詰め物・被せ物(銀歯)が取れたときの応急処置とNG行動|歯科医が解説

銀歯や詰め物が外れる仕組み(セメントの劣化や二次う蝕、露出した象牙質)と、早めに受診したいサインをまとめた解説図

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年5月7日監修:村井亮介(DDS, MSD(米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)/日本補綴歯科学会 会員)

食事中にカリッと違和感があって、口の中から銀歯がポロッと出てきた。詰め物が取れて歯に穴があいたように感じる。そんなとき、多くの方が「すぐ歯医者に行けないけれど、まず何をすればいいのか」「自分で着け直してもいいのか」「放っておくとどうなるのか」と戸惑います。

このページでは、銀歯や詰め物・被せ物が取れたときに、受診までの間にまずすべき応急の対処と、やってはいけない行動を、緊急度の見分け方とあわせて、できるだけわかりやすく解説します。状態には個人差があり、最終的な診断と処置には歯科医院での確認が必要です。あくまで受診までの判断の目安としてお読みください。
銀歯や詰め物が外れる仕組み(セメントの劣化や二次う蝕、露出した象牙質)と、早めに受診したいサインをまとめた解説図
なお、外れたあとの再装着や作り直しといった治療そのものの進め方は、詰め物・被せ物が取れたときの正しい対処法 で詳しく整理しています。

先に結論:あわてなくてよいが、放置はしない

まず知っておいていただきたいのは、詰め物(インレー)や銀歯・被せ物(クラウン)が外れること自体は、歯科でよくあるトラブルであり、多くの場合は夜間に救急へ駆け込むような緊急事態ではない、ということです。とはいえ「外れたまま放っておいてよい」という意味ではありません。露出した歯はもろく、時間がたつほど新たな虫歯や歯の移動が進み、本来なら着け直せたはずのものが作り直しになることもあります。痛みがなくても、数日から1週間程度を目安に、できるだけ早めの受診をおすすめします(受診までの日数は一般的な目安で、症状によって変わります)。 一方で、次のいずれかに当てはまる場合は、当日〜翌日を目安に早急な受診を検討してください。
  • 何もしなくてもズキズキ痛む、強い自発痛がある
  • 歯ぐきや頬が腫れている、発熱がある
  • 残った歯(土台)が大きく欠けた、グラグラしている
  • 外れた縁や歯が鋭く、舌や頬が切れる・出血が続く
  • 取れた銀歯を飲み込んでしまい、咳込み・息苦しさ・ぜん鳴(ゼーゼー)など呼吸の異常がある
臨床の現場では、「外れた」という事実そのものより、外れた背景に何があるか(接着の劣化だけなのか、下に虫歯が進んでいるのか)を重視します。だからこそ、自分で着け直して終わりにせず、原因を確かめることが大切になります。

なぜ取れるのか、なぜしみるのか(メカニズム)

詰め物や被せ物は、歯にぴったり合わせて作られ、専用のセメント(接着剤)で固定されています。これは「合着(ごうちゃく)」や「接着」と呼ばれ、いわば歯と修復物をのりで貼り合わせている状態です。 ところが、毎日の噛む力、唾液、温かい・冷たいの温度変化を何年も受けるうちに、歯と修復物の境目(接着の界面)が少しずつ劣化します。たとえるなら、屋外に貼った両面テープが日光と雨で少しずつ粘着力を失っていくのと似ています。セメントが溶けたり崩れたりして維持する力が失われると、ある日ぽろりと外れる、というのが脱離のしくみです。 もう一つ見逃せない原因が、二次う蝕(にじうしょく)です。これは、修復物のわずかな隙間から細菌や酸が入り込み、被せ物や詰め物の下で歯が再び虫歯になる現象です。下の歯がもろくなって支えを失い、結果として銀歯が外れることがあります。外れた銀歯の内側に黒っぽくやわらかい部分や独特のにおいがある場合、この二次う蝕が関係している可能性があります。つまり「取れた」のは結果であって、その奥に虫歯が隠れていることがあるのです。 外れた直後にしみたり痛んだりするのは、歯の内側の象牙質(ぞうげしつ)が露出するためです。歯の表面はエナメル質という硬い層で覆われていますが、その内側の象牙質には、神経のある歯髄(しずい)へと通じる無数の細い管(象牙細管)が走っています。詰め物が取れてこの象牙質がむき出しになると、冷たいもの・熱いもの・甘いもの・接触などの刺激が管を通じて神経に伝わり、キーンと一過性にしみるのです。神経に近い深い部分が露出しているほど、しみる感覚は強くなりやすいと考えられています。なお、神経を取ってある歯(根管治療済みの歯)は外れてもしみにくいのですが、内部に細菌が入ると感染が進むため油断はできません。 放置してはいけない理由には、歯の移動もあります。被せ物が外れて歯の形や高さが変わると、向かい合う歯や隣の歯がそのすき間に向かってわずかに動き始めます。期間が長くなるほど、もとの銀歯が合わなくなり、せっかく外れた物が再装着できなくなることがあります。

