対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。
親知らずが痛むだけでなく、あごまで痛くなり、口が開けにくくなることがあります。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海の方から「歯より、あごのほうがつらい」「指が1本しか入らない」というご相談をいただきます。この症状は、炎症が歯の周囲から広がったことを示すサインです。顎関節症と間違われやすい一方で、対応の急ぎ方はまったく違います。このページでは、口が開かなくなる仕組み、あごの関節の症状との見分け方、そして受診の急ぎ方を整理します。
先に結論
- 親知らずの炎症で口が開けにくくなるのは、あごを動かす筋肉に炎症が及んだため
- 顎関節症と違い、片側だけ・親知らずの痛みが先にある・数日で急に進むのが特徴
- 指2本入らない、飲み込むと痛い、首が腫れて硬いは当日受診
- 息がしにくい、水も飲めないはただちに救急受診
- この状態では通常その日に抜歯はできない。まず炎症を抑える
- 無理に口を開ける練習はしない。炎症を広げる
親知らずの痛み全般については
親知らずが痛い・腫れたときの原因と対処法をご覧ください。ここではあごへの広がりに絞ります。
開き具合は、急ぎ方の目安になります。
| 口の開き具合 | あわせて出やすい症状 | 受診の急ぎ方 |
| 指3本入る | 奥の違和感、噛むと痛い | 数日以内に歯科へ |
| 指2本入る | 頬の腫れ、あごの重さ | 翌日までに受診 |
| 指1本前後 | 飲み込むと痛い、熱がある | 当日に受診 |
| ほとんど開かない | 首が腫れて硬い、話しにくい | 当日、救急も検討 |
| 息がしにくい | 横になると苦しい | ただちに救急受診 |
※指の本数は縦に重ねて入る数で数えます。あくまで簡易的な目安です。
なぜ口が開けにくくなるのか
下の親知らずのすぐ内側と外側には、口を閉じる働きをする筋肉が付いています。あごを動かす主要な筋肉のうち、いくつかがこの位置を通っています。
親知らずの周囲で炎症が起きると、炎症はこの筋肉やその周りの組織へ広がることがあります。炎症の及んだ筋肉は、防御的に縮んで硬くなります。伸ばそうとすると痛みが出るため、体は無意識に動かさないようにします。
その結果、口が開かなくなります。医学的には開口障害と呼ばれる状態です。
重要なのは、これが「炎症の広がり」を意味する点です。歯ぐきの表面だけの炎症では、通常ここまで至りません。口が開けにくくなっているということは、炎症が組織のすき間を伝って周囲へ及んでいることを示します。
そして、この広がりは同じ経路をたどってさらに進むことがあります。のどのほう、首のほうへ広がると、飲み込みにくさや首の腫れが加わります。この段階の見極めは
親知らずで喉や耳まで痛い?関連痛が起きる理由と受診の目安にまとめました。
顎関節症との見分け方
口が開けにくいという症状は、あごの関節の問題でも起こります。ただし、性質がまったく異なります。
親知らずの炎症による場合は、次の特徴があります。片側だけであること。親知らずのあたりの痛みや腫れが先にあったこと。数日のうちに急に進んだこと。押すと親知らずの周囲が痛むこと。熱を伴うことがあること。
一方、あごの関節による場合は、次の特徴があります。耳の前あたりに痛みや音があること。開けようとすると途中で引っかかる感じがあること。数週間から数か月かけて少しずつ変化してきたこと。歯ぐきの腫れや熱を伴わないこと。朝に強く、日中に和らぐことが多いこと。
見分けが重要なのは、急ぎ方が違うためです。あごの関節の症状は、多くの場合すぐに命に関わることはありません。炎症の広がりによる開口障害は、時間の経過で状況が変わります。
あごの関節の症状については
急に口が開かない・大きく開けられない原因と対処|顎関節症・開口障害を歯科医が解説と
顎関節症は自然に治る?治し方とセルフケア・治るまでの期間を歯科医が解説で扱っています。受診先の選び方は
顎関節症は何科を受診?歯科・口腔外科の選び方と受診の目安を歯科医が解説をご覧ください。
見逃してはいけないサイン
次の症状は、炎症が単なる歯ぐきの範囲を超えていることを示します。
