歯科の医療費控除の対象と申請方法|計算例まで解説

対象エリア:名古屋(中区・栄・名古屋駅)をはじめ、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ。

更新日:2026年6月28日監修:村井亮介(DDS, MSD/Indiana University 大学院 補綴科修了)

インプラント(=失った歯の代わりに、顎の骨にチタンのネジを埋め込み、その上に人工歯を装着する治療)、セラミックの被せ物(=陶器のような白い素材でできた人工の冠)、子どもの矯正など、歯科の自費治療を受けると、1本・1回でまとまった金額がかかることが少なくありません。「これだけ払ったのに、税金は何も戻らないのだろうか」と感じる方も多いはずです。

実は、1年間に支払った医療費の合計が一定額を超えれば、所得税の「医療費控除(いりょうひこうじょ:払いすぎた医療費を税金で取り戻せる制度)」を使って税金の一部が戻ってくる可能性があります。歯科治療は、保険診療だけでなく、条件を満たせば自費のインプラントやセラミック、矯正治療も対象になり得る、医療費控除と相性のよい分野です。
医療費控除の全体像
このページでは、国税庁の公式情報をもとに、歯科の医療費控除で対象になるもの・ならないもの、計算式、年収別の還付額(かんぷがく:払いすぎた税金として戻ってくる金額)の目安、e-Tax(イータックス:国税庁のオンライン確定申告システム)での申告手順までを、できるだけかみくだいて整理します。 なお、本記事の内容は2026年6月時点の制度に基づく一般的な解説です。税制は毎年改正される可能性があり、個別のケースの判定は税理士・所轄税務署にご相談ください。当院は税務の専門ではないため、最終的な税額・還付額の保証はできません。

先に結論:誰が、いくらくらい戻る可能性があるのか

歯科の医療費控除をひとことで言うと、「1年間(1月1日〜12月31日)に世帯で支払った医療費が10万円(または所得の5%の低い方)を超えた分について、所得税・住民税が軽くなる制度」です。戻ってくる金額の目安を、ざっくり押さえておきましょう。
  • 所得税の軽減額の目安:(年間医療費 − 保険金等 − 10万円)× 所得税率
  • 所得税率は所得に応じて5%・10%・20%・23%・33%・40%・45%の7段階
  • 住民税も別途約10%分が軽くなる(翌年度の住民税で調整)
  • たとえば自費インプラントを2本(合計80万円)入れた年収500万円の方であれば、所得税+住民税で十数万円規模の軽減になることが多い
ポイントは、医療費控除は「払った医療費がそのまま戻る」のではなく、「課税所得が減ることで結果的に税金が安くなる」仕組みだということです。したがって、もともと所得税をほとんど払っていない方では、戻る金額も小さくなります。一方で、所得税率が高い方ほど、同じ医療費でも還付額が大きくなります。

医療費控除の制度概要(所得税法第73条)

医療費控除は、所得税法第73条に定められた「所得控除(しょとくこうじょ:税金の計算のもとになる所得から差し引ける項目)」の一つです。納税者本人が、自分または「生計を一にする(=同じ家計で生活している、または仕送りなどで生活費を支えている)」配偶者・親族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に、その超えた分(最高200万円)を所得から差し引くことができます。 ここで重要なのが「生計を一にする」という考え方です。同居している家族はもちろん、別居していても生活費や学費・療養費の仕送りをしている子ども・親なども含まれます。 たとえば、下宿している大学生のお子さんの歯列矯正(しれつきょうせい:歯並びや噛み合わせを動かして整える治療)費用を親が負担している場合、その費用も親の医療費控除に合算できる可能性があります。 世帯のなかで一番所得税率が高い人がまとめて申告すると、還付額が大きくなりやすい、というのは実務上よく知られたコツです。具体例:夫の年収が高く所得税率20%、妻が10%なら、夫がまとめて申告した方が戻ってくる金額が2倍近く違うこともあります。 医療費控除の計算式は次のとおりです。 控除額 =(その年に支払った医療費の合計 − 保険金等で補填される金額)−(10万円 または その年の総所得金額等の5%のいずれか低い方) 総所得金額等が200万円未満の方は「10万円」ではなく「所得の5%」が差し引かれます。たとえばパート収入のみで総所得が150万円の方なら、しきい値は7万5,000円となり、10万円未満の医療費でも控除を受けられる場合があります。 控除額の上限は200万円です。歯科のインプラントや矯正など高額な自費治療を一度に複数本受けた年は、この上限に近づくことがありますので、複数年に分けて治療計画を立てるかどうかは、費用面と治療上の優先度の両方から検討する価値があります(治療上必要なものを我慢する、という意味ではありません)。

