対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。
歯周病は糖尿病や心疾患、早産との関連が数多く研究されています。名古屋市の成人歯科健診で歯周病を指摘される方は多く、全身の健康と結びつけて考える意義があります。
「歯周病は口の中だけの問題」と思われがちですが、近年は糖尿病や心臓・血管の病気、妊娠中の出産トラブルなど、全身の健康との関わりが数多く研究されています。「歯ぐきの病気で、まさか体の別の病気に関わるの?」と驚かれる方も少なくありません。 歯周病は、歯を支える歯ぐきや骨が、歯垢(プラーク/細菌のかたまり)の中の細菌と、それに対する体の炎症反応によって少しずつ壊されていく慢性の病気です。この「炎症」が、口の中だけでなく全身に影響を及ぼしうるのではないか、という視点から、多くの研究が進められています。
先に結論:歯周病と全身の関係は「双方向」と「一方向の関連」に分けて考える
歯周病と全身の病気の関係は、大きく次の2つに整理すると理解しやすくなります。ひとつは、糖尿病のように互いに影響し合う「双方向」の関係。もうひとつは、心疾患や早産のように、関連は指摘されているものの因果までは断定されていない「関連」のレベルです。- 糖尿病がある、血糖のコントロールがうまくいっていない
- 心臓や血管の病気がある、または家族に多い
- 妊娠している、または妊娠を予定している
- 飲み込む力が落ちてきた高齢のご家族がいる
- 喫煙している、歯ぐきからの出血や口臭が続いている
【早見表】歯周病と全身の病気の関連(現時点での考え方)
病気ごとに、分かっていることの確からしさは異なります。下の表は、現時点での大まかな整理です。数値や評価は研究により幅があります。| 全身の病気 | 関係の向き | 指摘されている内容 | 確からしさの目安 |
|---|---|---|---|
| 糖尿病 | 双方向 | 互いに悪化させ合う。歯周治療で血糖指標の改善報告 | 比較的よく研究されている |
| 心疾患・動脈硬化 | 関連 | 炎症・細菌を介した動脈硬化との関わりが指摘 | 関連あり。因果は慎重に |
| 早産・低体重児出産 | 関連 | 歯周病と出産トラブルの関連が報告 | 報告に幅がある |
| 誤嚥性肺炎 | 関連 | 口腔内細菌の誤嚥、口腔ケアで発症・死亡が減る報告 | 高齢者で重視 |
| 関節リウマチ等 | 研究途上 | 慢性炎症を介した関わりを検討中 | 研究段階 |
なぜ口の病気が全身に関わるのか:炎症と細菌という2つの経路
歯周病が全身に影響しうると考えられる背景には、大きく2つの経路があります。ひとつは「炎症」、もうひとつは「細菌そのもの」です。 歯周病が進むと、歯ぐきの奥にできた歯周ポケット(歯と歯ぐきのすき間にできる病的な深い溝)の内側は、常に炎症を起こした状態になります。重度の歯周病では、この炎症を起こした面積を合計すると、手のひらほどの広さの傷が口の中にあるようなものだ、とたとえられることもあります。ここから、炎症を伝える物質(炎症性サイトカインと呼ばれるたんぱく質など)が血流に乗って全身をめぐると考えられています。 もうひとつの経路が、細菌そのものの侵入です。炎症を起こした歯ぐきの毛細血管から、歯周病に関わる細菌やその成分が血液中に入り込むこと(菌血症)が知られています。歯みがきや食事といった日常の動作でも、ごく一時的に細菌が血中に入ることがあるとされています。 これら「慢性的な炎症」と「細菌・その成分の血中への移行」が、全身のさまざまな臓器や血管に働きかけるのではないか、という枠組みで研究が進んでいます。ただし、体の反応は複雑で、喫煙・肥満・加齢・生活習慣といった、歯周病と全身疾患の両方に関わる共通の要因も多いため、関連の解釈には慎重さが求められます。糖尿病との関係:互いに影響し合う「双方向」の関係
全身疾患のなかでも、糖尿病と歯周病の関係は比較的よく研究されており、互いに影響し合う「双方向」の関係にあると考えられています。歯周病は、糖尿病の「第6の合併症」とも呼ばれることがあります。 まず、糖尿病があると歯周病が進みやすくなる方向です。血糖値が高い状態が続くと、細菌に対する抵抗力が落ち、傷の治りも遅くなり、炎症が悪化しやすくなるとされています。血糖のコントロールが不良な方ほど、歯周病が重くなりやすい傾向が報告されています。 逆に、歯周病が糖尿病に影響する方向もあります。歯周病による慢性的な炎症が、血糖を下げるホルモン(インスリン)の効きを悪くし、血糖のコントロールを難しくしうると考えられています。実際に、歯周治療を行うことで、糖尿病の血糖の指標(HbA1c=過去1〜2か月の血糖の平均を表す数値)が平均でおよそ0.3〜0.4%程度改善したとする報告もあります。ただし数値は研究や条件によって幅があり、すべての人に同じ効果が出るわけではありません。
