噛むと奥歯が痛い原因と考えられる病気|見分け方と治療を歯科医が解説

噛むと奥歯が痛む仕組み(歯根膜への力の伝わり方、根の先の炎症、歯のひび割れ)と早めに受診したいサインをまとめた解説図

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年5月27日監修:村井亮介(DDS, MSD(米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)/日本補綴歯科学会 会員)

食事のたびに奥歯が「噛むと痛い」。安静にしていれば気にならないのに、硬いものを噛んだ瞬間や、噛んだあとに力をゆるめた瞬間にズキッと響く。そんな痛みに心当たりはありませんか。噛んだときだけ痛む「咬合時痛(こうごうじつう)」は、歯の根の周囲や、歯そのもののひび割れ、噛み合わせの負担など、しみる痛みや何もしないのにズキズキする痛みとは違う原因が背景にあることが多いと考えられています。このページでは、奥歯を噛むと痛むときに体の中で何が起きているのか、その原因をどう見分けるのか、歯科ではどんな検査をするのか、そして治療の選択肢と研究で報告されている成績までを、学会ガイドラインや国内外の研究をもとに、できるだけわかりやすく解説します。症状の感じ方には個人差があるため、確定診断には歯科での診査が欠かせません。受診を検討する際の参考としてお役立てください。

噛むと奥歯が痛む仕組み(歯根膜への力の伝わり方、根の先の炎症、歯のひび割れ)と早めに受診したいサインをまとめた解説図

先に結論:こんなときは早めに受診を

噛むと奥歯が痛む状態は、歯の根のまわりの組織や、歯のひび割れ、噛み合わせの負担にトラブルが起きているサインであることが多いと考えられています。次のいずれかに当てはまる場合は、できるだけ早く歯科を受診してください。
  • 硬いものを噛んだとき、特定の歯で鋭く痛む
  • 噛んだ瞬間より、噛む力をゆるめた瞬間にズキッと痛む
  • 歯が浮いたような感じがして、噛むと響く
  • 歯ぐきが腫れている、押すと膿が出る、発熱がある
  • 歯がグラグラと動く感じがある
臨床の現場では、噛んだときだけ痛む咬合時痛は、原因がはっきりするほど治療の見通しが立てやすく、原因が特定できないまま時間が経つと、ひび割れが深く進むなどして歯を残しにくくなることがあると考えられています。痛みが一時的に引いても、原因そのものが消えたとは限らないため、症状があるうちに調べておくことが、結果的に歯を残せる可能性を高めます。

なぜ「噛むと痛い」のか(メカニズム)

噛むと痛む仕組みの模式図。歯根膜に噛む力が伝わって炎症で痛む様子と、歯のひび割れが噛む力で開閉して神経を刺激する様子
しみる痛みやズキズキする自発痛が主に「歯の神経(歯髄=歯の中にある血管と神経のかたまり)」から生じるのに対し、噛むと痛む咬合時痛は、痛みのセンサーが歯髄ではなく「歯根膜(しこんまく)」や「ひび割れた歯の部分」にあることが多い、という違いがあります。 歯根膜とは、歯の根と、それを支える骨(歯槽骨)のあいだにある薄い靱帯のような組織で、歯にかかる力をやわらげるクッションの役割をしています。この歯根膜には、押される・噛む力がかかるといった機械的な刺激を感じるセンサーが豊富にあります。だから、根の先や歯根膜に炎症が起きていると、噛んで力がかかった瞬間に痛みとして感じられるのです。歯科で歯を軽く叩いて「響くかどうか」を確かめる検査(打診)で痛みが出るのも、この歯根膜の炎症を反映しています。 もうひとつ多いのが、歯のひび割れ(クラック:歯に入った細かいひび)による痛みです。歯にヒビが入ると、噛んで力がかかった瞬間に亀裂のすき間がわずかに開いたり閉じたりします。このとき、歯の内部にある象牙細管(ぞうげさいかん)という無数の細い管の中の液体が動き、その奥にある神経を刺激します。ヒビ割れた板を踏むと、力をかけたときよりも足を離したときにパチンと跳ね返るのと似て、噛む力をゆるめた瞬間に亀裂が閉じてズキッと痛む「リバウンド痛(噛んだ瞬間ではなく、噛む力をゆるめた瞬間に出る跳ね返りのような痛み)」が、ひび割れの典型的なサインとされています。 さらに、詰め物や被せ物(虫歯で大きく失った歯を覆うように作る人工の歯。クラウンとも呼ばれます)を入れた直後など、その歯だけが先に強く当たる「噛み合わせが高い」状態(早期接触:そうきせっしょく。噛み合わせたときに特定の歯だけが他より先に強く当たってしまうこと)では、特定の歯に過剰な力が集中して歯根膜が炎症を起こし、噛むと痛むことがあります。 奥歯(臼歯:きゅうし。奥の方にある、すりつぶす役目の歯)は、前歯よりもはるかに大きな噛む力がかかる咀嚼(そしゃく:食べ物を噛んですりつぶす働き)の主役です。溝が深く、根が複雑で、大きな詰め物や被せ物、ブリッジが入っていることも多いため、ひび割れ・噛み合わせの負担・根の先の炎症といった咬合時痛の原因が、前歯よりも起こりやすい部位と考えられています。