歯科で医療費控除の対象になる治療・ならない費用

国税庁が示している考え方の基本は、「治療目的か、それとも美容・予防目的か」です。歯科では、保険診療はもちろん、自費治療であっても「治療のために一般的に必要と認められる範囲」であれば対象になり、見た目を整えるためだけの処置や、健康な歯を白くするだけの処置は対象外となります。 対象になる例を、歯科の現場でよくあるケースに沿って整理します。
  • 虫歯の治療費(保険・自費を問わない、治療目的のもの)
  • 歯周病の治療費(スケーリング、ルートプレーニング、歯周外科など)
  • 抜歯、親知らずの抜歯、口腔外科処置
  • 根管治療(神経の治療)
  • 詰め物・被せ物(保険のレジン・銀歯はもちろん、治療上必要なセラミック・ジルコニア・金属冠も含む)
  • 入れ歯(保険・自費とも、咀嚼機能回復のためのもの)
  • ブリッジ(保険・自費とも)
  • インプラント治療(治療目的で歯を補うもの)
  • 子どもの歯列矯正(成長過程で噛み合わせの改善が必要と認められるもの)
  • 大人の歯列矯正で、咬合機能の改善など治療目的が明確なもの
  • 顎関節症の治療、マウスピース治療(治療目的)
  • 通院のための公共交通機関の交通費(本人と、付き添いが必要な子ども・高齢者の分)
  • 処方された医薬品の費用
対象にならない例(あるいは原則として認められない例)も合わせて押さえておきましょう。
  • ホワイトニング(健康な歯を白くするだけのもの)
  • 美容目的のラミネートベニア
  • 見た目だけを目的とした大人の歯列矯正
  • 歯ブラシ、歯磨き粉、洗口液、フロスなど日常のセルフケア用品
  • サプリメント、栄養ドリンク類
  • 診断書の文書料(一般的に対象外)
  • 自家用車での通院のガソリン代、駐車場代、高速代
  • 予防目的のみの定期検診費用(ただし、検診の結果として治療を受けた場合の治療費は対象)
実務上の判断で迷いやすいのが、ホワイトニングと矯正、そして定期検診です。ホワイトニングは原則として「美容目的」とされ、控除の対象外です。矯正は後で詳しく述べますが、見た目だけが目的か、咬み合わせや発音・顎の成長への影響を改善する治療目的かによって扱いが分かれます。定期検診は予防目的単独なら対象外ですが、検診を受けた結果として虫歯や歯周病が見つかり治療を行った場合、その治療費は当然医療費控除の対象です。

