歯周病治療とは|症状の進行と治療法を解説

歯周病の仕組みと治療の全体像を示す図。健康な歯ぐきと、炎症で歯周ポケットが深まり骨が溶けた状態を比較し、治療のゴールが進行を止めて維持することだとまとめた解説図

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年5月18日監修:村井亮介(DDS, MSD(米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)/日本補綴歯科学会 会員)

歯周病治療は、進行の段階によって内容が大きく変わります。名古屋(中区・栄)でも、歯ぐきからの出血や歯のぐらつきをきっかけに受診される方が多い病気です。

「歯ぐきから血が出る」「歯がぐらついてきた気がする」「歯周病と言われたけれど、何をするのだろう」。そんなとき、多くの方が治療の中身や進め方、どこまで治るのかが分からず不安になります。 歯周病は、歯を支える歯ぐきや骨が、歯垢(プラーク/細菌のかたまり)の中の細菌と、それに対する体の炎症反応によって少しずつ壊されていく病気です。痛みが出にくいまま進むため、気づいたときには進行していることも少なくありません。
歯周病の仕組みと治療の全体像を示す図。健康な歯ぐきと、炎症で歯周ポケットが深まり骨が溶けた状態を比較し、治療のゴールが進行を止めて維持することだとまとめた解説図
このページでは、歯周病とはどんな病気で、どのように検査し、どんな流れで治療が進むのか、進行の段階ごとの治療法や費用、そのままにするとどうなる?、治療後に大切なことまでを、国内外の研究データと学会ガイドラインをもとに、できるだけわかりやすく整理して解説します。 歯周病の状態や必要な治療は一人ひとり大きく異なり、最終的な診断には歯科医院での検査が必要です。あくまで全体像をつかむための目安としてお読みください。

先に結論:歯周病治療は「進行を止めて維持する」治療です

歯周病の治療は、原因である歯垢や歯石を徹底的に取り除き、炎症を抑えて進行を止め、その状態を長く保つことを目的とします。次のような場合は、できるだけ早めに歯科を受診してください。
  • 歯みがきのときに歯ぐきから血が出る、歯ぐきが赤く腫れている
  • 歯ぐきが下がって歯が長く見える、歯と歯のすき間が広がってきた
  • 歯がぐらつく、噛むと違和感がある、歯が動いた気がする
  • 口臭が気になる、朝起きたときに口の中がネバつく
  • 歯ぐきから膿が出る、歯ぐきが腫れて痛むことがある
歯周病は痛みが出にくいまま進む「沈黙の病気(サイレントディジーズ)」とも呼ばれ、気づいたときには歯を支える骨がかなり失われていることがあります。 臨床の現場では、いったん溶けてしまった骨は基本的に自然には元に戻りません。そのため、「いかに早く進行を止めて、安定した状態を維持するか」が治療の中心に置かれます。早い段階であるほど、良い状態を保ちやすいとされています。

【セルフチェック】あなたの歯周病はどの段階?

歯周病は進行度によって治療内容も費用も大きく変わります。下の早見表でご自分の段階を確認してください。
段階ポケット深さ主な症状主な治療費用目安
A 歯肉炎1〜3mm歯みがきで出血/腫れスケーリング・TBI保険2,000〜5,000円
B 軽度歯周炎3〜4mm出血・軽い腫れSRP(スケーリング・ルートプレーニング)保険3,000〜8,000円
C 中等度歯周炎4〜6mm動揺軽度・口臭SRP+再評価・場合により外科保険5,000〜12,000円
D 重度歯周炎6mm以上歯がぐらつく・排膿歯周外科(FOP/GTR)・抜歯検討保険10,000〜30,000円
自費50,000〜300,000円