痛み方でわかる手がかり(セルフチェック)

噛んだときの痛みの「出方」は、原因を推測する手がかりになります。目安として、次のように整理できます。
  • 特定の硬いものを、特定の歯で噛んだ瞬間に鋭く痛む:歯のひび割れ(クラック)の可能性
  • 噛む力をゆるめた瞬間にズキッと痛む(リバウンド痛):歯のひび割れの典型的なサイン
  • 噛むと響く、歯が浮いた感じ、軽く叩くと痛い:根の先の炎症(根尖性歯周炎)の可能性
  • 詰め物・被せ物を入れた直後から、その歯だけ噛むと痛い:噛み合わせが高い(早期接触)の可能性
  • 歯ぐきが腫れて押すと膿が出る、歯が動く:歯周組織の炎症(歯周膿瘍・進行した歯周病)の可能性
  • 親知らずの周囲がはれて噛むと痛い、口が開けにくい:智歯周囲炎(親知らず周囲の炎症)の可能性
同じ「噛むと痛い」でも、痛む瞬間(噛んだとき/力を抜いたとき)、きっかけ(硬いもの/特定の部位)、腫れや動揺の有無で、考えられる原因は変わります。下の分類とあわせて、自分の痛みがどれに近いかを確認してみてください。なお、しみる痛みや何もしないのにズキズキする自発痛など、噛むこと以外がきっかけの痛みについては、痛み方ごとの全体像を 歯が痛いときの原因と対処法|痛み方別の見分け方を歯科医が解説 で確認できます。

原因の分類と見分け方

噛むと奥歯が痛む主な原因(根尖性歯周炎・歯のひび割れ・噛み合わせが高い・歯周膿瘍)を並べて見分ける模式図
噛むと奥歯が痛むとき、背景にはいくつかの状態があります。代表的なものを整理します。

根尖性歯周炎(根の先の炎症)

神経が死んでしまった歯や、過去に神経を取った歯の根の先に細菌がたまり、炎症が起きた状態です。噛むと響く、歯が浮いた感じ、軽く叩くと痛い(打診痛)、歯ぐきにできもの(膿の出口となる瘻孔)ができる、といった症状をともなうことがあります。咬合時痛のなかでも頻度の高い原因のひとつとされています。

歯のひび割れ・破折(クラックトゥース:ひびの入った歯による痛みの総称)