飲み込むときに痛む、または飲み込みにくい場合。のどのほうへ広がっています。
首やあごの下が腫れて硬い場合。組織のなかに炎症が及んでいます。
38度を超える熱がある場合。体が全身で反応しています。
舌が持ち上がったように感じる、話しにくい場合。舌の下の空間に炎症が及んでいる可能性があります。
そして、息がしにくい、横になると呼吸が苦しい場合。これはただちに救急受診が必要です。気道の周囲が腫れている可能性があり、時間の経過で急速に悪化することがあります。
これらは、いずれも待ってよい症状ではありません。夜間や休日であっても、受診先を探してください。判断の手順は
休日・夜間に歯が痛い時の応急処置と救急受診の判断、名古屋市内の窓口は
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やってはいけないこと
この状態で、良かれと思って行うと悪化させることがあります。
無理に口を開ける練習をしないでください。「動かさないと固まる」という考えから力任せに開ける方がいますが、炎症のある筋肉を強く伸ばすと炎症が広がります。
温めないでください。蒸しタオル、長風呂、飲酒、運動はいずれも血のめぐりを良くし、炎症を広げます。抜歯後の開きにくさでは温めることがありますが、それは炎症が引いた後の話であり、今の段階とは条件が違います。
マッサージや強く押すことも避けてください。炎症のある組織に圧を加えると、細菌が周囲へ押し広げられるおそれがあります。
自己判断で抗菌薬を飲まないでください。以前処方された薬の残りを飲むと、量も期間も適切でなく、効きにくい細菌を増やす結果になります。
そして、様子を見る期間を長く取らないでください。この症状は、数時間から半日で変化することがあります。
歯科ではどう対応するか
受診すると、まず状態の広がりを確認します。
口のなかを見て、親知らずの周囲の腫れ、膿の有無、隣の歯の状態を確認します。口が開かない場合、見える範囲は限られますが、それでも得られる情報があります。
必要に応じて画像を撮ります。レントゲンで歯の位置と骨の状態を確認し、炎症の広がりが疑われる場合は断層撮影を行うことがあります。
膿がたまっている場合は、切開して出します。圧が下がることで、痛みはその場で大きく和らぎます。
そして、抗菌薬と痛み止めを処方します。抗菌薬の効果が出るまでには1〜2日かかるため、この期間の経過を見ます。
炎症の範囲が広い場合、あるいは全身状態に影響が出ている場合は、口腔外科や大学病院を紹介します。入院のうえで点滴による治療が必要になることもあります。紹介の判断は
親知らず抜歯で大学病院・口腔外科を紹介されるのはどんなとき?、歯科口腔外科の扱う範囲は
歯科口腔外科で扱う症状|親知らず・膿・できもの・外傷をご覧ください。
なお、この状態でその日のうちに抜歯することは、通常ありません。理由は
腫れているときに親知らずは抜けない?炎症が治まるまで待つ理由にまとめています。
当院では、口が開けにくい状態で来られた方には、まずどのくらい開くかを実際に測り、記録します。翌日以降、その数値がどう変わったかで、抗菌薬が効いているかを判断できるためです。ご本人の感覚だけでは、良くなっているか悪くなっているかが分かりにくいことがあります。ご家族に付き添っていただき、飲み込みや呼吸の様子を見ておいてもらうこともあります。
受診までの過ごし方
受診の予約が取れるまで、あるいは翌日の診療開始まで、できることがあります。
痛み止めは指示どおりに使ってください。市販の解熱鎮痛薬でも構いません。使い方は
親知らずの痛みに市販の痛み止めは効く?効かないときに考えられることにまとめています。
頬の外側から冷やしてください。保冷剤をタオルで包み、10分当てて外して休むという間隔にします。氷を直接当てないでください。
食事は、噛まずに飲み込めるものにしてください。口が開かない状態では、固形物を口に運ぶこと自体が困難です。ポタージュ、ゼリー飲料、ヨーグルトなどが現実的です。
水分は切らさないでください。飲み込むときに痛むと水分を控えがちですが、脱水は回復にも薬の効きにも影響します。少量を回数多くとってください。
そして、口のなかを可能な範囲で清潔に保ってください。届く場所だけで構いません。汚れが残るかぎり、炎症の材料が残ります。
