親知らずを分割して抜く・骨を削るとは|難しい抜歯の手順と体への負担

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年9月9日監修:村井亮介(歯科医師・DDS, MSD/日本補綴歯科学会 会員)

親知らずの抜歯で「歯を分割します」「少し骨を削ります」と説明され、想像がつかずに不安になる方がいます。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)でも、横向きに生えた親知らずでは珍しくない方法です。乱暴に聞こえる言葉ですが、実際には体への負担を減らすために選ばれる手順です。このページでは、なぜ分割するのか、どこまで骨を削るのか、当日は何が起きるのかを順を追って説明します。

親知らずを器具で二つに分けて取り出す手順を示した図

先に押さえておきたい点

  • 分割は「歯を壊す」のではなく、通り道に合わせて小さくして出す方法
  • そのまま引き抜くほうが、かえって骨を大きく傷めることがある
  • 削るのは歯を覆っている部分の骨で、あごの骨全体ではない
  • 麻酔が効いていれば痛みはない。感じるのは振動と音
  • 手順が増えるぶん、腫れは出やすい傾向がある
  • 保険が適用され、費用は生え方の区分で決まる
抜歯全体の流れと術後の経過は親知らず抜歯の流れと術後の痛み・腫れの経過にまとめています。ここでは難しい抜歯で行われる手順に絞って解説します。 生え方によって、必要になる手順は段階的に変わります。
段階行うことあてはまる生え方
そのまま抜く器具をかけて脱臼させ、取り出すまっすぐ生え、頭が全部出ている
歯ぐきを開く切開して歯の頭を見えるようにする歯ぐきが半分かぶっている
骨を削る歯を覆っている骨を一部取り除く骨の中に埋まっている
歯を分割する頭と根を分け、小さくして出す横向き・手前の歯に引っかかる
※実際にはこれらが組み合わさります。切開だけで済むこともあれば、切開・骨削除・分割のすべてを行うこともあります。

なぜわざわざ分割するのか

理由は単純です。そのままの形では出口を通れないからです。 横向きに生えた親知らずは、手前の歯に頭が引っかかっています。この状態で無理に引き出そうとすると、力の逃げ場がなくなり、周りの骨や手前の歯に負担がかかります。 そこで、引っかかっている頭の部分をいったん切り離します。頭がなくなれば、残った根は上へ持ち上げるだけで取り出せます。根が複数に分かれている場合は、根同士も分けて一本ずつ出します。 つまり分割は、歯を壊すための操作ではなく、周りを壊さずに出すための操作です。骨を大きく削って丸ごと取り出すより、歯のほうを小さくしたほうが結果的に傷は小さくなります。 横向きの親知らずの全体像は横向き・埋まっている親知らず(埋伏智歯)の抜歯|難易度と流れで扱っています。

歯冠分割と歯根分割の違い

分割には二種類あります。 歯冠分割は、歯の頭(歯冠)と根の境目で切り離す方法です。横向きに生えて手前の歯に当たっている場合に行います。頭を先に取り除けば、根を動かせる空間ができます。 歯根分割は、二本以上に分かれた根を、それぞれ切り離す方法です。根が大きく開いている場合や、先が曲がっている場合に用います。まとめて出そうとすると引っかかる根も、一本ずつなら順に取り出せます。 どちらを行うかは、事前のレントゲンやCTで根の形を確認して決めます。実際には、まず頭を分けてみて、それでも動かなければ根も分ける、という順で進むことが多くなります。 CTを撮る場合の費用の目安は親知らず抜歯前のCT・レントゲン費用|検査代の内訳と必要になるケースにまとめています。

どのくらい骨を削るのか

「骨を削る」と聞くと、あごの骨を大きく取り除く場面を想像される方がいますが、実際に削るのは歯の頭を覆っている薄い層です。 埋まっている親知らずは、上から骨のふたをかぶせられたような状態にあります。このふたの部分と、歯の側面を押さえている縁の部分を、器具が入る幅だけ取り除きます。範囲は数ミリ単位です。 あごの太さや形が変わるような削り方はしません。取り除いた部分は、時間をかけて自然に埋まっていきます。 削るときには水をかけながら行います。摩擦熱で骨を傷めないためです。抜歯中に水と吸引の音が続くのはこのためで、異常ではありません。
横向きの親知らずを三段階で取り出す手順を示した連続図

