唾石症とは|食事のときに顎の下が腫れる原因と治療

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年9月9日監修:村井亮介(歯科医師・DDS, MSD/日本補綴歯科学会 会員)

食事のたびにあごの下が腫れて痛み、しばらくすると自然に引く。この繰り返しに心当たりがある方は、唾石症(だせきしょう)の可能性があります。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)でも、歯の痛みだと思って歯科を受診し、唾液の通り道の詰まりだとわかるケースがあります。食べ始めると腫れるという特徴的な出方をするのが目印です。このページでは、何が起きているのか、どんな検査と治療があるのかを整理します。

食事中にあごの下の腫れに手を当てている人のイラスト

先に押さえておきたい点

  • 唾液の通り道に石ができ、流れがせき止められる状態
  • 食事のときに腫れ、食後しばらくで引くのが典型的な出方
  • あごの下にある唾液腺(顎下腺)にできることが多い
  • 小さい石は、水分と刺激で自然に出ることがある
  • 出ない場合は、口の中から取り出す処置を行う
  • 繰り返すと腺そのものの働きが落ちるため、放置しない
歯科口腔外科で扱う症状の全体像は歯科口腔外科で扱う症状|親知らず・膿・できもの・外傷にまとめています。ここでは唾液の通り道に起きるトラブルに絞ります。 唾液を出す器官は複数あります。
名前場所特徴
顎下腺あごの下唾石ができやすい。管が上向きで、唾液が粘りやすい
耳下腺耳の前から下おたふくかぜで腫れる場所。唾石は比較的少ない
舌下腺舌の下粘液のたまりができることがある
※唾石の多くは顎下腺にできます。左右どちらか一方に起きるのが一般的です。

唾液はどのように出ているか

唾液は、唾液腺という器官でつくられ、細い管を通って口の中へ出てきます。 あごの下にある顎下腺では、その管が舌の下を通り、舌の付け根の前方にある小さな出口から唾液が出ます。食事のときや、においをかいだとき、酸っぱいものを想像したときに分泌が増えます。 1日に出る量は個人差がありますが、成人で1リットル前後とされています。食べ物を飲み込みやすくする、口の中を洗い流す、細菌の増殖を抑える、歯の表面を修復するといった役割があります。 唾液が減ると、虫歯や口臭、飲み込みにくさにつながります。全体的な減少については口が乾く原因とドライマウスの対策|唾液を増やす方法で扱っています。唾石症は、量そのものではなく通り道が詰まる問題です。

唾石とは何か、なぜできるのか

唾石は、唾液の成分であるカルシウムなどが管の中や腺の中で固まってできた石です。大きさは砂粒ほどのものから、1センチを超えるものまであります。 できる理由は完全には解明されていませんが、次の要素が関わると考えられています。唾液の流れが滞ること、唾液の性状が粘りやすいこと、管の中に炎症やわずかな傷があること、そして脱水です。 顎下腺に多いのには理由があります。管が下から上へ向かって走っているため唾液が流れにくく、また分泌される唾液が他の腺より粘り気が強いためです。この二つが重なり、成分が沈着しやすい条件になります。 年齢としては、30代から60代に多く見られます。ただし若い方や高齢の方にも起こります。

食事のときだけ腫れる理由

もっとも特徴的なのが、この症状の出方です。 食べ物を口にすると、唾液の分泌が一気に増えます。ところが出口が石でふさがれていると、行き場を失った唾液が腺の中にたまり、腺が膨らみます。これが食事中の腫れです。 痛みを伴うことが多く、唾疝痛(だせんつう)と呼ばれます。締めつけられるような、張るような痛みです。 食後、分泌が落ち着くと、たまった唾液は少しずつ逆流して吸収されるか、わずかな隙間から流れ出します。そのため腫れは数十分から数時間で引きます。 「食べると腫れて、しばらくすると治る」という繰り返しが、この病気を強く疑わせる所見です。歯の痛みや歯ぐきの腫れとは、この時間の経過が異なります。
唾液腺と管の中で唾液の流れをせき止めている小さな石を示した図

感染を起こしたときの症状

詰まった状態が続くと、たまった唾液に細菌が入り込み、腺そのものが炎症を起こすことがあります。唾液腺炎です。 このときの症状は、食事と関係なく続く強い腫れと痛み、皮膚の赤み、発熱です。口の中の管の出口から膿が出ることもあります。 ここまで来ると、まず抗菌薬で炎症を抑える治療が先になります。石を取り出すのは、炎症が落ち着いてからです。 強い腫れや発熱がある場合、あるいは飲み込みにくい、息苦しいといった症状がある場合は、その日のうちに受診してください。

