自立支援医療(更生医療・育成医療)は歯科で使える?名古屋市の申請窓口・対象になる治療・自己負担の上限【名古屋市】

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年9月14日監修:村井亮介(歯科医師・DDS, MSD/日本補綴歯科学会 会員)

自立支援医療(更生医療・育成医療)は歯科でも使えるのか。名古屋市で口唇口蓋裂や顎の手術に伴う矯正が必要と言われ、「自立支援医療という制度があると聞いたが、どこに申請するのか」「歯科の治療はどこまで対象になるのか」と迷う方は少なくありません。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)の診療の場でも、大学病院で外科矯正をすすめられたご家族から、費用の制度について質問を受けることがあります。自立支援医療は、障害を軽くするための医療の自己負担を、原則1割に抑える国の制度で、名古屋市では区役所が申請窓口です。ただし、歯科で対象になる治療はかなり限られており、「歯科治療全般が安くなる制度」ではありません。このページでは、2026年9月時点の情報で、更生医療・育成医療のしくみ、歯科で対象になる治療とならない治療、名古屋市の申請窓口と必要書類、自己負担の上限、判定の流れを整理します。制度の全体像は<a href="/cost/nagoya-hiyou-shien/">名古屋で歯科治療費が高いと感じたら|高額療養費・医療費控除・助成制度の使い分け【名古屋市】</a>にまとめています。

区役所の窓口で申請書類を受け取る家族と歯科矯正のイメージを組み合わせたイラスト

このページの結論

  • 自立支援医療は「障害を除去・軽減する医療」が対象。歯科では口唇口蓋裂や顎変形症に伴う矯正・手術など、ごく限られた治療にしか使えない
  • 虫歯・歯周病・入れ歯・インプラント・見た目のための矯正は対象外。これらは通常の健康保険や自費の扱いになる
  • 18歳以上は更生医療、18歳未満は育成医療。どちらも名古屋市では区役所が申請窓口になる
  • 自己負担は原則1割。世帯の所得に応じて月ごとの上限額があり、上限を超えた分は支払わなくてよい
  • 指定を受けた医療機関で受けることと、治療を始める前に申請することが原則。あとから申請しても原則さかのぼれない
  • 対象になるかどうかは、名古屋市の判定(身体障害者更生相談所など)を経て決まるため、まず主治医と区役所に相談する
自立支援医療は、どこに申請するかが年齢で分かれます。2026年9月時点の名古屋市の窓口は次のとおりです。
種類対象年齢名古屋市の申請窓口判定する機関
更生医療18歳以上(身体障害者手帳が必要)お住まいの区の区役所福祉課・支所区民福祉課名古屋市身体障害者更生相談所(瑞穂区)
育成医療18歳未満お住まいの区の区役所福祉課・支所区民福祉課名古屋市(こども青少年局・保健所)
精神通院医療年齢制限なし区役所福祉課・保健センター歯科治療とは関係しない
※窓口名・担当課は名古屋市の案内に基づく2026年9月時点の情報です。区役所の組織名は変わることがあるため、来庁前に区役所へ電話で確認してください。

自立支援医療とはどういう制度か

自立支援医療は、障害者総合支援法に基づく公費負担医療で、「障害を除去したり軽くしたりするための医療」の自己負担を軽減する制度です。健康保険の3割負担を原則1割にし、さらに世帯の所得に応じて月ごとの負担上限額を設けます。 種類は3つあり、18歳以上の身体障害者を対象とする「更生医療」、18歳未満の子どもを対象とする「育成医療」、精神疾患の通院を対象とする「精神通院医療」に分かれます。歯科に関わるのは更生医療と育成医療の2つで、精神通院医療は歯科治療とは関係しません。 ここで大切なのは、この制度が「障害を軽減する効果が確実に期待できる医療」に限られている点です。人工関節の手術、心臓の手術、腎臓の透析、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ:生まれつき唇や上あごが割れている状態)の手術などが代表例です。歯科で対象になるのは、そうした障害に伴う口の機能を回復するための治療に限られます。

