横向き・埋まっている親知らず(埋伏智歯)の抜歯|難易度と流れ

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年7月4日監修:村井亮介(DDS, MSD(米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)/日本補綴歯科学会 会員)

歯科医院で「親知らずが横向きに埋まっていますね」「骨の中に完全に埋まっているので、大きな病院を紹介します」と言われて、不安になって調べている方は多いはずです。埋まっている親知らずは埋伏智歯(まいふくちし=歯ぐきや骨の中に埋まったままの親知らず)と呼ばれ、普通の抜歯とは流れも難易度も変わってきます。名古屋市内(中区・栄・名古屋駅周辺など)でも、埋伏智歯は一般歯科から歯科口腔外科へ紹介されることが多いテーマで、愛知・東海エリアの大学病院や総合病院の口腔外科では日常的に行われている手術の一つです。

このページでは、埋伏智歯とはどういう状態か、埋まり方によって難易度がどう変わるのか、外科的な抜歯の具体的な流れと術後の経過、そして一般歯科と口腔外科のどちらで抜くことになるのかを、日本口腔外科学会や国内外のガイドラインをもとに整理します。
横向き・埋まっている親知らず(埋伏智歯)の抜歯のイメージイラスト
なお、実際の難易度や治療方針は、レントゲンや歯科用CTによる診査診断(しんさしんだん=検査にもとづいて状態を評価し方針を決めること)で一人ひとり変わります。ここでの内容は、受診前の目安としてお読みください。親知らず全体の基礎知識(抜くべき基準・費用など)は、親知らずの抜歯|抜くべき基準・流れ・費用のページにまとめています。

先に結論:埋まっている=必ず抜くではなく、「深さ・向き・神経との距離」で個別に判断する

最初に押さえたいポイントは次の三つです。
  • 埋伏智歯は「埋まっているから必ず抜く」わけではありません。症状や病変がなく、抜くリスクのほうが高い完全埋伏歯は、経過観察が選ばれることもあります
  • 抜く場合の難易度は、主に「埋まっている深さ」「歯の向き(水平・傾斜など)」「下あごの神経との距離」で決まります。横向き(水平埋伏)で深いほど、骨を削り歯を分割する外科的な抜歯になります
  • 難易度が高い症例や全身管理が必要な方は、一般歯科から歯科口腔外科(大学病院・総合病院など)へ紹介されるのが一般的な流れです
「横向き」と言われた時点で身構えてしまいがちですが、水平埋伏の抜歯自体は口腔外科では標準的な手術で、多くは局所麻酔・30〜60分程度で終わります。大切なのは、術前にパノラマレントゲンや歯科用CT(CBCT)で神経との位置関係まで確認し、リスクを評価したうえで計画的に抜くことです。

早見表:埋まり方のタイプ別にみる難易度と処置の目安

タイプ埋まり方の状態難易度処置の目安備考
Aほぼまっすぐ生えている(垂直)通常の抜歯(分割不要のことも)一般歯科で対応しやすい
B手前に傾き、一部だけ見えている(半埋伏・近心傾斜)切開+歯の分割智歯周囲炎を繰り返しやすい
C横向きに倒れている(水平埋伏)中〜高切開+骨削除+分割手前の歯の虫歯・歯根吸収に注意
D骨の中に完全に埋まっている(完全骨性埋伏)切開+骨削除+分割、口腔外科紹介も無症状・無病変なら経過観察の選択も
E深く埋まり神経(下顎管)に近接、または病変ありCBCTで評価、コロネクトミー等も検討術前の画像評価が特に重要

(難易度は一般的な傾向です。根の形・年齢・開口のしやすさなどでも変わります。)

埋伏智歯とは:埋まり方の分類を知ると説明がわかりやすくなる

親知らず(第三大臼歯・智歯)は、あごのいちばん奥に最後に生えてくる歯です。現代人はあごが小さい傾向があり、生えるスペースが足りないと、歯は途中で止まって埋まったままになります。これが埋伏智歯で、埋まり方によって次のように分けられます。
  • 半埋伏(部分埋伏):歯の一部だけが歯ぐきから顔を出している状態。歯と歯ぐきの隙間に汚れがたまりやすく、智歯周囲炎(ちししゅういえん=親知らず周囲の歯ぐきの炎症)の温床になりやすい
  • 完全埋伏:歯ぐきの下、あるいは骨の中に完全に埋まっている状態。骨に覆われているものは完全骨性埋伏と呼ばれ、抜歯の難易度は高くなる
歯の向きについては、手前に傾いた近心傾斜(もっとも多い)、真横に倒れた水平、まっすぐの垂直、後ろ向きの遠心傾斜、さらにまれに逆さま(逆生)などがあります。口腔外科の分野では、傾きの向きで分けるWinter(ウィンター)分類や、埋まっている深さと骨の中での位置で分けるPell-Gregory(ペル・グレゴリー)分類が広く使われており、「水平埋伏で深い位置にあるほど難しい」というのが基本的な考え方です。 もう一つ重要なのが神経との距離です。下あごの骨の中には、下唇やあごの感覚をつかさどる下歯槽神経(かしそうしんけい)が通る管(下顎管=かがくかん)があり、深く埋まった親知らずの根はこの管に近接していることがあります。神経に近い症例では、抜歯後にしびれが出るリスクを評価するため、歯科用CT(CBCT)で立体的に位置関係を確認することが推奨されています。神経麻痺のリスクとCT検査の意味については、親知らず抜歯と神経麻痺のリスク|下歯槽神経・CT検査の意味で詳しく解説しています。

