対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。
上の親知らずを抜くとき、「上顎洞(じょうがくどう)に穴が開くことがあります」と説明を受けて不安になる方がいます。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)の歯科医院でも、上の親知らずの抜歯前には必ず伝えている内容です。上あごの奥には鼻とつながる空洞があり、親知らずの根がその底に接していることが珍しくないためです。このページでは、何が起きるのか、起きたときにどうするのか、そして抜歯後に避けるべき行動を整理します。

先に押さえておきたい点
- 上あごの奥には上顎洞という空洞があり、鼻の奥とつながっている
- 上の親知らずの根は、この空洞の底に接している場合がある
- 抜いた穴と空洞がつながることを上顎洞穿孔(せんこう)と呼ぶ
- 小さな穴の多くは自然にふさがる。処置の方法は大きさで変わる
- 抜歯後に鼻を強くかむと、ふさがりかけた部分が破れることがある
- 事前のレントゲン・CTで、近いかどうかはある程度わかる
| 画像での見え方 | 意味 | 抜歯前の説明 |
|---|---|---|
| 骨の層が厚い | 根と空洞の間に骨がある | 穿孔の心配はほとんどない |
| 骨の線が細い | 骨がごく薄い状態 | つながる可能性を説明する |
| 線が途切れる | 骨がない部分がある | つながる前提で準備する |
| 根が空洞に突出 | 根が空洞内に入り込んでいる | CTで位置を確認してから行う |
上あごの奥にある空洞とは何か
上顎洞は、頬骨の内側にある空気の入った部屋です。副鼻腔(ふくびくう)と呼ばれる空洞のひとつで、鼻の奥へ細い通り道でつながっています。左右にひとつずつあり、大人では鶏卵ほどの大きさになる方もいます。 役割は完全には解明されていませんが、頭部の重さを軽くする、声を響かせる、吸った空気を温めるといった働きが考えられています。 歯科で問題になるのは、その底の部分です。上あごの奥歯、特に第一大臼歯から親知らずにかけての根の先が、この底面のすぐ近くまで伸びていることがあります。 上下の親知らずでは条件が大きく違います。難易度や腫れ方の差は上の親知らずと下の親知らずの違い|抜歯の難易度・腫れ・痛みで比べています。なぜ上の親知らずは空洞に近いのか
理由は三つあります。 ひとつ目は位置です。上顎洞の底は奥へ行くほど下がる形をしており、いちばん奥にある親知らずは構造上いちばん近い場所に生えます。 ふたつ目は年齢です。上顎洞は成長とともに広がり、歯を失った部分では骨が吸収されてさらに拡大することがあります。中高年で抜く場合、若い頃より距離が縮んでいる可能性があります。 三つ目は生え方です。上の親知らずは頬側や後方に傾いて生えることが多く、根の先が思わぬ方向へ伸びていることがあります。 下の親知らずでは神経との距離が問題になります。こちらは親知らず抜歯と神経麻痺のリスク|下歯槽神経・CT検査の意味で扱っています。上は空洞、下は神経、と覚えておくと理解しやすくなります。穴が開くとはどういう状態か
抜歯でできた穴の底が上顎洞と通じてしまうことを、上顎洞穿孔といいます。 多くは抜いた直後に判明します。歯科医師は抜歯後、鼻をつまんで軽く息を出してもらう方法などで、空気が抜けてこないかを確かめます。 つながっている場合、次のような変化が出ることがあります。- うがいをすると鼻から水が出る
- 鼻をかむと抜いた穴から空気が漏れる感じがある
- 声が抜けるように感じる
- 片側の鼻から少量の血が出る