歯周病とは何か:歯ぐきの中で起きていること

歯を支えているのは、歯ぐき(歯肉)だけではありません。歯ぐきの下には、歯を支える骨(歯槽骨/しそうこつ)や、骨と歯根をつなぐクッションのような組織(歯根膜/しこんまく)があります。これら「歯ぐき・骨・歯根膜・歯と骨をつなぐセメント質」を、まとめて歯周組織(ししゅうそしき=歯を支える組織一式)と呼びます。歯周病は、この歯を支える土台が壊されていく病気です。 口の中には常に細菌がいて、歯の表面には歯垢(プラーク)というぬるぬるした細菌のかたまりができます。これが歯と歯ぐきの境目にたまると、細菌に対して体の免疫が反応し、歯ぐきに炎症が起こります。 これが「歯肉炎」で、歯ぐきの赤み・腫れ・出血として現れます。歯肉炎の段階では、まだ骨は壊れておらず、きちんと歯垢を取り除けば健康な状態に戻せる(元に戻る/可逆的)とされています。 歯垢が取り除かれないままでいると、唾液の中のミネラルで固まって「歯石」になります。歯石の表面はざらざらしていて、さらに歯垢が付きやすく、歯ブラシでは取れません。こうして細菌の温床ができ、炎症が続きます。 炎症が長く続くと、細菌の刺激と、それに対する体の過剰な反応とが相まって、自分自身の歯を支える骨や組織が壊されていきます。 歯と歯ぐきの境目の溝が深くなり、「歯周ポケット(歯と歯ぐきのすき間にできる病的な深い溝)」と呼ばれるすき間ができます。健康な人の溝はおおむね1〜3mm、4mm以上は歯周ポケットとして注意が必要とされています。 ここにさらに細菌が入り込み、深いところへと炎症と骨の吸収(骨が溶けて減ること)が進みます。これが「歯周炎」です。ここまで進むと、溶けた骨は基本的に自然には戻りません。 歯周病による組織の破壊は、細菌そのものの毒性だけでなく、「細菌に対する体の炎症反応」が大きく関わっていると考えられています。だからこそ、次のような炎症や体の状態に影響する要素が、歯周病の進みやすさを左右します。
  • 喫煙:最も重要なリスクのひとつ。血流や免疫を抑えて進行を早めるだけでなく、歯ぐきからの出血というサインを隠してしまうため発見が遅れがちで、治療への反応も悪くなる
  • 糖尿病:血糖値が高い状態では細菌に対する抵抗力が落ち、歯周病が進みやすくなる
  • ストレス:免疫の働きを下げ、間接的に炎症を悪化させやすい
  • 歯ぎしり・食いしばり:歯と支える骨に過剰な力がかかり、すでにある歯周病を悪化させやすい
なかでも喫煙の影響は大きく、「歯ぐきから血が出ないから大丈夫」と思い込んでいる喫煙者の方が、検査をしてみると進行していた、という例も少なくありません。

歯周病の進行段階:軽度・中等度・重度

歯周病は、進み具合によって大きく次のように整理できます。あくまで全体像をつかむための目安です。
  • 歯肉炎:炎症が歯ぐきだけにとどまり、骨はまだ溶けていない段階。出血や腫れがあるが、清掃により改善が期待できる可逆的な状態とされています。
  • 軽度歯周炎:歯周ポケットがやや深くなり、骨の吸収が始まった段階。自覚症状は乏しいことが多いとされています。
  • 中等度歯周炎:ポケットがさらに深くなり、骨が中程度まで失われた段階。歯ぐきの腫れや出血、口臭、歯ぐきが下がるなどの変化が出やすくなります。
  • 重度歯周炎:骨が大きく失われ、歯がぐらつく・歯が動く・噛みにくいといった症状が出る段階。膿が出たり、最終的に歯が抜けたりすることもあります。
重症度は、歯周ポケットの深さや、歯ぐきと歯のつながり(付着=歯ぐきが歯にくっついている部分)がどれだけ失われたか、レントゲンで見た骨の溶け具合などから総合的に判断します。 健康な歯ぐきの溝は概ね1〜3mm程度で、4mm以上は歯周ポケットとして注意が必要、6mm以上は深い(重度寄り)と扱われることが多いとされています。具体的な基準値の評価は診査によります。 近年は、欧米の学会が提唱した国際分類(2017年)が広く知られるようになりました。歯周炎を、進行度・複雑さで「ステージ(I〜IV)」、進行のリスクや速さで「グレード(A〜C)」に分け、喫煙や糖尿病の状態も加味して個別に評価する考え方が国際的に広がっています。 臨床の現場でも、単に重症度を見るだけでなく、「この人はこれから進みやすいか」というリスクの視点が重視されるようになっています。

歯科医院ではどうやって歯周病を調べるのか(検査)

