対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。
歯根吸収(しこんきゅうしゅう)とは、歯の根が内側または外側から溶けていく状態です。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)でも、痛みがまったくないまま定期検診のレントゲンで偶然見つかる方が多く、「歯が溶けている」と言われて驚いてお越しになります。虫歯のように細菌が歯を溶かすのではなく、体の細胞が自分の歯の根を吸収してしまう現象で、進み方も対処も虫歯とはまったく異なります。このページでは、内部から起きる場合と外側から起きる場合の違い、原因、見つかり方、そして進行を止められる場合と止められない場合の分かれ目を整理します。根の治療のやり直し全般については<a href="/treatment/sai-rootcanal/">再根管治療とは|やり直しになる原因と成功率</a>をあわせてご覧ください。

先に結論
- 歯根吸収は細菌が溶かすのではなく、体の細胞が根の組織を吸収して起こる
- 初期は自覚症状がなく、レントゲンや歯科用CTで偶然見つかることがほとんど
- 根の内側から起きる内部吸収は、早期であれば根管治療で進行が止まる見込みがある
- 外側から起きる外部吸収は、原因によって止められるものと止められないものがある
- 骨と直接くっついてしまう置換性吸収だけは、現在のところ進行を止める方法がない
- 共通して重要なのは、早く見つけて原因を取り除くことと、定期的に画像で追うこと
タイプ別の特徴と見通し
歯根吸収はひとくくりにできません。どこから溶けているか、何が引き金かで、治療の方向がまったく変わります。| タイプ | どこで何が起きるか | 治療の見通し |
|---|---|---|
| 内部吸収 | 根の内側が風船状に広がって薄くなる | 早期なら根管治療で止まりやすい |
| 外部吸収(炎症性) | 根の外側が根の先や側面から溶ける | 原因を除けば止まることが多い |
| 外部吸収(頸部) | 歯ぐきの際から根の中へ入り込む | 範囲が狭ければ修復で対応できる |
| 外部吸収(置換性) | 根が骨に置き換わり歯が動かなくなる | 止める方法がなく長期で失われる |
| 生理的吸収 | 乳歯の根が生え替わりのため溶ける | 正常な現象で治療は必要ない |
歯根吸収で根の中で起きていること
歯の根の表面と、根管(こんかん:根の中を通る神経と血管の管)の内側は、それぞれ薄い層で守られています。この層が壊れると、その下の象牙質(ぞうげしつ:歯の主体をつくる硬い組織)がむき出しになり、体の側からは「吸収してよい組織」と認識されてしまいます。 そこに破歯細胞(はしさいぼう)という、硬い組織を溶かす働きを持つ細胞が集まり、根を少しずつ吸収していきます。骨が古くなった部分を溶かして作り替えるのと同じ仕組みが、歯の根に対して起きている状態です。 重要なのは、この現象が進むためには「守る層が壊れたこと」と「吸収を続けさせる刺激」の二つが必要だという点です。刺激とは、根の中の細菌感染、噛む力や矯正の力、埋まっている歯からの圧迫などを指します。したがって、この刺激を取り除けるかどうかが、進行を止められるかどうかを決めます。内部吸収と外部吸収はどう違うか
内部吸収は、根管の内側から外へ向かって広がります。神経が生きている歯で、その一部だけが慢性的な炎症を起こしている場合に生じやすく、レントゲンでは根管の一部が丸く膨らんだように写ります。 外部吸収は、根の外側から内側に向かって進みます。根の先が短くなる、側面にくぼみができる、歯ぐきの際で根が削れるなど、現れ方は原因によって異なります。 見分けは画像で行いますが、二次元のレントゲンだけでは重なりのために判別が難しいことがあります。どの方向からどこまで進んでいるかを確認するには、立体的に撮影できる歯科用CTが役立ちます。撮影の目的については根管治療で歯科用CTを撮るのはなぜ?レントゲンとの違いと分かることで詳しく説明しています。 判別が大切な理由は、治療の入り口が逆になるからです。内部吸収であれば根管の中から処置を始めますが、外部吸収であれば根の外側の問題に手を届かせる必要があり、歯ぐきを開く処置が必要になる場合もあります。入り口を誤ると、時間と費用をかけても吸収が止まりません。 なお、内部吸収は神経が生きている歯で起こり、外部吸収の多くは神経が死んでいる歯や強い力を受けた歯で起こるという傾向があります。ただし例外もあるため、神経の状態を調べる検査と画像を組み合わせて判断します。診断のために行う検査
歯根吸収が疑われたとき、当院では次の順で確認していきます。どれか一つで決めるのではなく、複数の結果を突き合わせることが判断の精度を上げます。- 神経の生死の検査:冷たい刺激や電気に反応するかを確認する。反応があれば内部吸収、なければ感染由来の外部吸収を疑う手がかりになる
- 打診と触診:軽く叩いたときの音と響き方を左右で比べる。金属的な高い音は置換性吸収を疑う所見
- 動揺度の確認:通常より動く場合は支えの喪失、まったく動かない場合は骨との癒着を疑う