穴が開いたときに行う処置
その場での対応が基本になります。 小さい穴の場合、抜いた穴を無理にいじらず、血の塊を保つことを優先します。歯ぐきを軽く縫って、上からガーゼで圧迫します。抗菌薬と、鼻の通りをよくする薬が処方されることがあります。 大きい穴の場合は、頬側の歯ぐきを移動させて穴を覆う方法などがとられます。糸は1週間前後で抜きます。 いずれの場合も、しばらくは経過を見る通院が必要です。「その日で終わり」にはならないと考えておいてください。 このとき患者さん側が一番迷うのは、「何をもって治ったと判断するのか」という点です。目安になるのは、鼻をつまんで軽く息を出したときに抜いた部分から空気が抜けてこないこと、うがいの水が鼻へ回らないこと、そして片側の鼻づまりや頬の重さが出ていないことの三つです。歯科医師はこれらを毎回確認しています。自分で何度も確かめようとすると、その動作自体が治りを妨げます。確認は診療の場に任せてください。 なお、穿孔が起きたからといって処置が失敗したわけではありません。薄い骨を隔てているだけの状態で歯を取り出せば、構造上ある程度の頻度で生じます。事前に説明があるのは、起こりうることを共有しておくためです。治りを左右する三つの条件
同じ大きさの穴でも、閉じるまでの経過には差が出ます。 ひとつ目は血の塊が安定して残るかどうかです。強いうがいや吸う動作で流れてしまうと、閉じるための土台がなくなります。抜歯後の指示のなかで、うがいを控えるよう伝えられるのはこのためです。 ふたつ目は鼻の状態です。花粉症や風邪で鼻をかむ回数が多い時期は、圧の変化が繰り返しかかります。抜歯の時期を選べるのであれば、症状の落ち着いている季節に予定を組んだほうが条件はよくなります。 三つ目は喫煙です。たばこは吸う動作そのものが穴に負担をかけるうえ、傷の治りを遅らせることが知られています。抜歯前後は本数を減らす、可能であれば止める判断が、治りの差として現れます。 これらは特別な努力ではなく、いずれも「余計な力を加えない」という一点に集約されます。 処置が長引くと、抜歯にかかる時間も当初の見込みより延びます。あらかじめの目安は親知らず抜歯にかかる時間|難易度別の目安と予約の取り方にまとめました。抜歯後にしてはいけないこと
上あごを抜いた後は、下あごより気をつける行動が増えます。| 避けること | 理由 | 目安の期間 |
|---|---|---|
| 強く鼻をかむ | 空洞内の圧が上がり、ふさがりかけた部分が破れる | 2週間程度 |
| 鼻をすする | 吸う力でも同様に圧の差が生じる | 2週間程度 |
| 強いうがい | 血の塊が流れる | 1週間程度 |
| ストローの使用 | 吸う動作で穴に負担がかかる | 1週間程度 |
| 飛行機・ダイビング | 気圧の変化が空洞に直接かかる | 医師の指示まで |
根が空洞に入り込んでしまう場合
まれですが、抜こうとした根の一部が上顎洞の中へ押し込まれることがあります。歯根迷入(しこんめいにゅう)と呼ばれる状態です。 小さな破片であっても、放置すると感染の原因になり得るため、取り出す判断がされることが一般的です。位置によっては、口の中からではなく別の入り口から取り出す手術が必要になり、大学病院の口腔外科へ紹介されます。 紹介になる基準は親知らず抜歯で大学病院・口腔外科を紹介されるのはどんなとき?で説明しています。名古屋・愛知では、事前にCTで根の形と位置を確認したうえで、最初から専門機関で行う判断がされることもあります。上顎洞炎(副鼻腔炎)との関係
上あごの奥歯が原因で空洞に炎症が起きることがあります。歯性上顎洞炎と呼ばれます。 親知らずや隣の歯に大きな虫歯や根の先の病巣があると、細菌が薄い骨を越えて空洞側へ広がることがあります。この場合、耳鼻科で薬を飲んでも改善せず、原因の歯を治療しないと繰り返します。 次のような症状があるときは、歯科でも一度みてもらう価値があります。- 片側だけ鼻づまりが続く
- 頬のあたりが重い、前かがみで痛む
- においのある鼻汁が出る
- 上の奥歯が浮いた感じがする

隣の歯を守るという視点
上の親知らずで見落とされやすいのが、隣にある第二大臼歯への影響です。 上の親知らずは頬側や後方へ傾いて生えることが多く、そのぶん歯ブラシが届きにくい隙間が奥にできます。この位置は自分では見えず、鏡を使っても確認しづらい場所です。汚れが残り続けると、親知らず自身ではなく隣の歯の後ろ側から虫歯が始まることがあります。 隣の歯の後ろ側にできた虫歯は、削って詰める処置が難しい位置です。器具が入りにくく、詰めた材料の縁も清掃しづらくなります。結果として再発を繰り返し、長い目で見ると隣の歯の寿命を縮めることがあります。 上顎洞に近いという理由で抜歯を迷っている場合でも、この点は判断材料に入れてください。空洞に近いことは抜くときの注意点ですが、放置することで失うかもしれないのは、親知らずではなく手前の大切な歯のほうです。 反対に、まっすぐ生えていて奥まで歯ブラシが届き、隣の歯との間に食べ物が詰まらない状態であれば、急いで抜く理由は乏しくなります。抜くか残すかの一般的な考え方は親知らずを抜かないとどうなる?放置で起きる変化と受診を決める目安で整理しています。事前の画像検査で何を確認しているか
上の親知らずでは、根の先と空洞の底の距離、そして根の本数と曲がり具合を見ています。 パノラマレントゲンでは、根と空洞の底が重なって写ることがあります。重なり=接触ではありませんが、線が途切れて見える場合はCTで確かめる判断になります。 CTでは、骨の厚みを立体的に確認できます。根が空洞に突き出しているのか、薄い骨を隔てているのかがわかるため、抜き方の計画が変わります。 検査費用の目安は親知らず抜歯前のCT・レントゲン費用|検査代の内訳と必要になるケースに整理しています。撮る前に「なぜ必要か」を聞いておくと納得して進められます。 歯が骨に深く埋まっている場合は、分割して取り出す方法がとられます。手順は親知らずを分割して抜く・骨を削るとは|難しい抜歯の手順と体への負担で解説しています。当日の説明で確認しておきたいこと
上あごの親知らずを抜く前に、次の点を聞いておくと当日の見通しが立ちます。- 画像で見たときに、根と空洞の間に骨の層が見えているか
- つながった場合、その日のうちに縫う方針か
- 抜歯後に受診が必要になる日はいつか
- 予定している出張・旅行・飛行機の予定を伝えたか
- 鼻の症状(花粉症・慢性の鼻づまり)を伝えたか