歯がしみる原因とは|知覚過敏と虫歯の見分け方

歯がしみる仕組み(象牙質の細管を液体が動いて神経を刺激する動水力学説)と、知覚過敏と虫歯を見分ける手がかりが「しみが続く時間」であることをまとめた解説図

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年5月4日監修:村井亮介(DDS, MSD(米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)/日本補綴歯科学会 会員)

冷たい水を口に含んだとき、甘いものを食べたとき、歯みがきのときに「キーン」と歯がしみる。そんなとき、「これは虫歯なのか」「知覚過敏なのか」「放っておいて大丈夫なのか」と気になるものです。

歯がしみる原因はひとつではありません。知覚過敏・虫歯・歯ぐきが下がること(歯肉退縮=しにくたいしゅく)・歯周病・歯のひびなど、いくつもの可能性があります。そして見分けの大切な手がかりは、意外にも「しみが何秒で消えるか」という持続時間にあります。すぐ消えるなら軽い段階のことが多く、続くようなら神経の炎症が進んでいる可能性が高くなります。
歯がしみる仕組み(象牙質の細管を液体が動いて神経を刺激する動水力学説)と、知覚過敏と虫歯を見分ける手がかりが「しみが続く時間」であることをまとめた解説図
このページでは、歯がしみるときに口の中で何が起きているのか、知覚過敏と虫歯をどう見分けるのか、原因ごとの治療法や成功率、自分でできる対処までを、厚生労働省e-ヘルスネットや学会のガイドライン、国内外の研究をもとにわかりやすく整理します。しみ方には個人差があり、最終的な診断には歯科医院での診査が必要ですので、受診を検討する際の参考としてお役立てください。

先に結論:こんなときは早めに受診を

冷たいものでしみても、刺激を取り除けば数秒で消えるなら、知覚過敏や軽い段階のことが多いと考えられています。一方で、次のいずれかに当てはまる場合は、知覚過敏だけでは説明しにくく、虫歯の進行や神経の炎症などが隠れている可能性があるため、早めに歯科を受診することをおすすめします。
  • 刺激を取り除いても、しみる痛みがしばらく続く
  • 熱いものでしみる、じーんと響くように痛む
  • 何もしていないのにズキズキ痛む(自発痛)、夜に痛みが強くなる
  • 特定の歯で噛んだときにしみる・痛む
  • 歯ぐきが腫れている、膿が出る、発熱がある
  • 市販の知覚過敏用歯みがき剤を数週間使っても改善しない
臨床の現場では、しみが「一過性か、続くか」を、神経を残せる段階かどうかを見極める最初の手がかりとして重視します。しみが一時的におさまっても原因が消えたとは限らないため、気になるサインがあるうちに確認しておくことが、結果的に歯と神経を守ることにつながります。

【セルフチェック】あなたのしみる症状はどのタイプ?

しみる原因はいくつかに分類できます。下の早見表で当てはまるタイプを見つけ、続く解説で詳しく確認してください。
タイプ症状の特徴主な原因緊急度主な治療
A冷たい水でキーンと一瞬しみる知覚過敏/初期〜中等度の虫歯知覚過敏処置・MI修復
B甘いもの・酸っぱいものでしみる中等度の虫歯/酸蝕症コンポジット修復
C歯みがき・歯ぐきの根元がしみる歯肉退縮による象牙質露出低〜中知覚過敏コーティング・根面被覆
D治療した歯が後からしみる術後一過性/歯髄炎経過観察・場合により根管治療
E熱いものでしみる・痛みが長く続く不可逆性歯髄炎(神経の炎症)根管治療

なぜ歯はしみるのか(メカニズム)

