総入れ歯の種類と費用|よく噛める入れ歯の条件

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年7月4日監修者

「総入れ歯になったら、ちゃんと噛めるのだろうか」「保険と自費でどれくらい違うのか」「よく噛める総入れ歯の条件があるなら知りたい」――片あごの歯をすべて失い、総入れ歯を考えるとき、多くの方がこうした不安と疑問を持ちます。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海エリアでも、総入れ歯の作り替えや新製を前に情報を探す方が少なくありません。

総入れ歯(全部床義歯=ぜんぶしょうぎし)は、片あごの歯がすべてない場合に、歯ぐきとあごの土手への吸着で支える取り外し式の装置です。このページでは、総入れ歯の種類と費用の目安、「よく噛める総入れ歯」を左右する条件、安定しにくい下あごへの対策までを、学会の指針や国内外の研究をもとに整理します。適応や費用は口の中の状態や医院によって異なるため、あくまで判断材料としてお読みください。
総入れ歯の種類と費用のイメージイラスト

先に結論:よく噛める総入れ歯は「材料」だけでは決まりません

総入れ歯を考えるうえで、まず押さえておきたいのは次の三つです。
  • 保険の総入れ歯(3割負担で片あご約10,000〜15,000円)でも、精密に作って調整を重ねれば十分に噛める方は多くいます。自費(金属床などで約30万〜100万円)は薄さ・温度感・安定感を高める選択肢です
  • よく噛めるかどうかは、材料の値段よりも、あごの土手の状態・型取りとかみ合わせの精密さ・装着後の調整・使う側の慣れという条件に大きく左右されます
  • とくに安定しにくい下あごの総入れ歯には、インプラントで支えるオーバーデンチャーという選択肢があり、噛む力や満足度の向上が国際的に報告されています
臨床の現場では、「高い入れ歯=よく噛める入れ歯」とは限らないこと、そして総入れ歯は完成後の調整と慣れの期間まで含めて一つの治療であることが重視されます。

【早見表】総入れ歯の主な種類と費用の目安

種類特徴注意点費用の目安(片あご)
保険の総入れ歯レジン床。費用を抑えて早く作れ、修理しやすい床が厚めで温度を感じにくい3割負担で約10,000〜15,000円
金属床の総入れ歯床が薄く丈夫。温度を感じやすく違和感が少ない費用が高い。金属アレルギーは材料に配慮約30万〜100万円
シリコン裏装の総入れ歯当たる面がやわらかく、痛みが出やすい方向き数年ごとの張り替えが必要。清掃に注意約40万〜60万円
デジタルデンチャー設計データが残り再製しやすい。適合は許容水準と報告評価が定まりつつある段階。保険の扱いは限定的医院により幅が大きい
インプラントオーバーデンチャーインプラントを支えに安定。下あごで効果の報告多数外科処置が必要。骨や全身状態の制約約80万〜150万円程度
金額はいずれも一般的な目安で、設計や本数、医院によって大きく変わります。正確な費用は見積もりで確認してください。

総入れ歯が口の中で保持される仕組み

総入れ歯には、部分入れ歯のようにバネをかける歯がありません。では何で保持されているかというと、入れ歯の内面と歯ぐきの粘膜がぴったり合うことで生まれる吸着、間に介在する唾液の力、頬や舌の筋肉との調和、そしてあごの土手(顎堤=がくてい)の形です。吸盤がガラス面に貼りつくように、密着の精度が保持力を大きく左右します。 ここで重要になるのが顎堤の状態です。歯を失ったあとの骨は時間とともにやせて平らになり(残存歯槽堤吸収)、とくに下あごは上あごより吸収が進みやすいと報告されています。下あごはもともと入れ歯が乗る面積が小さく、舌の動きの影響も受けるため、「上はよいが下の総入れ歯が安定しない」という悩みが多いのはこのためです。 つまり総入れ歯の噛み心地は、土手の条件と、その条件を最大限に生かす型取り・かみ合わせの精密さで決まる部分が大きいのです。入れ歯全体の分類から確認したい方は、入れ歯(義歯)の種類と費用|保険と自費の違いをご覧ください。

