歯周組織再生療法とは|リグロス・エムドゲインの効果と適応

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年7月3日監修:村井亮介(DDS, MSD(米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)/日本補綴歯科学会 会員)

「歯周病で溶けた骨は元に戻らない」——歯周病について調べた方なら、一度は目にする言葉だと思います。基本的にはその通りなのですが、条件がそろえば、失われた骨や歯の支えの一部を取り戻すことを狙える治療があります。それが歯周組織再生療法です。

「リグロス」「エムドゲイン」という薬剤の名前を歯科医院で聞いて、このページにたどり着いた方も多いかもしれません。名古屋市内(中区・栄・名古屋駅周辺)をはじめ愛知・東海エリアでも、リグロスの保険適用以降、再生療法は以前より身近な選択肢になっています。
歯周組織再生療法とはのイメージイラスト
このページでは、歯周組織再生療法とはどんな治療か、リグロスとエムドゲインの違い、どんな骨欠損に適応となるのか、効果はどこまで期待できるのか、治療の流れと費用、限界と注意点までを、日本歯周病学会やAAP(米国歯周病学会)の知見をもとに整理します。歯周病治療の全体像は歯周病治療とは|症状の進行と治療法をご覧ください。 適応かどうかの判断には精密検査が必要です。全体像をつかむための目安としてお読みください。

先に結論:再生療法は「条件が合えば」支えの一部を取り戻せる治療です

歯周組織再生療法は、歯周病で失われた歯周組織(骨・歯根膜・セメント質)の再生を促す治療で、フラップ手術(歯ぐきを開く手術)と同時に行われます。ポイントは次のとおりです。
  • すべての歯周病に使えるわけではなく、垂直的にくぼんだ形の骨欠損が主な適応
  • 日本ではリグロスが保険適用。エムドゲインは自費(1部位5〜15万円程度が目安)
  • 失われた組織の「一部」の回復が期待できる治療で、元通りに戻す治療ではない
  • 効果には個人差・部位差があり、喫煙は成功率を大きく下げる
  • 抜歯と言われた歯を残せる可能性を広げる選択肢のひとつになりうる
「再生」という言葉から魔法のような治療を想像しがちですが、実際には適応の見極めと術後の管理がすべてと言ってよい、緻密な治療です。

【早見表】主な再生療法の材料・方法の比較

方法中身保険適用費用目安
A リグロス細胞を増やす成長因子(bFGF)の薬剤。骨欠損部に塗布あり3割負担で手術含め1〜2万円台程度
B エムドゲイン歯の発生に関わるたんぱく質(エナメルマトリックス)のゲルなし(自費)1部位5〜15万円程度
C GTR法特殊な膜で骨や歯根膜が育つスペースを確保条件により保険適用あり保険〜自費(5〜15万円程度)
D 骨移植材自分の骨や人工骨を欠損部に詰めて足場をつくる材料により異なる保険〜自費。上記と併用されることも多い

なぜ骨は「勝手には」戻らないのか:再生療法の仕組み

歯周病で骨が失われた部位をフラップ手術で清掃すると、歯ぐきの傷は治りますが、骨が元の高さまで戻ることは基本的にありません。理由は、組織ごとの治るスピードの差にあります。 歯ぐきの上皮(表面の組織)は治りが非常に速く、骨や歯根膜(歯と骨をつなぐクッションのような組織)が再生するより先に、欠損部へ入り込んで埋めてしまいます。その結果、骨が育つはずだったスペースがなくなってしまうのです。 再生療法は、この「早い者勝ち」の競争をコントロールする治療です。GTR法は膜でスペースを物理的に守り、リグロスやエムドゲインは、骨や歯根膜のもとになる細胞の増殖・分化を薬剤の力で後押しします。いずれも、体が本来持っている治る力を、骨や歯根膜に有利な方向へ導くという発想です。