歯科で対象になる治療とならない治療

歯科の分野で自立支援医療が使えるのは、主に次のような場合です。
  • 口唇口蓋裂に伴う歯科矯正(音声・言語機能や咀嚼機能の障害を伴い、手術以外に歯科矯正が必要な場合)
  • 口唇口蓋裂や顎変形症(がくへんけいしょう:上下のあごの大きさや位置のずれで噛み合わせが成り立たない状態)の手術と、それに伴う矯正治療
  • 事故や病気であごの骨を失った方の、あごの再建に関わる治療(内容によって判断が分かれる)
一方で、次の治療は対象になりません。
  • 虫歯や歯周病の治療、抜歯、根の治療
  • 入れ歯、ブリッジ、インプラント
  • 歯並びをきれいにするための矯正(機能障害の判定がないもの)
  • ホワイトニング、セラミックなど見た目を目的とする治療
つまり、「自立支援医療を使えば歯の治療が安くなる」という理解は正しくありません。虫歯や入れ歯の費用を抑えたい場合は、通常の保険診療のなかで治療方法を選ぶことになります。保険と自費の考え方は歯科の保険診療と自費診療の違いをわかりやすく解説で整理しています。 顎変形症の外科矯正そのものは、自立支援医療とは別に、指定を受けた医療機関で行えば健康保険が使えます。その保険診療の自己負担分を、さらに自立支援医療で軽くできる場合がある、という関係です。顎変形症の治療の流れは顎変形症と外科矯正|保険が使える条件と治療の流れで説明しています。
自立支援医療の対象になる歯科治療と対象外の治療を左右に分けて示した図

更生医療(18歳以上)の対象と名古屋市の申請の流れ

更生医療は、身体障害者手帳を持っている18歳以上の方が対象です。歯科・口腔の分野では、口唇口蓋裂に起因する音声・言語機能障害やそしゃく機能障害で手帳を取得している方の歯科矯正や手術が該当します。手帳を持っていない方は、まず手帳の申請から始めることになります。 名古屋市での申請は、お住まいの区の区役所福祉課(支所管内にお住まいの方は支所区民福祉課)で行います。申請書のほか、指定医療機関の医師が書く意見書、身体障害者手帳の写し、加入している健康保険の情報がわかるもの、世帯の所得(市民税の課税状況)を確認できる資料、マイナンバーがわかる書類が必要です。 申請後、名古屋市身体障害者更生相談所(瑞穂区)で、その治療が更生医療の対象になるかどうかの判定が行われます。判定は予約制で、区役所を通して予約する形です。判定の結果、支給が決まると「自立支援医療受給者証」が交付され、それを医療機関に提示して治療を受けます。 診療の場でお伝えしているのは、「治療を始める前に申請する」ことの大切さです。受給者証の交付前に受けた治療は原則として対象にならず、さかのぼって適用されないためです。手術や矯正の計画が決まった時点で、主治医から意見書をもらい、区役所に相談してください。

育成医療(18歳未満)の対象と申請

育成医療は、18歳未満の子どもで、身体に障害があるか、治療をしないと将来障害を残す可能性がある状態に対して、確実な治療効果が期待できる場合に使えます。身体障害者手帳の有無は問われません。 歯科では、口唇口蓋裂のお子さんの手術、それに伴う歯科矯正が代表です。名古屋市では、口唇口蓋裂の治療を行う大学病院や指定医療機関の医師が、育成医療の意見書を書いてくれるのが一般的です。申請窓口は、お住まいの区の区役所福祉課・支所区民福祉課です。 必要書類は更生医療とほぼ同じで、申請書、指定医療機関の意見書、健康保険の情報、世帯の所得を確認する資料、マイナンバーの書類です。受給者証には有効期間があり、矯正のように治療が長期にわたる場合は、期間ごとに更新の申請が必要になります。更新を忘れると、その期間の治療が対象から外れるため、受給者証の有効期限を治療計画と一緒に管理してください。 なお、名古屋市の子ども医療費助成は、保険診療の自己負担分を助成する別の制度です。育成医療の対象になる治療でも、残った自己負担にさらに子ども医療費助成が使える場合があります。子ども医療費助成の範囲は子ども医療費助成は歯医者でも使える?無料になる範囲と自己負担が出るケース【名古屋市】で確認できます。

