以上は後期高齢者医療制度の対象となり、窓口負担は原則1割、所得により2割または3割になります。保険で作る場合、1割負担なら装置代は数千円の帯に収まることが多く、ここに初診料、検査、調整が加わる形です。制度の関係で混同されやすいのが介護保険です。入れ歯の作製・調整・修理は治療行為にあたるため、医療保険の対象であり、要介護認定を受けていても介護保険の給付が装置に使われることはありません。介護保険が関わるのは口腔ケアの支援など別の部分です。実際に問題になるのは、費用より通院のほうです。完成までに4〜6回、その後も調整で通う必要があり、付き添うご家族の負担も小さくありません。病気や障害で通院が困難であれば、訪問での歯科診療を医療保険で受けられます。自宅や施設で作製から調整まで対応でき、窓口負担の割合は通院時と同じです。もう一つお伝えしておきたいのは、装置より先に必要になる処置があることです。ぐらついた歯や進んだ歯周病を残したまま型を取っても、合う装置にはなりません。前処置の分だけ回数と費用が増えることを、あらかじめ見込んでおいてください。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海で高齢のご家族の入れ歯を検討されている方は、訪問歯科診療とは|通院できない家族が自宅で受けられる治療と費用もあわせてご覧ください。制度の内容は改定されるため、最新の扱いは受診先や保険の窓口でご確認ください。 前後の流れもあわせて把握したい場合は 保険の入れ歯と自費の入れ歯の違いをご覧ください。

参考・出典

  • 厚生労働省「後期高齢者医療制度の概要」
  • 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
  • 厚生労働省「介護保険制度の概要」
  • 日本老年歯科医学会「高齢者の口腔機能に関する見解」
  • 日本補綴歯科学会「有床義歯の診療指針」

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

→ 監修者・編集方針について