外れたものは何か、緊急度をどう見分けるか

ひとくちに「取れた」といっても、外れたものの種類や歯の状態によって、急ぐ度合いは変わります。まず、自分の口の中で何が起きているかを落ち着いて確認してみましょう。 外れた物としては、歯の一部を詰める詰め物(インレー)、歯全体を覆う被せ物(クラウン=いわゆる銀歯の冠)、そして被せ物を支える芯である土台(コア)が、単独またはまとめて外れることがあります。土台ごと外れている場合は、残った歯が少なく、対応が難しくなる傾向があります。
詰め物や銀歯が外れる仕組みの模式図。セメントの劣化と二次う蝕、露出した象牙質から刺激が歯髄へ伝わる様子
緊急度は、痛みや腫れ、土台の状態でおおまかに次のように整理できます(あくまで目安で、最終判断は歯科で行います)。
  • 比較的急がない(数日〜1週間で受診):痛みもしみもなく、銀歯がきれいに外れて土台の歯がしっかりしている
  • 早めに(数日以内):軽くしみる・違和感がある、食事がしにくい、外れた縁が少し鋭い
  • 早急に(当日〜翌日):強い自発痛やズキズキがある、歯ぐきの腫れ・発熱、土台が大きく欠けた・グラグラする、出血が続く
銀歯を飲み込んでしまった場合は、多くは小さな金属片なので、自然に消化管を通って数日のうちに便とともに排出されることがほとんどとされています。ただし、咳込みや息苦しさ、ゼーゼーという呼吸など、気道に入った(誤嚥した)可能性を示すサインがあるときは、歯科ではなく医科(救急)をすぐに受診してください。症状なく飲み込んだだけであれば、過度に心配せず、念のため受診時に歯科へ伝えれば差し支えありません。 臨床の現場では、痛みの強さだけでなく、しみる・噛めない・腫れといった複数の手がかりを合わせて緊急度を判断します。判断に迷うときは、自己判断で様子を見続けるより、歯科に電話で症状を伝えて受診時期の目安を相談するのが安全です。

今すぐできる応急の対処(やって良いこと)

受診までの間、自分でできる応急の対処があります。いずれも「原因を治す」ものではなく、悪化を防ぎ、再装着の可能性を残すための一時的な手当てです。
  • 取れた詰め物・銀歯は捨てずに保管する。小さな容器やラップに包み、乾いた状態で保存して受診時に持参する。状態が良ければそのまま着け直せることがあるため、紛失や誤飲を防ぐことが大切です
  • 露出した歯と、外れた銀歯の内側をやさしく洗う。食後はうがいをし、やわらかい歯ブラシで軽く清掃して清潔に保つ。食べかすやプラーク(細菌のかたまり)の停滞は、痛み・におい・二次う蝕の進行につながります
  • その歯ではなるべく噛まず、反対側で食事する。硬いもの、キャラメルやガム、餅などの粘着性の食品は、再脱離や歯の破折、土台の損傷を招きやすいので避ける
  • しみる・甘い・熱いなど刺激の強い飲食物を控える
  • 痛みがあるときは、市販の鎮痛薬を用法・用量を守って使用する
  • 外れた縁や歯が鋭く舌や頬に当たるときは、市販の歯科用ワックスやシュガーレスガムで一時的に覆い、粘膜を傷つけないように保護する
海外の患者向け解説では、薬局で手に入る歯科用の一時的な仮封材(テンポラリーセメントや一時的な詰め物キット)で、露出した部分を仮に覆う方法が紹介されることもあります。ただしこれはあくまで受診までの一時しのぎであり、噛み合わせを変えたり、後日の正しい接着を妨げたりしないよう、ごく浅く用いるにとどめる必要があります。日本では一般に流通が限られるため、無理に入手しようとせず、まずは清潔と刺激を避けることを優先し、早めに受診するのが現実的です。臨床の現場では、こうした応急の手当てはあくまで「受診までをしのぐもの」と位置づけ、原因の診断を先送りにしないことを重視します。

やってはいけないこと(NG行動)

