対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。
「上の親知らずはすぐ抜けたのに、下は大変だと言われた」「下の親知らずを抜くと腫れると聞いて不安」——親知らずの抜歯を控えた方から、上と下の違いについての疑問はとても多く寄せられます。
実際、同じ親知らずでも、上あごと下あごでは抜歯の難易度、術後の腫れや痛み、注意すべきリスクが大きく異なります。名古屋市内の歯科医院でも、「上は当院で、下は口腔外科(こうくうげか)へ紹介」という対応になることは珍しくありません。
- 上と下の親知らずで抜歯の難易度が違う理由
- 術後の腫れ・痛み・合併症(ごうへいしょう=処置にともなって起こりうるトラブル)の違い
- どちらを先に抜くか、同時に抜けるかの考え方
先に結論:一般に「下」のほうが難しく、腫れやすい
結論から言うと、一般的には下の親知らずのほうが抜歯の難易度が高く、術後の腫れや痛みも出やすいとされています。理由は大きく3つです。- 下あごの骨は上あごより硬く緻密(ちみつ)で、歯が骨にしっかり包まれている
- 下の親知らずは横向きや斜め(水平埋伏=すいへいまいふく)に埋まっていることが多い
- 下あごの骨の中には、下唇やあごの感覚をつかさどる神経(下歯槽神経=かしそうしんけい)が通っており、近接している場合は慎重な対応が必要になる
早見表:上の親知らずと下の親知らずの違い
まず、上下の違いを一覧で整理します。| 項目 | 上の親知らず | 下の親知らず |
|---|---|---|
| 骨の性質 | やわらかく、きめが粗い | 硬く、緻密 |
| 生え方の傾向 | 比較的まっすぐ〜頬側に傾くことが多い | 手前に傾く・横向きに埋まることが多い |
| 抜歯の難易度 | 低め(短時間で済むことが多い) | 高め(切開・骨削除・歯の分割が必要なことも) |
| 術後の腫れ・痛み | 軽いことが多い | 出やすい(2〜3日目がピーク、約1週間で軽快が目安) |
| 特有のリスク | 上顎洞との交通、歯の上顎洞への迷入(まれ) | 下歯槽神経・舌神経のしびれ、ドライソケット |
| 事前の画像検査 | パノラマレントゲン中心 | 神経に近い場合は歯科用CT(CBCT)を追加 |
| 対応する医療機関 | 一般歯科で対応できることが多い | 難症例は歯科口腔外科へ紹介されることがある |
なぜ下の親知らずは難しいのか(メカニズム)
下の親知らずの難しさは、下あごの構造そのものに由来します。 第一に、骨の硬さです。下あごの骨(下顎骨=かがくこつ)は、噛む力を直接受け止めるため、外側の皮質骨(ひしつこつ=骨の硬い外壁)が分厚く緻密にできています。歯が硬い骨にしっかり包まれているぶん、埋まった歯を取り出すには歯ぐきの切開や骨の削除、歯の分割といった外科的な処置が必要になりやすいのです。 第二に、生え方です。下の親知らずは生えるスペースが不足しやすく、手前に傾いたり(近心傾斜)、完全に横向きに倒れたり(水平埋伏)することが上より多いとされています。横向きの歯は手前の歯(第二大臼歯)に引っかかっているため、そのままでは抜けず、歯冠(しかん=歯の頭の部分)を分割して少しずつ取り出す必要があります。 第三に、神経との距離です。下あごの骨の中には下歯槽神経の通る管(下顎管=かがくかん)があり、親知らずの根の先端がこの管に接している、あるいは絡んでいることがあります。神経に近い症例では、抜歯後に下唇やあごのしびれが出るリスクがあるため、パノラマレントゲンで近接が疑われる場合は歯科用CT(CBCT)で立体的な位置関係を確認することが推奨されています。舌側には舌の感覚にかかわる舌神経(ぜっしんけい)も走行しており、これも下の抜歯特有の注意点です。 このように「硬い骨・悪い生え方・神経の近さ」という3つの条件が重なりやすいことが、下の親知らずの難易度を押し上げています。上の親知らずの特徴と、意外な注意点