リグロスとエムドゲイン:何が違うのか

現在の日本で代表的な2つの薬剤を整理します。 リグロス(一般名:トラフェルミン)は、細胞を増殖させる成長因子bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)を主成分とする日本発の薬剤で、2016年に世界に先駆けて歯周組織再生の医薬品として承認され、保険適用となりました。もともと床ずれなどの治療薬として使われてきた成分で、細胞の増殖と血管の新生を促すことで骨の再生を後押しします。国内の臨床試験では、従来の手術のみと比べて骨の増加率が有意に高かったと報告されています。 エムドゲインは、子どもの歯が生えてくるときに働くたんぱく質(エナメルマトリックスデリバティブ)を主成分とするスウェーデン生まれのゲルで、世界で20年以上使われ、長期データが豊富です。歯が発生する環境を再現することで、セメント質・歯根膜・骨を含めた歯周組織の再生を促すとされています。日本では保険適用外のため自費診療となります。 どちらが優れているかについては、直接比較した研究で臨床成績に大きな差はなかったとする報告が多く、現状では「保険で受けられるか」「医院の経験・方針」「骨欠損の状態」で選択されるのが実際です。骨移植材と組み合わせて使われることもあります。

適応となる骨欠損・ならない骨欠損

再生療法の成否を最も左右するのが、骨欠損の「形」です。
  • 適応になりやすい:垂直性骨欠損(骨が縦にくぼむように失われ、周囲に骨の壁が残っている形)。壁が多く、深くて狭い欠損ほど、再生のスペースが保たれやすく成績が良いとされています。
  • 適応になりにくい:水平性骨欠損(骨全体が平らに下がった形)。再生した組織を支える壁がなく、現在の技術では十分な再生が難しいとされています。
  • 条件付き:奥歯の根の股に進んだ病変(根分岐部病変)は、程度が軽ければ適応となる場合があります。
このほか、歯のぐらつきが強すぎないこと、全身状態(コントロールされていない糖尿病がないこと)、そして喫煙していないことが重要な条件になります。喫煙は組織の血流と治る力を落とし、再生療法の成功率を明確に下げると報告されており、禁煙が前提とされることも少なくありません。 適応かどうかは、歯周ポケット検査・レントゲン・歯科用CTで骨欠損の形を立体的に把握して判断します。「抜歯しかない」と言われた歯でも、欠損の形によっては再生療法で保存の可能性が出てくる場合があり、詳しくは重度歯周病でも歯を残せる?抜歯と言われたときの選択肢で解説しています。

治療の流れ:手術から治癒まで

再生療法は単独の処置ではなく、フラップ手術の中で行われます。手術自体の詳しい流れや痛みについては歯周外科手術(フラップ手術)とは|流れ・痛み・費用をご覧ください。
  1. 基本治療と再評価:まずSRP(歯ぐきの中の歯石除去)を含む歯周基本治療を行い、炎症を落ち着かせたうえで、残った骨欠損を評価します。
  2. 手術:局所麻酔をして歯ぐきを開き、骨欠損部の歯石や炎症組織を徹底的に清掃します。
  3. 薬剤の応用:清掃した骨欠損部にリグロスやエムドゲインを塗布(必要に応じて骨移植材や膜を併用)し、歯ぐきを戻して縫合します。
  4. 抜糸・経過観察:1〜2週間で抜糸。以降、数か月かけて組織の再生を待ちます。
  5. 再評価とメンテナンス:骨の変化はレントゲンで半年〜1年ほどかけて確認し、メンテナンス(SPT)で維持します。
再生には時間がかかります。手術翌日に骨が増えるわけではなく、成果が画像で確認できるまで半年以上かかるのが普通です。その間のセルフケアと通院が、結果を大きく左右します。

効果はどこまで期待できるか、そして限界

系統的レビューでは、再生療法は従来のフラップ手術単独と比べて、ポケットの深さの改善や歯ぐきの付着の獲得が平均して1mm前後上回ると報告されています。数字だけ見ると小さく感じるかもしれませんが、抜歯を検討するような深い骨欠損で支えが数ミリ回復することは、歯の寿命にとって意味のある差になりえます。 一方で、限界も明確です。失われた骨がすべて戻るわけではなく、効果は欠損の形・部位・患者さんの条件によって幅があります。適応外の欠損に行っても効果は期待できません。また、再生した組織も歯周病の再発で再び失われるため、術後のメンテナンスを欠かすことはできません。「再生療法を受けたから安心」ではなく、「取り戻した支えを守り続ける」ことがセットの治療です。

費用と保険:リグロスなら保険で受けられます

リグロスを用いた再生療法は、フラップ手術とあわせて公的医療保険が適用され、3割負担で1回あたりおおよそ1〜2万円台が目安です(検査・薬代等は別途)。エムドゲインや一部の骨移植材・膜を使う場合は自費診療となり、1部位あたり5〜15万円程度が相場とされますが、範囲や材料で変わるため、事前に見積もりを確認してください。 自費の再生療法は医療費控除の対象となる場合があります。領収書を保管し、詳細は税務署等でご確認ください。 なお、保険でリグロスを使う場合にも、歯周基本治療と再評価を経ていることなどの算定条件があります。「保険でできるか」は骨欠損の状態と治療の経過によって決まるため、費用の見通しは検査後に確認するのが確実です。