歯周病の進行段階を示す図。健康な状態から軽度・中等度・重度へと歯周ポケットが深くなり骨が溶けて歯がぐらつくまでを比較した解説図
歯周病の状態を正しく把握するため、歯科では複数の検査を組み合わせます。見た目だけでは進行度が分からないため、数値で記録することが大切です。
  • 歯周ポケット検査(プロービング=細い目盛り付き器具で溝の深さを測る検査):先に目盛りの付いた細い器具(プローブ)を歯と歯ぐきのすき間にそっと入れ、ポケットの深さを1本の歯につき複数か所、ミリ単位で測ります。深いほど進行が疑われます。
  • 出血の確認:検査時に出血があるかどうかは、炎症が今あるかを知る重要なサインとされています。
  • 歯の動揺度:歯がどのくらいぐらつくかを調べ、支えの骨の状態を推測します。
  • レントゲン・歯科用CT:骨がどれだけ溶けているかを画像で確認します。立体的に見られるCTは複雑な骨の状態の把握に役立つとされています。
  • 歯垢の付着状態:どこに磨き残しがあるかを記録し、セルフケアの改善に役立てます。
臨床の現場では、これらの検査結果を一枚の記録(歯周組織検査表=歯ごとの数値を一覧にしたカルテ)にまとめ、治療の前後で比較します。検査と基本治療の中身については、歯周病の検査と基本治療(スケーリング・SRP)の解説でより詳しく取り上げています。 数字で見える化することで、治療がどれだけ効いているか、患者さん自身も実感しやすくなります。

歯周病治療の流れ:基本治療から外科治療・メンテナンスまで

歯周病の治療は、いきなり手術をするのではなく、段階を踏んで進めるのが基本です。原因である歯垢・歯石を取り除く「原因除去療法」が治療の土台になります。
  1. 検査・診断:ポケット検査やレントゲンなどで現状を把握します。
  2. 歯周基本治療:歯みがき指導(プラークコントロール=歯垢を毎日きちんと落とせるようにする練習)、歯ぐきの上に付いた歯石を専用器具で取るスケーリング、歯ぐきの中(ポケット内部)の歯根面の歯石・汚染層を取りなめらかに整えるSRP(スケーリング・ルートプレーニング/歯根の表面を掃除する処置)を行います。喫煙などの生活習慣への働きかけも含みます。
  3. 再評価:基本治療のあとにもう一度検査し、どれだけ改善したかを確認します。多くのポケットはこの段階で改善します。
  4. 歯周外科治療(必要な場合):基本治療で改善しきらない深いポケットや骨の欠損に対して、歯ぐきを切開してめくり、見えにくい深部の歯石や汚染組織を直接見ながら清掃する手術(フラップ手術)や、失われた組織の再生をはかる治療を検討します。
  5. かみ合わせの回復(必要な場合):噛み合わせの調整、ぐらつく歯の固定、失った歯を補う処置などを行います。
  6. メンテナンス(SPT=サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー/歯周病安定期治療):治った状態を保つために、数か月ごとに通って専門的な清掃と再検査を続けます。
このうち、治療の中心となるのが歯周基本治療です。毎日のセルフケアの質を上げ、歯ぐきの中の歯石や汚染された歯根面の汚れを丁寧に取り除くことで、多くの軽度〜中等度の歯周病は改善が期待できます。 非外科的な治療(SRP)によって、中等度のポケット(概ね4〜6mm)では平均して1〜2mm程度ポケットが浅くなり、歯ぐきの付着の改善が得られると報告されています。数値は判定基準や歯の状態によって幅があり、あくまで一般的な目安です。 臨床の現場では、どれだけ専門的な処置をしても、日々の歯垢が取り除かれなければ歯周病は再発・進行するという考え方が徹底されています。歯周病治療は「歯科で受ける治療」と「自宅でのセルフケア」の両輪で成り立っており、患者さん自身が主役になる治療だと言えます。