心臓・血管の病気との関係:動脈硬化を介した「関連」
心臓や血管の病気(心疾患・脳血管疾患など)と歯周病についても、多くの研究があります。歯周病のある人は、動脈硬化(血管の壁が厚く硬くなる変化)に関わる病気を持つ割合がやや高い、という関連が複数の研究で指摘されています。 考えられているしくみは、歯周病による慢性的な炎症や、血中に入った細菌・その成分が、血管の壁の炎症や動脈硬化の進行に関わるのではないか、というものです。動脈硬化を起こした血管の壁(プラーク)の中から、歯周病に関わる細菌が検出されたとする報告もあります。 ただし、ここで注意が必要です。歯周病と心血管疾患は、喫煙・肥満・運動不足・加齢・食生活といった共通のリスク要因を多く抱えています。そのため、「歯周病があるから心疾患になる」という直接の因果までは、現時点で断定されていません。多くの学会見解も、「関連は認められるが、歯周治療によって心血管疾患そのものを予防できると証明されたわけではない」という慎重な立場をとっています。 とはいえ、歯周病の炎症を抑えることは、全身の炎症を減らすうえで意味があると考えられており、心血管の病気がある方にとっても、口の健康を保つことは望ましいとされています。虫歯を含む口の感染と全身との関わりについては、虫歯放置と全身への影響|糖尿病・誤嚥性肺炎・心血管との関連もあわせてご覧ください。妊娠中の歯周病と早産・低体重児出産
妊娠と歯周病の関係も、よく取り上げられるテーマです。歯周病のある妊婦さんでは、早産(予定より早い出産)や低体重児出産(生まれた赤ちゃんの体重が少ない)のリスクがやや高まる可能性が報告されています。 背景としては、歯周病による炎症を伝える物質が、出産の引き金となる体の反応に関わるのではないか、と考えられています。ただし、この分野の研究結果は一致していない部分もあり、妊娠中に歯周治療を行えば早産を確実に減らせる、とまでは証明されていません。関連の強さの評価には、なお幅があります。 一方で、妊娠中はホルモンの変化により歯ぐきが炎症を起こしやすく、「妊娠性歯肉炎」と呼ばれる歯ぐきの腫れが起こりやすくなることは、よく知られています。つわりで歯みがきがしにくくなることも重なり、口の中の環境が乱れやすい時期です。 そのため、妊娠を計画している段階や、妊娠の安定期に、歯科でのチェックとクリーニングを受けておくことがすすめられています。妊娠中の歯科治療は、時期を選べば多くの処置が可能とされており、受診の際は妊娠していること(週数)を必ず伝えてください。過度に心配するよりも、安定期に無理のない範囲で口の環境を整えておくことが、母体にとっても安心につながります。高齢者と誤嚥性肺炎:口腔ケアが重視される理由
高齢の方で特に重要なのが、誤嚥性肺炎(食べ物や唾液が誤って気管に入って起こる肺炎)との関係です。飲み込む力が落ちてくると、口の中の細菌を含んだ唾液が、少しずつ気管や肺に入り込みやすくなります。このとき、口の中の細菌が多いほど、肺炎を起こすリスクが高まると考えられています。 複数の研究や介護現場の取り組みから、専門職による丁寧な口腔ケアを続けることで、高齢者の肺炎の発症や、それに関連する死亡が減ったとする報告があります。このことから、歯周病を含む口の中の管理は、高齢者の全身の健康や命に関わる大切なケアとして位置づけられています。
そのほか研究が進む領域と、慎重に受け止めたい点
上記のほかにも、関節リウマチ、慢性腎臓病、一部の認知症、肥満・メタボリックシンドロームなどと歯周病の関わりが研究されています。いずれも「慢性的な炎症」という共通点を切り口に検討が進んでいますが、多くはまだ研究段階で、因果関係が確立したわけではありません。 こうした話題は、ときに「歯周病を治せば◯◯の病気が治る」といった過度な表現で紹介されることがあります。しかし、現時点で分かっているのは、多くが「関連」のレベルであり、歯周治療が全身の病気を確実に予防・治療すると証明されているわけではない、という点です。 一方で、確からしさの高い事実もあります。歯周病そのものは、放置すれば歯を失う原因になること、糖尿病とは双方向に影響し合うこと、高齢者では口腔ケアが肺炎予防に役立つこと。これらは、比較的しっかりと支持されています。「定まった知見」と「これから明らかになる論点」を分けて捉えると、情報に振り回されずに済みます。よくある質問