良かれと思ってした行動が、かえって状態を悪くし、治療を難しくしてしまうことがあります。次の行動は避けてください。
  • 市販の瞬間接着剤(アロンアルファなどのシアノアクリレート系)や家庭用の接着剤で、自分で着け直す。歯や神経への刺激・為害性があり、ぴったり合わないまま固まって噛み合わせが狂い、下に隠れた虫歯を密閉して悪化させ、後日の正しい再装着や診断ができなくなります。除去の際に歯を傷めることもあり、国際的にも明確に避けるべき行為とされています
  • 外れたまま長期間放置する。歯が動いて再装着できなくなったり、二次う蝕や神経の炎症(歯髄炎)が進んだり、土台がさらに崩れたりします
  • 取れた銀歯を捨てる、無理に元に戻して飲み込んでしまう
  • 露出した歯を、爪・舌・つまようじなどで繰り返しいじる・強くつつく
  • その歯で硬いものや粘着性のものを噛む
  • 痛みがあるときに、患部を温める・長湯・飲酒・激しい運動をする。血流が増えて痛みが強まりやすくなります
  • しみるからと自己判断で長く様子見を続け、受診を先延ばしにする
とくに「瞬間接着剤で着け直す」のは、その場しのぎとして手を出しやすい行動ですが、もっとも避けたいものの一つです。一時的にくっついたように見えても、すき間から細菌が入って中で虫歯が進む、噛むたびに歯に無理な力がかかる、いざ歯科で外そうとすると歯質ごと傷めてしまう、といったリスクが重なります。外れた銀歯は「接着剤で留めるもの」ではなく「歯科で原因ごと診てもらうもの」と考えてください。

そのままにするとどうなる?

詰め物や銀歯が取れたまま放置すると、いくつかの問題が静かに進みます。まず、むき出しになった象牙質はエナメル質より柔らかく虫歯になりやすいため、二次う蝕が一気に進むことがあります。被せ物が外れた背景にもともと虫歯が隠れていた場合、その虫歯がさらに深くなり、神経にまで達して強い痛み(歯髄炎)や、根の先の炎症に進むこともあります。こうなると、簡単な再装着では済まず、神経の治療や、場合によっては抜歯が必要になることもあります。 また、前述のとおり歯は少しずつ動くため、放置期間が長いほど、外れた銀歯が合わなくなり、作り直しが必要になります。鋭くなった歯の縁が舌や頬を繰り返し傷つけ、口内炎のようなただれをつくることもあります。痛みがないからと安心していると、見えないところで土台の歯そのものを失うリスクが高まる、という点を意識しておくことが大切です。早い段階で受診すれば、もとの銀歯を活かせる可能性が高く、治療も小さくすむ傾向があります。
外れた銀歯の応急対処の図。取れた銀歯を小さな容器やラップに包んで乾いた状態で保管し受診時に持参する様子

受診の目安と診療科の選び方

詰め物・被せ物が取れたときの相談先は、基本的には一般歯科です。次のような場合は、できるだけ早めの受診をおすすめします。
  • 痛みやしみがなくても、外れた状態が続いている(数日〜1週間以内を目安に)
  • しみる・噛みにくいなど、日常生活に支障がある
  • 強い自発痛やズキズキ、歯ぐきの腫れ・発熱をともなう(当日〜翌日を目安に)
  • 土台が大きく欠けた・グラグラする、出血が続く
銀歯を飲み込んで呼吸の異常があるなど、気道に入った可能性がある場合は、歯科ではなく医科(救急)を受診してください。痛みの原因や緊急度の見分け方をもっと広く知りたい方は、歯が痛いときの原因と対処法 もあわせてご確認ください。受診時には、いつ・どんなときに外れたか、痛みやしみの有無、外れた銀歯(持参できる場合)を伝えると、診断がスムーズになります。

よくある質問

Q

銀歯が取れたら、すぐ歯医者に行かないといけませんか

A

痛みや腫れがなければ、多くの場合その日のうちに救急受診する必要はありません。ただし放置はおすすめできず、数日から1週間程度を目安に早めの受診をおすすめします。強い自発痛・腫れ・発熱がある場合や、土台が大きく欠けている場合は、当日〜翌日を目安に早急な受診を検討してください。

Q

取れた銀歯は自分で接着剤で着け直してもいいですか

A

おすすめしません。市販の瞬間接着剤や家庭用接着剤は、歯や神経への刺激があり、ぴったり合わないまま固まって噛み合わせを狂わせ、下に隠れた虫歯を悪化させることがあります。後日の正しい再装着や診断もできなくなるため、着け直さずに歯科で診てもらってください。

