妊娠中の歯周病(妊娠性歯肉炎)|赤ちゃんへの影響と予防

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年7月3日監修:村井亮介(DDS, MSD(米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)/日本補綴歯科学会 会員)

「妊娠してから歯みがきのたびに血が出るようになった」「歯ぐきが腫れてぶよぶよする」。妊娠中にこうした変化に気づく方は少なくありません。これは妊娠性歯肉炎(にんしんせいしにくえん)と呼ばれる、妊娠中に起こりやすい歯ぐきの炎症です。

妊娠中はホルモンの変化やつわりの影響で、口の中の環境が歯周病にとって「進みやすい」状態に傾きます。しかも歯周病は、お母さんの口の健康だけでなく、早産・低体重児との関連も指摘されており、赤ちゃんにとっても無関係ではありません。とはいえ、正しく理解して予防・ケアをすれば、過度に不安になる必要はありません。
妊娠中の歯周病(妊娠性歯肉炎)のイメージイラスト
このページでは、なぜ妊娠中に歯ぐきが腫れやすくなるのか、赤ちゃんへの影響はどう考えればよいのか、いつ歯科を受診すればよいのか、安定期のケアや名古屋市の妊婦歯科健診の制度まで、学会や公的機関の情報をもとにわかりやすく整理します。 歯や歯ぐきの状態は一人ひとり異なり、最終的な診断には歯科医院での検査が必要です。ここでは全体像をつかむための目安としてお読みください。妊娠中の治療の可否や薬の使用については、必ずかかりつけの歯科・産科にご相談ください。

先に結論:妊娠中こそ歯ぐきのケアを

妊娠中の歯周病について、まず押さえておきたい要点をまとめます。
  • 妊娠中は女性ホルモンの増加で歯ぐきが炎症を起こしやすくなり、少しの歯垢でも腫れや出血が出やすい
  • 妊娠性歯肉炎は歯肉炎の一種で、清掃をきちんと行えば多くは改善が期待できる
  • 進行した歯周病は早産・低体重児出産との関連が指摘されており、予防に意義がある
  • 歯科治療は安定期(おおむね妊娠5〜7か月)が受けやすいとされる
  • 名古屋市をはじめ多くの自治体で妊婦向けの歯科健診が用意されている
過度に心配する必要はありませんが、「妊娠中だから歯科は後回し」ではなく「妊娠中だからこそ歯ぐきをケアする」という意識が大切です。歯周病全体の仕組みや治療の流れは、歯周病治療とは|症状の進行と治療法を解説もあわせてご覧ください。

【早見表】妊娠中の歯ぐきトラブルの見分け方

妊娠中に起こりやすい口のトラブルを整理します。気になる症状があれば早めに相談してください。
状態主な症状特徴対応
妊娠性歯肉炎歯ぐきの腫れ・出血ホルモンの影響で悪化しやすい/可逆的丁寧な清掃・歯科での清掃
妊娠性エプーリス歯ぐきにできるやわらかいこぶ良性で出産後に小さくなることが多い経過観察・気になれば相談
もともとの歯周炎の悪化ぐらつき・深いポケット妊娠前からの歯周病が進みやすい安定期に検査・基本治療
むし歯・つわり関連しみる・口の中の酸性化嘔吐や間食増加で悪化しやすいうがい・こまめなケア
「可逆的(かぎゃくてき)」とは元に戻せるという意味です。妊娠性歯肉炎は骨が溶ける前の段階なので、適切なケアで改善が期待できます。

なぜ妊娠中は歯ぐきが腫れやすいのか

妊娠中に歯ぐきのトラブルが増える背景には、いくつかの要因が重なっています。
  • 女性ホルモンの増加:エストロゲンやプロゲステロンという女性ホルモンが増えると、歯ぐきの血管が広がって炎症反応が起きやすくなります。さらに、この種のホルモンを好む特定の歯周病関連菌が増えやすいことも知られており、少しの歯垢でも歯ぐきが敏感に反応するようになります。
  • つわりの影響:吐き気で歯みがきがつらくなり、磨き残しが増えがちです。嘔吐を繰り返すと口の中が酸性に傾き、歯の表面にも負担がかかります。
  • 食習慣の変化:少量をこまめに食べる、酸味や甘味のあるものを欲するなど、食べ方が変わることで歯垢がたまりやすくなります。
  • 唾液の変化:妊娠中は唾液の性質が変わり、口の中がねばつきやすく感じることもあります。
このため、妊娠前と同じケアをしていても歯ぐきが腫れやすくなります。妊娠性歯肉炎はとくに妊娠中期から後期にかけて出やすいとされ、前歯の歯ぐきが赤く腫れて出血するのが典型的です。
妊娠中の歯周病(妊娠性歯肉炎)の解説イラスト
大切なのは、原因そのものは妊娠前と同じ「歯垢(プラーク/細菌のかたまり)」だという点です。ホルモンは炎症を起こしやすくする要因ですが、歯垢がなければ強い炎症は起こりにくいとされています。だからこそ、妊娠中の歯垢コントロールがいっそう重要になります。