保険の総入れ歯と自費の総入れ歯

保険の総入れ歯は、床がレジン(歯科用プラスチック)で、3割負担で片あごおおむね10,000〜15,000円前後、型取りから完成までおおむね4〜5回・3〜4週間程度が目安です。費用を抑えて作れ、割れても修理しやすいのが利点ですが、強度確保のため床が厚くなりやすく、発音や違和感、温度の感じにくさが弱点になります。 自費の総入れ歯の中心は金属床(コバルトクロム・チタンなど)で、床を薄くできるため違和感が少なく、熱を伝えて食事の温度を感じやすく、たわみにくいのが利点です。費用はおおむね30万〜100万円程度です。歯ぐきが薄く痛みが出やすい方には、当たる面をやわらかいシリコーンで裏打ちするタイプ(約40万〜60万円、数年ごとの張り替えが必要)もあります。また自費では、仮の入れ歯(治療用義歯)で噛み合わせや土手の状態を整えてから最終的な入れ歯を作る、時間をかけた精密な工程を選べる場合もあります。 近年は、コンピューターで設計・製作するデジタルデンチャーも臨床に入り始めています。2024年までの系統的レビューでは、削り出し・3Dプリントとも臨床的に許容できる適合と報告されていますが、評価が定まりつつある段階で、日本の保険での扱いはまだ限定的です。

よく噛める総入れ歯の条件:値段よりも「精度・調整・慣れ」

総入れ歯の種類と費用の解説イラスト
研究では、総入れ歯の方の噛む効率は天然の歯がそろった方よりおおむね2〜5割程度低下すると報告されており、「入れ歯を入れれば元どおり」ではない点は知っておく必要があります。そのうえで、噛みやすさを左右する条件は次のように整理できます。
  • あごの土手(顎堤)の条件:吸収が少なく高さが残っているほど安定に有利です。総入れ歯になる前の段階から歯を守ることが、将来の噛みやすさにつながります
  • 型取りとかみ合わせの精密さ:頬や舌の動きまで写し取る型取りと、あごの動きに調和したかみ合わせの設計が、外れにくさと噛みやすさの土台になります
  • 装着後の調整:完成した日がゴールではなく、痛い場所の調整・かみ合わせの微調整を数回重ねて仕上がります
  • 使う側の慣れとリハビリ:頬や舌が入れ歯を支えることを覚え、噛み方に慣れるまで数週間〜数か月かかることがあります。やわらかいものから段階的に慣らします
新しい総入れ歯が痛い・外れやすいときの対処は、入れ歯が合わない・痛い|原因と調整・我慢しないための知識でくわしく解説しています。

下あごが安定しないときの選択肢:インプラントオーバーデンチャー

調整を重ねても下あごの総入れ歯が安定しない場合、あごの骨に2本程度のインプラント(人工歯根)を埋め、それを支えに入れ歯を固定するインプラントオーバーデンチャーという選択肢があります。2002年のマギル・コンセンサスでは「下あごの歯が一本もない方への第一選択は2本のインプラントで支えるオーバーデンチャーであるべき」と提言され、従来の総入れ歯と比べて維持・安定、噛む力、満足度の向上が複数の系統的レビューで報告されています。 一方で、外科処置が必要なこと、費用が高くなること(おおむね80万〜150万円程度)、骨の量や全身状態による制約があることから、すべての方に勧められるわけではありません。従来の総入れ歯で十分満足される方も多く、まずは今の入れ歯の調整・作り替えで改善できるかを確認したうえで検討する順番が現実的です。歯を失ったときの選択肢全体は歯を失ったときの選択肢|入れ歯・ブリッジ・インプラント比較で比較しています。

総入れ歯を長く快適に使うために

総入れ歯を快適に使い続けるには、毎日の手入れと定期的なメンテナンスが欠かせません。
  • 1日1回以上、外して義歯ブラシで磨き、義歯洗浄剤も併用する(研磨剤入り歯磨き粉は床を傷つけるため避けます)
  • 就寝時は原則外して清潔な水などに保管する。入れたまま眠り続けると、義歯性口内炎(カンジダという真菌による粘膜の炎症)のリスクが高まると報告されています
  • 入れ歯を外したあと、歯ぐきや上あごもやわらかいブラシなどで清掃する
  • 年に数回は歯科で適合とかみ合わせのチェックを受け、合わなくなったらリライン(裏側の作り直し)や調整で合わせ直す
顎堤は使っている間も少しずつ変化するため、数年単位での調整・リライン・作り替えを前提に付き合っていく装置だと考えると、トラブルを早めに拾えます。なお保険では原則として、新しく作ってから6か月以内は同じ部位を保険で作り直せないルールがあります(調整・修理・リラインは別扱い)。