歯に入った亀裂が原因で噛むと痛む状態です。ヒビの深さによって、エナメル質(歯の表面の硬い層)表層だけの無症状の亀裂線から、咬頭(こうとう:奥歯の噛む面にある山のような出っ張り)の一部が欠けるもの、歯冠(しかん:歯の歯ぐきから上に出ている部分)から進む亀裂(噛むと痛むタイプ)、完全に割れたもの、歯の根が縦に割れたもの(垂直性歯根破折:すいちょくせいしこんはせつ。歯の根が縦方向に裂けるように割れた状態で、保存が難しいとされる重症のひび)まで段階があります。浅いうちは症状が出たり消えたりして原因の歯を特定しにくく、見逃されやすいのが難しい点です。根まで及ぶ深い亀裂や垂直性歯根破折は、保存が難しく抜歯に至りやすいとされています。

咬合性外傷・噛み合わせが高い(早期接触)

過大な噛む力や、特定の歯への力の集中によって歯根膜が傷み、炎症を起こした状態です。詰め物・被せ物を入れた直後にその歯だけ強く当たる場合や、歯ぎしり・食いしばりの習慣がある場合に起こりやすいとされます。歯が浮いた感じ・動揺・噛むと痛い、レントゲンで歯根膜のすき間が広がって見えることがあります。原因が高さ不適合なら、噛み合わせの調整で比較的短期に改善が期待できます。

歯周膿瘍・進行した歯周病

深い歯周ポケットや根の分かれ目に膿がたまると、その歯を噛むと痛む・歯が浮く・動揺するといった症状が出ます。歯ぐきの腫れや排膿をともなうことが多いです。歯周病そのものの進行と治療については 歯周病治療とは|症状の進行と治療法を解説 で詳しく扱っています。

智歯周囲炎(親知らず周囲の炎症)

いちばん奥に生えてくる親知らずの周囲の歯ぐきが炎症を起こし、噛むと痛い・口が開けにくい・腫れる、といった症状が出る状態です。 臨床的には、「噛んだ瞬間に痛むか、力を抜いた瞬間に痛むか」「軽く叩くと響くか(打診痛)」「特定の部位を噛んだときだけ痛むか」「歯ぐきの腫れや歯の動揺があるか」を手がかりに原因を絞り込みます。ただし症状が似ていても原因が異なることは珍しくないため、レントゲンや歯科用CT、歯髄の検査、咬合検査を含む診査が欠かせません。なお、まれに噛むと痛いと感じても原因が歯ではなく、顎の関節や噛む筋肉の緊張が関係していることもあり、痛みの場所が特定しにくい場合はこうした原因も含めて確認します。

歯科医院ではどうやって原因を調べるのか(検査)

噛むと痛む原因は見た目だけでは判断しにくく、特に歯のひび割れは診断が難しいため、歯科では複数の検査を組み合わせ、結果を総合して判断するのが一般的です。
  • 問診:いつから、何を噛むと、どの瞬間に(噛んだとき/力を抜いたとき)痛むか。痛みの出方は原因を絞る重要な手がかりです
  • 打診・触診:歯を軽く叩いて響く痛みがあれば、根の先や歯根膜の炎症が疑われます
  • 咬合検査:噛み合わせの紙(咬合紙)で当たり方を確認したり、専用の器具で一つの咬頭ずつ噛ませて、どの部分でリバウンド痛が再現されるかを調べ、ひびのある歯を探します
  • 歯髄の生活反応の検査:冷たい刺激や微弱な電気で、神経が生きているか・反応が過敏かを確認します(温度診、歯髄電気診)
  • 歯周検査:歯周ポケットの深さや歯の動揺を調べます。一か所だけ極端に深いポケットは、歯のひび割れを示すことがあります
  • レントゲン/歯科用CT(CBCT):根の先の病変、骨の状態、ひびや破折の有無を画像で確認します。立体的に見られるCTは、通常のレントゲンでは分かりにくい病変の把握に役立つとされています
歯のひび割れは、歯科用CTやマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)、亀裂を染め出す染色、光を当てて透かす透照診などを組み合わせても、初期のものは確実には捉えられないことがあります。臨床の現場では、画像所見だけで決めず、痛みの出方や咬合検査などの臨床所見を合わせて、原因と「歯を残せるか」を慎重に見極めます。