赤ちゃんへの影響:早産・低体重児との関連

妊娠中の歯周病で気になるのが、お腹の赤ちゃんへの影響でしょう。進行した歯周病は、早産(予定より早い出産)や低体重児(生まれたときの体重が少ない赤ちゃん)の出産と関連する可能性が、複数の研究で指摘されています。 そのしくみとして、歯ぐきの慢性的な炎症で生じる物質や細菌が血流を通じて全身に影響し、出産に関わる仕組みを刺激するのではないか、という考え方が示されています。ただし、この関連の強さや、歯周治療を行えば早産を確実に減らせるのかについては、研究によって結果が分かれており、まだ議論が続いている領域です。
  • 関連が「指摘されている」ことは確かで、歯ぐきの健康を保つ意義は十分にある
  • 一方で「歯周病が早産の直接の原因」と断定できるほど単純ではなく、慎重に受け止める必要がある
  • 過度に不安になるより、できる予防(毎日のケアと歯科受診)を淡々と続けることが現実的
つまり、「歯周病があると必ず早産になる」と怖がる必要はありませんが、「歯ぐきの炎症を放置しないほうがよい理由のひとつ」として受け止めるのが適切です。あわせて、生まれた後の赤ちゃんへの影響として、むし歯菌はお母さんなど周囲の大人から伝わることが知られており、お母さん自身の口の健康を整えておくことは、赤ちゃんの将来の口の健康にもつながります。

いつ歯科を受診すればよいか

「妊娠中に歯の治療を受けても大丈夫なの?」という不安はよく聞かれます。基本的な考え方を整理します。
  • 妊娠初期(〜4か月ごろ):つわりや体調が不安定な時期。応急的な処置にとどめ、無理な治療は避けることが多い。
  • 安定期(5〜7か月ごろ):体調が落ち着き、歯石除去や必要な治療を受けやすい時期。健診や基本治療はこの時期がすすめられる。
  • 妊娠後期(8か月〜):お腹が大きく、仰向けの姿勢が負担になりやすい。急ぎでなければ産後に回すことも。
ただし、腫れや痛みが強い、膿が出ているといった場合は、時期にかかわらず早めに相談してください。我慢して悪化させるほうが、母体にも負担になります。歯科用のレントゲンは腹部を防護し、必要最小限であれば影響はごくわずかとされていますし、局所麻酔や妊娠中に使える薬もあります。自己判断で受診を避けるより、妊娠していることを歯科に伝えたうえで相談するのが安心です。 名古屋・栄や名古屋駅周辺など通いやすい歯科を選び、母子健康手帳を持参して妊娠週数や体調、産科の情報を共有するとスムーズです。

名古屋市の妊婦歯科健診を活用する

多くの自治体では、妊婦さんが歯科健診を受けられる制度を用意しています。名古屋市でも、母子健康手帳の交付にあわせて妊婦を対象とした歯科健診(妊婦歯科診査)の案内があり、対象の方は指定の医療機関などで受けられる仕組みが整えられています。愛知県内の他の市町村でも、同様の妊婦歯科健診を実施しているところが多くあります。
  • 制度の名称・対象・受診方法・費用(無料または一部負担)は自治体や年度で異なる
  • 母子健康手帳の交付時にもらう案内や、名古屋市・お住まいの区の公式情報で最新の内容を確認する
  • 妊娠がわかったら早めに一度、健診を受けて自分の口の状態を把握しておくと安心
こうした制度は、妊娠中の歯ぐきの変化を早めにチェックし、必要なケアにつなげる良い機会です。「特に困っていないから」と見送らず、活用することをおすすめします。具体的な対象や申込方法は、名古屋市やお住まいの区の公式情報で最新のものをご確認ください。

安定期にできるセルフケア

妊娠中の歯周病予防の土台は、やはり毎日のセルフケアです。体調に合わせて無理のない範囲で続けましょう。
妊娠中の歯周病(妊娠性歯肉炎)に関する予防・ケアのイメージイラスト
  • 歯と歯ぐきの境目を意識して、やさしく丁寧にみがく(強すぎる力は歯ぐきを傷める)
  • 歯ブラシで届かない歯間は、歯間ブラシやデンタルフロスで清掃する
  • つわりで歯みがきがつらいときは、ヘッドの小さい歯ブラシを使う、香りの弱い歯みがき剤にする、体調の良い時間帯に磨くなど工夫する
  • 嘔吐した後は、まず水やうがいで口をすすぎ、気持ち悪さが落ち着いてから歯みがきする
  • だらだら食べを避け、食後は水やお茶で口の中を洗い流す
  • 気になる症状があれば、安定期に歯科で専門的な清掃と検査を受ける
一方で、避けたいのは「出血するのが怖いから歯ぐきの境目を磨かない」ことです。出血は炎症のサインで、むしろ丁寧な清掃で炎症が引けば出血も落ち着いていきます。強くこするのではなく、やさしく確実に歯垢を落とすことを意識してください。 妊娠性歯肉炎の多くは出産後、ホルモンバランスが戻るにつれて改善していきますが、放置して歯垢がたまり続けると、骨が溶ける歯周炎へ進む可能性もあります。妊娠を、口のケアを見直すきっかけにするとよいでしょう。