他の原因との見分け方

あごの下や耳の下の腫れには、いくつもの原因があります。
  • リンパ節の腫れ(のどや歯の炎症に伴うもの)
  • おたふくかぜなどのウイルスによる腫れ
  • 唾液腺そのものの腫瘍
  • 親知らずや根の先の炎症が広がったもの
  • 自己免疫の病気による唾液腺の変化
見分けの手がかりになるのが、食事との関係です。食べ始めると腫れ、しばらくで引くという出方は唾石症に特徴的です。一方、食事に関係なく腫れが続く、両側が同時に腫れる、痛みがなく硬いしこりとして触れるといった場合には、別の原因を考えます。 歯が原因の腫れとの区別も必要です。原因の歯があれば、噛んだときの痛みや歯ぐきの腫れを伴います。口内炎との違いは口内炎が治らない原因と受診の目安|種類別の見分け方を参考にしてください。 いずれにしても、自分で判断せず、腫れの出方を記録して受診してください。「いつ・どのくらい腫れて・どのくらいで引いたか」がわかると、診断が早くなります。

どんな検査を行うか

まず触って確かめます。あごの下から手を当て、口の中からも指を入れて挟むように触れると、硬い石として触れることがあります。管の出口から唾液が出ているかも見ます。 画像検査では、レントゲンで写る石と写りにくい石があります。成分によって差が出るため、写らないからといって否定はできません。 超音波検査は、体への負担が少なく、腺の腫れや石の位置を確認するのに有用です。CTでは、小さな石や深い位置のものも確認できます。 必要に応じて、管に細い管を入れて造影する検査や、内視鏡で中を観察する方法がとられることがあります。これらは対応できる施設が限られるため、紹介となることがあります。紹介の流れは名古屋で大学病院の歯科口腔外科を受診するには|紹介状の要否と予約の流れにまとめています。
あごの下を優しくマッサージすることと水分をとることを示したセルフケアのイラスト

小さい石の場合の対応

出口に近く、小さい石であれば、自然に出てくることを期待できる場合があります。 行われるのは、水分を十分にとること、酸味のあるものを口にして唾液の分泌を促すこと、腺の後ろから出口へ向けて優しくマッサージすることです。方向を間違えると逆効果になるため、やり方は診察の際に教えてもらってください。 炎症を伴っている場合は、抗菌薬を併用します。 この方法で出てくれば、それ以上の処置は不要です。出た瞬間に、詰まっていた感覚がなくなり、腫れの繰り返しも止まります。 ただし、この対応が向くのは条件が限られます。石が大きい場合、腺の奥にある場合は期待できません。数週間試して変化がなければ、次の方法に進みます。

取り出す処置と、腺ごと摘出する場合

管の中の、口の中から届く位置にある石は、口腔内から取り出せます。 局所麻酔をかけ、舌の下の粘膜を切開して管に達し、石を取り出します。処置時間は30分程度です。取り出したあとは、管の通り道を確保して縫合します。 一方、石が腺の中や、管の奥深くにある場合は、この方法では届きません。この場合、内視鏡を使って取り出す方法や、腺そのものを摘出する手術が検討されます。腺の摘出は、あごの下の皮膚を切開して行う手術で、入院を伴うことが一般的です。 顎下腺をひとつ失っても、他の唾液腺が働くため、口が極端に乾くことは通常ありません。ただし手術には、近くを走る神経への配慮が必要になります。 どの方法を選ぶかは、石の位置と大きさ、腺の状態、これまでの症状の回数によって決まります。判断が難しい場合は歯科治療のセカンドオピニオン|取り方・費用・伝え方・断り方の方法で、別の意見を聞くこともできます。

処置のあとの経過と生活

口の中から取り出した場合、その日のうちに詰まっていた感覚がなくなり、食事のたびの腫れも止まります。長く続いていた方ほど、変化をはっきり感じられます。 術後は、切開した部分が数日腫れます。舌の下は動きの多い場所のため、しゃべりにくさや飲み込みにくさを一時的に感じることがあります。糸は1週間前後で抜きます。 食事は当日から可能ですが、熱いものや刺激の強いものは避けてください。逆に、水分は積極的にとります。唾液の流れを保つことが、傷の治りと再発の予防の両方に役立ちます。 腺の中に炎症が残っていた場合、しばらくは分泌量が戻らないことがあります。数週間から数か月かけて回復することが多いのですが、長く詰まっていた場合には元に戻らないこともあります。 処置後も、あごの下の腫れや違和感が続く場合は再度受診してください。石が複数あり、ひとつを取り出しても別の石が残っていることがあります。