自費治療(インプラント・セラミック・矯正)の扱い

歯科の医療費控除で特によく質問を受けるのが、自費治療の扱いです。「保険外=控除の対象外」ではない、というのが最初に押さえたいポイントです。国税庁の考え方は「治療として一般的に支出される水準を著しく超えない範囲なら、自費治療も対象」というものです。 インプラントは、欠損(けっそん:歯を失った状態)した歯の機能を回復するための治療であり、原則として医療費控除の対象です。1本あたり30万〜50万円程度が相場で、複数本入れる年は控除額もそれに比例して大きくなります。 骨造成(こつぞうせい:インプラントを埋めるための骨が足りないときに人工材料や自家骨で骨を増やす処置。GBR=骨を膜でガードしながら増やす方法、サイナスリフト=上顎の奥で薄い骨を持ち上げて骨を作る方法など)や、インプラント本体に必要な構成部品(=アバットメント=歯ぐきの上に出てくる連結部分、上部構造=最終的な人工歯など)の費用も、その治療のために必要なものであれば一体として対象に含めて差し支えありません。 セラミックやジルコニアの被せ物・詰め物も、虫歯治療や歯の破折を治す目的で装着するものは医療費控除の対象です。「金属アレルギーで保険の銀歯が使えない」「奥歯の咬合圧で割れない強度が必要」「前歯の見た目と機能を同時に回復する必要がある」など、治療上の理由がある場合は問題なく対象になります。一方で、健康な歯を削って見た目だけ整えるラミネートベニアなどは対象外と考えるのが安全です。 矯正治療は、子どもと大人で扱いが分かれます。 子どもの矯正は、成長段階での噛み合わせ・顎の発育の改善が目的とされるため、医療費控除の対象になるケースが大半です。 具体的には、上下の前歯が噛み合わない開咬(かいこう:口を閉じても前歯にすき間ができる状態)、受け口(=下の歯が上の歯より前に出ている状態。反対咬合とも呼ばれる)、過蓋咬合(かがいこうごう:上の歯が下の歯を覆いすぎる深い噛み合わせ)、極端な叢生(そうせい:歯がデコボコに重なって並んだ状態。八重歯もこれに含まれる)などは、咀嚼(そしゃく:食べ物を噛み砕くこと)や発音、顎の成長への影響があるとして治療目的が認められやすい代表例です。 大人の矯正は、見た目の改善のみを目的とする場合は対象外、咬合機能(こうごうきのう:噛み合わせの働き)の回復・改善や顎関節症(がくかんせつしょう:顎を動かす関節の不調で、口が開けにくい・痛い・音が鳴るなどの症状を起こす病気)の治療を目的とする場合は対象、というのが基本的な考え方です。 実務的には、矯正歯科の医師が「機能改善のための矯正治療」として診断書や治療計画書を発行できるかどうかが目安になります。 デンタルローン(=歯科治療専用のローン。信販会社が治療費を医院に一括で立て替え、患者はローン会社に分割で返済する仕組み)・分割払いを利用した場合は、ローン会社が立替払いした日(=その年の総額)が支払日として扱われるため、初年度にまとめて控除を受けやすい点も覚えておくと便利です。 歯科の費用相場全般については 歯科治療の費用の目安、保険診療と自費診療の違いそのものについては 歯科の保険診療と自費診療の違い で詳しく解説しています。

通院交通費の扱い

意外と忘れがちなのが通院交通費です。電車・バスなど公共交通機関を使った通院の費用は、本人と、付き添いが必要な子ども・高齢者の分について医療費控除の対象になります。領収書が発行されない場合も多いため、通院日・経路・運賃をメモやスマホで記録しておけば、十分集計に使えます。 自家用車での通院のガソリン代、駐車場代、高速料金は原則として対象外です。やむを得ず公共交通機関が使えない地域・身体状況であれば、タクシー代は対象として認められるのが一般的です。判断に迷う場合は、領収書とともに事情を記録しておき、税務署に確認するのが確実です。

セルフメディケーション税制との比較

医療費控除には、もう一つ「セルフメディケーション税制」という選択肢があります。一定の市販薬(スイッチOTC医薬品)の年間購入額が1万2,000円を超える場合に、超えた分(上限8万8,000円)を所得から控除できる仕組みです。健康診断や予防接種など「健康の保持増進・疾病予防の取組」を行っていることが要件になります。 ただし、医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらか一方しか選べません。歯科の自費治療など高額な医療費を払った年は、ほぼ間違いなく通常の医療費控除のほうが有利です。市販薬中心で大きな治療費がない年は、セルフメディケーション税制が選択肢になる、というイメージで使い分けてください。

