歯根吸収とは|歯の根が溶ける原因・見つかり方と治療できる場合

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年8月8日監修:村井亮介(歯科医師・DDS, MSD/日本補綴歯科学会 会員)

歯根吸収(しこんきゅうしゅう)とは、歯の根が内側または外側から溶けていく状態です。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)でも、痛みがまったくないまま定期検診のレントゲンで偶然見つかる方が多く、「歯が溶けている」と言われて驚いてお越しになります。虫歯のように細菌が歯を溶かすのではなく、体の細胞が自分の歯の根を吸収してしまう現象で、進み方も対処も虫歯とはまったく異なります。このページでは、内部から起きる場合と外側から起きる場合の違い、原因、見つかり方、そして進行を止められる場合と止められない場合の分かれ目を整理します。根の治療のやり直し全般については<a href="/treatment/sai-rootcanal/">再根管治療とは|やり直しになる原因と成功率</a>をあわせてご覧ください。

歯の根が内側から溶ける内部吸収と外側から溶ける外部吸収の違いを示した図

先に結論

  • 歯根吸収は細菌が溶かすのではなく、体の細胞が根の組織を吸収して起こる
  • 初期は自覚症状がなく、レントゲンや歯科用CTで偶然見つかることがほとんど
  • 根の内側から起きる内部吸収は、早期であれば根管治療で進行が止まる見込みがある
  • 外側から起きる外部吸収は、原因によって止められるものと止められないものがある
  • 骨と直接くっついてしまう置換性吸収だけは、現在のところ進行を止める方法がない
  • 共通して重要なのは、早く見つけて原因を取り除くことと、定期的に画像で追うこと

タイプ別の特徴と見通し

歯根吸収はひとくくりにできません。どこから溶けているか、何が引き金かで、治療の方向がまったく変わります。
タイプどこで何が起きるか治療の見通し
内部吸収根の内側が風船状に広がって薄くなる早期なら根管治療で止まりやすい
外部吸収(炎症性)根の外側が根の先や側面から溶ける原因を除けば止まることが多い
外部吸収(頸部)歯ぐきの際から根の中へ入り込む範囲が狭ければ修復で対応できる
外部吸収(置換性)根が骨に置き換わり歯が動かなくなる止める方法がなく長期で失われる
生理的吸収乳歯の根が生え替わりのため溶ける正常な現象で治療は必要ない
この表のうち、下から二番目の置換性吸収だけが別格です。ほかは原因への対処で進行を止められる可能性がありますが、置換性吸収は根が骨組織に置き換わっていく現象で、現在のところ確実に止める方法が確立していません。

歯根吸収で根の中で起きていること

歯の根の表面と、根管(こんかん:根の中を通る神経と血管の管)の内側は、それぞれ薄い層で守られています。この層が壊れると、その下の象牙質(ぞうげしつ:歯の主体をつくる硬い組織)がむき出しになり、体の側からは「吸収してよい組織」と認識されてしまいます。 そこに破歯細胞(はしさいぼう)という、硬い組織を溶かす働きを持つ細胞が集まり、根を少しずつ吸収していきます。骨が古くなった部分を溶かして作り替えるのと同じ仕組みが、歯の根に対して起きている状態です。 重要なのは、この現象が進むためには「守る層が壊れたこと」と「吸収を続けさせる刺激」の二つが必要だという点です。刺激とは、根の中の細菌感染、噛む力や矯正の力、埋まっている歯からの圧迫などを指します。したがって、この刺激を取り除けるかどうかが、進行を止められるかどうかを決めます。

内部吸収と外部吸収はどう違うか

内部吸収は、根管の内側から外へ向かって広がります。神経が生きている歯で、その一部だけが慢性的な炎症を起こしている場合に生じやすく、レントゲンでは根管の一部が丸く膨らんだように写ります。 外部吸収は、根の外側から内側に向かって進みます。根の先が短くなる、側面にくぼみができる、歯ぐきの際で根が削れるなど、現れ方は原因によって異なります。 見分けは画像で行いますが、二次元のレントゲンだけでは重なりのために判別が難しいことがあります。どの方向からどこまで進んでいるかを確認するには、立体的に撮影できる歯科用CTが役立ちます。撮影の目的については根管治療で歯科用CTを撮るのはなぜ?レントゲンとの違いと分かることで詳しく説明しています。 判別が大切な理由は、治療の入り口が逆になるからです。内部吸収であれば根管の中から処置を始めますが、外部吸収であれば根の外側の問題に手を届かせる必要があり、歯ぐきを開く処置が必要になる場合もあります。入り口を誤ると、時間と費用をかけても吸収が止まりません。 なお、内部吸収は神経が生きている歯で起こり、外部吸収の多くは神経が死んでいる歯や強い力を受けた歯で起こるという傾向があります。ただし例外もあるため、神経の状態を調べる検査と画像を組み合わせて判断します。

