歯が欠けた・折れたときの応急処置と治療

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年7月2日監修:村井亮介(DDS, MSD(米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)/日本補綴歯科学会 会員)

転んでぶつけた、硬いものを噛んだ、気づいたら歯の一部が欠けていた。前歯の角が三角に欠けた、奥歯がパキッと割れた、あるいは歯が根元からグラグラする。そんなとき、多くの方が「すぐ歯医者に行けないけれど、まず何をすればいいのか」「欠けた歯のかけらは取っておくべきか」「放っておくとどうなるのか」と戸惑います。

このページでは、歯が欠けた・折れたときに、受診までの間にまずすべき応急の対処と、やってはいけない行動を、欠け方ごとの緊急度の見分け方とあわせて、できるだけわかりやすく解説します。状態には個人差があり、最終的な診断と処置には歯科医院での確認が必要です。あくまで受診までの判断の目安としてお読みください。
歯が欠けた・折れたときの欠け方別の緊急度(エナメル質のみ・象牙質・神経まで・根が折れた)と、応急処置・治療法の全体像をまとめた解説図
なお、詰め物や被せ物(銀歯)が取れたときの応急対処については、詰め物・被せ物が取れたときの応急処置とNG行動 で別途くわしく整理しています。

先に結論:欠け方で緊急度が変わる。放置はしない

まず知っておいていただきたいのは、歯が欠けたと一口に言っても、表面が少し欠けただけのものから、神経が露出したもの、根が折れて歯を支えられなくなったものまで幅があり、緊急度が大きく異なる、ということです。
  • 表面の硬いエナメル質だけが少し欠けた場合は、多くはその日に救急へ駆け込む必要はありませんが、鋭い縁で舌を傷つけたり、そこから欠けが進んだりするため、早めの受診が望ましいです
  • 内側の象牙質まで欠けてしみる、神経が見えている(出血や強い痛み)、歯を強くぶつけてグラグラする、根が折れたといった場合は、当日〜できるだけ早い受診が必要です
  • とくに前歯を丸ごと抜け落ちた・大きく折れた場合は、時間との勝負になることがあり、欠けた歯片・抜けた歯の適切な保存が予後を左右します
臨床の現場では、「欠けた」という事実そのものより、どこまで欠けているか(神経に達しているか、根が保てるか)を重視します。痛みがなくても内部で問題が進んでいることがあるため、自己判断で様子を見続けず、原因と深さを確かめることが大切です。

どこまで欠けたか、緊急度をどう見分けるか

歯は、いちばん外側の硬いエナメル質、その内側のやや軟らかい象牙質(ぞうげしつ)、さらに中心にある神経や血管の通った歯髄(しずい)という層構造になっています。どの層まで達しているかで、痛みも緊急度も変わります。おおまかな見分け方を整理します(あくまで目安で、最終判断は歯科で行います)。
  • エナメル質のみ欠けた(比較的急がない/数日以内の受診):表面の角が少し欠けた程度で、しみや痛みがほとんどない。鋭い縁が気になる程度。ただし放置で進むことがある
  • 象牙質まで欠けた(早めに/数日以内):冷たいもの・甘いものがしみる、欠けが黄色っぽく見える。象牙質は虫歯や刺激が伝わりやすいため、早めの対応が必要
  • 神経(歯髄)まで達した(早急に/当日〜翌日):欠けた面の中央に赤い点やにじむ出血がある、何もしなくてもズキズキ強く痛む。細菌感染が神経に及ぶ前の対応が重要
  • 根が折れた・歯が大きく折れた/抜けた(すぐに/当日):歯がグラグラする、位置がずれた、根元から折れた、歯が丸ごと抜け落ちた。抜けた歯は保存して速やかに受診すると再植(元に戻す)できる可能性がある
とくに強くぶつけた(外傷)場合は、見た目に大きく欠けていなくても、後から歯の色が変わってくる(神経が弱った・失活したサイン)ことや、根にひびが入っていることがあります。転倒・打撲のあとは、欠けが小さくても一度は歯科で確認しておくと安心です。
歯の層構造の模式図。外側のエナメル質、内側の象牙質、中心の歯髄のどこまで欠けているかで緊急度が変わることを示した図