進行した場合の治療:歯周外科と再生療法

基本治療を行っても深いポケットが残ったり、骨の欠損が複雑だったりする場合には、歯周外科治療が検討されます。代表的な選択肢を、効果と注意点とあわせて整理します。
  • 歯周基本治療(SRP中心):歯肉炎〜中等度歯周炎の多くが対象です。体への負担が少なく保険適用で、多くの症例で改善が得られますが、深いポケットでは器具が届きにくく取り残しが生じることがあります。
  • 歯周外科治療(フラップ手術など):基本治療で改善しない深いポケットや骨欠損が対象です。歯ぐきを切開してめくり、歯根や骨を直接見ながら確実に清掃できるので改善が期待できます。一方で、外科処置のため術後の腫れ・痛み・歯ぐきが下がる(歯が長く見える)などのリスクや、1〜2週間程度の回復期間が必要です。
  • 歯周組織再生療法(失われた骨や歯ぐきの土台組織を取り戻すことを狙う治療):垂直的にくぼんだ特定の形の骨欠損が対象です。代表的な方法に、歯の発生に関わるたんぱく質を主成分とするゲルを骨欠損部に塗って組織再生を促す「エムドゲイン」、特殊な膜を骨欠損部にかぶせて骨や歯根膜が育つスペースを確保する「GTR(組織再生誘導法)」、人工骨や自家骨などを欠損部に詰めて新しい骨の足場をつくる「骨移植材」などがあります。失われた組織の一部の回復が期待できますが、適応できる骨欠損の形が限られ、効果には個人差や欠損の形による差があります。材料によっては自由診療(保険外)となり、費用は医院によって異なります。
  • 抜歯:支えの骨が大きく失われ、歯を残すのが難しい場合の選択です。抜いた後は入れ歯・ブリッジ・インプラントなどで補いますが、重度の歯周病の既往はインプラント周囲の炎症(インプラント周囲炎)のリスクにも関わるとされ、その後の管理が重要になります。
なお、歯周ポケットへの局所的な抗菌薬や、重度・特殊な症例での飲み薬の抗菌薬が補助的に用いられることがありますが、治療の基本はあくまで歯石や汚れを物理的に取り除くことです。抗菌薬だけで歯周病が解決するわけではなく、耐性菌の問題もあるため、安易な使用は推奨されないとされています。 臨床の現場では、できるだけ歯を残す方向で検討しますが、無理に残すことがかえって周囲の骨を失う原因になることもあり、検査にもとづいた見極めが重視されます。

費用と保険:どこまで保険でできるのか

日本では、歯周病の検査・基本治療・再評価・多くの外科治療・メンテナンス(SPT)が公的医療保険でカバーされ、自己負担は原則として医療費の1〜3割です。世界的に見ても患者さんの費用負担が比較的小さく、定期的なメンテナンスまで保険の枠組みのなかで受けられる点が、日本の特徴とされています。 一方で、歯周組織再生療法の一部の材料や、レーザーを使った処置、より時間をかけた予防的なケアなどは、自由診療(自費)となる場合があります。自由診療は効果に個人差・症例差があり、費用は全額自己負担で医院によって異なります。 選ぶ際には、費用や通院回数、主なリスク(必ず良くなるとは限らない、再発の可能性が残るなど)について十分な説明を受けたうえで判断することが大切です。 欧米では歯周治療やメンテナンスが自費中心で高額になりやすい国もあり、歯周病の専門医制度が確立している点が日本と異なります。日本では一般の歯科医が幅広く担当し、難しい症例を専門医や大きな医療機関へ紹介する流れがあります。

近年の考え方と、議論が続く点

近年は、歯周病を「重症度」だけでなく「これから進みやすいか」というリスクの視点で個別に評価し、一人ひとりに合わせて管理するという考え方が広がっています。歯周病に関わる口の中の細菌の解析や、全身の状態を組み込んだリスク評価の研究も進んでいます。 一方で、まだ議論が続く点もあります。たとえば、補助的に使う抗菌薬がどこまで有効かは症例によって評価が分かれ、限定的・慎重な使用が支持されています。 短期間で口全体を一気に処置する方法(フルマウス・ディスインフェクション)と、従来どおり部位を分けて進める方法のどちらが優れるかも、大きな差はないとする報告が多く、確立していません。また、歯周組織再生療法では、どの骨欠損にどの材料が最適かは研究が続いている領域で、効果は欠損の形に大きく左右されます。 すでに定まった知見と、今後変わりうる論点を分けて捉えると安心です。 近年とくに注目されているのが、歯周病と全身の病気との関係です。歯周病と糖尿病は互いに影響し合う双方向の関係にあることが知られ、歯周治療によって糖尿病の血糖の指標(HbA1c=過去1〜2か月の血糖の平均を表す数値)が平均で約0.3〜0.4%程度改善したとの報告もあります。数値は研究により幅があります。 歯周病と全身疾患(糖尿病・誤嚥性肺炎)の関係については、別ページで掘り下げて解説しています。心臓や血管の病気、誤嚥性肺炎(食べ物や唾液が誤って気管に入って起こる肺炎)などとの関連も研究されていますが、関連の強さは項目によって異なるため、慎重に受け止める必要があります。