診断のために行う検査

歯根吸収が疑われたとき、当院では次の順で確認していきます。どれか一つで決めるのではなく、複数の結果を突き合わせることが判断の精度を上げます。
  • 神経の生死の検査:冷たい刺激や電気に反応するかを確認する。反応があれば内部吸収、なければ感染由来の外部吸収を疑う手がかりになる
  • 打診と触診:軽く叩いたときの音と響き方を左右で比べる。金属的な高い音は置換性吸収を疑う所見
  • 動揺度の確認:通常より動く場合は支えの喪失、まったく動かない場合は骨との癒着を疑う
  • 歯周ポケットの測定:歯ぐきの際の吸収では、一点だけ深いポケットが見つかることがある
  • 角度を変えたレントゲン:位置をずらして2枚以上撮ると、内側か外側かの判別がつくことがある
  • 歯科用CT:範囲と深さ、根の壁がどれだけ残っているかを立体的に確認する
とくに歯ぐきの際から進む吸収では、見た目には小さな穴でも、内部で広く進んでいることがあります。表面の所見だけで判断せず、立体的に確認してから方針を決めることが、後戻りのない治療につながります。

歯根吸収が起こる主な原因

原因は一つとは限らず、複数が重なっていることもあります。
  • 外傷:転倒やぶつけた衝撃で歯が強く動くと、根の表面の層が傷つく。数か月から数年遅れて現れることがある
  • 根の中の細菌感染:神経が死んで感染が起きると、根の先の周囲で吸収が進む
  • 矯正の力:長期間の持続的な力で根の先が短くなることがある。多くはわずかで問題にならない
  • 埋まっている歯の圧迫:親知らずや埋伏歯が隣の歯の根を押し続ける
  • 歯ぎしり・食いしばり:強い力が繰り返し加わる
  • 過去の再植や移植:一度抜いて戻した歯では置換性吸収が起こりやすい
  • 原因が特定できない場合:検査をしても引き金が分からないことも実際にある
矯正治療で根が短くなる点を心配される方がいますが、多くはごくわずかで、歯の機能に影響しない範囲にとどまります。治療前後の画像で確認しながら進めるのが一般的です。矯正中の変化については歯列矯正は痛い?痛みのピーク・いつまで続くかと和らげ方を歯科医が解説もご参照ください。 子どもが歯をぶつけた場合は、その時点で症状がなくても、後から吸収が始まることがあります。受診と経過観察の考え方は子どもが歯をぶつけた・乳歯が折れた|受診の目安と応急処置にまとめています。
外傷や矯正の力や埋伏歯の圧迫など歯根吸収の主な原因を並べた図解

自覚症状が出にくく偶然見つかることが多い

歯根吸収は、進行しても痛みが出ないことが珍しくありません。根の内部や外側で静かに進むため、患者さんが気づく手がかりが少ないのです。 それでも、次のような変化が出ることがあります。
  • 歯の色が内側からピンクがかって見える(内部吸収で血管が透けることがある)
  • 歯ぐきの際に穴のような欠けができ、そこから出血しやすい
  • 噛んだときに一部だけ違和感がある
  • 歯が少しずつ動いてきた、または逆にまったく動かなくなった
  • 叩いたときの音が、ほかの歯と違って高く硬く響く
最後の二つは置換性吸収を疑うサインです。歯が骨と直接くっつくと、本来わずかにある歯の遊びがなくなり、打診音が金属的になります。歯がぐらつく場合との違いは歯がぐらつく・揺れる原因と対処|歯周病・外傷・噛み合わせのどれ?で扱っています。 歯ぐきに繰り返しできものができる場合は、吸収ではなく根の先の感染が原因のこともあります。見分けは歯茎にできもの・ぷくっとした腫れ|フィステルから腫瘍まで見分け方をご覧ください。