必要書類と申告の流れ

医療費控除は、年末調整では処理できません。会社員の方も含め、ご自身で「確定申告」を行う必要があります。準備するものは大きく次の3つです。
  • 医療費控除の明細書(医療費を1年分集計したもの。様式は国税庁サイトでダウンロード可)
  • 源泉徴収票(会社員の方の場合。自営業の方は青色申告決算書・収支内訳書など)
  • マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類)と銀行口座の情報
2017年分の確定申告から、医療費の領収書を税務署に提出・添付する必要はなくなり、代わりに「医療費控除の明細書」の提出が必要になりました。領収書そのものは、自宅で5年間保管しておく義務があります。税務署から問い合わせがあった際に提示できる状態にしておきましょう。 健康保険組合から届く「医療費通知(医療費のお知らせ)」を使うと、その通知に記載された分はまとめて明細書に転記でき、領収書の保管義務も免除されます。手間を大きく減らせるので、医療費通知が届いたら捨てずに保管しておくのがおすすめです。ただし、通知には記載のない最新月分や、自費治療分は、別途領収書から記入する必要があります。

計算例(年収400万・500万・700万のケース)

数字でイメージできるよう、3つの代表的なケースを試算してみます。いずれも、給与所得者で他に大きな所得控除はない前提でのおおまかな目安です。実際の還付額はその他の控除や住民税の状況によって変動しますので、参考値としてご覧ください。
医療費控除の計算例
ケース1:年収400万円・自費インプラント1本(35万円)を支払い
  • 年間医療費合計:35万円
  • 保険金等で補填される金額:0円
  • 差し引くしきい値:10万円
  • 医療費控除額:35万円 − 10万円 = 25万円
  • 所得税率の目安:10%(課税所得が約195万円超330万円以下)
  • 所得税の還付:25万円 × 10% = 約2万5,000円
  • 住民税の軽減(翌年度):25万円 × 10% = 約2万5,000円
  • 合計の節税効果:約5万円

ケース2:年収500万円・子どもの矯正治療(総額80万円、初年度一括払い)

  • 年間医療費合計:80万円
  • 保険金等で補填される金額:0円
  • 差し引くしきい値:10万円
  • 医療費控除額:80万円 − 10万円 = 70万円
  • 所得税率の目安:20%(課税所得が約330万円超695万円以下)
  • 所得税の還付:70万円 × 20% = 約14万円
  • 住民税の軽減(翌年度):70万円 × 10% = 約7万円
  • 合計の節税効果:約21万円

ケース3:年収700万円・自費セラミック5本+インプラント2本(合計150万円)

  • 年間医療費合計:150万円
  • 保険金等で補填される金額:0円
  • 差し引くしきい値:10万円
  • 医療費控除額:150万円 − 10万円 = 140万円
  • 所得税率の目安:23%(課税所得が約695万円超900万円以下)
  • 所得税の還付:140万円 × 23% = 約32万円
  • 住民税の軽減(翌年度):140万円 × 10% = 約14万円
  • 合計の節税効果:約46万円
このように、所得税率が高い方ほど、また年間の医療費が大きいほど、節税効果は大きくなります。共働き世帯では「世帯で一番所得税率が高い人」が家族全員分をまとめて申告すると、合計の還付額が最大化しやすい点も覚えておきましょう。