口の中の他のできものとの区別

あごの下ではなく、舌の下に半透明のふくらみができることがあります。唾液がたまってできる袋状の変化で、唾石とは別のものです。 痛みはなく、大きくなったり小さくなったりを繰り返すことがあります。舌の動きや食事の妨げになる場合に処置を検討します。 このほか、口の中には粘膜のできもの、骨が盛り上がったふくらみなど、性質の異なるものができます。硬く動かないふくらみについては骨隆起(外骨症)とは|口の中の硬いふくらみを取るべきケースで扱っています。粘膜表面の色の変化や治らない傷が気になる場合は歯科検診で口腔がんは見つかる?粘膜のチェックで見ているところを参考にしてください。 見た目が似ていても、性質と対応はまったく異なります。自分で判断せず、触れた感触と経過を伝えて確認してもらうのが確実です。 舌の下のすじ(小帯)の位置が処置に関わることもあり、その構造については舌小帯・上唇小帯が短いとき|切除を考える時期と手術の実際で説明しています。

放置するとどうなるか

「そのうち引くから」と繰り返しているうちに、腺そのものの働きが落ちていくことがあります。 詰まりと炎症を繰り返した腺は、線維に置き換わって硬くなり、唾液をつくる力が戻らなくなります。そうなると、石を取り除いても分泌は回復しません。 また、感染を繰り返すことで、周囲へ炎症が広がる危険もあります。あごの下から首にかけての腫れは、進行すると呼吸に関わる部位に及ぶことがあり、この場合は入院が必要です。 症状が軽いうちに対処すれば、腺を残せる可能性が高くなります。年に何度も繰り返している場合は、放置せず相談してください。

受診の前に記録しておくとよいこと

症状が出るのが食事のときだけであるため、診察の時点では腫れが引いていることがよくあります。「今は何ともないので、うまく伝えられなかった」という声をよく聞きます。 次の点をメモしておくと、診断がはっきりします。
  • 初めて気づいたのはいつか
  • どちら側か(左右のどちらが腫れるか)
  • 腫れ始めるのは食べ始めてから何分後か
  • 引くまでにどのくらいかかるか
  • 痛みの程度と、発熱の有無
  • 回数が増えているか、変わらないか
可能であれば、腫れているときの写真を撮っておいてください。左右の差がわかる正面からの1枚があると、状態が伝わりやすくなります。 飲んでいる薬も伝えてください。口の渇きを起こす薬を使っている場合、唾液が濃くなって詰まりやすい条件が生まれます。薬を変えるかどうかは処方している医師の判断ですが、情報として共有しておく価値があります。

再発を防ぐためにできること

石を取り出したあとも、同じ条件があれば再びできることがあります。 日常でできる対策として、次のことが挙げられます。
  • こまめに水分をとる(脱水は唾液を濃くする)
  • よく噛んで食べ、唾液の流れを保つ
  • 口の中を清潔に保ち、細菌の侵入を減らす
  • 喫煙を控える
  • 腫れの兆しがあれば早めに受診する
口の中の清潔さは、管の出口から細菌が入るのを防ぐという意味で直接関係します。定期的な歯科受診で、歯石の除去と清掃状態の確認を続けてください。 なお、唾液の分泌そのものが減っている方は、詰まりが起きやすくなります。薬の影響で口が渇いている場合もあるため、飲んでいる薬を歯科でも伝えてください。

費用と受診先の考え方

唾石症の検査と治療は保険が適用されます。 口の中から取り出す処置であれば、3割負担で数千円から一万円台の範囲に収まることが一般的です。ここに検査と投薬が加わります。腺ごと摘出する手術や入院を伴う場合は金額が変わり、負担が一定額を超えた場合は高額療養費制度は歯科治療に使える?対象と申請方法の制度が使えます。 受診先は、歯科口腔外科と耳鼻咽喉科のどちらでも対応します。口の中から届く位置の石であれば歯科口腔外科で、腺の奥にある場合や全身の検査が必要な場合は、対応できる施設へ紹介されます。 まずはかかりつけの歯科医院で相談し、必要に応じて紹介してもらう流れで問題ありません。紹介の考え方は親知らず抜歯で大学病院・口腔外科を紹介されるのはどんなとき?と共通です。