よくある質問

保険の総入れ歯と自費の総入れ歯、噛みやすさはどれくらい違いますか

材料の違いだけで噛みやすさが決まるわけではありません。保険でも精密に作って調整すれば十分噛める方は多く、自費は薄さ・温度感・安定感を高める位置づけです。あごの土手の状態と調整の積み重ねが噛みやすさの土台になります。

総入れ歯で硬いものは噛めるようになりますか

研究では、総入れ歯の噛む効率は天然の歯がそろった方よりおおむね2〜5割程度低いと報告されています。噛む回数を増やす、調理を工夫するなどで補いながら、慣れとともに食べられるものが広がっていくのが一般的な経過です。

下の総入れ歯だけがすぐ外れます。作り方が悪いのでしょうか

下あごは上あごより骨がやせやすく、入れ歯が乗る面積も小さいため、もともと安定しにくい条件があります。まず調整やリラインで改善を試み、それでも難しい場合はインプラントオーバーデンチャーという選択肢もあります。

総入れ歯は何年くらい使えますか

一律の年数はありませんが、あごの土手が変化していくため、調整・リラインを重ね、合わせきれなくなった段階で作り替えを検討します。人工歯のすり減りも作り替えの目安の一つです。

総入れ歯の費用は医療費控除の対象になりますか

治療目的の入れ歯の費用は、自費の金属床なども含めて一般に医療費控除の対象とされています。くわしくは歯科の医療費控除|対象になる費用と申告の方法をご覧ください。

名古屋・愛知で総入れ歯を相談するとき、何を確認すればよいですか

名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を含む愛知・東海エリアには、総入れ歯の製作・調整に力を入れる歯科が多数あります。補綴(ほてつ=入れ歯・被せ物の分野)の専門医の在籍や、装着後の調整体制、保険と自費の両方の説明があるかを確認すると比較しやすくなります。当サイトは情報メディアであり、特定の医院を勧めるものではありません。

まとめ

総入れ歯は、歯ぐきとあごの土手への吸着で支える装置で、保険のレジン床が基本の選択肢、自費の金属床やシリコン裏装、デジタルデンチャーは薄さ・装着感・安定性を高める選択肢です。よく噛めるかどうかは材料の値段だけでなく、顎堤の状態、型取りとかみ合わせの精密さ、装着後の調整、使う側の慣れに大きく左右されます。安定しにくい下あごには、インプラントで支えるオーバーデンチャーの有効性が国際的に示されていますが、外科処置や費用の面からすべての方に必要なわけではありません。毎日の清掃と夜間の取り外し、定期的な調整・リラインを続けることが、総入れ歯で長くおいしく食べるためのいちばんの条件です。迷ったときは、口の中の状態を診たうえで複数の選択肢の説明を受けることをおすすめします。 関連する疑問については、金属床義歯とはもあわせてご覧ください。

参考・出典

  • 日本補綴歯科学会「有床義歯補綴診療のガイドライン(2009改訂版)」(Minds 掲載)
  • 「歯の欠損の補綴歯科診療ガイドライン2008」(Minds 掲載)
  • 日本補綴歯科学会「リラインとリベースの臨床指針 2023」「軟質リライン材によるリライン 2023」「3次元プリント有床義歯の診療指針」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット(歯・口腔の健康に関する解説)
  • 歯科診療報酬点数表(有床義歯・内面適合法・有床義歯修理、6か月新製ルール)
  • 総義歯の咀嚼能率に関する文献レビュー・系統的レビュー
  • McGill Consensus Statement on Overdentures(2002, Gerodontology)/York Consensus Statement(2009)
  • インプラントオーバーデンチャーと従来総義歯の比較研究・系統的レビュー/メタアナリシス
  • 残存歯槽堤吸収(顎堤吸収)に関するレビュー・臨床研究
  • 義歯性口内炎・カンジダ・夜間装着のリスクに関する臨床研究
  • CAD/CAM・3Dプリント義歯の適合・満足度に関する系統的レビュー(2024)
(注:本文中の数値・費用は研究や医院により幅がある一般的な目安です。最新のガイドライン・保険点数は監修者が確認・更新します。)

村井亮介(むらい りょうすけ)

DDS, MSD(Indiana University School of Dentistry 大学院 補綴科修了) 所属:American Academy of Prosthodontics(ACP)、International Team for Implantology(ITI)、Academy of Osseointegration(AO)、日本補綴歯科学会 → 監修者・当サイトの編集方針について
総入れ歯の種類と費用に関する予防・ケアのイメージイラスト

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

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