よくある質問

妊娠性歯肉炎は自然に治りますか

出産後にホルモンバランスが戻ると、歯ぐきの腫れや出血は落ち着いていくことが多いとされています。ただし、原因である歯垢がたまり続けると炎症が長引き、歯周炎へ進むこともあります。自然に任せきりにせず、毎日の清掃と必要に応じた歯科での清掃を続けることが大切です。

歯周病があると本当に早産になりますか

進行した歯周病と早産・低体重児出産との関連は複数の研究で指摘されていますが、関連の強さや、治療で早産を確実に減らせるかについては結果が分かれており、断定はできません。「必ず早産になる」と怖がる必要はありませんが、歯ぐきの炎症を放置しない理由のひとつとして受け止めるのが適切です。

妊娠中に歯の治療やレントゲンを受けても大丈夫ですか

安定期(おおむね5〜7か月)であれば、多くの治療を受けやすいとされています。歯科用レントゲンは腹部を防護し必要最小限であれば影響はごくわずかとされ、妊娠中に使える麻酔や薬もあります。妊娠していること・週数・産科の情報を歯科に伝えたうえで相談してください。

つわりで歯みがきができません。どうすればいいですか

無理に長く磨こうとせず、体調の良い時間帯に、ヘッドの小さい歯ブラシで短時間でも磨くのがおすすめです。香りの強い歯みがき剤が苦手なら弱いものに変える、まずはうがいだけでも行う、といった工夫で口の中の細菌を減らせます。嘔吐後はうがいで口をすすいでから磨きましょう。

妊婦歯科健診は受けたほうがよいですか

妊娠中は歯ぐきのトラブルが起こりやすいため、症状がなくても一度受けておくと安心です。名古屋市をはじめ多くの自治体で妊婦向けの歯科健診が用意されています。対象や受診方法、費用は自治体や年度で異なるため、母子健康手帳の案内やお住まいの区の公式情報で確認してください。

まとめ

妊娠中は女性ホルモンの増加やつわりの影響で、歯ぐきが炎症を起こしやすくなり、少しの歯垢でも腫れや出血が出やすくなります。これが妊娠性歯肉炎で、骨が溶ける前の段階のため、丁寧な清掃と歯科でのケアで多くは改善が期待できます。進行した歯周病は早産・低体重児出産との関連が指摘されていますが、断定はできず、過度に不安になる必要はありません。むしろ「妊娠中だからこそ歯ぐきをケアする」という意識で、毎日のセルフケアを体調に合わせて続け、安定期には歯科で検査と清掃を受けること、そして名古屋市などの妊婦歯科健診を活用することが、お母さんと赤ちゃん双方の健康につながります。歯ぐきの腫れや出血が気になる方は、妊娠していることを伝えたうえで、名古屋・愛知の歯科に早めにご相談ください。歯周病の仕組みや治療の流れは歯周病治療とは|症状の進行と治療法を解説で詳しく解説しています。 より詳しくは、歯周病と全身の病気タバコと歯周病20代・30代でも歯周病?若くても進行する原因と対策で詳しく解説しています。 女性ホルモンの変化は、歯ぐきだけでなく閉経後の骨の健康とも関わります。歯周病と骨粗鬆症・骨の薬の関係も、ライフステージごとのお口の変化として参考になります。

参考・出典

  • 日本歯周病学会「歯周治療のガイドライン」「歯周病学用語集」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット(歯周病・妊娠と歯・妊娠性歯肉炎に関する解説)
  • 厚生労働省「妊産婦のための歯科口腔保健」関連資料
  • 名古屋市・愛知県 公式サイト(妊婦歯科健診・母子保健に関する案内)
  • MSDマニュアル(家庭版・プロフェッショナル版)「歯肉炎」「妊娠中の口腔の変化」
  • 歯周病と早産・低体重児出産の関連に関する系統的レビュー/メタアナリシス(Journal of Clinical Periodontology 等)
(注:制度の内容や記載の数値は自治体・年度・条件で変わります。最新の制度は名古屋市等の公式情報を、治療の可否は監修医・産科の判断をご確認ください。)

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

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