自己負担はどのくらいになるか

自立支援医療が適用されると、自己負担は原則として医療費の1割になります。さらに、世帯の所得区分ごとに月ごとの負担上限額が決められており、上限を超えた分は支払わなくてよくなります。 上限額の区分は、生活保護世帯は0円、市民税非課税世帯は所得に応じて月2,500円または5,000円、市民税課税世帯は課税額に応じて月5,000円・10,000円・20,000円、という段階が設けられています。一定以上の所得がある世帯は、原則として対象外になりますが、「重度かつ継続」に該当する医療は例外的に対象になる場合があります。ここで言う「世帯」は、住民票の世帯ではなく、同じ健康保険に加入している家族の単位で数えます。 数値は国の制度に基づくもので、改定されることがあります。2026年9月時点の名古屋市の案内と、申請時の所得区分の判定を必ず確認してください。 歯科矯正は月ごとの支払いが続く治療のため、上限額の効果が出やすい分野です。たとえば装置の調整で毎月数千円から1万円前後の自己負担が出る場合、上限額が5,000円の区分なら、超えた分を払わずに済みます。ただし、対象になるのは受給者証に記載された医療機関で、記載された治療内容に対してのみです。
申請から判定・受給者証の交付・治療開始までの流れを段階的に並べた図

指定医療機関でないと使えない

自立支援医療は、都道府県や政令市の指定を受けた「指定自立支援医療機関」で受けた治療にしか使えません。名古屋市内の指定医療機関は、名古屋市の介護・障害情報提供システムで一覧が公開されています。口唇口蓋裂や顎変形症の治療は、大学病院の歯科口腔外科・矯正歯科や、指定を受けた矯正歯科医院で行われることが多く、一般の歯科医院すべてが指定を受けているわけではありません。 かかりつけの歯科医院で「顎の手術が必要かもしれない」と言われた場合は、大学病院への紹介を受け、そこで自立支援医療の意見書を書いてもらう流れが現実的です。大学病院の受診方法は名古屋で大学病院の歯科口腔外科を受診するには|紹介状の要否と予約の流れにまとめています。

他の制度との関係

自立支援医療の対象にならなくても、治療費の負担を軽くする制度は別にあります。顎変形症の手術のように入院を伴う保険診療で、月の自己負担が高額になる場合は、高額療養費制度の対象です。申請の窓口は高額療養費制度を名古屋市で申請するには|区役所保険年金課の窓口・電子申請と歯科で使える場面【名古屋市】で説明しています。 治療目的の矯正や手術の自己負担は、翌年の確定申告で医療費控除の対象になります。自立支援医療で軽減されたあとに実際に支払った金額が対象です。名古屋市での申告は歯科の医療費控除を名古屋市で申告するには|管轄の税務署・e-Tax・市税事務所の使い分けと歯科で対象になる費用【名古屋市】を参照してください。 障害のある方の歯科受診そのものについては、名古屋市に障害者歯科の相談窓口があります。通院が難しい方の訪問歯科も含めて、名古屋市の障害者歯科・訪問歯科の相談窓口|どこに聞けばよいかで案内しています。 名古屋市の無料健診など、治療の入り口になる制度は名古屋市の歯科制度ガイド|無料の歯周疾患検診・妊産婦歯科診査・休日の応急処置にまとめています。

相談先の整理

制度の対象になるかどうかは、最終的に名古屋市の判定で決まります。迷ったときの相談先を整理します。
  • 治療内容が対象になりそうか:主治医(大学病院・指定医療機関の医師)に聞く
  • 申請の手続き・必要書類:お住まいの区の区役所福祉課・支所区民福祉課
  • 更生医療の判定・予約:名古屋市身体障害者更生相談所(区役所経由で予約)
  • 指定医療機関の一覧:名古屋市の介護・障害情報提供システム
  • 愛知県内の名古屋市以外にお住まいの方:市町村の障害福祉担当課(制度の運用は自治体ごとに異なる)

よくある質問

自立支援医療で虫歯や入れ歯の治療は安くなりますか

なりません。自立支援医療は障害を除去・軽減するための医療が対象で、歯科では口唇口蓋裂や顎変形症に伴う矯正・手術など、ごく限られた治療にしか使えません。虫歯・歯周病・入れ歯・インプラント・見た目のための矯正は対象外です。これらの費用を抑えたい場合は、保険診療の範囲で治療方法を選ぶか、高額療養費や医療費控除など別の制度を検討します。

名古屋市では自立支援医療をどこに申請しますか

更生医療(18歳以上)も育成医療(18歳未満)も、お住まいの区の区役所福祉課、支所管内の方は支所区民福祉課が窓口です。2026年9月時点の名古屋市の案内に基づく情報で、担当課名は変わることがあります。申請書、指定医療機関の医師の意見書、健康保険の情報、世帯の所得を確認する資料、マイナンバーの書類を持参します。更生医療は身体障害者手帳の写しも必要です。