今すぐできる応急の対処(やって良いこと)

受診までの間、自分でできる応急の対処があります。いずれも「治す」ものではなく、悪化を防ぎ、治療の選択肢を残すための一時的な手当てです。
  • 欠けた歯のかけらは捨てずに保存する。とくに大きく欠けた・折れた歯片や、抜け落ちた歯は、乾燥させると使えなくなるため、牛乳に浸すか、それがなければ清潔な水や生理食塩水、または口の中(頬の内側)に含んで湿った状態を保ち、できるだけ早く持参する。かけらをそのまま接着して見た目を回復できることがあります
  • 抜け落ちた歯は、根の部分(表面のぬめり)を強くこすらず、汚れが気になれば軽く水ですすぐ程度にとどめ、牛乳などに浸して速やかに受診する。歯が抜けた場合は時間が早いほど元に戻せる可能性が高まります
  • 口の中や唇が切れて出血しているときは、清潔なガーゼやハンカチで数分間やさしく圧迫して止血する
  • その歯ではなるべく噛まず、反対側で食事する。硬いもの・粘着性のものは避ける
  • しみる・痛むときは、冷たい・熱い・甘いなど刺激の強い飲食を控え、患部を清潔に保つ
  • 痛みがあるときは、市販の鎮痛薬を用法・用量を守って使用する
  • 欠けた縁が鋭く舌や頬に当たるときは、市販の歯科用ワックスなどで一時的に覆い、粘膜を傷つけないよう保護する
抜けた歯や大きく折れた歯を戻せるかどうかは、時間と保存状態に大きく左右されます。「乾かさない」「強くこすらない」「早く受診する」の3点がとくに重要です。臨床の現場では、こうした応急の手当てはあくまで「受診までをしのぐもの」と位置づけ、原因と深さの診断を先送りにしないことを重視します。

やってはいけないこと(NG行動)

良かれと思ってした行動が、かえって状態を悪くし、治療を難しくしてしまうことがあります。次の行動は避けてください。
  • 市販の瞬間接着剤(アロンアルファなどのシアノアクリレート系)や家庭用接着剤で、欠けた歯片や抜けた歯を自分で着け直す。歯や神経への刺激・為害性があり、ぴったり合わないまま固まって噛み合わせを狂わせ、後日の正しい接着や再植ができなくなります。国際的にも避けるべき行為とされています
  • 抜けた歯・折れた歯片を乾いたティッシュに包む、水に長時間つけっぱなしにする。乾燥や不適切な保存で、戻せる可能性が下がります
  • 抜けた歯の根の表面をゴシゴシこすって洗う、消毒液につける。根の周りの再生に必要な組織を傷めます
  • 欠けた・痛む歯を、爪・舌・つまようじなどで繰り返しいじる
  • その歯で硬いものや粘着性のものを噛む
  • 痛みがあるときに、患部を温める・長湯・飲酒・激しい運動をする。血流が増えて痛みが強まりやすくなります
  • しみや小さな欠けだからと自己判断で長く様子見を続け、受診を先延ばしにする
とくに「瞬間接着剤で着け直す」のは手を出しやすい行動ですが、もっとも避けたいものの一つです。一時的にくっついたように見えても、すき間から細菌が入る、噛むたびに無理な力がかかる、いざ歯科で正しく処置しようとすると歯質ごと傷めてしまう、といったリスクが重なります。欠けた歯は「接着剤で留めるもの」ではなく「歯科で原因と深さごと診てもらうもの」と考えてください。