歯は、表面から順にエナメル質(外側の硬い層)、その内側の象牙質(ぞうげしつ=歯の本体をなす層)、中心の歯髄(しずい=神経と血管のかたまり)という三つの層でできています。歯ぐきの中の根の部分は、エナメル質ではなくセメント質という薄い層に覆われています。 エナメル質には神経が通っておらず、この外側の硬い層が守っているあいだは、冷たい・甘いといった刺激が神経まで伝わりにくくなっています。いわば「鎧(よろい)」で神経を守っているイメージです。 ところが、内側の象牙質には象牙細管(ぞうげさいかん)という無数の細いトンネルが走り、中を満たす組織液(細胞のあいだを満たす水分)を通じて神経とつながっています。エナメル質やセメント質が失われて象牙質がむき出しになると、冷たい・甘い・酸っぱい・歯ブラシが触れるといった刺激で細管の中の液体が動きます。その急な流れが神経を刺激して「キーン」とした鋭い痛みが一瞬走る、と考えられています。これは動水力学説(どうすいりきがくせつ/液体の動きで痛みが伝わるという説)と呼ばれる考え方で、知覚過敏や中等度までの虫歯のしみる仕組みとして広く支持されています。 たとえるなら、象牙質は細いストローの束のようなもので、ふだんは栓(エナメル質)でふさがれています。栓が外れて口が開くと、外からの刺激が中の液体を動かし、その流れが奥の神経に伝わる、というイメージです。だからこそ、しみを抑える治療は「細管の口をふさぐ(穴に栓をするイメージ)」か「神経の感じ方をなだめる(鎮静剤のようなイメージ)」という二つの方向で考えられます。 象牙質が露出する経路はいくつかあります。具体的には、(1)歯ぐきが下がって根の部分が出てくる、(2)硬い歯ブラシでの磨きすぎでエナメル質が削れる、(3)酸性の飲食物(炭酸飲料・柑橘・酢など)でエナメル質が溶ける(酸蝕=さんしょく)、(4)虫歯やひびで欠ける、といったケースです。 一方、虫歯が象牙質まで進むと、それ自体が刺激の通り道になり、冷たいものや甘いものでしみます。さらに虫歯が神経に近づいて炎症(歯髄炎=しずいえん)が起きると、しみは次のように性質を変えていきます。
  • 初期:刺激のときだけ一瞬しみて、すぐ消える
  • 中期:刺激のあともしばらく痛みが続く
  • 進行期:何もしなくてもズキズキ痛む、夜に痛みが強くなる
つまり、しみ方の変化はそのまま「神経が今どの段階にあるか」を示すサインなのです。「一瞬で消える」か「続く」かの違いは、見た目の派手さよりずっと大きな意味を持ちます。

しみ方でわかる手がかり(セルフチェック)

しみる「刺激の種類」と「続く時間」は、原因を推測する手がかりです。目安として、次のように整理できます。
  • 冷たいもの・甘いものでキーンとしみるが、すぐ消える:知覚過敏や初期から中等度の虫歯の可能性(比較的軽い段階のことが多い)。
  • 歯みがきのときや、歯ぐきが下がった部分がしみる:歯肉退縮による知覚過敏の可能性。
  • 刺激を取り除いても痛みが続く、熱いものでしみる、何もしないのにズキズキする:神経の炎症が進んだ可能性(不可逆性歯髄炎)。受診の優先度が高い。
  • 特定の歯で噛んだときだけしみる・痛む:虫歯や歯のひび(亀裂)の可能性。
  • 歯ぐきの腫れ・膿・発熱を伴う:虫歯の進行や歯周・根の感染を疑うサイン。
同じ「しみる」でも背景は変わります。冷たいものがしみる場合の見分けと対処は、冷たいものがしみる原因と知覚過敏の対処法 で、歯みがきのときにしみる・歯ぐきが下がってきたと感じる方は、歯磨きでしみる・歯茎が下がる原因と対策 もあわせてご確認ください。