難易度を左右する要素:同じ「横向き」でも難しさは同じではない

「水平埋伏=難しい」と一括りにされがちですが、実際の難易度は複数の要素の掛け算で決まるとされています。
  • 深さ:骨の中に深く埋まっているほど、削る骨の量が増える
  • 向き:水平や近心傾斜は、歯を分割して取り出す必要があることが多い
  • 根の形:根が曲がっている・複数に分かれて開いている・肥大しているほど難しい
  • 神経との距離:下顎管に近接・接触しているとリスク評価が必要になる
  • 年齢:年齢が上がると骨が硬くなり、根も完成して抜きにくくなる傾向がある
  • 口の開きやすさ・嘔吐反射:器具を入れるスペースが確保しにくいと時間がかかる
臨床の現場では、こうした要素をパノラマレントゲンで総合的に評価し、「自院で対応できるか、口腔外科へ紹介すべきか」を判断します。名古屋・愛知エリアであれば、大学病院の歯科口腔外科や総合病院の口腔外科が主な紹介先となり、紹介状と画像を持って受診する流れが一般的です。

埋伏智歯の抜歯の流れ:切開から縫合まで

横向きや深く埋まった親知らずは、外科的な抜歯(難抜歯)になります。一般的な流れは次のとおりです。
横向き・埋まっている親知らず(埋伏智歯)の抜歯の解説イラスト
  1. 局所麻酔をする(下あごでは奥の神経全体に効かせる伝達麻酔を併用することもある)
  2. 歯ぐきを切開し、埋まっている歯が見えるように開く
  3. 歯を覆っている骨を、必要な範囲だけ削る
  4. 歯冠(歯の頭)と歯根を分割し、小さくして順に取り出す
  5. 抜いた穴(抜歯窩=ばっしか)の中を確認・洗浄する
  6. 歯ぐきを縫合し、ガーゼを噛んで止血する
  7. 約1週間後に抜糸する
所要時間は症例によりますが、埋伏の程度が中等度であれば30分前後、深い完全埋伏では60分程度かかることもあります。歯を分割するのは、無理な力をかけずに小さく取り出すことで、骨や神経へのダメージを最小限にするためです。「割って抜く」と聞くと大がかりに感じますが、侵襲(体への負担)をむしろ減らすための手技です。 恐怖心が強い方、複数本を同時に抜く場合、全身疾患の管理が必要な場合には、うとうとと眠ったような状態で受けられる静脈内鎮静法や、入院下での全身麻酔(主に病院口腔外科)が選択されることもあります。麻酔の種類を含めた抜歯当日の流れ全体は、親知らず抜歯の流れと術後の痛み・腫れの経過もあわせてご覧ください。

術後の経過:腫れのピークは2〜3日、1〜2週間で落ち着くのが目安

埋伏智歯の抜歯後は、骨を削った範囲に応じて腫れや痛みが出ます。一般的な経過の目安は次のとおりです。
  • 当日〜翌日:麻酔が切れると痛みが出はじめる。処方された痛み止めでコントロールする
  • 2〜3日目:腫れと痛みのピーク。頬が目に見えて腫れることも珍しくない
  • 4〜7日目:腫れが徐々に引き、口の開けにくさ(開口障害)も改善していく
  • 約1週間:抜糸。多くの場合、日常生活の支障はかなり少なくなる
  • 数週間〜数か月:歯ぐきがふさがり、骨が少しずつ回復していく
深い埋伏ほど反応は大きくなりやすく、仕事や学校の予定は「抜歯後2〜3日は腫れてもよい日程」を選ぶ方が多いです。注意したい合併症としては、抜いた穴のかさぶた(血餅=けっぺい)が取れて強く痛むドライソケット、術後の感染や出血、そして下唇のしびれ(神経麻痺)などがあります。術後の過ごし方とドライソケットの予防策は、親知らず抜歯後の注意点とドライソケット予防で詳しく扱っています。

費用の目安:埋伏の程度で保険点数が変わる

埋伏智歯の抜歯は、智歯周囲炎や虫歯、手前の歯への悪影響、病変など医学的な必要性があれば公的医療保険の対象です。保険診療(3割負担)での処置料の目安は、傾いて一部見えている難抜歯でおおむね1,500〜2,000円台、骨を削る必要のある埋伏歯の抜歯で3,000〜4,000円台とされています。ここに初診料・パノラマレントゲン・必要に応じたCBCT撮影・投薬・術後の消毒や抜糸の費用が加わるため、総額では1本あたり5,000円〜1万円強になることが多いようです。静脈内鎮静法や全身麻酔、入院をともなう場合は別途費用がかかります。金額は状態や医院・病院によって変わるため、詳しくは親知らず抜歯の費用と保険適用の目安を参考に、受診先でご確認ください。