上の親知らずは、下と比べると条件が有利です。上あごの骨(上顎骨=じょうがくこつ)は骨のきめが粗くやわらかいため、歯を脱臼(だっきゅう=骨から緩めること)させやすく、生えている歯であれば数分程度で終わることも珍しくありません。麻酔も効きやすく、術後の腫れが目立たないことが多いのも上の特徴です。 ただし、上には上の注意点があります。- 上顎洞との交通:上の親知らずの根の先は、鼻の横に広がる空洞(上顎洞)と近接しています。抜歯後に口と上顎洞がつながる「交通」がまれに起こり、鼻から空気や水が漏れる感覚が出ることがあります。小さな交通は自然にふさがることが多いですが、大きい場合は閉鎖処置が必要になります
- 歯の迷入(めいにゅう):深く埋まった上の親知らずを抜く際、まれに歯やその一部が上顎洞側へ入り込んでしまうことがあり、その場合は口腔外科での対応が必要です
- 視野と器具の届きにくさ:いちばん奥の上は口を大きく開けても見えにくく、頬骨の張り出しが邪魔になることがあります。「簡単なはずの上の親知らず」でも、位置によっては操作が難しいことがあります

腫れ・痛みの違い:下は「2〜3日目がピーク」が目安
術後の経過も上下で差が出やすいポイントです。 下の親知らず、特に横向きに埋まった歯の外科的な抜歯では、腫れと痛みは術後2〜3日にピークを迎え、おおむね1週間前後で軽くなっていくことが多いとされています。頬が目に見えて腫れる、口が開けにくくなる(開口障害)、飲み込むときに違和感が出る、といった反応が出ることもあります。骨を削る量や歯を分割する回数が多いほど、体の反応も大きくなりやすい傾向です。 一方、上の親知らずは、生えている歯の単純な抜歯であれば、腫れがほとんど出ない、あるいは本人しか気づかない程度で済むことが多いとされています。痛み止めも初日だけで足りたという声が多いのはこのためです。 ただし個人差は大きく、上でも骨を削った場合は腫れますし、下でもまっすぐ生えていれば軽く済みます。「上下どちらか」よりも「どれだけ外科的な操作が必要だったか」が腫れの程度を左右する、と考えるのが正確です。 合併症の頻度にも差があります。抜いた穴のかさぶた(血餅=けっぺい)が取れて強く痛むドライソケットは、下の埋まった親知らずの抜歯後に多く、報告によりおおむね1〜5%(研究によってはそれ以上)とされています。上の抜歯では比較的まれです。下唇のしびれ(下歯槽神経の障害)は下だけに起こりうる合併症で、一時的なものがおおむね0.5〜8%程度、半年以上残る永続的なものは1%未満と報告されています。どちらを先に抜く?上下同時に抜ける?
上下両方の親知らずに抜歯の適応がある場合、順番や組み合わせにはいくつかの考え方があります。 よく行われるのは、同じ側の上下(たとえば右上と右下)を同日に抜く方法です。噛む側を片方残せるため、食事への影響を抑えられます。また、下の親知らずを抜くと、噛み合う相手を失った上の親知らずが伸びてきて(挺出=ていしゅつ)、頬や歯ぐきを噛む・清掃しにくくなるといった問題を起こすことがあるため、「下を抜くなら上もセットで」と提案されることがあります。 一方、4本すべてを一度に抜くのは、日本では静脈内鎮静法や全身麻酔を併用できる病院・口腔外科で行われることが多く、外来の局所麻酔では2回以上に分けるのが一般的です。難易度の低い上から先に抜いて抜歯に慣れてもらう、逆に腫れやすい下を長期休暇に合わせて先に計画する、など進め方は状況により変わります。 名古屋市内では、一般歯科で上の親知らずと簡単な下の抜歯を行い、神経に近い水平埋伏などの難症例は、中区・栄・名古屋駅周辺の歯科口腔外科や、愛知県内の大学病院・総合病院(歯科口腔外科)へ紹介する、という流れがよく見られます。紹介状があれば初診もスムーズです。通いやすさだけでなく、CT設備の有無や口腔外科での対応可否も含めて相談するとよいでしょう。費用の違い
保険診療の場合、抜歯の処置料は難易度で変わります。生えている親知らずの単純な抜歯はおおむね数百〜2,000円程度(3割負担)、骨の削除や歯の分割をともなう難抜歯は2,000〜5,000円程度が目安です。上の親知らずは単純抜歯で済むことが多く、下の水平埋伏は難抜歯や埋伏歯の扱いになることが多いため、結果として下のほうが費用が高くなる傾向があります。 このほか初診料・レントゲンや歯科用CTの撮影料・投薬・術後の消毒や抜糸の費用が加わります。神経との位置確認のためのCBCT撮影は下の難症例で必要になりやすい費用です。金額は医院・地域・歯の状態で変わるため、受診先での確認をおすすめします。よくある質問