治療の選択肢と研究で報告されている成績

噛むと痛む原因への対応は、その原因と、歯をどこまで残せるかによって変わります。代表的な選択肢を整理します(成績は判定基準や追跡期間で幅があり、あくまで一般的な目安です)。

噛み合わせの調整(噛み合わせが高い場合)

詰め物・被せ物の早期接触や、限局した咬合の負担が原因の場合に行います。咬合紙で当たりを確認し、強く当たる部分をわずかに削って調整します。原因が高さ不適合であれば、比較的短期に痛みが改善することが多いとされ、保険診療の範囲で対応されるのが一般的です。

歯のひび割れの保存治療(被せ物などで補強)

歯髄(神経)の症状が軽く、亀裂が比較的浅い場合に、亀裂が噛むたびに開閉して進むのを抑えるため、噛む面を覆う被せ物(クラウン)などで歯を一体化して補強する方法です。診断を確定するため、まず仮の被覆で経過を見ることもあります。成績は亀裂の深さ・歯髄の状態・歯周ポケットの有無に大きく左右され、浅く神経が健全なら比較的良好、深く神経や歯周組織に及ぶと低下するとされています(出典:歯の亀裂・破折に関する系統的レビュー・症例集積、AAE 解説)。具体的な数値は判定基準で幅があり、最終的な数値は監修者が確認します。

根管治療(神経に炎症が及ぶ・根尖性歯周炎をともなう場合)

ひび割れや感染で神経が元に戻らない状態になったり、根の先に炎症(根尖性歯周炎)がある場合に行います。非外科的根管治療の成功率は、判定基準により概ね74〜85%、歯そのものの生存率は中期で約9割と報告され、長期(10〜20年)でも比較的高く保たれるとの報告があります(出典:International Endodontic Journal 等の系統的レビュー・長期retrospective研究。具体数値は監修者確認)。ひびをともなう歯は予後が読みにくく、治療後に被せ物で補強することが前提になることが多いです。保険診療で受けられますが、より精密に行うために、ラバーダム(治療する歯だけをゴムのシートで隔離し、唾液や細菌の侵入を防ぐ方法)やマイクロスコープを用いる自由診療を選べる医院もあります。自由診療の場合は費用が自己負担となり、医院によって料金が異なるため、費用とリスクの説明を受けたうえで選択することが大切です。治療の流れや回数・費用の目安は 根管治療とは|流れ・回数・費用を歯科医が解説 で詳しく解説しています。

歯周治療(歯周膿瘍・進行した歯周病が原因の場合)

深い歯周ポケットや排膿、動揺をともなう咬合痛では、膿を出して洗浄し、歯石を取り除く歯周基本治療(スケーリング・ルートプレーニング)を行い、必要に応じて外科的な処置や噛み合わせの負担の調整を併用します。

抜歯(保存が難しい場合)

歯の根が縦に割れた垂直性歯根破折や、根まで及ぶ深い亀裂、保存できない重度の歯周病では、抜歯が選択されることがあります。抜いた後は、入れ歯・ブリッジ・インプラントなどで補う必要があり、それぞれ利点と注意点、費用の違いがあります。 臨床の現場では、できるだけ歯を残す方向で検討しますが、無理に残すと再発や再治療につながることもあり、原因の見極めと、過大な噛む力・感染をコントロールすることが重視されます。

現在の標準的な考え方と未確定の論点

近年は、ひび割れた歯や神経を失った歯でも「できるだけ残す」方向で、接着や被覆冠による補強の検討が進んでいます。歯科用CTやマイクロスコープ、透照診などの組み合わせで、これまで見つけにくかった亀裂や根の先の病変をより捉えやすくする試みも広がっています。 ただし、結論が定まっていない論点もあります。たとえば、どこまで深い亀裂なら保存を試みるか、歯周ポケットをともなう亀裂の予後をどう判断するかには見解の幅があります。また、噛む力の負担(咬合性外傷)が、それ単独で歯周組織の破壊(歯周病の進行)を進めるのかは長年の論争があり、炎症が併存すると進行を助長しうるという見方が一般的とされていますが、確定的とは言いにくい部分があります。歯ぎしり・食いしばりへの対策としてのナイトガード(就寝時に使うマウスピース)も、亀裂や咬合痛の予防効果のエビデンスには議論があります。確かな部分と、これから整理されていく部分を区別して読むとよいでしょう。