無症状の完全埋伏歯は「抜かない」選択もある

完全に骨の中に埋まっていて、症状も病変もない親知らずをどうするかは、国際的にも議論が続いているテーマです。英国NICEのガイドラインやCochrane(コクラン)レビューでは、無症状・無病変の埋伏智歯を予防のためだけに抜くことを一律には推奨しておらず、定期的なレントゲンでの経過観察が選択肢とされています。一方で、年齢とともに骨が硬くなり抜歯が難しくなること、埋伏歯のまわりに嚢胞(のうほう=袋状の病変)ができることがまれにあることから、若いうちの計画的な抜歯を勧める立場もあります。どちらが合うかは年齢・全身状態・埋まり方によるため、抜くべきかどうかの判断基準は親知らずは抜くべき?抜かなくてよいケースの基準もあわせてご覧ください。

よくある質問

横向きの親知らずは必ず抜かないといけませんか

必ずではありません。ただし水平埋伏歯は、手前の歯(第二大臼歯)との間に汚れがたまって虫歯や歯根の吸収を起こしやすく、智歯周囲炎の原因にもなりやすいため、抜歯を勧められることが多い生え方です。無症状でも手前の歯に影響が出はじめているケースがあるので、レントゲンでの評価を受けたうえで判断するのが安心です。

埋まっている親知らずを放置するとどうなりますか

半埋伏の歯は炎症や虫歯を繰り返しやすく、手前の歯を巻き込むことがあります。完全埋伏で無症状なら経過観察も選択肢ですが、まれに嚢胞などの病変が無症状のまま進むことがあるため、「放置」ではなく定期的なレントゲン確認が前提とされています。

抜歯にはどのくらい時間がかかりますか

埋まり方によりますが、半埋伏や中等度の水平埋伏で30分前後、深い完全埋伏で60分程度が一つの目安です。麻酔や術後説明を含めると、来院から帰宅まで1〜1.5時間程度を見ておくとよいでしょう。

左右2本を同時に抜くことはできますか

可能な場合もあります。ただし両側の下を同時に抜くと、噛める場所が一時的に大きく減り食事がつらくなるため、片側ずつ分けることが多いです。静脈内鎮静や全身麻酔下で4本同時に抜く方法は、主に病院口腔外科で行われています。

名古屋で埋伏智歯の抜歯はどこで受けられますか

まずはかかりつけの歯科でレントゲンを撮り、難易度を評価してもらうのが一般的です。難しい症例は、名古屋市内や愛知県内の大学病院・総合病院の歯科口腔外科へ紹介状を持って受診する流れになります。中区・栄・名古屋駅周辺にも歯科口腔外科を標榜し埋伏歯の抜歯に対応する医院はあるため、通いやすさと症例の難易度に応じて相談してみてください。

抜いた後、どのくらいで普通の生活に戻れますか

デスクワークなら翌日から可能なことが多いですが、腫れのピークは2〜3日目です。激しい運動・飲酒・長風呂は数日控え、抜糸(約1週間後)までは抜いた側で硬いものを噛むのを避けるのが目安です。個人差があります。

まとめ

横向き・埋まっている親知らず(埋伏智歯)は、埋まり方の深さ・向き・神経との距離によって難易度が大きく変わります。半埋伏や水平埋伏は炎症や手前の歯への悪影響の原因になりやすく抜歯を検討することが多い一方、無症状の完全埋伏歯は経過観察という選択もあります。外科的な抜歯は切開・骨削除・分割という流れで行われ、多くは局所麻酔で30〜60分程度、腫れは2〜3日でピークを迎え1〜2週間で落ち着くのが目安です。神経に近い症例ではCBCTでの術前評価が重要で、難しいケースは口腔外科への紹介が一般的です。名古屋・愛知エリアで「埋まっている」と指摘された方は、まずレントゲンでご自身の埋まり方のタイプを確認し、納得できる説明を受けたうえで治療計画を立ててもらいましょう。
横向き・埋まっている親知らず(埋伏智歯)の抜歯に関するケア・予防のイメージイラスト

参考・出典

  • 公益社団法人 日本口腔外科学会「親知らずの抜歯」「埋伏歯」に関する市民向け情報
  • NICE(英国国立医療技術評価機構)「Guidance on the extraction of wisdom teeth」
  • SIGN(Scottish Intercollegiate Guidelines Network)「Management of unerupted and impacted third molar teeth」
  • American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons(AAOMS)third molar に関するポジションペーパー
  • Cochrane Database of Systematic Reviews「Surgical removal versus retention for the management of asymptomatic disease-free impacted wisdom teeth」
  • Pell & Gregory分類、Winter分類に関する口腔外科学の標準的教科書記載
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット(歯・口腔の健康に関する解説)
(注:本文の費用・時間・頻度は一般的な目安です。保険点数・最新ガイドラインの版は監修者が確認・更新します。)

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

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