欠け方別の主な治療法

歯科での治療は、欠けた深さや範囲、神経や根の状態によって変わります。代表的な方法を整理します。 エナメル質〜浅い象牙質の欠け:多くは、歯科用の白いプラスチック(コンポジットレジン)を欠けた部分に盛って形を整えるレジン修復(ダイレクトボンディング)で対応できます。1回で終わることが多く、削る量も少なくてすみます。範囲が広い場合はセラミックなどの詰め物・被せ物になることもあります。 象牙質まで大きく欠けた:欠けが大きく、レジンでは強度が足りない場合は、部分的な詰め物(インレー・アンレー)や、歯全体を覆う被せ物(クラウン)で補います。材料はセラミックや金属などがあり、保険か自費かで選択肢が変わります。 神経(歯髄)まで達した:神経が細菌に感染している・強い痛みがある場合は、神経を取る治療(根管治療=歯の中の神経や感染物を除去し薬を詰める処置)を行い、その後に被せ物で補うことが多くなります。神経を残せそうな場合は、覆髄(ふくずい/神経を保護する処置)で保存を試みることもあります。 根が折れた・大きく折れた:折れ方や位置によります。根の浅い部分で保存が可能なら、被せ物などで残せることがあります。一方、根の深いところで縦に割れた(歯根破折)場合や、保存が難しい場合は、抜歯となり、その後にブリッジ・入れ歯・インプラントなどで歯を補う方針を検討します。抜け落ちた歯は、条件がよければ元に戻す(再植)こともあります。 いずれの場合も、痛みがなくても内部で感染や神経のダメージが進むことがあるため、深さの診断と早めの処置が、その歯を残せるかどうかを左右します。
欠けた歯片を牛乳に浸して乾かさずに保存し、速やかに歯科へ持参する応急処置の様子を示した図

費用の目安

治療費は、欠けの深さ・範囲・材料・保険か自費かによって大きく変わります。ここで示すのはあくまで一般的な目安で、初診料や検査費が別途かかる場合もあります。最終的な金額は受診先での見積もりでご確認ください。
  • レジン修復(小さな欠けを樹脂で埋める):保険適用でおおむね数百〜数千円程度/歯。範囲が広く自費のダイレクトボンディングでは1本あたり数万円程度とされます
  • 詰め物・被せ物:保険の金属やレジンでおおむね数千〜1万円台程度、自費のセラミックなどはおおむね1本あたり5〜15万円程度とされます
  • 根管治療(神経の治療)+被せ物:保険で行う場合はおおむね合計で数千〜1万円台程度、自費の被せ物を選ぶと総額はさらに上がります
  • 抜歯後の補い方(ブリッジ・入れ歯・インプラント):方法により幅が大きく、インプラントは自費でおおむね1本30〜50万円程度とされます
同じ「欠けた」でも、レジンで数千円で済むこともあれば、神経の治療や抜歯・インプラントに進んで総額が大きくなることもあります。早い段階で受診するほど、小さな処置で済み費用も抑えられる傾向があります。

受診の目安と診療科の選び方

歯が欠けた・折れたときの相談先は、基本的には一般歯科です。次のような場合は、できるだけ早めの受診をおすすめします。
  • 痛みやしみがなくても、欠けた状態が続いている(数日以内を目安に)
  • しみる・噛みにくいなど、日常生活に支障がある(早めに)
  • 強い自発痛やズキズキ、欠けた面に赤い点や出血がある、歯がグラグラする(当日〜翌日を目安に)
  • 歯が根元から折れた・丸ごと抜け落ちた、強くぶつけて位置がずれた(すぐに。抜けた歯は乾かさず持参)
強い外傷で、口の中の大きな出血が止まらない、顔の骨折や意識の異常が疑われるといった場合は、歯科ではなく医科(救急)を受診してください。痛みの原因や緊急度をもっと広く知りたい方は、歯が痛いときの原因と対処法 もあわせてご確認ください。受診時には、いつ・どんなときに欠けたか、痛みやしみの有無、欠けた歯片(持参できる場合)を伝えると、診断がスムーズになります。

よくある質問

歯が少し欠けただけでも歯医者に行くべきですか

はい、おすすめします。痛みやしみがなくても、鋭い縁で舌や頬を傷つけたり、そこから欠けや虫歯が進んだりすることがあります。とくに強くぶつけた後は、見た目が小さくても内部にダメージが及んでいることがあるため、一度は歯科で確認しておくと安心です。