治せる場合の治療の進め方

進行を止められるかどうかは、吸収のタイプと、原因の刺激を取り除けるかで決まります。 内部吸収では、原因である根の中の炎症組織を除去することが治療になります。根管治療で内部を清掃し、吸収で不規則に広がった空間まで薬剤を届かせ、緊密に封鎖します。広がった空間は器具が届きにくいため、洗浄液を十分に作用させることが要になります。薬液の役割は根管の中はどう洗う?洗浄・消毒に使う薬と貼薬の役割で説明しています。 封鎖には、複雑な形にも流し込めて硬化する材料が選ばれます。材料ごとの性質は根管充填とは|根の中に薬を詰める処置の目的と使う材料にまとめました。吸収によって根の壁が薄くなり、穴が開いてしまっている場合には、封鎖の方法が変わります。この状況は根管治療で根に穴が開く(穿孔)とは|起こる原因と封鎖の方法と共通する対応になります。 外部吸収のうち炎症性のものは、根の中の感染が引き金です。この場合も根管治療が中心で、感染を断つことで吸収が止まることが期待できます。根の先に病変がある場合の考え方は歯茎から膿が出る・根の先に膿|根尖病変の原因と治療をご参照ください。 歯ぐきの際から入り込む頸部の外部吸収は、範囲が限られていれば、外側から吸収した部分を除去して樹脂などで修復します。範囲が根の深くまで及ぶと、歯ぐきの下で確実に処置することが難しくなり、保存が困難になります。細部の確認には拡大視野が有効で、マイクロスコープを使う根管治療|精密治療の意味と費用が役立つ場面です。 費用の考え方は、行う処置の内容によって変わります。根管治療として保険の範囲で進める場合と、材料や器材を選んで自費で一貫して行う場合があり、同じ歯の一連の治療では保険と自費を混ぜることはできません。自費で根の治療を行った歯は、その後の土台と被せ物も自費になります。金額の目安と考え方は歯科の保険診療と自費診療の違いをわかりやすく解説をご覧ください。年間の負担が大きくなる場合は歯科の医療費控除の対象と申請方法|計算例まで解説も確認しておくと安心です。 根の中からの処置で届かない位置にある場合は、外科的に到達する方法が検討されます。根の先を切除する方法は歯根端切除術とは|根管治療で治らないときの外科的選択肢、一度抜いて口の外で処置してから戻す方法は意図的再植とは|再根管治療でも治らないときに歯を残す外科処置で詳しく扱っています。ただし再植は置換性吸収のきっかけにもなりうるため、当院では利点と危険性を並べてご説明したうえで判断していただいています。

進行が止められない場合の考え方

置換性吸収では、根が骨に置き換わっていくため、原因を取り除いても進行は続きます。年単位でゆっくり進むことが多く、すぐに抜歯が必要になるわけではありません。 この場合に大切なのは、その歯をいつまで使うかという見通しを持ち、失ったあとの計画を早めに立てておくことです。特に成長期のお子さんでは、骨の成長との関係で歯ぐきの位置がずれてくることがあるため、専門的な判断が必要になります。 吸収が進んで歯を支える構造が失われた場合の見極めは、根管治療で治らない歯は抜くしかない?残せる限界の見極めと抜歯後の選択肢と同じ考え方で行います。抜歯となった場合の補い方は歯を失ったときの選択肢|入れ歯・ブリッジ・インプラント比較をご覧ください。 なお、根にひびが入っている場合も「治らない」という点で似ていますが、原因も画像所見も別物です。見分けは歯根破折(歯の根が割れる)とは|症状の見分け方と抜歯になる条件で扱っています。治療の失敗と混同されやすい点は根管治療の失敗のサイン|治らない・再発するときの選択肢もあわせてご確認ください。
歯根吸収を定期的なレントゲン撮影で経過観察していく流れを示した図

経過観察で何を見ていくか

治療後も、吸収が本当に止まったかを画像で確認していきます。目安は、処置から半年、1年、その後は年に1回程度です。 見るのは、吸収した部分の輪郭がそれ以上広がっていないか、根の先の周囲の骨が回復してきているか、歯の動きに変化がないかという点です。輪郭が変わらず骨が戻ってきていれば、進行は止まったと判断できます。判定の考え方は根管治療後の経過観察|レントゲンで何を見て治ったと判断するかに詳しくまとめました。 反対に、吸収の範囲が広がっている場合は、原因が残っているか、封鎖が不十分である可能性があります。器具の破片が残っていて到達できていない場合の判断は根管治療で器具が折れて根に残ったと言われたら|残す判断と除去・外科の選択肢をご参照ください。 やり直しが必要になった場合の費用は再根管治療の費用|保険と自費の目安・被せ物の作り直しまで含めた総額、被せ物を外す必要があるかどうかはかぶせ物を外さないと再根管治療はできない?外す判断と作り直しの費用で確認できます。