今すぐできるセルフケアと避けたいこと

歯周病の治療と再発予防の土台は、毎日のセルフケアです。受診と並行して、自宅でできることがあります。
歯科医院での歯周病検査の図。歯科医師が細い器具で患者の歯周ポケットの深さを測り、出血や歯の動揺、骨の状態を調べる様子
  • 歯と歯ぐきの境目を意識して、やさしく丁寧に歯をみがく
  • 歯ブラシだけで届かない歯間は、歯間ブラシやデンタルフロスで清掃する
  • 歯科で自分に合った清掃方法の指導を受け、磨き残しを減らす
  • 喫煙している場合は、禁煙が治療効果や予後の改善につながるとされている
  • 糖尿病など全身の病気がある場合は、その管理もあわせて続ける
一方で、避けたほうがよいこともあります。
  • 出血を怖がって、歯ぐきの境目をみがかずに放置すること
  • 強い力でゴシゴシみがき、歯ぐきを傷つけたり下げたりすること
  • 歯ぐきが腫れて膿が出ているのに、市販薬でしのいで受診を先延ばしにすること
  • 痛みがないからと、検査やメンテナンスの通院を自己判断でやめること
これらは応急的・補助的な工夫であり、歯石や深いポケットの汚れそのものを取り除くものではありません。具体的な予防やメンテナンスのやり方は、歯周病の予防とメンテナンスの方法で詳しく紹介しています。

そのままにするとどうなる?

歯周病を放置すると、炎症と骨の吸収が静かに進み、歯周ポケットがさらに深くなっていきます。歯を支える骨が失われると、歯はぐらつき、噛みにくくなり、歯が動いて噛み合わせが崩れることもあります。急に歯ぐきが腫れて膿がたまる(歯周膿瘍)と、強い痛みを伴うこともあります。 そして最も大きな問題は、支えを失った歯が最終的に抜けてしまうことです。歯周病は、日本で成人が歯を失う原因の上位を占めるとされています。 前述のとおり、いったん溶けた骨は基本的に自然には戻らないため、進行してからでは選べる治療が限られ、回復にも手間がかかります。痛みが出にくいぶん、「症状がない=大丈夫」とは限らない点に注意が必要です。 歯ぐきの腫れが気になる方は、歯茎が腫れる原因について痛みの有無別にまとめた解説もあわせてご確認ください。

受診の目安と何科にかかるか

以下に当てはまる場合は、早めに歯科を受診しましょう。
  • 歯みがきのたびに歯ぐきから血が出る、歯ぐきの腫れが続く
  • 歯がぐらつく、歯が動いた・伸びた気がする
  • 歯ぐきから膿が出る、歯ぐきが腫れて痛む
  • 口臭やネバつきが気になる、しばらく歯科検診を受けていない
歯周病は一般の歯科で検査・治療を受けられます。重度の場合や外科的な再生療法が必要な場合は、歯周病を専門に扱う歯科医(日本歯周病学会の専門医など)や医療機関を紹介されることもあります。 糖尿病などの全身の病気がある方は、内科の主治医と歯科が連携して進めることが望ましいとされています。自覚症状がなくても、定期的に検査を受けることで、早い段階で見つけて軽い処置で済ませられる可能性が高まります。

治療後に大切なこと:メンテナンスで維持する

歯周病治療で見落とされがちなのが、治療後のメンテナンス(SPT)の重要性です。歯周病は再発しやすい慢性の病気で、いったん良くなっても、セルフケアが乱れたり通院をやめたりすると、再び進行することがあります。 長期の研究では、治療後に定期的なメンテナンスを続けた人は、中断した人に比べて歯を失うことが明らかに少なかったと報告されています。つまり、治療のゴールは「処置が終わること」ではなく、「良い状態を長く維持し続けること」にあります。定期的なメンテナンスでは、専門的な清掃に加えて、ポケットの深さや出血の有無を再検査し、変化を早めにとらえます。 一度歯周病で骨を失った歯は、再発のリスクが残るため、健康な状態を「保つための通院」が欠かせません。早期に発見し、適切に治療し、その後も維持していく。この一連の流れこそが、歯を長く残すうえで重要だと考えられています。

よくある質問

Q

歯周病は完全に治りますか

A

歯肉炎の段階であれば、適切な清掃で元の健康な状態に戻せることが多いとされています。一方、骨が溶けるまで進んだ歯周炎では、失われた骨は基本的に自然には戻らないため、目標は「進行を止めて安定させ、その状態を維持すること」になります。早い段階ほど良い状態を保ちやすいとされています。