食事と関係なく現れるふくらみ

唾石症は食事のときに腫れるのが特徴ですが、唇の内側や舌の下にできる水ぶくれは、食事と関係なく現れます。こちらは小さな唾液腺の管が傷ついて唾液がたまったもので、詳しくは唇や舌の下にできる水ぶくれ(粘液嚢胞・ガマ腫)|自然に治る?切除の判断にまとめました。

よくある質問

食事のときだけあごの下が腫れます。何科を受診すればよいですか

歯科口腔外科でも耳鼻咽喉科でも対応します。まずはかかりつけの歯科医院で相談し、必要に応じて紹介してもらう流れで問題ありません。受診の際は、いつからか、どのくらい腫れて何分で引くか、痛みや発熱があるかを伝えてください。診断が早く進みます。

唾石は自然に出ることがありますか

出口に近く小さいものであれば、出てくることがあります。水分を十分にとる、酸味のあるもので唾液の分泌を促す、腺の後ろから出口へ向けて優しくマッサージするといった方法をとります。方向を誤ると逆効果になるため、やり方は診察で教わってください。数週間で変化がなければ次の方法に進みます。

痛みがないのですが、放置してもよいですか

放置は勧められません。詰まりと炎症を繰り返した唾液腺は、線維に置き換わって硬くなり、唾液をつくる力が戻らなくなることがあります。そうなると石を取り除いても分泌は回復しません。症状が軽いうちに対処するほうが、腺を残せる可能性が高くなります。

手術は入院が必要ですか

石の位置によります。口の中から届く位置にある場合は、局所麻酔で30分程度の外来処置です。腺の中や管の奥にある場合は、内視鏡を用いる方法や腺そのものを摘出する手術が検討され、この場合は入院を伴うことが一般的です。まず画像で位置を確認してから方針を決めます。

唾液腺を取ると口が乾きませんか

唾液腺は左右に複数あるため、ひとつを摘出しても他の腺が働き、口が極端に乾くことは通常ありません。ただし手術では近くを走る神経への配慮が必要です。摘出以外の方法が選べるかどうかも含めて、事前に説明を受けてから判断してください。

繰り返しできることはありますか

あります。唾液が粘りやすい、流れが滞りやすいといった条件が残っていれば、再びできることがあります。こまめに水分をとる、よく噛んで唾液の流れを保つ、口の中を清潔にして細菌の侵入を減らすといった対策が予防になります。腫れの兆しがあれば早めに受診してください。

おたふくかぜとどう違いますか

おたふくかぜは主に耳の下にある耳下腺が腫れ、多くは両側に起こり、食事との関係なく数日にわたって続きます。唾石症は片側で、食べ始めると腫れて食後しばらくで引くという出方をします。発熱の有無や、これまでにかかったことがあるかも判断の材料になります。

歯の痛みだと思っていました。区別はつきますか

出方が異なります。歯が原因の場合、噛んだときに響く、冷たいものがしみる、歯ぐきが腫れるといった症状を伴います。唾石症では、歯ではなくあごの下そのものが張り、食事のたびに繰り返します。診察では口の中から管の出口を確認し、必要に応じて画像で確かめます。

まとめ

唾石症は、唾液の通り道に石ができて流れがせき止められる状態です。あごの下にある顎下腺に多く、管が下から上へ走っていることと、分泌される唾液が粘りやすいことが理由と考えられています。特徴的なのは症状の出方です。食べ始めると唾液の分泌が増え、行き場を失った唾液が腺にたまって腫れ、締めつけられるような痛みが出ます。食後しばらくで引き、また次の食事で繰り返します。この経過は、歯が原因の痛みとは明らかに異なります。詰まった状態が続くと細菌が入り、食事と関係のない強い腫れや発熱を伴う唾液腺炎になることがあります。この場合はまず炎症を抑える治療が先です。検査は、触診に加えて超音波やCTで石の位置と大きさを確認します。出口に近い小さな石は、水分と唾液の分泌を促す方法で出てくることがあります。届く位置にあるものは、局所麻酔で口の中から取り出せます。腺の奥にある場合は、内視鏡や腺の摘出が検討されます。放置して繰り返すと腺そのものの働きが戻らなくなるため、年に何度も腫れている場合は早めに相談してください。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)や愛知・東海で食事のたびの腫れが続いている方は、歯科口腔外科で扱う症状|親知らず・膿・できもの・外傷もあわせてご覧ください。

参考・出典

  • 日本口腔外科学会「口腔外科相談室」
  • 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「唾液腺疾患について」
  • 日本口腔内科学会「口腔内科の診療指針」
  • 厚生労働省「歯科診療報酬点数表」

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

→ 監修者・編集方針について