夜間に悪化した場合に備えて、寝る前に開き具合と体温を確認し、家族に状態を伝えておいてください。ひとり暮らしの方は、悪化したときに連絡できる先を確認しておくと安心です。
年代や体調による違い
同じ炎症でも、進み方には差があります。
若い方では、炎症の勢いが強く、腫れも急に出やすい傾向があります。半日で状況が変わることがあるため、様子見の期間を短くしてください。
糖尿病がある方、免疫を抑える薬を使っている方は、炎症が広がりやすく、治りも遅くなります。この場合、通常より早い段階で受診してください。
高齢の方では、熱が出にくいことがあります。熱がないから軽いとは限りません。食欲の低下、元気のなさ、飲み込みにくさといった変化のほうが手がかりになります。
喫煙する方では、血のめぐりが悪く、治りが遅れます。この時期だけでも控えてください。
そして、以前に同じ側で腫れたことがある方は、炎症が広がる経路がすでにできている可能性があります。前回より進みが早いと感じたら、その感覚を信じて早めに動いてください。
歯ぐきに炎症を抱えている方も、進みが早くなる傾向があります。もともと歯を支える組織に炎症があると、細菌が広がる道筋がすでにあるためです。歯周病の管理については
歯周病の検査と基本治療(スケーリング・SRP)で扱っています。
妊娠中の方は、使える薬と撮影に制限があります。自己判断で市販薬を飲まず、産科と歯科の両方に相談してください。時期によって対応できる範囲が変わります。詳しくは
妊娠中・妊娠前の親知らず|生えてきた・痛いときの対処と抜歯のタイミングをご覧ください。
周囲に伝えておくこと
口が開けにくい状態は、外から見て分かりません。周囲に伝えておくと、無理をせずに済みます。
職場や学校では、「親知らずの周りが腫れていて、口が開けにくく食事も取りにくい」と伝えれば十分です。会議や会食の予定を調整しやすくなります。
家族には、飲み込みにくさや呼吸の様子を見ておいてもらってください。自分では変化に気づきにくい部分です。特に、夜間に悪化した場合、そばに人がいるかどうかで対応の速さが変わります。
ひとり暮らしの方は、悪化したときの連絡先を手元に用意しておいてください。夜間の受診先、家族や友人の連絡先、通っている医院の電話番号です。
そして、無理に予定をこなさないでください。この症状は数時間で変わることがあり、外出先で悪化すると受診先を探すのが難しくなります。
落ち着いた後にすべきこと
炎症が治まると、口の開きも数日から1〜2週間で戻ります。そして、症状が消えると受診をやめてしまう方が多くいます。
ここが分かれ目になります。開口障害が起きたということは、炎症がすでに歯ぐきの範囲を超えた経験があるということです。次に同じことが起きたとき、同じ範囲で収まる保証はありません。
そのため、落ち着いた時期に、抜くかどうかを含めた方針を決めることが勧められます。判断の材料は、歯の向き、隣の歯への影響、これまでの再発回数です。繰り返しの考え方は
智歯周囲炎を繰り返す|親知らずの炎症がぶり返す理由と抜歯を決める目安にまとめました。
また、開きにくさが完全に戻らない、あるいは炎症が治まった後も関節に音や痛みが残る場合は、あごの関節の問題が併存している可能性があります。もともと歯ぎしりや食いしばりの習慣がある方では、この傾向が出やすくなります。
歯ぎしり・食いしばりの原因と治療|マウスピース・ボトックスは効く?をご覧ください。
歯ぐきの腫れそのものについては
親知らず周りの歯茎が腫れて痛い原因と対処で扱っています。
よくある質問
親知らずのせいで口が開かなくなることはありますか
あります。下の親知らずのすぐ内側と外側には、口を閉じる働きをする筋肉が付いています。親知らずの周囲の炎症がこの筋肉に及ぶと、筋肉が防御的に縮んで硬くなり、開けようとすると痛むため動かせなくなります。これは炎症が歯ぐきの表面を超えて広がっていることを示すサインです。
顎関節症とどう見分けますか
親知らずが原因の場合は、片側だけで、親知らずのあたりの痛みや腫れが先にあり、数日のうちに急に進み、押すと親知らずの周囲が痛み、熱を伴うことがあります。あごの関節の場合は、耳の前に痛みや音があり、開けようとすると引っかかる感じがあり、数週間から数か月かけて変化し、腫れや熱を伴いません。