欠けた歯のかけらは取っておいたほうがいいですか

はい。とくに大きな歯片は、乾かさないよう牛乳や清潔な水などに浸して持参すると、そのまま接着して見た目を回復できることがあります。抜け落ちた歯も同様に乾かさず保存し、できるだけ早く受診してください。時間が早いほど元に戻せる可能性が高まります。

歯が欠けたところがしみます。どうすればいいですか

内側の象牙質が露出して刺激が伝わっている状態です。冷たい・熱い・甘いものを控え、その歯で噛まないようにし、清潔に保ってください。市販の鎮痛薬を用法・用量を守って使うこともできます。しみが強い・続く場合や、何もしなくても痛む場合は早めに受診してください。

欠けた歯を自分で接着剤でくっつけてもいいですか

おすすめしません。市販の瞬間接着剤や家庭用接着剤は歯や神経への刺激があり、ぴったり合わないまま固まって噛み合わせを狂わせ、後日の正しい治療や、抜けた歯を戻す処置ができなくなることがあります。着け直さずに、かけらを保存して歯科で診てもらってください。

歯が抜けてしまいました。元に戻せますか

条件がよければ元に戻せる(再植できる)ことがあります。抜けた歯は乾かさず、根の表面を強くこすらないようにして、牛乳などに浸し、できるだけ早く(できれば数十分以内を目安に)歯科を受診してください。時間の経過と保存状態が、戻せるかどうかを大きく左右します。

放っておくとどうなりますか

欠けから虫歯が進む、しみが悪化する、神経に感染が及んで強い痛みや根の先の炎症を起こす、といった問題が静かに進むことがあります。根のひびを放置すると抜歯が必要になることもあります。痛みがなくても内部で悪化することがあるため、早めの受診をおすすめします。

まとめ

歯が欠けた・折れたときは、どこまで欠けているか(エナメル質のみ・象牙質・神経・根)で緊急度が大きく変わります。表面が少し欠けた程度なら数日以内の受診で足りることが多い一方、しみる・神経が見える・グラグラする・根が折れた・抜け落ちたといった場合は、当日〜すぐの受診が必要です。受診までは、欠けた歯片や抜けた歯を乾かさず(牛乳などに浸して)保存し、その歯で噛まず、刺激の強い飲食を控え、出血は圧迫して止めるのが基本の応急対処です。逆に、瞬間接着剤で自分で着け直すこと、歯片を乾かす・強くこするといった行動は、治療の選択肢を狭めるため避けてください。欠けが小さく見えても内部で問題が進むことがあるため、早めに歯科で深さを確かめることが、その歯を長く残すことにつながります。 また、部活動や格闘技・球技などで歯をぶつけて欠けるケースは、競技用の保護装置で予防できることがあります。備えについては「スポーツマウスガードとは|市販とオーダーメイドの違い・費用・作り方」をご覧ください。 欠けたのが歯ではなくセラミックの修復物だった場合は、セラミックの詰め物・被せ物が割れた・欠けたで対応をまとめています。

参考・出典

MSDマニュアル(家庭版・プロフェッショナル版)「歯の外傷・破折」に関する解説 厚生労働省 e-ヘルスネット(歯の外傷・むし歯・補綴に関する一般向け解説) 日本外傷歯学会 関連ガイドライン(歯の脱臼・破折・再植、抜けた歯の保存) 日本歯科保存学会日本歯内療法学会 関連ガイドライン(歯髄保存・根管治療) 日本補綴歯科学会 関連ガイドライン・用語(クラウン・ブリッジ、修復・補綴) 各国歯科団体・公的機関の患者向けセルフケア解説(欠けた歯・抜けた歯の応急対応、歯片の保存、瞬間接着剤を使わない注意) (注:数値は出典により範囲があるため、おおよその目安です。最新版ガイドラインの版・具体的数値、保険適用の可否は監修者が確認・更新します。)

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

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