抜歯前に伝えるべき薬と持病|抗血栓薬・骨粗しょう症治療薬の注意

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年9月5日監修:村井亮介(歯科医師・DDS, MSD/日本補綴歯科学会 会員)

親知らずの抜歯前に、どの薬と持病を伝えればよいのか。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海の方から、内科で出ている薬は歯科に関係あるのかというご質問をいただきます。関係します。とくに血液をさらさらにする薬と、骨粗しょう症の治療薬は、抜歯の進め方そのものに関わります。伝えていないと、止血や傷の治りで思わぬ経過をたどることがあります。このページでは、必ず伝えるべき薬と持病、そして伝え方を整理します。

開かれたお薬手帳の横に二枚の錠剤シートが置かれた落ち着いたイラスト

必ず伝えること

  • 血液をさらさらにする薬(抗血小板薬・抗凝固薬)
  • 骨粗しょう症の治療薬(内服・注射のどちらも)
  • 糖尿病、高血圧、心臓の病気、腎臓の病気
  • これまでに薬や麻酔で具合が悪くなった経験
  • ステロイド、免疫を抑える薬、がんの治療中であること
  • 妊娠している、その可能性がある、授乳中であること
抜歯前の準備全般は親知らず抜歯の前日・当日の準備|食事・睡眠・服装・持ち物にまとめています。ここでは薬と持病の申告に絞って説明します。 とくに影響の大きいものを整理します。
薬・持病関わること抜歯での対応
抗血小板薬・抗凝固薬止血のしにくさ原則は服用継続。止血処置を厚くする
骨粗しょう症治療薬抜歯後の骨の治り種類と使用期間を確認して計画
糖尿病感染の起こりやすさ血糖の管理状態を確認
高血圧・心疾患処置中の血圧変動麻酔薬の種類と量を調整
ステロイド・免疫抑制薬治りの遅れ・感染主治医と情報を共有
※自己判断で薬を中止しないでください。判断は処方している医師が行います。

血液をさらさらにする薬

心筋梗塞や脳梗塞の予防、心房細動の治療などで処方される薬です。抗血小板薬と抗凝固薬に大きく分かれます。 これらを飲んでいると、抜歯後の出血が止まるまでに時間がかかります。ただし、多くの場合は薬を止めずに抜歯できます。 以前は「抜歯の前に一時中止する」という考え方がありましたが、現在は原則として継続したまま行うのが標準です。中止することで血の塊ができ、脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクのほうが問題になるためです。 歯科側の対応は、止血の処置を厚くすることです。傷口を縫って閉じる、止血材を入れる、ガーゼを噛む時間を長くとる、といった方法を組み合わせます。処置後にしばらく院内で待ち、止血を確認してから帰宅していただくこともあります。 大切なのは、自己判断で止めないことです。「歯を抜くから念のため数日やめておこう」という判断は危険です。中止が必要かどうかは、処方している医師が決めます。 出血が続く場合の対処は抜歯後の出血が止まらないときの対処|正常な範囲と受診が必要なサインをご覧ください。
丸みのある管として描かれた血管の断面図に小さな粒が浮かんでいる図

骨粗しょう症の治療薬

骨を強くするために使われる薬のうち、骨の吸収を抑えるタイプのものは、抜歯後の骨の治りに関わります。 内服の薬だけでなく、月に一度や年に一度の注射も含まれます。「注射は薬ではない」と考えて申告されない方がいますが、必ず伝えてください。整形外科や内科で受けている場合も同様です。 これらの薬を使っている方では、抜歯後にあごの骨の治りが遅れることがあります。頻度としてはまれですが、起きた場合は治療が長引きます。 そのため、薬の名前、使用期間、投与の方法(飲み薬か注射か)を確認したうえで計画を立てます。場合によっては、処方している医師に問い合わせて情報を共有します。 これも自己判断で中止しないでください。骨折の予防という本来の目的が損なわれます。抜歯の可否と時期は、両方の情報をそろえてから決めます。 がんの治療で同じ系統の薬を使っている場合は、より慎重な対応が必要です。この場合は大学病院や口腔外科での対応になることがあります。紹介の流れは親知らず抜歯で大学病院・口腔外科を紹介されるのはどんなとき?にまとめています。