知覚過敏と虫歯の見分け方:いちばんの分かれ目は「続く時間」

「しみる=虫歯」と思われがちですが、虫歯がなくてもしみる代表が象牙質知覚過敏です。これは虫歯ではないのに、露出した象牙質への刺激で一過性にしみる状態で、成人ではおおむね25〜30%程度(調査方法によっては10%台から40%を超える報告まで幅があります)とされます(出典:象牙質知覚過敏の有病率に関する疫学研究・系統的レビュー。数値の範囲が大きく、最終的には監修者が確認します)。 知覚過敏と虫歯を見分ける最大のポイントは、しみの「持続時間」です。
  • 知覚過敏:冷たいもの・甘いもの・歯ブラシなどでしみるが、刺激を取り除くと1〜2秒ほどで消える。歯に大きな穴や変色がないことが多い。
  • 虫歯:冷たいもの・甘いものでしみるのは似ているが、進行すると刺激を取り除いた後もしみが続いたり、噛むと痛んだりする。歯の溝や歯と歯のあいだ、詰め物の境目に黒ずみや欠けがあることがある。
  • 神経の炎症(歯髄炎):しみが「続く痛み」「熱いものでしみる」「何もしなくてもズキズキする」へ変わっていく。ここまで来ると神経を残しにくい段階のことがある。
ただし、見た目だけでは虫歯と知覚過敏を完全には区別できません。知覚過敏は「ほかにしみる原因(虫歯・ひび・神経の炎症)がないこと」を確かめたうえでの診断という側面があり、自己判断で決めて放置すると、隠れた虫歯やひびを見逃すことがあります。臨床の現場でも、知覚過敏と決めつける前に、レントゲンや歯の検査で状態を確認することが重視されます。

しみる原因の分類:知覚過敏・虫歯・歯周病・その他

しみる症状の背景には、いくつかの状態があります。代表的なものを整理します。
象牙質が露出した歯の断面の模式図。むき出しの象牙細管の中を組織液が動き、その流れが中心の歯髄(神経)を刺激してしみる様子
象牙質知覚過敏 虫歯がないのに、露出した象牙質への刺激でしみます。歯肉退縮、磨きすぎによるエナメル質の摩耗、酸蝕、歯ぎしりなどが背景にあり、多くは低侵襲な対処で改善が期待できます。

虫歯(う蝕)

エナメル質を越えて象牙質に達した虫歯では、冷たいもの・甘いものでしみます。進行度はC0(ごく初期)からC3(神経に達する)などで表され、進むほど治療の範囲が大きくなります。進行度ごとの治療内容は、虫歯治療の方法・費用・進行度を歯科医が解説 でくわしく扱っています。

歯肉退縮・歯周病

歯ぐきが下がって根の象牙質が露出すると、知覚過敏が起きやすくなります。歯周病が進むと歯ぐきが下がりやすく、しみと歯ぐきの炎症が重なることもあります。歯周病の進行と治療については、歯周病治療とは|症状の進行と治療法を解説 を参考にしてください。

咬耗・摩耗・酸蝕・くさび状欠損

強い噛む力や歯ぎしり、磨きすぎ、酸性の飲食物などでエナメル質が失われ、象牙質が露出してしみることがあります。歯の根もと(歯頸部)がえぐれる「くさび状欠損」もこのグループです。

歯のひび・亀裂

歯にひびが入ると、噛んだ瞬間や特定の刺激でしみる・痛むことがあり、診断が難しいことがあります。

治療後・ホワイトニング後の一過性のしみ

虫歯を削った後や詰め物の境目、ホワイトニング薬剤の作用で、神経が一時的に過敏になりしみることがあります。多くは時間とともに落ち着くとされます。治療後にしみる理由やいつまで続くのかは、虫歯治療後に歯がしみる理由といつまで続くか でくわしく解説しています。 注意したいのは、神経が完全に死んでしまうと、かえってしみを感じなくなる場合があることです。しみが急に消えても治ったとは限らず、内部で炎症や感染が進んでいることもあるため、強い痛みのあとに急に楽になった場合は一度確認しておくと安心です。

歯科医院ではどうやって原因を調べるのか(検査)