上の親知らずは抜くとき痛くないと聞きましたが本当ですか
上あごは骨がやわらかく麻酔も効きやすいため、抜歯中の痛みも術後の腫れも軽く済むことが多いとされています。ただし深く埋まっている場合や骨を削る場合は下と同様に腫れることがあり、「上なら必ず楽」とは限りません。下の親知らずだけ口腔外科を紹介されました。なぜですか
横向きに深く埋まっている、神経(下歯槽神経)に近い、といった難症例は、CT設備や外科処置の体制が整った歯科口腔外科での対応が安全と判断されることが多いためです。上は一般歯科で、下は口腔外科でという分担はよくある流れです。上下同時に抜いてもらえますか
同じ側の上下を同日に抜くことはよく行われます。4本同時は、静脈内鎮静法や全身麻酔を使える病院で行われることが多く、外来では複数回に分けるのが一般的です。体調や仕事の予定も含めて相談してください。下を抜いたら上も抜かないとだめですか
噛み合う相手を失った上の親知らずは、伸びてきて頬を噛む・清掃しにくくなるなどの問題を起こすことがあり、あわせて抜歯を提案されることがあります。ただし必須ではなく、上の歯の状態や清掃性によって判断されます。上の親知らずを抜いたあと、鼻から空気が漏れる感じがします
上の親知らずの根は上顎洞と近く、抜歯後に交通(穴がつながること)がまれに起こります。小さなものは自然にふさがることが多いですが、症状が続く場合は放置せず、抜歯を受けた医院に早めに連絡してください。腫れを最小限にする方法はありますか
術後24〜48時間の軽い冷却、当日の激しい運動・飲酒・長風呂を避ける、強いうがいをしない、処方薬を指示どおり飲む、といった一般的な注意で腫れや痛みの悪化を抑えやすくなります。個別の指示があればそちらを優先してください。まとめ
上の親知らずと下の親知らずでは、抜歯の条件が大きく異なります。上は骨がやわらかく短時間で済み腫れも軽いことが多い一方、上顎洞との交通という特有の注意点があります。下は骨が硬く横向きの埋伏が多いため難易度が高く、腫れ・痛みは2〜3日目がピーク、ドライソケットや下唇のしびれといった合併症のリスク管理も重要です。どちらが先か、同時に抜くかは、生え方・神経との距離・生活の予定によって変わるため、パノラマレントゲンや歯科用CTによる診査診断のうえで計画を立ててもらいましょう。名古屋・愛知エリアでも、難症例は歯科口腔外科と連携して対応するのが一般的です。抜くべきかどうかの基準や費用の全体像は、親知らずの抜歯|抜くべき基準・流れ・費用を解説 をあわせてご覧ください。
参考・出典
- NICE(英国国立医療技術評価機構)「Guidance on the extraction of wisdom teeth」
- American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons(AAOMS)third molar に関するポジションペーパー・患者向け情報
- 下顎第三大臼歯抜歯後の下歯槽神経・舌神経障害に関する系統的レビュー/メタアナリシス(British Journal of Oral and Maxillofacial Surgery 等)
- 抜歯後ドライソケット(alveolar osteitis)の発生率・危険因子に関する系統的レビュー
- 上顎第三大臼歯抜歯にともなう上顎洞交通・歯の迷入に関する臨床報告・レビュー(Journal of Oral and Maxillofacial Surgery 等)
- 日本口腔外科学会「口腔外科相談室」(智歯・埋伏歯関連の解説)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット(歯・口腔の健康に関する解説)