歯周病を治せば、糖尿病や心臓病も治りますか
そこまでは言えません。糖尿病については、歯周治療が血糖の指標の改善と関連したとの報告があり、双方向の関係が知られています。一方、心臓や血管の病気については「関連」の指摘にとどまり、歯周治療でこれらを確実に予防・治療できると証明されているわけではありません。持病の治療は主治医のもとで続けることが前提です。持病があると歯周病の治療は受けられませんか
多くの場合、持病があっても歯周病の治療は受けられます。大切なのは、糖尿病や心疾患、服用中の薬などの情報を歯科に正しく伝えることです。お薬手帳を持参し、主治医と歯科が連携できるようにしておくと、より安全に進められます。妊娠中に歯科を受診しても大丈夫ですか
安定期であれば、多くの歯科処置が可能とされています。妊娠中は歯ぐきが腫れやすく、口の環境が乱れやすい時期でもあります。受診の際は妊娠していること(週数)を必ず伝えてください。過度に我慢せず、気になる腫れや出血は相談することをおすすめします。自覚症状がなくても検査を受けたほうがよいですか
はい。歯周病は痛みが出にくいまま進む「沈黙の病気」とも呼ばれます。糖尿病や心疾患などの持病がある方、妊娠中・妊娠を予定している方は、症状がなくても一度歯ぐきの状態を確認しておくと安心です。家族の高齢者にできることはありますか
毎日の口腔ケア(歯みがき・入れ歯の清掃・口の中の保湿)を丁寧に続けること、歯科や歯科衛生士による専門的なケアを定期的に受けることが役立つとされています。むせやすさや飲み込みにくさがある場合は、早めに歯科に相談してください。 全身の病気との関わりのうち、心臓や血管との関係は歯周病と心臓病・動脈硬化の関係を解説したページ、関節リウマチとの関係は歯周病と関節リウマチの関係を解説したページで、それぞれ詳しく取り上げています。まとめ
歯周病と全身の病気の関係は、「双方向」と「一方向の関連」に分けて捉えると整理しやすくなります。糖尿病とは互いに影響し合う双方向の関係にあり、歯周治療が血糖の指標の改善と関連したとの報告があります。心臓・血管の病気や早産・低体重児出産とは「関連」が指摘されていますが、因果までは断定されておらず、共通のリスク要因の影響も考える必要があります。高齢者では、口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防に役立つことが重視されています。過度に怖がる必要はありませんが、口の健康は全身の健康管理の一部です。糖尿病・心疾患・妊娠などの状況にある方、歯ぐきからの出血や口臭が続く方は、症状がなくても早めに歯科を受診し、自分の歯ぐきの状態を確認しておくことをおすすめします。歯周病そのものの治療の流れは歯周病治療とは|症状の進行と治療法を解説もあわせてご覧ください。 関連する疑問については、タバコと歯周病、妊娠中の歯周病、20代・30代でも歯周病?若くても進行する原因と対策も参考になります。 全身の病気との関わりをより深く知りたい方は、歯周病と認知症の関係、歯周病と誤嚥性肺炎(高齢者・介護での口腔ケア)、歯周病と骨粗鬆症・骨の薬の関係もあわせてご覧ください。関連する記事
とくに血糖との関わりを詳しく知りたい方は、糖尿病と歯周病の関係 もあわせてご覧ください。ストレスとの関わりについては、ストレスと歯周病の関係 もあわせてご覧ください。参考・出典
- 日本歯周病学会「歯周治療のガイドライン」「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット(歯周病と全身の健康・糖尿病に関する解説)
- MSDマニュアル(家庭版・プロフェッショナル版)「歯周炎」「誤嚥性肺炎」
- 歯周治療と糖尿病(HbA1c)に関する Cochrane Systematic Review/メタアナリシス
- 歯周病と心血管疾患・早産/低体重児出産の関連に関する系統的レビュー・各学会見解(AAP/EFP 等)
- 高齢者の口腔ケアと誤嚥性肺炎予防に関する介入研究
- World Health Organization(WHO)口腔保健に関する報告