糖尿病・高血圧・心臓の病気

糖尿病がある場合、確認されるのは血糖の管理状態です。管理ができていれば、通常どおり抜歯できます。管理が良くない状態では、傷口の感染が起こりやすくなるため、時期を調整することがあります。直近の検査値が分かるものがあれば持参してください。 高血圧の方では、処置中の血圧の変動に注意します。麻酔薬に含まれる血管を収縮させる成分は、血圧を上げる方向に働くことがあるため、種類や量を調整します。当日の血圧を測ってから処置を始める医院もあります。 心臓の病気がある方は、病名と現在の状態を伝えてください。心臓の弁に人工物が入っている方、以前に感染性心内膜炎にかかったことがある方は、処置前に抗菌薬を飲むことがあります。 これらの持病と歯科麻酔の関係は持病や薬があっても歯科麻酔は受けられる?高血圧・糖尿病・抗血栓薬の注意点で詳しく扱っています。麻酔の種類の選び方は親知らず抜歯の麻酔|局所麻酔・静脈内鎮静法の違いと選び方をご覧ください。
丸みのあるクリップボードとペンが置かれた相談用のデスクのイラスト

過去に薬や麻酔で困ったことがある場合

これも重要な情報です。 薬を飲んで発疹が出た、息苦しくなった、気分が悪くなった。麻酔をして動悸がした、気を失いそうになった。こうした経験は、そのときの状況とあわせて伝えてください。 どの薬だったか分からない場合でも、「痛み止めで胃が痛くなった」「抗菌薬で下痢をした」といった内容だけでも役に立ちます。処方する薬の種類を変えられます。 なお、麻酔の注射で気分が悪くなった経験がある方の多くは、薬そのものではなく緊張による一時的な反応です。この場合も伝えておけば、体位や声かけを工夫して対応できます。

妊娠中・授乳中の場合

妊娠している方、その可能性がある方は必ず伝えてください。 時期によって、処置ができるかどうか、使える薬が変わります。安定期であれば処置は可能ですが、急を要さない抜歯は出産後に延期することが一般的です。 授乳中の場合も、処方する薬の選択に関わります。授乳の時間との関係を含めて相談できます。 詳しくは妊娠中・妊娠前の親知らず|生えてきた・痛いときの対処と抜歯のタイミングをご覧ください。

伝え方のコツ

いちばん確実なのは、お薬手帳を持参することです。薬の名前を正確に覚えている必要がなくなります。 手帳がない場合は、薬局でもらう説明書きか、薬のシートそのものを持ってきてください。スマートフォンで撮った写真でもかまいません。 サプリメントや市販薬も伝えてください。一部は血液の固まりやすさに影響します。健康食品として飲んでいるものも対象です。 問診票に書いた内容は、診察のときに口頭でももう一度伝えると確実です。書き忘れに気づくこともあります。 年齢によって注意点が変わる部分は親知らずを抜くなら何歳までがよい?年齢で変わる難易度と回復にまとめています。当日の所要時間は親知らず抜歯にかかる時間|難易度別の目安と予約の取り方を、複数本ある場合の分け方は親知らずを抜く順番と回数|4本まとめて・片側ずつの決め方を参考にしてください。 名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海で、内科と歯科を別の医院にかかっている方は、両方の情報がそろってから抜歯の日を決めると安全に進められます。

抜歯後に処方される薬との関係

現在飲んでいる薬は、抜歯後に処方される薬の選択にも関わります。 抜歯後には、痛み止めと抗菌薬が処方されることが一般的です。痛み止めのなかには、胃に負担がかかるもの、腎臓の働きに影響するもの、ぜんそくのある方で症状を誘発することがあるものがあります。 普段から市販の痛み止めを常用している方は、その種類を伝えてください。同じ系統の薬が重なると、効果ではなく副作用のほうが強く出ることがあります。 抗菌薬についても、過去に下痢や発疹が出たことがあれば申告してください。種類を変えて処方できます。 また、飲み合わせに注意が必要な組み合わせもあります。処方箋を持って薬局に行った際、お薬手帳を出せば薬剤師の側でも確認してもらえます。抜歯後の薬の費用は親知らず抜歯の薬代・再診料はいくら?抜歯当日以外にかかる費用にまとめています。