e-Tax・確定申告書類の書き方

確定申告の方法は、大きく分けて次の3つがあります。
  • e-Tax(国税庁のオンライン申告)でスマホ・パソコンから提出する
  • 国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で書類を作り、印刷して郵送・持参する
  • 税務署で用紙をもらい、手書きで作成して持参・郵送する
最も手間が少ないのは、マイナンバーカード方式によるe-Taxです。マイナンバーカードと、対応するスマートフォン(マイナポータルアプリ)があれば、自宅から24時間申告できます。マイナポータルと健康保険組合・税務署を連携させておくと、医療費通知の内容や源泉徴収票の情報を自動で取り込めるため、入力ミスも大きく減らせます。 確定申告書の入力で押さえるべきポイントは次のとおりです。第一表の「所得から差し引かれる金額」欄に医療費控除額を記入し、第二表の対応欄に「医療費控除」と記載します。明細書には、医療を受けた方の氏名、病院・薬局等の名称、医療費の区分(診療・治療、医薬品購入、介護保険サービス、その他)、支払った医療費、生命保険などで補填される金額を、医療を受けた方ごと・支払先ごとに集計して記入します。 申告期間は、原則として翌年2月16日から3月15日までです。医療費控除のように「還付を受けるための申告(還付申告)」は、その対象となる年の翌年1月1日から5年間提出できます。たとえば2026年分の医療費控除は、2027年1月1日から2031年12月31日までいつでも申告できます。「忙しくて確定申告期間中に申告できなかった」という方も、5年以内であれば諦める必要はありません。

よくある誤解と注意点

実務でよく耳にする誤解や注意点を整理します。 第一に、「保険診療しか対象にならない」というのは誤解です。先に述べたとおり、治療目的の自費治療は基本的に対象になります。 第二に、「医療費は本人の分しか申告できない」というのも誤解です。生計を一にする家族の分はまとめられます。共働きでお互いに所得があるご家庭でも、合算先は所得税率が高い方を選ぶのが原則的に有利です。 第三に、「保険金で補填された金額」の範囲です。生命保険の入院給付金や、健康保険の高額療養費・出産育児一時金は差し引きが必要ですが、その補填の対象となった医療費からのみ差し引きます。歯科の自費治療と無関係な入院給付金まで差し引く必要はありません。 第四に、デンタルローンを使った場合、ローン会社が立替払いした日(その年の総額)が支払日になります。金利・手数料部分は対象外、元本部分が対象、という整理になります。ローン契約書の控えや明細を保管しておきましょう。 第五に、領収書の保管期間は5年間です。申告後に廃棄してしまうと、後から税務署に説明を求められた場合に困ります。医療費が多い年は、年単位でクリアファイルにまとめて保管しておくのがおすすめです。 第六に、ふるさと納税のワンストップ特例を使う予定だった会社員の方が医療費控除のために確定申告をすると、ワンストップ特例は無効になり、ふるさと納税も確定申告で申告し直す必要があります。両方を行う年は、確定申告書類に寄附金控除も必ず一緒に入力してください。