しみる原因を見極めるため、歯科では複数の検査を組み合わせ、結果を総合して判断するのが一般的です。
  • 問診:いつから、どんな刺激(冷・温・甘・酸・歯ブラシ)でしみるか、刺激を取り除いて何秒で消えるか、自発痛や夜間痛があるか、歯ぎしり・食いしばり・酸性の飲食・ホワイトニング歴など。しみの持続時間は重要な手がかりです。
  • 視診・探針:露出した象牙質、歯の根もとのえぐれ、虫歯、詰め物の境目、歯ぐきの下がり具合を確認します。
  • 歯髄の生活反応の検査:冷たい刺激や微弱な電気を使い、神経が生きているか・反応が過敏かを確認します(温度診、歯髄電気診)。可逆性か不可逆性かの判断材料になります。
  • 打診・咬合・ひびの確認:軽く叩いて響くか、特定の噛み方でしみるか、ひびがないかを調べます。
  • 歯周検査:歯周ポケットの深さ、歯ぐきの下がり、出血の有無を確認します。
  • レントゲン・歯科用CT(CBCT):虫歯の深さ、根の先の病変、ひびの有無などを画像で確認します。立体的に見られるCTは、通常のレントゲンでは分かりにくい病変の把握に役立つとされています。
臨床の現場では、しみの強さだけで原因を決めず、これらの検査と画像所見を合わせて、知覚過敏か、虫歯やひびか、神経の炎症かを見極めます。

原因別の治療法と成功率の目安

しみる症状への対応は、原因によって大きく異なります。軽いものから順に、代表的な選択肢を整理します(数値は判定基準や追跡期間によって幅があり、あくまで一般的な目安です)。

知覚過敏への対応(低侵襲なものから)

まずはセルフケアと歯科での処置で、しみの伝わりを抑える方向で考えます。
  • 知覚過敏用の歯みがき剤:神経の興奮を抑える成分(硝酸カリウム)や、象牙質の細管をふさぐ成分(フッ化物・乳酸アルミニウム等)配合のものを継続して使います。効果は数週間の継続使用で実感されることが多いとされます。
  • やさしいブラッシング:力を入れすぎず、硬すぎない歯ブラシを使い、エナメル質や歯ぐきへの負担を減らします。
  • 歯科での処置:フッ化物の塗布、知覚過敏抑制材(コーティング材)の塗布、露出面を樹脂で覆う処置など。重度や難治例ではレーザーや歯ぐきを補う処置が検討されることもあります。
知覚過敏は多くの場合こうした低侵襲な対応で軽快が期待できますが、虫歯やひびを除外したうえでの対応が前提です。

虫歯でしみる場合

進行度によって対応が変わります。
  • ごく初期(C0〜C1):削らずにフッ素塗布や経過観察で、歯が自分で修復する力(再石灰化)を促す対応が選択されることがあります(出典:う蝕治療ガイドライン、e-ヘルスネット)。
  • 中等度(象牙質に及ぶC2):虫歯を取り除き、詰め物(コンポジットレジン等)で修復します。保険適用です。
  • 深い虫歯(神経に近い・露出するC3相当):神経を残す治療(覆髄)か、神経の処置(根管治療)かを、検査をもとに判断します。
早い段階ほど治療は小さくすみ、神経も残しやすくなります。

神経を残す治療(直接覆髄=ちょくせつふくずい・歯髄温存療法)

これは、虫歯を削った際に神経がわずかに露出してしまった場合などに、薬剤でフタをして神経を残す方法です。神経の炎症がまだ「治る範囲(可逆性)」にとどまっているときに選択されます。 使う材料によって成績に差があります。
  • MTAやバイオデンティンなどの生体材料(歯と相性のよい新しい素材):報告によりおよそ6か月91%・1年86%・2〜3年84%前後
  • 従来の水酸化カルシウム(古くから使われてきた薬剤):6か月74%・1年65%・2〜3年59%前後
近年のメタアナリシス(複数研究の統合解析)では、生体材料が推奨される傾向にあります(出典:直接覆髄に関する系統的レビュー・メタアナリシス、AAE 歯髄温存療法ポジションステートメント)。具体例でいえば、神経すれすれまで深く進んだ虫歯を削った直後、ピンポイントで神経が顔をのぞかせたような場面で、こうした薬剤でフタをして神経を温存します。 ただし、これらの研究の多くは不可逆性歯髄炎(神経の炎症が後戻りできない段階)を除外しており、正確な診断が前提である点が重要です。「どのケースなら神経を残せるか」の見極めが、結果を大きく左右します。

根管治療(神経を取る/感染した根の中を清掃する治療)