- 歯周ポケットの測定:歯ぐきの際の吸収では、一点だけ深いポケットが見つかることがある
- 角度を変えたレントゲン:位置をずらして2枚以上撮ると、内側か外側かの判別がつくことがある
- 歯科用CT:範囲と深さ、根の壁がどれだけ残っているかを立体的に確認する
歯根吸収が起こる主な原因
原因は一つとは限らず、複数が重なっていることもあります。- 外傷:転倒やぶつけた衝撃で歯が強く動くと、根の表面の層が傷つく。数か月から数年遅れて現れることがある
- 根の中の細菌感染:神経が死んで感染が起きると、根の先の周囲で吸収が進む
- 矯正の力:長期間の持続的な力で根の先が短くなることがある。多くはわずかで問題にならない
- 埋まっている歯の圧迫:親知らずや埋伏歯が隣の歯の根を押し続ける
- 歯ぎしり・食いしばり:強い力が繰り返し加わる
- 過去の再植や移植:一度抜いて戻した歯では置換性吸収が起こりやすい
- 原因が特定できない場合:検査をしても引き金が分からないことも実際にある

自覚症状が出にくく偶然見つかることが多い
歯根吸収は、進行しても痛みが出ないことが珍しくありません。根の内部や外側で静かに進むため、患者さんが気づく手がかりが少ないのです。 それでも、次のような変化が出ることがあります。- 歯の色が内側からピンクがかって見える(内部吸収で血管が透けることがある)
- 歯ぐきの際に穴のような欠けができ、そこから出血しやすい
- 噛んだときに一部だけ違和感がある
- 歯が少しずつ動いてきた、または逆にまったく動かなくなった
- 叩いたときの音が、ほかの歯と違って高く硬く響く
治せる場合の治療の進め方
進行を止められるかどうかは、吸収のタイプと、原因の刺激を取り除けるかで決まります。 内部吸収では、原因である根の中の炎症組織を除去することが治療になります。根管治療で内部を清掃し、吸収で不規則に広がった空間まで薬剤を届かせ、緊密に封鎖します。広がった空間は器具が届きにくいため、洗浄液を十分に作用させることが要になります。薬液の役割は根管の中はどう洗う?洗浄・消毒に使う薬と貼薬の役割で説明しています。 封鎖には、複雑な形にも流し込めて硬化する材料が選ばれます。材料ごとの性質は根管充填とは|根の中に薬を詰める処置の目的と使う材料にまとめました。吸収によって根の壁が薄くなり、穴が開いてしまっている場合には、封鎖の方法が変わります。この状況は根管治療で根に穴が開く(穿孔)とは|起こる原因と封鎖の方法と共通する対応になります。 外部吸収のうち炎症性のものは、根の中の感染が引き金です。この場合も根管治療が中心で、感染を断つことで吸収が止まることが期待できます。根の先に病変がある場合の考え方は歯茎から膿が出る・根の先に膿|根尖病変の原因と治療をご参照ください。 歯ぐきの際から入り込む頸部の外部吸収は、範囲が限られていれば、外側から吸収した部分を除去して樹脂などで修復します。範囲が根の深くまで及ぶと、歯ぐきの下で確実に処置することが難しくなり、保存が困難になります。細部の確認には拡大視野が有効で、マイクロスコープを使う根管治療|精密治療の意味と費用が役立つ場面です。 費用の考え方は、行う処置の内容によって変わります。根管治療として保険の範囲で進める場合と、材料や器材を選んで自費で一貫して行う場合があり、同じ歯の一連の治療では保険と自費を混ぜることはできません。自費で根の治療を行った歯は、その後の土台と被せ物も自費になります。金額の目安と考え方は歯科の保険診療と自費診療の違いをわかりやすく解説をご覧ください。年間の負担が大きくなる場合は歯科の医療費控除の対象と申請方法|計算例まで解説も確認しておくと安心です。 根の中からの処置で届かない位置にある場合は、外科的に到達する方法が検討されます。根の先を切除する方法は歯根端切除術とは|根管治療で治らないときの外科的選択肢、一度抜いて口の外で処置してから戻す方法は意図的再植とは|再根管治療でも治らないときに歯を残す外科処置で詳しく扱っています。ただし再植は置換性吸収のきっかけにもなりうるため、当院では利点と危険性を並べてご説明したうえで判断していただいています。進行が止められない場合の考え方
置換性吸収では、根が骨に置き換わっていくため、原因を取り除いても進行は続きます。年単位でゆっくり進むことが多く、すぐに抜歯が必要になるわけではありません。 この場合に大切なのは、その歯をいつまで使うかという見通しを持ち、失ったあとの計画を早めに立てておくことです。特に成長期のお子さんでは、骨の成長との関係で歯ぐきの位置がずれてくることがあるため、専門的な判断が必要になります。 吸収が進んで歯を支える構造が失われた場合の見極めは、根管治療で治らない歯は抜くしかない?残せる限界の見極めと抜歯後の選択肢と同じ考え方で行います。抜歯となった場合の補い方は歯を失ったときの選択肢|入れ歯・ブリッジ・インプラント比較をご覧ください。 なお、根にひびが入っている場合も「治らない」という点で似ていますが、原因も画像所見も別物です。見分けは歯根破折(歯の根が割れる)とは|症状の見分け方と抜歯になる条件で扱っています。治療の失敗と混同されやすい点は根管治療の失敗のサイン|治らない・再発するときの選択肢もあわせてご確認ください。