当面のセルフケア

噛むと痛いときの当面のセルフケアの図。痛む歯を避けて反対側でやわらかいものを噛み、頬の外から冷やす日本人の様子
受診までに痛みを和らげ、悪化を防ぐためにできることがあります。

やって良いこと

  • 痛む歯で噛むのを避け、反対側でやわらかいものを噛む
  • 硬いもの・粘り気の強いものを控える(ひび割れを広げないため)
  • 市販の鎮痛薬を、用法・用量を守って使用する
  • 歯のまわりを清潔に保ち、食べかすをやさしく取り除く
  • 腫れがあるときは、頬の外側から濡れタオルなどでやさしく冷やす

避けたほうがよいこと

  • 痛む歯で硬いものを無理に噛むこと(亀裂が深く進むおそれ)
  • 歯ぎしり・食いしばりを我慢して放置すること
  • 腫れているときに患部を温めること、入浴・飲酒・激しい運動など血流が増えること
  • 市販薬で痛みを抑えたまま、受診を先延ばしにすること
これらは応急的な対処であり、原因そのものを治すものではありません。痛みが引いても、ひび割れや根の先の炎症が消えたわけではないことが多いため、症状があるうちの受診をおすすめします。

放置するとどうなるか

噛むと痛い状態を放置すると、原因によってさまざまな経過をたどります。歯のひび割れは、噛むたびに亀裂が開閉して少しずつ深く進み、浅いうちなら被せ物で補強して残せた歯でも、根まで割れて保存できなくなり抜歯に至ることがあります。根の先の炎症は、周囲の骨へ広がって腫れや膿、強い痛みにつながることがあります。歯周膿瘍を放置すれば、歯を支える骨の破壊が進みます。前述のとおり、咬合時痛の多くは、原因がはっきりする早い段階ほど歯を残せる選択肢が広く、進行すると治療が大がかりになります。痛みが一度引いても、それは炎症やひびの動きが一時的に落ち着いて見えるだけのことがあり、再び悪化することがあります。

受診の目安と何科にかかるか

次のような場合は、早めに歯科または歯科口腔外科を受診してください。
  • 噛むと特定の歯で鋭く痛む、噛む力を抜いた瞬間にズキッと痛む
  • 歯が浮いた感じ、歯がグラグラする
  • 歯ぐきの腫れ・排膿・発熱をともなう
  • 数日たっても痛みが続く、繰り返す
  • 痛みで食事や日常生活に支障がある
どの治療が必要かは原因と進行度によります。多くは一般歯科で対応しますが、親知らずの抜歯や腫れをともなう場合は歯科口腔外科が扱うこともあります。噛むこと以外もきっかけになる痛み全般の見分け方は、歯が痛いときの原因と対処法|痛み方別の見分け方を歯科医が解説 もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q

噛むと痛いのに、レントゲンでは異常がないと言われました。原因は何でしょうか

A

歯のひび割れ(クラック)は、初期のものはレントゲンに写りにくく、見つけにくいことがあります。噛む力を抜いた瞬間にズキッと痛む、特定の部位を噛むと鋭く痛むといった場合は、咬合検査やマイクロスコープ、透照診などを組み合わせて確認します。一度の検査で確定しないこともあり、経過を見ながら診断することがあります。

Q

噛むと痛いのは虫歯ですか

A

噛んだときだけ痛む咬合時痛は、虫歯による神経の痛みより、根の先の炎症・歯のひび割れ・噛み合わせの負担が原因のことが多いと考えられています。ただし大きな虫歯が背景にあることもあるため、診査で原因を確認することが大切です。