しみが進んで神経を残せない場合に行います。非外科的根管治療の成功率は、判定基準により概ね74〜85%、歯そのものの生存率は4〜7年で約92%、8〜20年で約87%と報告されています。長期の追跡研究では、生存率が10年で約97%、20年で約81%といった数字も示されています。一度治療した歯の再治療(再根管治療)の成功率は概ね76〜78%とされ、初回よりやや下がります(出典:International Endodontic Journal 等の系統的レビュー・メタアナリシス、長期の追跡研究)。

歯肉退縮・歯周病、咬耗・摩耗・酸蝕、ひびでしみる場合

歯肉退縮(歯ぐきが下がること)・歯周病が原因なら、歯石除去などの歯周基本治療、ブラッシング圧(磨く力)の見直し、知覚過敏抑制材の塗布で対応します。歯ぐきの下がりが大きい場合は、歯ぐきを補う外科的処置(歯肉移植など)が検討されることもあります(自由診療になる場合があります)。 咬耗(こうもう=噛み合わせで歯がすり減る)・摩耗(まもう=歯ブラシ等で物理的に削れる)・酸蝕(さんしょく=酸で溶ける)の場合は、歯ぎしりや磨きすぎ、酸性の飲食といった原因への対処が先決です。そのうえで、欠けた部分を樹脂(コンポジットレジン)で修復したり、就寝時にマウスピース(ナイトガード)を使って歯ぎしりから歯を守ったりします。 ひびや破折(割れ)は程度により接着治療・かぶせ物で対応し、根まで割れて保存できない場合は抜歯となることもあります。「どこまで保存できるか」は、ひびの深さと位置によって決まります。
知覚過敏と虫歯を見分ける比較図。知覚過敏は短時間で消えるしみ、虫歯は穴や変色を伴いしみが続く様子を対比
費用と保険の目安 虫歯治療、根管治療、歯周基本治療、フッ化物塗布や知覚過敏抑制材などには、保険が適用される範囲があります。 一方、歯ぐきを補う外科処置(歯肉移植など)や、ラバーダム(治療する歯だけをゴムのシートで隔離し、唾液や細菌の侵入を防ぐ方法)・マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を用いた精密な根管治療、ホワイトニングは、自由診療となることが多く、費用は自己負担で医院によって異なります。自由診療を選ぶ場合は、費用と主なリスクの説明を受けたうえで判断することが大切です。 臨床の現場では、できるだけ削らず神経を残す方向で検討します。ただし無理に残すと再発につながることもあるため、診査診断にもとづく見極めが重視されます。「残せるかどうか」は希望ではなく、検査結果が決めます。

近年の考え方と、議論が続く点

近年は、しみる症状に対しても「できるだけ削らない・神経を残す」という低侵襲(minimal intervention)の考え方が広がっています。象牙質の細管をふさぐ材料の改良が進んで知覚過敏ケアの選択肢が増え、神経に近づいた虫歯でも、MTAやバイオデンティンといった生体材料の登場で以前より神経を残せるケースが増えたとされ、各国のガイドラインでも生体材料の使用が支持されています。 なお、専門家の間で検討が続くテーマもあります。知覚過敏は「ほかの原因がないこと」を確かめたうえでの診断という側面が強く、虫歯やひび、神経の炎症との見分けが難しい症例があります。有病率の数字も調査方法によって幅が大きく、正確な割合は確定しにくいのが実情です。さらに、神経が生きているかを判定する検査(温度診・電気診)の精度にも限界があります。確立した内容(生体材料が水酸化カルシウムより成績が良い等)と、これから定まっていく論点を分けて理解しておくとよいでしょう。