歯科矯正はどんな場合に自立支援医療の対象になりますか

口唇口蓋裂に起因する音声・言語機能障害やそしゃく機能障害があり、手術以外に歯科矯正が必要と判定された場合が代表です。顎変形症の手術に伴う矯正も、機能障害の判定によっては対象になります。歯並びを整えるだけの矯正は対象外です。対象になるかは主治医の意見書をもとに名古屋市が判定するため、まず治療を担当する医師に確認してください。

治療を始めてから申請してもさかのぼって使えますか

原則としてさかのぼれません。自立支援医療は受給者証の交付を受けてから、記載された医療機関で受けた治療が対象になります。交付前に支払った費用は通常の自己負担のままです。手術や矯正の計画が決まった段階で、主治医に意見書を依頼し、治療開始前に区役所へ申請してください。緊急の手術など例外的な扱いがあるかは、区役所に個別に相談します。

自己負担の上限はいくらですか

原則1割負担で、世帯の所得区分に応じて月ごとの上限額が設けられています。生活保護世帯は0円、市民税非課税世帯は月2,500円または5,000円、課税世帯は課税額に応じて月5,000円・10,000円・20,000円という段階です。一定以上の所得がある世帯は原則対象外ですが、「重度かつ継続」に該当する医療は例外になることがあります。数値は改定されるため、申請時に名古屋市で確認してください。

身体障害者手帳がなくても申請できますか

育成医療(18歳未満)は手帳の有無を問いません。治療をしないと将来障害を残す可能性がある状態で、確実な治療効果が期待できれば対象になります。更生医療(18歳以上)は身体障害者手帳を持っていることが前提です。口唇口蓋裂による機能障害で手帳を取得できる場合があるため、手帳の申請と更生医療の申請を並行して進める形になります。まず区役所福祉課に相談してください。

かかりつけの歯科医院で自立支援医療は使えますか

その医院が名古屋市(愛知県)の指定自立支援医療機関になっている場合に限られます。一般の歯科医院すべてが指定を受けているわけではなく、口唇口蓋裂や顎変形症の治療は大学病院の歯科口腔外科・矯正歯科や指定を受けた矯正歯科医院で行われることが多いです。指定医療機関の一覧は名古屋市の介護・障害情報提供システムで公開されています。かかりつけ医からの紹介を受けるのが現実的です。

自立支援医療と子ども医療費助成は併用できますか

併用できる場合があります。自立支援医療で1割に軽減された自己負担に対して、名古屋市の子ども医療費助成が保険診療の自己負担分を助成する形です。両方の制度で対象になる治療の範囲が異なるため、どちらが優先され、最終的にいくら支払うかは区役所で確認してください。育成医療の受給者証と子ども医療証の両方を医療機関の窓口に提示します。

まとめ

自立支援医療(更生医療・育成医療)は、障害を除去・軽減するための医療の自己負担を原則1割にし、世帯の所得に応じた月ごとの上限額を設ける制度です。歯科で対象になるのは、口唇口蓋裂や顎変形症に伴う歯科矯正や手術など、ごく限られた治療で、虫歯・歯周病・入れ歯・インプラント・見た目のための矯正は対象になりません。名古屋市では、18歳以上の更生医療も18歳未満の育成医療も、お住まいの区の区役所福祉課・支所区民福祉課が申請窓口で、更生医療は名古屋市身体障害者更生相談所の判定を経て支給が決まります。指定医療機関で受けること、治療を始める前に申請することが原則で、交付前の治療はさかのぼれません。対象外の治療で費用が高額になる場合は、高額療養費制度や医療費控除を検討してください。名古屋・愛知で治療費の制度を整理したい方は、名古屋で歯科治療費が高いと感じたら|高額療養費・医療費控除・助成制度の使い分け【名古屋市】もあわせてご覧ください。窓口名・上限額は2026年9月時点の情報で、変更されることがあります。

参考・出典

  • 厚生労働省「自立支援医療制度の概要」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jiritsu/index.html
  • 愛知県「自立支援医療(更生医療)について」 https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shogai/0000028679.html
  • 名古屋市公式ウェブサイト「自立支援医療(育成医療)給付」 https://www.city.nagoya.jp/kodomo/kosodate/1008992/1009002/1009003.html
  • 名古屋市公式ウェブサイト「身体障害者更生相談所」 https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/shougaisha/1016579/1016584/index.html
  • 名古屋市 介護・障害情報提供システム「指定自立支援医療機関(更生医療・育成医療)」 https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/view/wel/service/independence/specification/kousei_ikusei.html
  • 日本口腔外科学会「顎変形症」 https://www.jsoms.or.jp/

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

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