受診の目安・該当しそうな方への助言

歯科に絞って、医療費控除の対象になりそうなご家庭の典型例を挙げます。
  • その年にインプラント・セラミック・自費の入れ歯など、自費治療を1本でも受けた方
  • 子どもの矯正治療を開始する方、または開始したばかりの方
  • 家族のなかに歯周病治療や根管治療で通院回数の多い方がいるご家庭
  • 1年間の通院回数が多く、薬局・処方薬の支出も少なくないご家庭
これらに一つでも当てはまる場合、年間医療費が10万円(または所得の5%)を超えていないか、12月の時点で一度集計してみることをおすすめします。歯科治療は12月までで一区切りつけて支払いを済ませるか、年明けに回すかで、その年の控除対象額が変わります。治療上問題のない範囲で、お会計のタイミングを医院と相談する余地があるケースもあります。 なお、本記事は税理士業務にあたる個別具体的な税務相談には対応していません。複数の控除が絡む方、不動産所得・事業所得など給与以外の所得が大きい方、海外居住期間がある方などは、税理士か所轄の税務署に必ず確認するようにしてください。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. インプラントは医療費控除の対象になりますか。 A. はい、原則として対象です。インプラントは欠損した歯の機能を回復するための治療であり、治療目的の支出として認められます。本体・手術・上部構造(被せ物)・必要な骨造成までを一体として申告して問題ありません。 Q2. 大人の矯正治療は医療費控除になりますか。 A. 見た目の改善のみを目的とする場合は対象外、咬合機能の改善や顎関節症などの治療を目的とする場合は対象です。判断に迷う場合は、矯正歯科で治療目的を明記した治療計画書・診断書を発行してもらえると安心です。 Q3. ホワイトニングは対象になりますか。 A. 健康な歯を白くするだけのホワイトニングは、美容目的とされ対象外です。失活歯の変色改善など、治療として行う場合は別途検討が必要なこともあるため、医院に確認してください。 Q4. クレジットカード払い・デンタルローンの場合はどう扱いますか。 A. クレジットカード払いは「カードで決済した日」、デンタルローンはローン会社が立替払いした日(その年の総額)が支払日になります。分割払いであっても、初年度に総額分の控除を受けられるのが原則です。金利・手数料部分は対象外です。 Q5. 配偶者や子どもの歯科治療費もまとめて申告できますか。 A. はい、生計を一にする家族の医療費はまとめて1人が申告できます。世帯で所得税率が一番高い方が申告すると、還付額が大きくなりやすいです。 Q6. 過去の歯科治療費を申告し忘れていました。今からでも還付請求できますか。 A. はい、還付申告はその年の翌年1月1日から5年間有効です。2021年に支払った医療費であれば、2026年12月31日までは申告できます。領収書や医療費通知が手元にあれば、ぜひ確認してみてください。 Q7. 領収書は捨ててしまいました。医療費通知だけで申告できますか。 A. 医療費通知に記載されている分は、それだけで明細書に転記でき、領収書の保管も不要です。一方、通知に記載のない自費治療分や最新月の分は、領収書や医院発行の支払証明書が必要になります。医院に再発行を依頼できる場合もあるので、一度ご相談ください。

まとめ

歯科の医療費控除は、自費治療を受けた方ほど効果が大きくなりやすい、知っておいて損のない制度です。最後に要点を整理します。
  • 1年間の医療費(家族合算)が10万円または所得5%を超えれば対象になり得る
  • 保険・自費を問わず「治療目的」の歯科治療は基本的に対象。インプラント、治療目的のセラミック、子どもの矯正、機能改善目的の大人の矯正も含む
  • 美容目的のホワイトニングや見た目だけの矯正、セルフケア用品、自家用車のガソリン代は対象外
  • 通院交通費は公共交通機関分が対象、自家用車のガソリン・駐車場代は対象外
  • 申告はe-Taxが最も簡便。マイナポータル連携で医療費通知の取り込みも可能
  • 確定申告期間に間に合わなくても、還付申告は5年間有効
  • 世帯で所得税率が高い方がまとめて申告すると還付額が最大化しやすい
歯科治療は、痛みが出てから・崩れてからでは費用も処置も大きくなりがちです。費用負担をできるだけ抑えるうえで、医療費控除を上手に活用しつつ、早めの相談・早めの治療を心がけることが、結果的にご自身とご家族の歯の寿命にとっても、家計にとっても、最も合理的な選択になることが多いと考えられています。判断に迷う点があれば、治療内容については歯科医院に、税務上の判定については税理士・所轄税務署にご相談ください。 歯科の費用相場全般については 歯科治療の費用の目安、保険診療と自費診療の違いについては 歯科の保険診療と自費診療の違い もあわせてご覧ください。

参考・出典

  • 国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」(No.1120)
  • 国税庁「医療費控除の対象となる医療費」(No.1122)
  • 国税庁「医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」(No.1128)
  • 国税庁「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」(No.1129)
  • 所得税法第73条(医療費控除)
  • e-Tax(国税電子申告・納税システム)公式サイト
  • マイナポータル「医療費通知情報の取得」
e-Tax申請の流れ

監修:村井 亮介(DDS, MSD/米国インディアナ大学大学院 補綴科修了)
Indiana University 大学院 補綴科修了/ACP・ITI・AO・日本補綴歯科学会 会員。名古屋(中区・栄・名古屋駅エリア)を拠点に、愛知・東海地方で歯のお悩みを抱える方へ向けて情報を発信しています。理念は「10年後も削り直さない治療」。

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