進行を招かないために日常でできること

歯根吸収そのものを歯みがきで防ぐことはできません。ただし、引き金となる状態を減らすことはできます。 強い力が加わり続けることは、外部吸収を進める要因のひとつです。歯ぎしりや食いしばりの自覚がある方、朝に顎がだるい方は、就寝時に装置で力を分散させる方法があります。噛み合わせが一部の歯に集中している場合は、その調整も検討します。 外傷の経験は、その後の数年にわたって影響します。スポーツで衝突の可能性がある場合は、口の中を保護する装置を使うことで歯への衝撃を減らせます。過去にぶつけた歯がある方は、症状がなくても年に1回は画像で確認してください。 また、神経が死んだまま放置された歯は、根の先の感染から外部吸収を招きます。神経を抜いた歯や、しみなくなった歯を放置しないことが、結果として吸収の予防になります。神経を失った歯の扱いは神経を抜いた歯はどうなる?寿命と長持ちさせるコツにまとめています。

よくある質問

歯根吸収は虫歯とどう違うのですか

虫歯は細菌が出す酸で歯が外から溶ける病気ですが、歯根吸収は自分の体の細胞が根を吸収する現象です。したがって、削って詰めるという虫歯の治療の考え方は当てはまりません。吸収を続けさせている刺激を取り除くことが治療の中心になり、進行が止まったかどうかを画像で追って判断します。

歯根吸収は自然に止まることはありますか

原因となる刺激がなくなれば、自然に止まって修復される場合があります。矯正の力による軽度の吸収や、一時的な打撲による吸収がこれにあたります。一方で、根の中に感染が残っている場合や置換性吸収では自然には止まりません。どちらかは画像での経過観察でしか判断できません。

痛くないのに治療した方がよいのでしょうか

痛みの有無と進行の速さは関係がありません。歯根吸収は無症状のまま根を薄くしていくため、症状が出た時点では保存が難しくなっていることがあります。早い段階で原因に対処できれば残せる可能性が高くなりますので、指摘を受けた場合は経過観察も含めて方針を決めておいてください。

矯正をすると必ず根は短くなりますか

多くの方でごくわずかな変化は起こりますが、機能に影響しない範囲にとどまるのが一般的です。強い力を長期間かけた場合や、もともと根の形が細い場合には目立つことがあります。治療前と途中で画像を確認し、進みが大きいときは力を弱める、期間を区切るといった調整を行います。

一度溶けた根はもとに戻りますか

吸収された部分がもとの形に戻ることは基本的にありません。ただし、周囲にできていた骨の欠損は、原因を取り除けば回復してくることがあります。治療の目標は元に戻すことではなく、これ以上進ませずに、残っている根で歯を支え続けられる状態を保つことにあります。

歯の色がピンクに見えるのは歯根吸収でしょうか

内部吸収で歯の内側の組織が透けて見える場合に、そうした変化が現れることがあります。ただし、神経が死んで内部で出血した場合にも似た色の変化が起きますので、見た目だけでは区別できません。レントゲンで根管の形を確認すれば判断できますので、早めにご相談ください。

抜歯を勧められましたが本当に残せませんか

置換性吸収である場合や、吸収が歯ぐきの深くまで達して封鎖できない場合には、残しても長くは使えません。一方で、根の中からの処置や外科的な方法がまだ検討されていない段階であれば、選択肢が残っている可能性があります。判断の根拠になった画像と所見を確認してください。

名古屋で歯根吸収を相談するときは何を持参すればよいですか

以前に撮影したレントゲンやCTの画像があると、進行の速さが分かるため判断の精度が上がります。撮影日が分かる形でお持ちください。外傷の経験がある方は、いつどのようにぶつけたかも重要な情報になります。名古屋・愛知・東海で相談先を探す際は、画像で経過を追える体制があるかをご確認ください。

まとめ

歯根吸収は、細菌が歯を溶かす虫歯とは異なり、体の細胞が自分の歯の根を吸収してしまう現象です。根の内側から広がる内部吸収と、外側から進む外部吸収に大きく分かれ、外部吸収はさらに炎症性、頸部、置換性に分けられます。このうち内部吸収と炎症性の外部吸収は、原因となっている根の中の感染を断つことで進行が止まる見込みがあり、根管治療が中心の対応になります。頸部の吸収は範囲が限られていれば修復で対応でき、根の中から届かない位置にあれば外科的な方法が検討されます。一方、根が骨に置き換わる置換性吸収だけは現在のところ止める方法がなく、いつまで使えるかという見通しを立てて次の計画を準備することが現実的な対応になります。共通して重要なのは、痛みがなくても進むという性質を踏まえ、指摘を受けたら定期的に画像で追うことです。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海で経過観察中の方は、やり直しの治療でできること根管治療全体の流れを並べてご確認ください。

参考・出典

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

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