よくある質問

リグロスとエムドゲイン、どちらを選べばよいですか

臨床成績に大きな差はないとする報告が多く、まずは保険適用のリグロスが選択肢になることが一般的です。骨欠損の形や併用材料、医院の経験によって推奨が変わるため、提案された場合は「なぜその材料か」の説明を受けて選ぶとよいでしょう。

再生療法は痛いですか

局所麻酔下で行うため、手術中の強い痛みは通常ありません。術後は痛みや腫れが数日出ることがありますが、痛み止めで対応できる程度のことが多いとされています。フラップ手術と同程度と考えてください。

何歳でも受けられますか

年齢そのものより、全身状態と口の中の条件が重要です。コントロールされた持病であれば高齢の方でも受けられる場合があります。逆に若くても、喫煙中や血糖コントロール不良の場合は成功率が下がるため、先にその改善が求められることがあります。

骨が再生したかどうかはいつ分かりますか

レントゲンで骨の変化を確認できるまで、一般に半年〜1年程度かかります。ポケットの深さや出血の改善は数か月の再評価で確認します。焦らず経過を追うことが大切です。

名古屋で再生療法を受けられる医院はどう探せばよいですか

リグロスは保険適用のため、対応する歯科医院は名古屋市内(中区・栄・名古屋駅周辺)や愛知県内にも広がっています。ただし適応の見極めと手技の精度が結果を左右する治療のため、日本歯周病学会の認定医・専門医の在籍や、CTでの診断体制、症例経験を確認して選ぶことをおすすめします。難症例は大学病院へ紹介されることもあります。

歯ぐきが下がったのも再生療法で治せますか

骨の再生療法とは別に、下がった歯ぐきに対しては歯肉移植などの歯周形成手術が検討されます。原因や状態によって方法が異なるため、歯茎が下がる原因と対処を参考に、まず診断を受けてください。

まとめ

歯周組織再生療法は、歯周病で失われた骨や歯根膜の一部を取り戻すことを狙える、現時点で唯一の方向性を持つ治療です。日本では保険適用のリグロスと自費のエムドゲインが代表的で、垂直的な骨欠損という条件がそろえば、抜歯と言われた歯の保存の可能性を広げてくれます。一方で、すべての欠損に使えるわけではなく、効果には幅があり、喫煙や術後のケア不足は結果を損ないます。大切なのは、精密な検査にもとづく適応の見極めと、取り戻した組織を守るメンテナンスの継続です。「骨が溶けている」と言われた方は、あきらめる前に、ご自身の骨欠損が再生療法の適応かどうか、検査データをもとに歯科医師へ確認してみてください。
歯周組織再生療法とはに関する予防・ケアのイメージイラスト
再生療法を含む外科処置を受けられる条件は歯周外科は誰でも受けられる?適応にならないケースと判断の基準で整理しています。切開する処置としない処置の違いは歯周ポケット掻爬術とフラップ手術の違い|切開する治療としない治療をご覧ください。 なお、再生療法で実際にどれくらい骨が回復するのか、どんな減り方なら見込みがあるのかについては歯周病で溶けた骨は元に戻る?再生できるケースとできないケースで詳しく整理しています。

参考・出典

  • 日本歯周病学会「歯周病患者における再生治療のガイドライン」「歯周治療のガイドライン」
  • リグロス(トラフェルミン)添付文書・承認情報(科研製薬/PMDA)、国内第III相臨床試験の報告
  • エムドゲイン(エナメルマトリックスデリバティブ)に関する長期臨床研究・系統的レビュー
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット(歯周病に関する解説)
  • American Academy of Periodontology(AAP):歯周組織再生に関するベストエビデンスコンセンサス
  • European Federation of Periodontology(EFP):S3レベル臨床ガイドライン(再生療法の適応)
  • 骨欠損形態と再生療法の成績、喫煙の影響に関する系統的レビュー/メタアナリシス(Journal of Clinical Periodontology 等)
(注:記載の費用・数値は一般的な目安です。適応や最新情報の確認は監修医が行っています。)
歯周組織再生療法とはの解説イラスト

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

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