自分でできる応急的な対処:やって良いこと・避けたいこと

しみる症状をやわらげ、悪化させないために、自宅でできることがあります。まず、やって良いことです。
  • 知覚過敏用の歯みがき剤を、毎日続けて使う(数週間の継続で実感されることが多いとされます)
  • 力を入れすぎず、やわらかめの歯ブラシでやさしく磨く
  • 冷たい・甘い・酸っぱいなど、しみる刺激の強い飲食物を一時的に控える
  • 酸性の飲み物を口に長くためない、だらだら飲みを避ける
  • 歯ぎしり・食いしばりの自覚がある場合は、歯科でマウスピースを相談する
反対に、避けたほうがよいこともあります。
  • 気になるからと、ゴシゴシ強く磨く(かえって象牙質や歯ぐきを傷め、しみが悪化しやすい)
  • 酸っぱいものを食べた直後にすぐ歯を磨く(エナメル質がやわらいだ状態で削れやすい)
  • 市販薬や知覚過敏用歯みがき剤でしのいだまま、しみが続くのに受診を先延ばしにする
  • 「知覚過敏だろう」と自己判断で決めつけ、虫歯やひびを見逃す
これらはあくまで一時的・予防的な対処であり、虫歯・歯周病・ひびが原因の場合はセルフケアでは治りません。

放置するとどうなるか

しみる症状を放置すると、原因によってさまざまな経過をたどります。知覚過敏でも、磨きすぎや酸蝕が続けばエナメル質の摩耗が進み、しみが強くなることがあります。虫歯が原因の場合は、進行して神経に達すると、しみは「続く痛み」「何もしなくてもズキズキする痛み」へと変わり、神経を残せたはずの段階を過ぎると根管治療が必要になり、さらに進めば抜歯に至る場合もあります。神経を残す治療は早い段階ほど選択肢が広く、成功率も比較的高い傾向です。しみが一度おさまっても、炎症が一時的に落ち着いて見えるだけのことがあり、再び悪化することもあります。

いつ・どこを受診すべきか

次のような場合は、早めに歯科を受診することをおすすめします。歯ぐきの腫れや外科的な処置が関係しそうな場合は、歯科口腔外科が対応することもあります。
  • 刺激を取り除いてもしみる痛みが続く、熱いものでしみる
  • 何もしないのにズキズキ痛む、夜に痛みが強くなる
  • 歯ぐきの腫れ・膿・発熱を伴う
  • 知覚過敏用歯みがき剤を数週間使っても改善しない
  • 特定の歯で噛むとしみる・痛む(ひびの可能性)
どの治療が必要かは、原因と進行度によって変わります。痛みの種類ごとの全体像を知りたい方は、歯が痛いときの原因と対処法 もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q

歯がしみるのは必ず虫歯ですか

A

必ずしも虫歯とは限りません。虫歯がなくてもしみる代表が象牙質知覚過敏で、歯ぐきが下がって根が露出したり、エナメル質が摩耗・酸蝕したりすると起こります。ただし見た目だけでは区別できないため、しみが続く場合は歯科で確認することをおすすめします。

Q

知覚過敏と虫歯はどう見分けますか

A

いちばんの手がかりはしみが続く時間です。刺激を取り除いて1〜2秒ほどで消えるなら知覚過敏や軽い虫歯のことが多く、刺激を除いても痛みが続く・熱いものでしみる・何もしなくてもズキズキするなら、虫歯の進行や神経の炎症が疑われます。最終的な見分けには検査が必要です。

Q

知覚過敏は自然に治りますか

A

原因によっては、刺激を避けたり知覚過敏用の歯みがき剤を続けたりすることで軽くなることがあります。効果は数週間の継続で実感されることが多いとされます。ただし、数週間続けても改善しない、しみが強くなる場合は、虫歯やひびなど別の原因が隠れていることがあるため受診をおすすめします。

Q

知覚過敏用の歯みがき剤はどのくらいで効きますか

A

製品や個人差はありますが、神経の興奮を抑える成分や象牙質の細管をふさぐ成分は、数週間の継続使用で効果が実感されることが多いとされます。すぐに効かないからとやめず、やさしいブラッシングと合わせて続けることが大切です。

Q

ホワイトニングや虫歯治療のあとにしみるのは大丈夫ですか

A

施術や治療の刺激で神経が一時的に過敏になり、しみることがあります。多くは時間とともに落ち着くとされますが、しみが強い・長く続く場合は受診を検討してください。

Q

冷たいものだけでなく熱いものでもしみるのはなぜですか

A

熱いものでしみる、じーんと続くように感じる場合は、冷たいものでしみる知覚過敏より神経の炎症が進んでいる可能性があるとされ、注意が必要なサインと考えられています。早めに歯科で状態を確認することをおすすめします。