内科の主治医への確認が必要になる場合

歯科から内科の主治医へ問い合わせが行われることがあります。 問い合わせの内容は、たとえば血液の固まりやすさを示す検査値、骨粗しょう症の薬の投与開始時期と現在の状況、心臓の病気の現在の状態、血糖の管理状況などです。 この確認には数日から一、二週間かかることがあります。抜歯を急いでいる場合でも、この工程は省けません。腫れて痛みがある場合は、先に症状を抑える処置を受けながら待つことになります。 内科の受診が近いようであれば、その際に「歯科で抜歯を予定している」と伝え、必要な情報を書いてもらうと早く進みます。診療情報提供書という形で渡してもらえることもあります。 大学病院や口腔外科で対応することになる場合もあります。判断の基準は親知らず抜歯で大学病院・口腔外科を紹介されるのはどんなとき?を、入院を伴う場合は親知らず抜歯で入院・全身麻酔になるのは?日帰りとの違いをご覧ください。

申告を忘れたことに後から気づいたとき

問診票に書き忘れた、伝えるのを忘れたということに後から気づく場合があります。 抜歯の前であれば、すぐに医院へ連絡してください。日程の変更が必要になることもありますが、伝えないまま処置を受けるより安全です。 処置の当日に思い出した場合も、始まる前であれば間に合います。処置室に入ってからでも、遠慮せずに伝えてください。 抜歯が終わったあとに気づいた場合も、連絡してください。とくに血液をさらさらにする薬と骨粗しょう症の治療薬については、その後の観察の仕方が変わることがあります。出血が続く場合の対処は抜歯後の出血が止まらないときの対処|正常な範囲と受診が必要なサインをご覧ください。 なお、薬が定期的に変わる方は、抜歯の予定が決まった時点での内容と、当日の内容が違っていることがあります。当日の朝にもう一度確認してください。準備の全体像は抜歯前日と当日の過ごし方に、所要時間は親知らず抜歯にかかる時間|難易度別の目安と予約の取り方にまとめています。

申告が抜歯以外の処置にも関わる場面

薬と持病の情報は、抜歯だけでなく他の歯科処置にも関わります。 歯石を取る処置や、歯周病の基本治療でも歯ぐきから出血します。血液をさらさらにする薬を飲んでいる方では、この出血が止まりにくくなることがあります。処置の範囲を分けて行うといった調整ができます。 インプラントや歯ぐきの手術など、骨に関わる処置では、骨粗しょう症の治療薬の情報が欠かせません。抜歯と同じ考え方で、薬の種類と使用期間を確認したうえで計画が立てられます。 また、心臓の弁に人工物が入っている方などでは、出血を伴う処置の前に抗菌薬を飲むことがあります。これは抜歯に限った話ではありません。 このため、薬や持病の情報は「抜歯のときだけ伝えるもの」ではなく、その医院で継続して共有しておくものと考えてください。薬が変わったときは、次の受診時に新しいお薬手帳を見せていただければ十分です。 歯周病の治療については歯周病の治療の流れとメンテナンス|SPTで再発を防ぐ、麻酔と持病の関係は持病や薬があっても歯科麻酔は受けられる?高血圧・糖尿病・抗血栓薬の注意点をご覧ください。

問診票に書ききれないとき

問診票の記入欄は限られており、薬の数が多い方はすべて書ききれないことがあります。 このときは、無理に書き込まずお薬手帳を提出してください。歯科側で内容を確認し、必要な情報を控えます。写真しかない場合も、その場で見せていただければ十分です。 飲んでいる薬が多い方ほど、内科の主治医と情報を共有する必要が出てきます。手帳があれば、どの医療機関から何が出ているかも分かるため、問い合わせ先の判断も早くなります。 また、市販薬やサプリメントは問診票に欄がないことがあります。この場合は、診察の場で口頭で伝えてください。血液の固まりやすさに影響するものがあります。 そして、以前に書いた内容と変わっている場合も申告してください。前回の受診から薬が増えた、減った、種類が変わったという変化は、歯科側では分かりません。 抜歯当日の準備は当日の持ち物と服装の準備、費用の内訳は親知らず抜歯の当日はいくら持っていけばよい?会計の内訳と支払い方法にまとめています。

よくある質問

血液をさらさらにする薬を飲んでいても親知らずを抜けますか

多くの場合は薬を止めずに抜けます。以前は一時中止する考え方がありましたが、現在は継続したまま行うのが標準です。中止すると血の塊ができ、脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクのほうが問題になるためです。歯科側は縫合や止血材を使って止血処置を厚くして対応します。処置後にしばらく院内で待ち、止血を確認してから帰宅していただくこともあります。

抜歯の前に薬を自分で止めてもよいですか

止めないでください。中止が必要かどうかは、その薬を処方している医師が判断します。歯科の処置のために自己判断で中止すると、本来防いでいた病気のリスクが上がります。飲んでいることを伝えていただければ、歯科側で処置の方法を調整できます。縫合や止血材を使うことで、服用を続けたまま安全に処置を進められます。