当日の手順を順番に見る

難しい抜歯の当日は、おおよそ次のように進みます。
  • 麻酔をかけ、効き具合を確かめる
  • 歯ぐきを切開し、めくって歯を見えるようにする
  • 歯を覆っている骨を必要な範囲だけ削る
  • 歯の頭を分割し、取り出す
  • 残った根を、必要なら分けて取り出す
  • 抜いた穴の中を洗い、残っている袋状の組織を取り除く
  • 歯ぐきを元の位置に戻し、糸で縫う
  • ガーゼをかんで止血を確認する
このうち、患者さんが体感するのは主に振動と圧迫感です。麻酔が効いていれば痛みはありません。ただし「押される感覚」「引っ張られる感覚」は麻酔では消えないため、これを痛みと感じてしまう方がいます。 途中で痛みを感じたら、我慢せず手を挙げて伝えてください。麻酔は追加できます。麻酔の種類と選び方は親知らず抜歯の麻酔|局所麻酔・静脈内鎮静法の違いと選び方で説明しています。

音と振動がつらいと感じる方へ

分割や骨の削除では、機械の音と振動が頭に直接響きます。痛みではないとわかっていても、この感覚が苦手な方は少なくありません。 対処の方法はいくつかあります。 音楽やイヤホンの使用を認めている医院があります。事前に確認してください。また、静脈内鎮静法を選べば、うとうとした状態で処置を受けられ、音や振動の記憶がほとんど残りません。全身麻酔ではないため、呼びかけには反応できます。 こうした方法は「弱いから使う」ものではありません。動かずに受けられることは、処置の精度にも影響します。苦手であることを事前に伝えるのは、むしろ安全につながります。 入院や全身麻酔になる条件は親知らず抜歯で入院・全身麻酔になるのは?日帰りとの違いにまとめました。

どのくらい時間がかかるか

分割を伴う抜歯は、まっすぐな歯より時間がかかります。 目安として、切開と骨削除、分割まで行う場合で30分から1時間程度です。根の形が複雑な場合や、骨が硬い場合はさらに延びることがあります。 ただし、麻酔が効くまでの時間、説明、止血の確認を含めると、予約枠としては1時間から1時間半を見ておくと安心です。 長引くこと自体は問題ではありません。無理な力をかけずに少しずつ進めた結果として時間がかかることは、むしろ周りを傷めない進め方です。時間の目安は親知らず抜歯にかかる時間|難易度別の目安と予約の取り方で詳しく扱っています。
歯科医師が模型を使って処置の内容を説明している場面のイラスト

腫れや痛みは強く出るのか

手順が増えるほど、術後の反応は出やすくなります。 切開して歯ぐきをめくり、骨を削った場合、腫れは翌日から2日目にかけて強くなり、そこから引いていくのが一般的な経過です。まっすぐな歯を数分で抜いた場合と比べると、差が出ます。 痛みについては、処方された鎮痛薬でおさまる範囲であることがほとんどです。麻酔が切れる前に飲み始めておくと、立ち上がりの痛みを抑えやすくなります。 強く腫れる可能性がある場合、抗菌薬が処方されます。指示された日数分を飲み切ってください。途中でやめると、感染が長引くことがあります。 腫れの推移と受診の目安は親知らず抜歯後の腫れはいつまで続く?ピークの時期と引かないときの受診目安を参考にしてください。

縫った糸と、その後の穴

分割を伴う抜歯では、ほぼ必ず縫合を行います。歯ぐきをめくった部分を元に戻し、血の塊が保たれるようにするためです。 糸は1週間前後で抜きます。抜糸そのものはすぐ終わり、麻酔も通常は不要です。 穴がふさがるまでには時間がかかります。歯ぐきの表面が閉じるのに2週間から4週間、骨が埋まるまでには数か月かかることもあります。この間、食べかすが入りやすい状態が続きます。 無理にほじると血の塊が取れ、治りが遅れます。穴のケアの仕方は抜歯後の穴はいつふさがる?食べかすが詰まるときの正しいケアにまとめています。

「削る」「割る」という言葉の受け取り方

説明を受けたときに不安が大きくなるのは、言葉の印象によるところが少なくありません。 日常生活で「骨を削る」「歯を割る」と言えば、大きな損傷を思い浮かべます。しかし歯科でのこれらは、いずれも取り出す経路を作るための最小限の操作を指しています。目的は、周囲の骨と手前の歯を守ることにあります。 言い換えると、分割は乱暴な方法ではなく、力任せにしないための方法です。無理に引き抜こうとすれば、支えている骨が折れる、手前の歯が動く、詰め物が外れるといったことが起こり得ます。それを避けるために、歯のほうを小さくしていきます。 もし説明を聞いて不安が残ったら、「どのくらいの範囲を削るのか」「なぜ分割が必要なのか」を具体的に聞いてください。模型やレントゲンを見ながらであれば、想像していたものとの差が埋まりやすくなります。 抜歯後にできる穴の大きさも、多くの方が想像するほど大きくはありません。歯があった分の空間がそのまま残るわけで、周囲を余分に取り除いているわけではないからです。