Q

歯がしみなくなったら治ったと考えてよいですか

A

必ずしもそうとは限りません。知覚過敏が落ち着いた場合もありますが、虫歯が進んで神経が死ぬと、かえってしみを感じなくなることがあります。強い痛みのあとに急に楽になった場合は、念のため一度確認しておくと安心です。

まとめ

歯がしみるのは、エナメル質やセメント質が失われて象牙質が露出し、刺激が神経に伝わりやすくなっているサインであることが多いと考えられます。原因は知覚過敏・虫歯・歯肉退縮・歯周病・ひびなどさまざまで、見分けの手がかりは「しみが何秒で消えるか」という持続時間です。すぐ消えるなら比較的軽い段階のことが多く、痛みが続く・熱いものでしみる・何もしなくてもズキズキする場合は、神経の炎症が進んでいる可能性があり受診の優先度が高くなります。知覚過敏の多くは低侵襲なケアで改善が期待できますが、自己判断で放置すると虫歯やひびを見逃すことがあります。しみが続く・強くなる・腫れや発熱を伴うといった場合は、早めに歯科を受診してください。 このテーマをさらに詳しく知りたい方は、知覚過敏の治し方も参考になります。 虫歯などの治療のあとに歯がしみる場合は、虫歯治療後に歯がしみる理由といつまで続くか でくわしく解説しています。 しみる原因は、そのきっかけによって見当が変わります。冷たいものでしみるときは 冷たいものが歯にしみる原因|知覚過敏と虫歯の見分け方・受診の目安、熱いものでうずくときは 熱いものがしみるのは要注意?神経の炎症を疑うサインと受診の目安、歯磨きのときにしみるときは 歯磨きでしみる原因と対処|歯茎下がり・磨きすぎ・知覚過敏の見分け方、冷たい風でしみるときは 風や呼吸で歯がしみる原因と対処|露出した象牙質と歯茎下がりのケア、そのしみが自然に治るか気になるときは 知覚過敏は自然に治る?いつまで続くか・治らないときに考えること で、症状別にくわしく解説しています。前歯だけがしみるときは 前歯がしみる原因と対処|歯茎下がり・くさび状欠損・知覚過敏の見分け方、奥歯がしみるときは 奥歯がしみる原因と対処|噛む力・詰め物の下・歯周病、酸っぱいものや炭酸でしみるときは 酸蝕症で歯がしみる原因と対策|酸っぱいもの・炭酸・逆流と知覚過敏の関係 も、部位や原因別にあわせてご覧ください。

参考・出典

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット(歯・口腔の健康、う蝕・歯周病・知覚過敏に関する解説)
  • MSDマニュアル(家庭版・プロフェッショナル版)「歯痛」「歯髄炎」「う蝕」
  • 日本歯科保存学会「う蝕治療ガイドライン」「歯髄保護(覆髄)に関する診療ガイドライン」
  • 日本歯内療法学会「歯内療法診療ガイドライン」
  • American Association of Endodontists(AAE)Position Statement: Vital Pulp Therapy
  • 象牙質知覚過敏の機序(動水力学説 hydrodynamic theory)に関する総説
  • 象牙質知覚過敏の有病率・管理に関する疫学研究・系統的レビュー
  • 直接覆髄(生体材料 vs 水酸化カルシウム)に関する系統的レビュー・メタアナリシス(International Endodontic Journal 等)
  • 非外科的根管治療の予後・歯の生存率に関する系統的レビュー/長期追跡研究(International Endodontic Journal、Clinical Oral Investigations 等)
(注:本文中の数値は研究により幅があり、一般的な目安としてお示ししています。数値や版の最終確認は監修医が担当しています。)
歯科医院でしみる原因を調べる検査の図。日本人の歯科医が患者を診察し、レントゲンや探針・冷たい刺激の検査などを組み合わせて確認する様子

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

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