骨粗しょう症の注射も伝える必要がありますか

必ず伝えてください。月に一度や年に一度の注射も対象です。骨の吸収を抑えるタイプの薬は、抜歯後のあごの骨の治りに関わります。頻度はまれですが、起きた場合は治療が長引きます。薬の名前、使用期間、飲み薬か注射かを確認したうえで計画を立てます。整形外科や内科で受けている場合も、同じように申告してください。

糖尿病があると親知らずは抜けませんか

抜けます。確認されるのは血糖の管理状態です。管理ができていれば通常どおり処置できます。管理が良くない状態では傷口の感染が起こりやすくなるため、時期を調整することがあります。直近の検査値が分かるものがあれば持参してください。管理が良くない状態では、時期を調整してから処置を行うことがあります。

高血圧の薬を飲んでいる場合の注意はありますか

処置中の血圧の変動に注意します。麻酔薬に含まれる血管を収縮させる成分は血圧を上げる方向に働くため、種類や量を調整します。当日の血圧を測ってから処置を始める医院もあります。薬は普段どおり飲んできてください。止める必要はありません。薬は普段どおり飲んできてください。止める必要はありません。

お薬手帳がない場合はどうすればよいですか

薬局でもらう説明書きか、薬のシートそのものを持参してください。スマートフォンで撮った写真でもかまいません。薬の名前が分かることが重要です。名前が分からない場合でも、何の病気で処方されているかを伝えていただければ、そこから確認を進められます。サプリメントや市販の痛み止めについても、同じように伝えてください。

サプリメントも伝えたほうがよいですか

伝えてください。一部のサプリメントや健康食品は、血液の固まりやすさに影響します。市販の痛み止めを常用している場合も同様です。処方薬だけが対象と考えず、日常的に口にしているものはひととおり申告していただくほうが安全です。問診票に書き忘れた場合は、診察の場で口頭でも伝えると確実です。

過去に麻酔で気分が悪くなったことがある場合はどうすればよいですか

そのときの状況とあわせて伝えてください。多くの場合、薬そのものではなく緊張による一時的な反応です。伝えておけば、体位を工夫する、声をかけながら進める、鎮静を併用するといった対応ができます。薬による反応が疑われる場合は、種類を変えて対応します。どの薬だったか分からない場合でも、そのときの症状だけで役に立ちます。

まとめ

親知らずの抜歯前に伝えるべき情報のうち、とくに重要なのが二つの薬です。ひとつは血液をさらさらにする薬で、抗血小板薬と抗凝固薬が含まれます。これらを飲んでいると出血が止まるまでに時間がかかりますが、多くの場合は薬を止めずに抜歯できます。以前は一時中止する考え方がありましたが、中止によって血の塊ができ脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクのほうが問題になるため、現在は継続が標準です。歯科側は縫合や止血材で止血処置を厚くして対応します。もうひとつは骨粗しょう症の治療薬です。骨の吸収を抑えるタイプの薬は、抜歯後のあごの骨の治りに関わります。内服だけでなく、月に一度や年に一度の注射も対象です。注射を薬と考えずに申告されない方がいるため、意識して伝えてください。どちらの薬も、自己判断で中止しないことが重要です。中止の要否は処方している医師が決めます。このほか、糖尿病では血糖の管理状態、高血圧と心臓の病気では処置中の血圧変動と抗菌薬の要否、ステロイドや免疫を抑える薬では治りの遅れと感染が確認されます。過去に薬や麻酔で具合が悪くなった経験、妊娠している可能性、授乳中であることも申告してください。伝え方でいちばん確実なのは、お薬手帳の持参です。手帳がなければ薬局の説明書きか薬のシート、スマートフォンで撮った写真でもかまいません。サプリメントや市販薬も対象です。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海で内科と歯科を別の医院にかかっている方は、両方の情報がそろってから抜歯の日を決めると安全に進められます。当日の準備は抜歯当日までにそろえておくもの、全体の流れは親知らず抜歯の流れと術後の痛み・腫れの経過にまとめています。

参考・出典

  • 日本有病者歯科医療学会ほか「抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン」
  • 日本骨代謝学会ほか「骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理」
  • 日本歯科麻酔学会「歯科診療における局所麻酔の指針」
  • 日本循環器学会「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

→ 監修者・編集方針について