抜いた後に残る「袋」を取り除く理由

埋まっている親知らずの周りには、歯を包んでいた袋状の組織が残っていることがあります。歯胚を包んでいた膜の名残です。 歯を取り出したあと、この組織をきれいに取り除く操作を行います。理由は二つあります。ひとつは、残しておくと感染源になり得ること。もうひとつは、まれにこの袋が大きくなって、あごの骨の中に空洞をつくることがあるためです。 抜歯のときに「中を掃除しました」と説明されるのは、この操作を指しています。時間がかかっているように見えても、必要な手順です。 取り除いた組織は、見た目に気になる所見があれば検査に出すことがあります。多くは問題のない結果になりますが、確認しておくという判断です。

知っておきたいリスク

分割や骨削除を伴う抜歯には、いくつか注意点があります。 下あごの親知らずでは、根の先が下歯槽神経に近い場合があります。神経に触れると、唇やあごにしびれが残ることがあります。頻度は高くありませんが、位置が近い場合は事前にCTで確認します。詳しくは親知らず抜歯と神経麻痺のリスク|下歯槽神経・CT検査の意味をご覧ください。 上あごの場合は、根の先が上顎洞という空洞に近いことがあります。こちらは上の親知らずと上顎洞|穴が開くリスクと抜歯後にしてはいけないことで説明しています。 そのほか、血の塊がうまく残らずに骨がむき出しになるドライソケット、手前の歯の詰め物が外れることなどがあります。いずれも起きたときの対応があります。気になる変化があれば、自己判断せず連絡してください。

手前の歯と噛み合わせはどうなるか

親知らずを抜いたあと、噛み合わせが変わるのではないかと心配される方がいます。 多くの場合、影響はほとんどありません。親知らずは噛む力の分担にほとんど関与していないことが多く、上下がしっかり噛み合っている親知らずは限られているためです。 ただし例外があります。上下の親知らずが噛み合っていて、片方だけを抜いた場合です。残ったほうの歯が相手を失って、少しずつ伸び出てくることがあります。上下同時に判断するのは、この点を見ています。 抜歯直後は、傷のある側を避けて反対側で噛むため、一時的に噛み合わせの感覚が変わったように感じることがあります。傷が落ち着けば元に戻ります。 手前の歯に大きな詰め物や被せ物が入っている場合、器具をかける操作で外れることがあります。もろくなっている場合は特にそうです。処置の前に伝えられていれば、外れたときの対応も含めて計画できます。心配な方は、事前に手前の歯の状態を確認しておいてください。

費用と保険の扱い

親知らずの抜歯は保険が適用されます。費用は生え方の区分で決まり、分割したかどうかで別料金になるわけではありません。 区分は大きく分けて、普通に生えている歯、歯ぐきに埋まっている歯、骨の中に埋まっている歯の三つです。横向きで骨に埋まっている場合は、いちばん高い区分になります。それでも3割負担で数千円の範囲に収まることが一般的です。 これに初診料、投薬、画像検査が加わります。詳しい内訳は横向き・埋まっている親知らずの抜歯費用|まっすぐな歯との差額はいくらかで試算しています。 なお、当日の体調によっては処置が延期になることがあります。判断の基準は親知らずの抜歯が当日に延期になるのはどんなとき|体調・炎症・血圧の目安にまとめました。準備は親知らず抜歯の前日・当日の準備|食事・睡眠・服装・持ち物を確認してください。

一般の歯科医院で受けられるのか

分割を伴う抜歯は、一般の歯科医院でも日常的に行われています。すべてが大学病院というわけではありません。 紹介の判断になりやすいのは、神経との距離が極端に近い場合、全身の病気の管理が必要な場合、深く埋まっていて視野の確保が難しい場合などです。 名古屋・愛知には歯科口腔外科を持つ医療機関が複数あり、紹介状があれば予約から受診までの流れは整理されています。紹介になる基準は親知らず抜歯で大学病院・口腔外科を紹介されるのはどんなとき?で説明しています。 紹介されたからといって危険な状態という意味ではありません。設備と体制が整った場所で行うほうが安全と判断された、というだけのことです。