Q

歯周病の治療は痛いですか

A

基本治療(歯石除去やSRP)は、必要に応じて麻酔を使うこともありますが、強い痛みを伴うことは多くありません。深いポケットや進行した部位では違和感が出ることもあります。外科治療では麻酔下で行い、術後に一時的な腫れや痛みが出ることがあります。

Q

治療にはどのくらい通いますか

A

歯周病は検査・基本治療・再評価と段階を踏むため、状態によりますが、安定するまで複数回の通院が一般的です。安定した後も、再発を防ぐために定期的なメンテナンスの通院が続きます。回数は進行度や歯の本数によって幅があります。

Q

歯石を取れば歯周病は治りますか

A

歯石除去は治療の重要な一部ですが、それだけで終わりではありません。歯ぐきの中の歯根面の清掃(SRP)や、毎日のセルフケア、再評価、必要に応じた外科治療やメンテナンスまでを含めて、はじめて進行を止めて維持できるとされています。

Q

歯周病は他の病気と関係ありますか

A

歯周病は糖尿病と互いに影響し合う双方向の関係にあることが知られ、歯周治療が血糖の指標の改善と関連したとの報告があります。心血管疾患や誤嚥性肺炎などとの関連も研究されていますが、関連の強さは項目により異なります。

Q

歯がぐらついていても残せますか

A

進行度によります。支えの骨がある程度残っていれば、治療や固定で残せる場合があります。骨が大きく失われている場合は保存が難しいこともあり、レントゲンや検査をもとに見極めます。無理に残すことが周囲に悪影響を及ぼすこともあるため、診査診断が前提です。

Q

電動歯ブラシや洗口液だけで予防できますか

A

道具は補助として役立ちますが、それだけで歯周病を予防・管理できるわけではありません。歯と歯ぐきの境目や歯間の歯垢を確実に取り除くことが基本で、歯科での定期的な検査と専門的清掃を組み合わせることが大切とされています。

まとめ

歯周病は、歯垢の中の細菌と体の炎症によって、歯を支える歯ぐきや骨が少しずつ壊されていく慢性の病気です。痛みが出にくいまま進むため、気づいたときには進行していることもあります。治療は、原因となる歯垢・歯石を取り除く基本治療を土台に、検査・再評価・必要に応じた外科治療、そして治った状態を保つメンテナンスへと段階的に進みます。失われた骨は自然には戻らないため、目標は「進行を止めて安定させ、維持すること」にあり、早い段階ほど良い状態を保ちやすいとされています。歯ぐきからの出血や腫れ、歯のぐらつきが気になる方、しばらく検査を受けていない方は、症状がなくても早めに歯科を受診し、自分の歯ぐきの状態を確認することをおすすめします。 個別のケースについては、歯周病の検査と基本治療歯周外科手術歯周病と全身の病気歯茎が腫れる原因とはもあわせてご覧ください。

関連する記事

糖尿病をお持ちの方は、糖尿病と歯周病の関係 もあわせてご覧ください。忙しさやストレスで歯ぐきの調子を崩しやすい方は、ストレスと歯周病の関係 もあわせてご覧ください。

参考・出典

  • 日本歯周病学会「歯周治療のガイドライン」「歯周病学用語集」
  • 日本歯周病学会・関連学会「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット(歯周病・歯肉炎・歯垢・歯石に関する解説)
  • 厚生労働省「歯科疾患実態調査」(歯周ポケット保有者割合等の有病状況)
  • MSDマニュアル(家庭版・プロフェッショナル版)「歯周炎」「歯肉炎」
  • American Academy of Periodontology(AAP)/European Federation of Periodontology(EFP):2017年版 歯周病の新分類(ステージ/グレード)、治療ガイドライン
  • World Health Organization(WHO)口腔保健に関する報告、GBD研究の歯周病有病データ
  • 非外科的歯周治療(SRP)・歯周外科・再生療法の効果に関する系統的レビュー/メタアナリシス(Journal of Clinical Periodontology、Journal of Periodontology 等)
  • 歯周治療と糖尿病(HbA1c)に関する Cochrane Systematic Review/メタアナリシス
(注:記載の数値は追跡期間や条件で変わる一般的な目安です。具体的な数値や最新版の確認は監修医が行っています。)
歯周病治療の流れを示す図。検査・診断から歯周基本治療、再評価、必要に応じた外科治療、そして維持のためのメンテナンスまでを段階的に並べた解説図

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

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