Q

取れた銀歯はどうやって保管すればいいですか

A

小さな容器やラップに包み、乾いた状態で保管して受診時に持参してください。状態が良ければそのまま着け直せることがあります。紛失したり、誤って飲み込んだりしないよう注意しましょう。

Q

銀歯が取れたところがしみます。どうすればいいですか

A

むき出しになった象牙質に刺激が伝わってしみています。冷たい・熱い・甘いものを控え、その歯で噛まないようにし、清潔に保ってください。市販の鎮痛薬を用法・用量を守って使うこともできます。しみが強い・続く場合は早めに受診してください。

Q

銀歯を飲み込んでしまいました。大丈夫でしょうか

A

多くは小さな金属片で、自然に消化管を通って数日のうちに便とともに排出されることがほとんどとされています。ただし、咳込み・息苦しさ・ゼーゼーする呼吸など、気道に入った可能性を示す症状があるときは、すぐに医科(救急)を受診してください。症状がなければ、受診時に歯科へ伝えれば差し支えありません。

Q

外れた銀歯はまた使えますか、それとも作り直しですか

A

銀歯や歯の状態によります。きれいに外れて土台がしっかりしていれば、そのまま着け直せることがあります。一方、下に虫歯がある、銀歯が変形・破損している、放置で歯が動いたといった場合は作り直しになることがあります。再装着できるかどうかの判断や治療の進め方は、詰め物・被せ物が取れたときの正しい対処法 をご覧ください。

Q

放っておくとどうなりますか

A

むき出しの歯が虫歯になりやすく、隠れていた虫歯が神経まで進んで強い痛みや感染を起こすことがあります。歯が動いてもとの銀歯が合わなくなり作り直しになる、鋭い縁で舌や頬を傷つける、といった問題も起こります。痛みがなくても土台の歯を失うリスクが高まるため、早めの受診をおすすめします。

まとめ

銀歯や詰め物・被せ物が取れること自体は珍しいトラブルではなく、多くの場合はその日のうちに緊急で駆け込む必要はありません。ただし「あわてなくてよい」ことと「放置してよい」ことは別です。受診までは、取れた銀歯を捨てずに保管し、露出した歯を清潔に保ち、その歯で噛まず、刺激の強い飲食を控えるのが基本の応急対処です。逆に、瞬間接着剤などで自分で着け直すこと、長期間の放置は、二次う蝕や歯の移動、土台の崩壊を招き、治療を難しくするため避けてください。強い痛み・腫れ・発熱、土台の大きな欠けやグラグラ、飲み込んで呼吸に異常があるといった場合は、早めの受診(呼吸の異常時は医科)が必要です。外れた背景には虫歯が隠れていることもあるため、痛みがなくても早めに歯科で原因を確かめることが、その歯を長く残すことにつながります。 あわせて、詰め物・被せ物の寿命は何年?交換のサインとタイミング詰め物・被せ物の種類と費用詰め物がすぐ取れる・何度も取れる原因と対策も参考にしてください。 外れたものが最終的な詰め物・被せ物ではなく、治療途中の仮歯や仮のふたである場合は対応が異なります。その場合は仮歯・仮のふたが取れた・欠けたときの対処を参考にしてください。 取れたものがセラミックで、割れや欠けを伴っていた場合の判断はセラミックの詰め物・被せ物が割れた・欠けたにまとめています。

参考・出典

MSDマニュアル(家庭版・プロフェッショナル版)「歯の修復・補綴」「消化管異物(異物の嚥下・誤飲)」に関する解説 厚生労働省 e-ヘルスネット(むし歯・歯の健康・補綴に関する解説) 日本補綴歯科学会 関連ガイドライン・用語(クラウン・ブリッジ、合着/接着、補綴装置の維持) 日本歯科保存学会「う蝕治療ガイドライン」(二次う蝕・修復物の管理) 補綴物・修復物の長期予後(生存率・脱離・二次う蝕・破折)に関する系統的レビュー・コホート研究 各国歯科団体・公的機関の患者向けセルフケア解説(外れた詰め物・被せ物の応急対応、一時的仮封材の扱い、瞬間接着剤を使わない注意) (注:数値は出典により範囲があるため、おおよその目安です。最新版ガイドラインの版・具体的数値、国内での一時仮封材の扱いは監修者が確認・更新します。)
やってはいけない行動の図。市販の瞬間接着剤や家庭用接着剤で取れた銀歯を自分で着け直さないよう注意を促す様子

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監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

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