よくある質問

歯を分割すると聞くと怖いのですが、痛みはありますか

麻酔が効いていれば痛みはありません。感じるのは器具の振動と、押されたり引っ張られたりする圧迫感です。この感覚は麻酔では消えないため、痛みと受け取ってしまう方がいます。途中で鋭い痛みを感じた場合は我慢せず合図してください。麻酔は追加できます。

骨を削るとあごが細くなったりしませんか

なりません。削るのは歯を覆っている数ミリ程度の薄い部分で、あごの形が変わるような範囲ではありません。取り除いた部分は時間をかけて自然に埋まっていきます。骨を削らずに無理な力で引き抜くほうが、かえって周囲の骨を傷めることがあります。

分割したほうが腫れは大きくなりますか

手順が増えるぶん、腫れは出やすい傾向があります。歯ぐきを切開して骨を削った場合、翌日から2日目にかけて強くなり、そこから引いていく経過が一般的です。ただし分割しないで長く力をかけ続けた場合も腫れます。結果として、分割したほうが負担が小さいことは少なくありません。

抜いた歯は原形をとどめていないのですか

分割した場合、いくつかの破片として取り出されます。記念に持ち帰りたいという方は、事前に伝えておけば、可能な範囲でまとめて渡してもらえることがあります。ただし細かく分かれている場合や、感染の状態によっては渡せないこともあります。希望があれば処置の前に相談してください。

途中で分割に切り替わることはありますか

あります。まず器具をかけて動かしてみて、手前の歯に引っかかって出てこないと判断した時点で分割へ移ることは日常的にあります。事前の説明で「必要なら分割します」と伝えられるのはこのためです。方針が変わっても、麻酔をかけ直したり日を改めたりする必要はありません。

処置にかかる時間はどのくらいですか

切開と骨の削除、分割まで行う場合で30分から1時間程度が目安です。根の形が複雑な場合や骨が硬い場合はさらに延びることがあります。麻酔が効くまでの時間や止血の確認を含めると、予約は1時間から1時間半を見ておくと落ち着いて受けられます。

翌日から仕事や学校に行けますか

多くの方は通常どおり戻れます。ただし腫れは2日目にかけて強くなるため、人前で話す仕事や大切な予定がある場合は、週の前半に抜いて週末で落ち着かせる組み方が現実的です。飲酒や激しい運動は当日から数日は控えてください。血流が増えると出血や痛みにつながります。

一般の歯科医院で受けても大丈夫ですか

分割を伴う抜歯は一般の歯科医院でも日常的に行われています。紹介になりやすいのは、神経との距離が極端に近い場合や全身の病気の管理が必要な場合です。紹介は危険という意味ではなく、設備と体制の整った場所のほうが安全と判断されたという意味だと受け取ってください。

まとめ

親知らずの抜歯で行われる分割は、歯を壊す操作ではありません。横向きに生えた歯は手前の歯に引っかかっているため、そのままの形では出口を通れません。引っかかっている頭の部分を切り離せば、残った根は持ち上げるだけで取り出せます。骨を大きく削って丸ごと出すより、歯のほうを小さくしたほうが傷は小さくなります。骨を削る場合も、取り除くのは歯を覆っている数ミリ程度の層で、あごの形が変わる範囲ではありません。当日は麻酔、切開、骨の削除、分割、摘出、洗浄、縫合という順で進みます。麻酔が効いていれば痛みはなく、感じるのは振動と圧迫感です。音や振動が苦手な方は、鎮静法という選択肢を事前に相談できます。所要時間は30分から1時間程度、予約枠としては1時間半を見ておくと安心です。手順が増えるぶん腫れは出やすく、翌日から2日目がピークになります。糸は1週間前後で抜き、穴が閉じるまでには数週間かかります。費用は保険が適用され、生え方の区分で決まります。分割したから高くなるわけではありません。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海で難しい親知らずの抜歯を控えている方は、親知らず抜歯の流れと術後の痛み・腫れの経過もあわせて読んでおくと、当日の見通しが立ちます。

参考・出典

  • 日本口腔外科学会「口腔外科相談室」
  • 日本歯科麻酔学会「歯科診療における静脈内鎮静法ガイドライン」
  • 厚生労働省「歯科診療報酬点数表」
  • 日本歯科放射線学会「歯科用コーンビームCT検査の指針」

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

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