どのくらい開かなければ受診すべきですか
指が縦に2本入らない場合は翌日までに、1本前後しか開かない場合は当日中に受診してください。あわせて飲み込むと痛い、首やあごの下が腫れて硬い、38度を超える熱があるという症状があれば急を要します。息がしにくい、横になると苦しいという場合はただちに救急受診が必要です。
すぐに救急を受診すべきなのはどんなときですか
息がしにくい、横になると呼吸が苦しいときです。気道の周囲まで炎症が及んでいる可能性があり、時間の経過で急速に悪化することがあります。あわせて、水も飲み込めない、舌が持ち上がったように感じる、話しにくいといった症状も急を要します。夜間や休日でも受診先を探してください。
口を開ける練習をしたほうがよいですか
この段階ではしないでください。炎症のある筋肉を力任せに伸ばすと、炎症が周囲へ広がります。抜歯後の開きにくさでは動かすことが勧められますが、それは炎症が引いた後の話であり、条件が違います。マッサージや強く押すことも、細菌を周囲へ押し広げるおそれがあるため避けてください。炎症が引けば自然に戻ります。
温めてもよいですか
温めないでください。蒸しタオル、長風呂、飲酒、運動はいずれも血のめぐりを良くして炎症を広げます。この時期は頬の外側から冷やすほうが適しています。保冷剤をタオルで包んで10分ほど当て、いったん外して休むという間隔にしてください。氷を直接当てると凍傷のおそれがあるため避けてください。
その日のうちに抜いてもらえますか
通常はできません。炎症のある組織では麻酔が効きにくく、外科的な操作で細菌が周囲へ広がるおそれがあるためです。まず膿がたまっていれば出し、抗菌薬と痛み止めで炎症を抑えます。抗菌薬の効果が出るまで1〜2日かかり、抜歯は落ち着いてから1〜2週間後に予定するのが一般的です。
治まったあとに何をすればよいですか
落ち着いた時期に、抜くかどうかを含めた方針を決めてください。開口障害が起きたということは、炎症がすでに歯ぐきの範囲を超えた経験があるということで、次も同じ範囲で収まる保証はありません。症状が消えると受診をやめる方が多いのですが、そこが分かれ目になります。判断材料は歯の向きと再発回数です。
まとめ
親知らずの炎症であごが痛くなり口が開けにくくなるのは、下の親知らずのすぐそばを通る、口を閉じる働きの筋肉に炎症が及んだためです。炎症の及んだ筋肉は防御的に縮んで硬くなり、伸ばそうとすると痛むため動かせなくなります。この症状で重要なのは、炎症が歯ぐきの表面を超えて広がっていることを示す点です。同じ経路をたどってさらに進むと、のどや首まで及びます。顎関節症とは性質が違います。親知らずが原因なら片側だけで、歯の痛みや腫れが先にあり、数日のうちに急に進み、熱を伴うことがあります。関節の問題なら耳の前に痛みや音があり、数週間から数か月かけて変化し、腫れや熱は伴いません。急ぎ方が違うため、この見分けが要点になります。指が2本入らなければ翌日までに、1本前後なら当日に受診してください。飲み込むと痛い、首が腫れて硬い、38度超の熱、舌が持ち上がる感じ、話しにくさが加われば急を要し、息がしにくい場合はただちに救急受診です。この時期にやってはいけないのは、無理に口を開ける、温める、揉む、以前の薬の残りを飲む、そして様子を見る期間を長く取ることです。歯科では膿があれば出し、抗菌薬と痛み止めで炎症を抑え、範囲が広ければ口腔外科や大学病院へ紹介します。落ち着いてからが本題で、一度この経験をしたなら方針を決める段階です。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海の方は、夜間の受診先も先に確認しておいてください。
親知らずが痛い・腫れたときの原因と対処法とあわせてご覧ください。
参考・出典
- 日本口腔外科学会「智歯周囲炎」「口腔顎顔面領域の感染症」
- 日本顎関節学会「顎関節症の診療に関するガイドライン」
- 日本化学療法学会・日本口腔外科学会「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン」
- 厚生労働省「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」