Q

噛むと痛い歯は、神経を抜くことになりますか

A

原因によります。噛み合わせが高いだけなら調整で改善が期待でき、浅いひび割れなら被せ物で補強できることがあります。神経に炎症が及んでいたり根の先に炎症がある場合は、根管治療が必要になることがあります。残せるかどうかは診査診断によります。

Q

歯のひびは、被せ物で治せますか

A

亀裂が浅く神経の症状が軽い場合は、噛む面を覆う被せ物で歯を一体化し、亀裂の進行を抑える保存治療が選択肢になります。成績は亀裂の深さや神経・歯周組織の状態に左右され、根まで及ぶ深い亀裂や歯根の縦割れは保存が難しく、抜歯になることがあります。

Q

詰め物を入れてから噛むと痛いです。様子を見てよいですか

A

詰め物・被せ物を入れた直後に、その歯だけ噛むと痛む場合は、噛み合わせが高い(早期接触)可能性があります。多くは調整で改善するため、我慢せず治療した歯科に相談してください。痛みが長引く・強まる場合は、ほかの原因も含めて確認が必要です。

Q

噛むと痛いのを放置すると、どうなりますか

A

原因によりますが、歯のひび割れは噛むたびに進んで保存できなくなることがあり、根の先や歯周組織の炎症は周囲の骨に広がることがあります。早い段階ほど歯を残せる選択肢が広いため、症状があるうちの受診をおすすめします。

Q

歯ぎしり・食いしばりがあると、噛むと痛くなりやすいですか

A

過大な噛む力は、歯のひび割れや歯根膜への負担(咬合性外傷)の一因になり得ると考えられています。対策としてナイトガード(就寝時のマウスピース)が用いられることがありますが、予防効果のエビデンスには議論があり、まずは原因の診査を受けることをおすすめします。

まとめ

噛むと奥歯が痛む咬合時痛は、しみる痛みや何もしないのにズキズキする自発痛とは異なり、歯の根のまわりの組織(歯根膜・根尖部)や、歯のひび割れ、噛み合わせの負担に原因があることが多いと考えられています。とくに歯のひび割れは、噛む力を抜いた瞬間にズキッと痛むことや、レントゲンに写りにくく見つけにくいことが特徴です。原因によって、噛み合わせの調整・被せ物での補強・根管治療・歯周治療・抜歯など対応が変わり、早い段階ほど歯を残せる選択肢が広いとされています。市販薬や安静は一時的な助けにすぎず、原因そのものは消えないため、噛むと特定の歯で痛む・歯が浮く・腫れる・痛みが続くといった場合は、早めに歯科を受診してください。

参考・出典

  • 日本歯内療法学会「歯内療法診療ガイドライン」
  • 日本歯科保存学会「う蝕治療ガイドライン」等
  • 日本歯周病学会「歯周病の診断と治療のガイドライン」等
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット(歯・口腔の健康に関する解説)
  • MSDマニュアル(家庭版・プロフェッショナル版)「歯と歯周組織の障害」「根尖周囲膿瘍」等の項
  • American Association of Endodontists(AAE)Cracked Teeth/Vertical Root Fracture に関する解説・ポジションステートメント
  • 歯の亀裂・破折(cracked tooth syndrome、vertical root fracture)の予後・分類に関する系統的レビュー・症例集積(International Endodontic Journal、Journal of Endodontics 等)
  • 非外科的根管治療の予後・歯の生存率に関する系統的レビュー/長期retrospective研究(International Endodontic Journal、Clinical Oral Investigations 等)
(注:記載の数値は追跡期間や条件で変わる一般的な目安です。具体的な数値や最新版の確認は監修医が行っています。)

歯が痛いときの原因と対処法|痛み方別の見分け方を歯科医が解説(上位ページ)へ戻る

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

→ 監修者・編集方針について